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ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

「ビジネスと人権」に関するコンプライアンス教育の内容が「ブラック労働」にも当てはまる

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「ビジネス」は、「人権」や「コンプライアンス」が成り立った上で成り立つものである。このようなことを言えば当たり前と思われるかもしれないが、この当たり前のことができていないから、長時間労働パワハラがまかり通ってしまい、「ブラック」と叩かれ、不祥事としてメディアに放送されたりする。

「ビジネスと人権」というテーマで行われたコンプライアンス教育を紹介するとともに、これに関しての見解や関連する内容について紹介する。

劣悪な労働環境によって生活を脅かされていると感じる人は、この記事を読んでいただきたい。もしかしたら、企業に都合よく使われ、あなたの真面目さに漬け込まれ、「人権」を侵されているかもしれない。もしそうならば、すぐに解決に向けた行動を起こすことが必要だろう。


1.「強制労働」をテーマとしたコンプライアンス教育の実施

コンプライアンス教育はだいたいどの企業でも、年に一回、二回は行われているはずである。もっと多く回数わや重ねている企業もあるだろう。私の会社でも最近コンプライアンス研修が実施された。

内容は「ビジネスと人権」に関わるものだった。題材として以下「強制労働」に関する事例が挙げられた。事例に対する解説も続けて記載する。

○事例

ある製品メーカーA社が新発売した製品は、構成する部品の見直しにより大幅なコストダウンを達成することができ、業績向上に大きく貢献した。後日A社従業員は、コストダウンの要因を知ることとなった。それは、コストダウンの要因となった新部品の調達先である部品メーカーB社で、海外の工場で子供に「強制労働」をさせているという事だった。A社従業員は調達部品が安価だった理由が分かり、子どもたちに対して申し訳ないと思った。しかし、B社の問題なのでA社従業員としてはどうすることもできなかった。A社従業員は、特に上司には報告するなど特段行動を起こすことはなかった。

○解説

「児童労働」「強制労働」といった人権侵害を起こしているのは部品調達先B社である。そのため、A社で働く従業員には関係がないように思われる。ただし、ビジネスにおいてはB社が引き起こした人権問題であっても、取引関係にあるA社は「人権侵害を助長している」と判断され、社会(ステークホルダー)から痛烈なバッシングを受ける事になる。
実際にこういった事例が起きると、不買運動による業績悪化や企業の信用低下により株価低迷など、会社全体に多大な影響が起こる。そのため、人権を侵害する行為を通じて提供された商品などについては、改善を求める、改善がみられない場合は購入を差し控えるといったCSR調達を意識する必要がある。
また、今回は部品調達の事例を扱ったが、他にも業務委託先に対して無理に納期短縮をかけて長時間労働を引き起こすことも、人権侵害への助長と判断される。A社内だけではなく、事業活動に関係する全ての人への「人権尊重」を守らなければならない

2.「強制労働」をテーマとしたコンプライアンス教育に関する筆者の感想

このような題材によって「人権」を考え、「会社目線」ではなく「社会目線」を養うことは重要であり、企業の取り組みとしても素晴らしいものであると感じる。さらに言うと、あらゆる企業でこのような取り組みが当たり前になってほしい。

また、企業としてコンプライアンス研修や教育は行われているけれども、各現場、職場レベルまでは浸透しておらず、何かしらの問題が起きていることも珍しくない。年に数回の研修や教育のみならず、組織の末端まで浸透している状態を目指してほしい。

さて、この「強制労働」のテーマに関して、私の所感に加え補足説明をしておきたい。製品開発におけるコストダウンに関して、工程上の工夫や自動化によるものてあれば問題ない。

しかし、本例の場合は「一部の人や組織を犠牲にして成立させている」部分が問題である。これを容認している風土も問題である。このテーマの場合、海外の子供達が犠牲(不利益)になっている。B社としては何の工夫や努力もせず、何の価値も創出せず、ただ一部の人の犠牲や不利益によってコストダウンを実現しているだけである。これをもってB社は競合他社に対して不当に優位に立ったり、不当に過大な利益を得たりしており、人権侵害なく正当に事業活動をしている競合他社にとって迷惑極まりない社会悪である。
o08usyu7231.hatenablog.com

また、解説にあるようにB社のような人権侵害をしている企業を活用したり、取引することも、B社に利益を与えてしまうこととなる。A社としては「自分達さえ良ければいい」という「会社目線」ではなく、「全体としてどうか?」という「社会目線」で考えるべきである。

コストダウンという目の前の課題ばかりが着目され、最も重要な部分をおろそかにすれば、社会的な価値低下は回避できない。

3.「ブラック労働」も同じ!人権を尊重すべきだ!

コンプライアンス教育では、部品調達に関する「強制労働」をテーマに扱ってきた。私の業務であるソフトウェアエンジニア、それを取りまくIT業界、システム開発プロジェクトにおける「ブラック労働」にも同じことがいえる。前出の解説でも

「業務委託先に対して無理に納期短縮をかけて長時間労働を引き起こすことも、人権侵害への助長と判断される。」

と記載している。

実際、下請け企業へ内容とスケジュールの見合わない無理な要求を丸投げし、長時間、低賃金のブラック労働により短納期やコストダウンを実現している開発案件も同じである。多重下請け構造において、下位企業のブラック労働によりコストダウンを実現し、マージンのみ搾取し何の価値も創出しない中間業者は存在価値がないと言って良い。

  • システム開発、ソフトウェア開発の発注元は発注先の労働環境に配慮しているだろうか?
  • 同じく、発注元は発注先から納品される成果物が、納期までに、要求した品質を満たしているかどうかだけに着目していないだろうか?
  • 要求さえ満足していれば、その他はどうでも良いのだろうか? 
  • 発注先企業のブラック労働によって、プロジェクトが成功しているということはないだろうか?
  • 発注先企業のブラック労働の原因が、発注元企業の無理な要求や、発注元企業との力関係が背景になっていないだろうか?
  • 発注先企業は、売上、利益を最優先し、労働環境やコンプライアンスが二の次になっていないだろうか?

o08usyu7231.hatenablog.com

発注元企業はこのようなことを考えなければならないし、発注先企業も本来このような開発案件を受注してはならない。犠牲になるのは発注先企業の労働者だ。そして、体調不良者や退職者が出るなど、短納期、コストダウンと引き換えに大きな代償を支払うこととなる。
o08usyu7231.hatenablog.com

更に、このような企業が生き残ることは世の中にとって害悪であり、正当な事業活動をしている競合他社に対しても迷惑きわまりない。ブラック労働によって何とかしたプロジェクトは成功したとは言わないし、そのようなプロジェクトを成り立たせている、発注元企業、発注先企業いずれに対しても、我々労働者が力を貸してはいけない。

納期通りにプロジェクトが完成しないなら、納期延期か、スコープ削減か、予算・リソース増加か、そのような調整が行われるべきであり、発注元がそれを受け入れないなら受注見送り(依頼内容お断り)くらいが妥当だろう。発注先企業の労働者の健康面、生活面を犠牲にしたり、力関係を背景とした不利益があってはならない。

受注側企業によくある過ちは、

  • 「絶対に納期に間に合わせる」
  • 「納期はずらせない」
  • 「発注元に迷惑をかけるわけにはいかない」

などと、「納期」が絶対的なものと考え、受注側企業の労働者の犠牲の上に、(意図的ではなくても結果的に)労働者の生活を脅かしながら、プロジェクトを成り立たせている点である。また、この件に対して労働者が声を挙げることに対して批判したり、管理職が当該労働者の評価を下げるなど、考えられないことが起きているものだ。「コンプライアンスは重要だ!」なとど、掛け声や形だけのものでは通用しないことを知るべきだ。
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4.「強制労働」も「ブラック労働」も変わりはない!どちらも人権侵害と意識すべきだ!

ここまで、「ビジネスと人権」に関するコンプライアンス教育の内容をもとに、「強制労働」と「ブラック労働」について着目してきた。ここで一つ疑問がある。

「強制労働」と「ブラック労働」の違いは何だろうかという疑問である。これについて調べてみたが、明確な答えを私はもっていない。ざっくりしたイメージレベルでは次のような感じである。

Wikipediaによると、「強制労働」とは、自分の意思によるものでなく、他の者に強要されることによってする労働のことを指す。労働酷使のような意味で使われることが多い。しばしば奴隷的な拘束・待遇を伴う。日本国憲法第18条には

「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」

労働基準法第5条(強制労働の禁止)には

「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」

とある。

同様にWikipediaによると、「ブラック企業」または「ブラック会社」は、「違法行為、不法行為、脱法行為などにより従業員に無給の残業・朝残業などの不当な労働を強制したりパワハラなど人権を踏みにじる行為を日常的に行っている企業、もしくはそのような行為を行ってる社員を放置、黙認している企業のことを指す俗語である。」とある。このことから「ブラック労働」は上述のような労働スタイルを指すと考えられ、「ブラック企業」に限った話ではなく、一部の部門、一部のプロジェクトでも当てはまることがある。

世間一般のイメージでは、長時間労働、ハラスメント、低賃金、専門家によると違法状態の放置、また私の「ブラック労働」の定義は、こちらの記事を参照いただきたい。つまり、ブルーカラー・ホワイトカラーや正規・非正規雇用を問わず、末端の従業員に過重な心身の負担や長時間の労働など劣悪な労働環境での勤務を強いて改善しないこと、すなわち、入社をお勧めできず、早期の転職が推奨されるような体質のことを「ブラック」と総称される。

従来の日本型雇用においては、単身赴任、長時間労働サービス残業にみられる企業の強大な指揮命令が労働者に課される一方で、年功賃金や終身雇用が保障され、福利厚生が充実していた。しかし、近年では長期雇用保障や手厚い企業福祉がないにもかかわらず指揮命令の強さや上層部の強大な権力が残っている。この点を「ブラック」と世間一般からの強い批判を浴びることとなった経緯もある。

「強制労働」「ブラック労働」両者を比べてみると「強制労働」は国際的にも問題視されており歴史の教科書にも載るくらい正式な言葉であるのに対して、「ブラック労働」は人の価値観によって左右される主観が入った言葉であるイメージを受ける。だが、どちらも個人に不利益を与え、「人」を「人」と思わないような働き方を強要し、「人権」を侵害している点は共通である。

社内、社外、発注元、発注先、顧客、下請け企業、関わらず、どの企業も「人権」を意識すべきである。当然のことであるが、できていない企業があるから、実際に社会問題となっている。「人権」を意識できない企業に力を貸すことはやめて、全うな企業に優秀な人材がシフトしてほしいと思っている。
o08usyu7231.hatenablog.com
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