ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

無理なスケジュールを過重労働にて達成したことは美談ではない!その理由を語る!

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システム開発プロジェクトにおいても、その他、IT分野以外の業務でも、日本では過重労働が問題視されており、その要因として、次のようなものが挙げられる。

  • 日本人は真面目でサービス精神が良すぎる。もしくは自分自身の損得以上に、組織や他人に尽くすことこそ美徳と考えている。
  • 日本では「顧客の方が偉い」とか「発注元の方が立場が上」といった考えがいまだに残る。よって、要求をなかなか断れない。
  • 歴史的に製造業が強く、多く長く頑張れば報われるという昔の成功体験から抜け出せない。それゆえ、日本のソフトウェア産業は海外に遅れをとっている。
  • 慢性的に業務量が多い。経営陣や管理職のなかには、いかに社員を使い潰し企業の利益を最優先するマインドの人も居れば、志しが非常に高く頑張った分だけリターンがあると思い込んでいる。

私は、ある製品開発プロジェクトでソフトウェア開発部門のリーダーを担当し、これまでにない上流工程からステークホルダーと共にフロントローディングに取り組んだ。しかし、

  • ソフトウェア開発に必要な仕様決めをサポートしても、仕様決定部門が製品開発部門や製品企画部門との調整が難航し、仕様決定期限を1ヶ月~2ヶ月遅れて、仕様決定に至る。
  • 開発中に仕様追加があり、ソフトウェア開発量が増える。本来製品のハードウェアで解決することが一般的な問題点を、難度の高さを理由にソフトウェアで対策するよう求められる。(ソフトウェアで対策することも難度が高い。)更に、開発終盤にハードウェアでの検討漏れが発覚し、それを対策することでソフトウェア設計も変更が必要になる。
  • それにも関わらず、ソフトウェア完成納期が延期されないどころか、生産部門の都合上、余裕を確保したい要求があり、ソフトウェア完成納期が当初の期日より一週間早まる。

と、ソフトウェアエンジニアへのしわ寄せが集中する鬼畜極まりない開発となった。

それでも、ソフトウェアエンジニアの頑張りにより、次のような結果をもってこのプロジェクトを完了した。

  • 前倒しされたソフトウェア完成納期を厳守した。
  • ソフトウェア品質問題(バグ)は、1件足りとも市場に流出していない。開発終盤で、製品評価部門に2件程度バグを発見され、指摘を受けたが、ソフトウェアエンジニアが素早くバグの修正対応を行った。
  • リーダーはメンバーの技術力育成の両方を成し遂げ、労務管理にも気を配った。開発終盤は、一時的にソフトウェア部門内で人員を増員し対応に当たったが、長時間労働という力技で苦難を乗り切った。

三者が見ると、いかにも

「前工程のしわ寄せを受け、仕様追加もあり、完成納期が早まったにもかかわらず、逆境を乗り切り、苦難を乗り越え、ソフトウェア完成納期と品質を守り、新製品を世に出すことができた!」

と美談のようなストーリーである。普通の人なら、ソフトウェアエンジニアとしても、周囲に自慢したくなるような状況だ。

本来、このような状況を乗り切ったことは、ソフトウェアエンジニアとして、高く評価されるべきだ。しかし、私は自慢したいわけではない。この状況には大きな問題があり、私は既に高い危機感を持っていた。

前置きが長くなったが、この記事では、なぜ、無理なスケジュールを過重労働にて達成したことを美談として語ることを避けるべきなのか、なぜ高い危機感を持っているのかについて語る。


1.そもそもwin-winとは言えない

上述した私が携わった製品開発プロジェクトは、ソフトウェア開発の前工程の完了が当初の予定よりも遅れ、最終的なソフトウェア完成納期が変わらない(厳密には前倒しになる)ため、ソフトウェア開発期間や品質確認期間が短くなり、十分な品質確認ができない。

そこで、ソフトウェアエンジニアが縮まる期間の中で、要求仕様の分析、ソフトウェア設計、実装、テスト作業を行わなければならないため、リソースを増やさないならば、一日当たりの労働時間が長くなり、一人当たりの業務量が増加し、過重労働となってしまう。

短期間で高機能、高品質なソフトウェアを搭載し、新製品を市場に届けることは、美談に聞こえるが、その裏にはソフトウェアエンジニアの苦労どころか犠牲の上に成り立っている部分がある。これがほどほどの労働環境で、ソフトウェアエンジニアにとっても成長やスキルアップに繋がるなら、ステークホルダー皆がwin-winだが、一部の犠牲でもって全体が成り立つことは、コンプライアンス的にも問題である。私自身も、そのようなコンプライアンス教育を受けたことがある。
o08usyu7231.hatenablog.com
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2.労働者の価値観の多様化により、皆が美談とは思わない

顧客の要望に応えることは、昔から企業、組織のミッションとして、従業員に教え込まれてきた。これ自体はその通りである。

一方、上述したようなプロジェクトを含め、顧客の要望に応えることや、業務目的を達成することが絶対的な正義となってしまい、従業員の生活面や健康面を脅かしてまで、成し遂げることについては、疑問視されるところでもある。

特に、労働者の価値観の多様化ワーク・ライフ・バランス志向の高まりCSR(企業の社会的責任)やコンプライアンスへの関心の高まりと社会環境が変化してきている。

特に、最後の「CSR(企業の社会的責任)やコンプライアンスへの関心の高まり」というところが重要であり、企業が儲かれば、「それ以外は何でも良い」、「従業員を犠牲にしても良い」という考え方は通用しなくなった。努力・気合・根性でまかり通る世の中ではなくなってきた。昭和的価値観は、令和においては炎上要因にもなりうる。

このような背景から、身を粉にしてプロジェクト成功へ導いたところで、皆が美談と思うとは限らない。ソフトウェアエンジニアの無理や犠牲の上にプロジェクトが成り立つような「前段」にこそ問題があり、そのしわ寄せをソフトウェアエンジニアが吸収しているだけという、事業の構造的問題の方が着目されるくらいである。このような状況を放置することは、歪みが顕在化するリスクすら抱えているのである。

3.次回以降は当たり前になり、後の世代の人達を苦しめることになる

これもよく言われることだが、無理なスケジュールに対して過重労働にて納期を遵守したことは、確かに一部の人達の頑張りがあってのことである。ここに敬意を表することは悪いことではない。

しかし、この頑張りが美談のように語られるのみならず、次からこれが当たり前のようになると、現場はますます苦しめられることになる。

そしてこのような現場は、評価や報酬は据え置きで、要求や期待のハードルが上がっていくのみであり、労働力を搾取したい管理職や発注側にとって都合が良いだけである。

  • 「前にもこのような形で対応してもらったので次回も!」
  • 「我々の開発はいつもこんなもんだ!」
  • 「他はもっと苦しい状況にある。我々はまだ恵まれている方だ。」
  • 「もっと、現場で改善できることを考えよ!」

このような形で、上述のプロジェクトであれば、ソフトウェアエンジニアの犠牲的尽力にも関わらず、ますますハードルが上がり、今後のメンバにとってもますます気の毒である。そして、このような実態を一切気にかけず、

「今後は、高度化する要求に対して、さらっと対応できるくらい、更に高度な技術力・開発力が必要だ!」

などと、もっともらしいことを称して、ソフトウェアエンジニアを洗脳する。

「成長のため」などと称して、自分達がやってきたからという理由だけで、後の世代の人達へ必要以上の苦労押し付けるのは、老害がやることでしかない。本来なら、労働環境等、自分達の世代で問題となっていることを、先送りせず改善した状態で、後の世代へ引き継ぎたいものだ。

業務に対する要求のハードルは上がるが、そのリターンが今のまま変化がなく、成果や実績に見合ったものでなければ、ソフトウェアエンジニアがステークホルダーからの信頼を得ているのではなく、都合良く使われているといったイメージの方が強く、ソフトウェアエンジニアとして極めて貧しい状況となる。これを見抜くことができる人もいれば、残念ながらできない人もいるのが現実だ。

4.まとめ~力技でビジネスを成立させるのは美談ではなくリスクだ!

このように無理なスケジュールを過重労働という力技で乗り越えることが当たり前とされる状況が続けば、優秀な人材ほどさらに条件の良い環境を求めて、組織から流出し、組織がエンジニア不足で更に状況が悪化し、加えてそのような企業には誰も応募しなくなるという悪循環が訪れることは容易に想像できるだろう。人手不足の中で、正当な評価をしないまま、エンジニアの力技に頼る企業は廃れていくのだ。

力技に頼るビジネスというのは、考えることを放棄し、特定の人や組織の犠牲の上に成り立つ構造である。犠牲的労働をせずとも、売上・利益が出るビジネスを目指すべきであり、ここを考えるのが経営者や管理職の仕事なのである。

一方、労働者側も労働者を都合良く使う組織を、力技で組織を支えてあげるのではなく、犠牲的労働を提供せずともwin-winとなるような環境へ移る努力をすべきである。私も過去にこのような理由で転職したことがある。労働者は現在所属している企業に尽くすこと以外に、転職活動等を通して、視野を広げることが必要だ。視野を広げることで、

「過重労働で組織に貢献することが『美談』ではなく『粗悪さ』である」

ことに気付くことができ、特定組織からの洗脳を防ぐことができるメリットがある。

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過重労働で企業を支えることは、美談ではない。日本人は真面目で勤勉で、和を尊重する民族である。世界的にも労働時間が長い割には、生産性は低いと言われている。日本人が真面目な点は良い面もあるのだが、企業の経営陣や管理職が、これを都合良く利用しているが故に、マネジメント層が育たないとも言える。

幸い、最近は労働者の価値観の多様化、働き方の多様化により、労働者の企業に対する忠誠心を高めるよう強要するなど、過去のものとなりつつある。人材の流動化はますます激しさが増し、労働環境に配慮せず、力技でビジネスを成り立たせることは、問題であることの認知が広がってきた。これを放置しておくのはリスクだということを忘れてはならない。

最後に、本当に美談だと思えるのは下記の記事にあるようなプロジェクトだ。参考にされたい。
o08usyu7231.hatenablog.com