ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

「ブラック」の定義

「私の企業・職場って『ブラック』なのだろうか?」
「労働環境がどの程度劣悪であれば『ブラック』なのだろうか?」
「何をもって『ブラック』なのか?」
「残業が多い!『ブラック』ではないか!」
パワハラを受けた!『ブラック』だ!」

このような疑問や懸念を持つ人は多いのではないだろうか?

私は現時点において「ブラック」を

「労働によって、健康面・生活面・経済面・キャリア面を脅かし被害を与える、もしくはその恐れがあるなど、広義の意味でのコンプライアンス(倫理観)に欠け、弱者の犠牲の上にビジネスが成り立つこと」

と定義する。時代や社会情勢が変われば変化するし、「ブラック」企業への批判が強まる中、世間のコンプライアンスに関する関心の高まりを考えると、今後はますます厳しいものになっていくだろうと予想している。

ブラック企業」「ブラック労働」という言葉が世間に流通するようになってから久しい。多くの人達がそれぞれの思いで使っているが、何をもって「ブラック」というかは人それぞれである。立場や価値観によっても異なる。次の3つの視点で考えてみたい。


1.世間一般の人たちによる「ブラック」の定義

世間一般の印象として多いのは

くらいだと言われている。確かにどれも頷けるものばかりである。どれもあってはいけないことだ。程度によっては、行政からの指導を受けたり、不祥事としてニューにで報道される。個々の要素についてもう少し詳細を見ていく。

長時間労働

これは「ブラック」の要素として含めざるを得ない。日本では労働基準法によって、一日の労働時間は8時間までと決まっている。使用者と労働者が締結する36協定があるが、これは例外的なものである。顧客からの要求や、使用者からの業務命令とはいえ、長時間労働が行き過ぎると、健康面に悪影響を及ぼしたり、最悪の場合は命を落とすことがある。そうでなくても、作業のパフォーマンスや生産性の低下など労働者・会社双方にとって良いことはない。法律上問題ない範囲であっても、上限ギリギリといった法律に触れる手前のような状態であれば、労働者にとって魅力的な企業とは言えず、労働者としてはもっと労働環境の良い企業を選ぶことになるだろう。そもそも「長時間労働」でなければ企業自体がやっていけない構造が問題である。
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「セクハラ・パワハラがある」

これも「長時間労働」と同じ、健康面への悪影響、パフォーマンスや生産性の低下、労働意欲の低下に直結する。特に、パワハラは指導との区別がつきにくく、問題にはなりにくいが被害者側としては大きなダメージを受けているケースが少なくない。昭和の根性論はもう通用しない。セクハラ、パワハラをはじめとするハラスメントはコンプライアンス問題に直結する。今の時代においては世間の目は厳しく、コンプライアンス問題を起こせば、「ブラック」として悪評が瞬く間に広がっていき、企業の存亡に影響せざるを得なくなる。
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「給料が安い」

これは上述した健康面には直結しにくいが、労働者にとって不満になりやすい要素である。日本人はまじめで勤勉であり、努力を美徳とする傾向が昔からあり、サービス精神が行き過ぎている。この使命感に漬け込んで、難度の高い業務を安い給料で、高品質なサービスを安い対価で行うことがまかり通っており、「やりがい」などと言う言葉でごまかす「やりがい搾取」が横行している場面が多々ある。理にかなっていない実態だ。日本のIT・ソフトウェア業界においても、エンジニアは高いスキルが求められている割には給料が安いことが多いが、これは日本が製造業を強みとし、ITを業務効率化のツール程度と軽視してきた歴史的背景と、時代の変化にも関わらず過去の成功体験から抜け出せないことに起因しており、競争力が海外の企業に追い抜かれている現実がある。私が以前勤めていたIT企業でも、「業務内容の割には、給料が安い」ことを理由にで辞めていく人が多かった。優秀な人材にとっては勿体ない話である。
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2.専門家による「ブラック」の定義

専門家だけあって、一般の人たちとは少し視点が異なる。代表的なのは「法律を守っていない」。それ以外に私が目についたのは「労働者の価値観によって異なる」「企業の業績と従業員の健康がトレードオフになっている」である。

「法律を守っていない」

労働法規を守り、従業員を大切にし、顧客に良い製品・サービスを提供しようとすると、コストや工数がかかるのは当たり前である。しかし、労働法規を守らず、従業員を安く使い潰すことで、その分競合他社よりも製品やサービスを安く早く提供でき、コスパ重視の顧客がこのような企業の製品やサービスを選ぶため、アンフェアな競争で勝つ結果となってしまう。この結果、労働法規を守り、正当な手段で製品やサービスを提供しているまともな企業にとって迷惑であり、社会にとって害悪となる存在である。

「労働者の価値観によって異なる」

例えば、長時間労働ひとつを取っても、「ハードワークでも良いから稼ぎたい。経験を積みたい。」という人もいれば、「生活面とのバランスを重視したい。」という人もいる。即ち、労働者が働くうえで何を重視したいかによって変わってくるという考え方である。様々な人が様々な価値観でもって「ブラック」と言うので話がややこしくなるのである。

「企業の業績と従業員の健康がトレードオフになっている」

これも従業員を会社にとって都合よく使い潰す姿をイメージするとわかりやすい。これとは逆に理想的なのは「企業の業績と従業員の健康がシナジー(相乗効果)になっている」状態である。従業員が健康を確保したまま企業活動を行うため良いアウトプットを出し業績に繋がり、労働者が無理なく働ける環境が作り出されている状態である。

3.私が考える「ブラック」の定義

「世間一般」「専門家」による定義との比較

「世間一般」「専門家」による定義を参考にした私が考える「ブラック」の定義は、冒頭に記載した通りである。

この定義は、世間一般の認識である「長時間労働」「セクハラ・パワハラがある」を含んでいる。労働者が直接受ける被害であるためである。また、「給料が安い」は少し優先度は下がるが、労働の内容に対する対価が安いことは、経済面やキャリア面における被害である。

また、私の定義は専門家による定義の「法律を守っていない」よりやや厳しい。なぜなら、法律さえ守っていれば全く問題ないかというとそうではないからである。法律には不備や抜け穴、曖昧な部分といった抜け道があったり、企業側が都合よく解釈し悪用することで、労働者にとって迷惑や不利益となることがある。これでは本末転倒である。世の中の問題が全て法律で解決できるわけではない。法律は正当な企業や労働者を苦しめるためにあるものではない。人間としての誠実さが必要である。にも関わらず、誠実さに欠けた企業側の対応により、労働者の人生に悪影響を与えるケースが少なくない
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「法律」よりも「コンプライアンス」というとわかりやすい。「コンプライアンス」は直訳すると「法令遵守」である。しかし、現実的には「倫理」という広い意味を持っている。「コンプライアンス」についてはご存じの通り世間からの目線がますます厳しくなってきている。これをおろそかにするとブラック扱いされることも珍しくない。

コンプライアンス」とは、
× 「法令遵守」(「法律さえ守っていれば、あとは何でも良い」)
〇 「法令遵守」のみならず「時代とともに変化する社会的要請を正確に把握し、それに応じた行動を取ること」
である。
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「ブラック」な状態を「厳しさ」と表現し、数々の労務問題に対して

  • 「これが当たり前だ!」
  • 「こんなもんだ!」
  • 「俺が若いころはもっとスパルタだった!」
  • 「今の若い奴らは考えが甘い!」

と、被害者をマインドコントロールするようなケースが昔はよく見られた。今でも企業によってはまだまだあるだろう。

「ブラック」=「悪意がある」ではない

「ブラック」というとイメージが悪く、「ブラック」でない組織が「ブラック」と言われると良い気がしない。しかし、認識しておかなければならないのは、「ブラック」が必ずしも「悪意がある」という意味にはならない。従業員を使い潰し私腹を肥やす経営者や管理職もゼロではないが、「ブラック」である組織の多くは、目の前の課題に対する志しが高く、顧客満足を求め、従業員には厳しく成長を求めているのだが、マネジメントの問題、「和」を尊重する組織風土(同調圧力)、顧客の無理難題への対応、理想と現実のギャップ等様々な要因により、結果的に「ブラック」に陥ってしまうのである。使用者に悪意が無くとも従業員が被害を受けることには変わりないのである。

「ブラック」の定義や事例をインプットし、「厳しさ」ではなく「ブラック」と正しく見抜くことが労働者側にも求められている。「ブラック」に関する他の記事を挙げておくので、参考にしていただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com
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私が「ブラック」だと思う出来事は、上述した私が考える定義に基づいている。法律の整備も重要だが、法律がないと何も解決できないという状況は人間として恥ずかしい限りである。ブラックな出来事を無くし、皆がいきいきと働き、良いアウトプットを出せる健全な状態になってほしい。