ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

顧客・取引先からの迷惑行為による被害と対策

顧客・取引先からの迷惑行為は被害が大きく対策が困難と認識されてきた。

顧客・取引先が相手であれば、ビジネス上の関係の方を重視してしまい、声を挙げるにも挙げられず、取引上の不利益を被るかもしれない。また、被害者の上司等第三者としても、根本的に問題を解決するより、被害者を黙らせる方が簡単という心理から、被害者の考え方を改めようとマインドコントロールすることがある。結局、泣き寝入りしかないのかと思ってしまう。

しかし、近年はコンプライアンス意識、人権意識の高まりから、流れは変わってきている。紹介する事例をインプットしていただき、ビジネス上の関係も重要であるが、人権を犠牲にしてまで確保するものではないということを理解していただきたい。加害者、被害者、第三者、そして企業等の組織にとっても必要なことである。

目次


1.迷惑行為による被害にも声を挙げにくいことが多い

顧客が原因で迷惑行為を受けるパターンとして業界一般でよくあるのが、悪質クレーマー対応だ。教員であればモンスターペアレントに悩まされる話題がニュースになったこともある。トラックドライバーなら荷主の力が強く、過酷な労働の割には低賃金であるという記事も見たことがある。私の現職であるソフトウェアエンジニアにおいても企業によっては顧客や取引先から理不尽な対応を取られたり、パワハラを受けることもある。問題だらけだ。
o08usyu7231.hatenablog.com

そしてこれらの結果、対応した従業員は長時間労働と過度なストレスに見舞われ心身を崩壊し、健康被害を受けることになる。社内のトラブルならまだしも、顧客や取引先によって迷惑行為を受けた場合に、正論を突き付ければ取引に影響が出るのではないかという不安を抱くだろう。

実際、顧客・取引先・親会社・発注元から理不尽な出来事による被害が起きても、力関係上の背景を理由に問題に直接向き合わず、加害者側に是正を求めず、被害者側の考え方を改めるようマインドコントロールするなど、解決から遠ざかるおかしな結果になることがよくある。

この結果、被害者が退職してしまった場合、誰が責任を取るのだろうか?

加害者は被害者の人権を侵し、被害者が所属する企業は安全配慮義務違反」(労働契約法第5条)となり、社会的信頼の低下、企業イメージ・ブランドの低下、法的リスクの保有、損害賠償請求のリスクなど、その甚大さははかり知れない。

最近は世間の目が段々と厳しくなり、流れが変わっているようだ。ここでは、顧客からの迷惑行為や取引先からのパワハラに屈することなく対応した優良事例を紹介する。

2.東京・神田の日高屋における優良事例

下記の記事をご存知だろうか?

grapee.jp
twicolle-plus.com
buzzmag.jp

中華料理チェーン店である「日高屋」で起きた、客からの迷惑行為に対する優良事例だ。この客からの迷惑行為に対して「日高屋」の従業員が精神的苦痛を訴え、店主が当該客を出入禁止とする貼り紙を店頭に出したという話である。これを一般の人がSNSにアップし、世間から多くの称賛の意見が寄せられている。

客だからという理由で「神様」扱いせず毅然とした対応を取っている点、「客と店員」という関係以前に「人間対人間」という視座の高さ、そして何よりも従業員思いである点が素晴らしい。私も同感だ。

被害を受けた従業員が精神的苦痛を受け、健康被害もしくはそこまでいかなくともパフォーマンスが低下したり、辞められてしまったりしては店としても困るばかりだ。

お客様は大切たが、神様扱いせず、迷惑行為を受けたならば本件のような対応が当たり前になって欲しい。

3.品質問題対応中に取引先企業から受けたパワハラにクレーム

システム開発を行っているX社と、X社の取引先であり、商品開発・製造・生産を行っているY社との間でパワハラが発生に対してクレームすることで自力解決した事例がある。

X社A氏の部門が原因でシステムの品質問題が発生し、A氏が原因究明やY社のB氏への説明など対応していた。A氏は懸命に対応を進めるもB氏はA氏に対して高圧的であり、B氏自身もY社内各部門とのやりとりで追い詰められた状態である。

品質問題の対応に関して、X社は品質を最優先した対応を行った。しかし、B氏はY社の生産工程の都合を重視した対応をしたい意向があったことが後に判明した。

B氏はA氏に原因の説明を求め、A氏がX社の見解を説明すると、全面否定した上で、

  • 「××違うやろ!〇〇やろ!」
  • 「しっかりせえよ」
  • 「おい!お前、ちゃんと理解しとんか!」

とA氏に罵倒した。

B氏の言動についてA氏はパワハラと感じた。B氏の対応を、やむなくA氏からA氏の上司であるC氏に代わり、その後はそのまま進行した。

X社とY社はロケーションが離れていたためここまでのA氏とB氏、C氏とB氏のやりとりは電話がメインであった。

A氏はB氏から受けた理不尽な言動により体調面に影響したが、早急な対応で大事には至らず、1日休養したのみで済んだ。その旨A氏からB氏に対してメール文面にて、クレーム及び是正要求を行った。

これ以降はメールのやりとりである。B氏とA氏はしばらくメール文面にて激しいやりとりが行われた。B氏はA氏に対して

  • 「品質問題の対応の中で体調不良になったならX社の中でやりくりすべき」
  • 「甘ったるいことを言うな」

と伝え、A氏はB氏に対して

  • 「品質問題と労働問題は全く別物」
  • 「B氏のパワハラを原因とする労働問題に対して誠意ある対応をすべき」

旨を伝えた。

B氏は自分自身の言動がパワハラである可能性に気付いたためか、最終的にB氏がA氏に謝罪した。被害者A氏が声を挙げたことで最小人数で自力解決に至った。

しかしA氏の上司であるC氏は、A氏に対して

  • 「Y社B氏の知りたいことを理解していたか?」
  • 「説明が悪かったのでは?」

と、被害者A氏に寄り添わず、加害者B氏に寄り添った対応を行った。

また、「体調不良の件を対外的に言うべきではない」とコメントしたり、この出来事によりA氏に対して不利益な人事評価とした。A氏はC氏の対応がセカンドハラスメントにあたると判断し、X社のパワハラ相談窓口に報告した。

私は、A氏の行動は社会的優良事例であると考えている。世の中で起きる多くのパワハラ問題は、被害者が二次被害を受けることを懸念し泣き寝入りするか、社外の相談窓口や労働局やメディアに告発されニュース報道されるかのどちらかであると感じている。これのどちらにも当てはまらず最小人数で自力解決したこと、C氏によるセカンドハラスメントについても組織で解決を試みるところが素晴らしい。「会社対会社」という関係以前に「人間対人間」としての在り方に着目した、視座の高さがわかる一例だ。

システムの品質問題を発生させてしまったこと自体はX社の問題であるが、その解決や対応についてはX社とY社は協力関係でなければいけない。A氏、B氏、C氏についても同様に互いが歩み寄り、協力して進めるべきだ。品質問題が背景にあるとはいえ、パワハラの発生はもってのほかだ。

一方、A氏の上司であるC氏の対応は、いかにも「顧客・発注元の方が立場が上」と考えているかのような対応だ。今なら明らかにパワハラ防止法違反だ。また、社会的優良事例にも関わらず会社にとって都合が悪いからという理由でA氏に不利益な人事評価としたことは、職権乱用にあたり違法性が高く、会社都合を理由にした「会社目線」でしかない。本来必要なのは「社会目線」である

結局、Y社B氏がX社A氏とのやりとりで、互いに協力関係にあることを意識し、パワハラにならないような問いかけやヒアリングをしていれば、このようなことにはならなかったし、C氏も同様の認識を持つべきであった。

4.コンプライアンスがますます厳しくなる時代へ

これら2つの例を見ても、顧客や取引先から迷惑行為やパワハラを受けたときの対応には、ビジネスへの影響を考えると非常に悩ましい限りであり、何が正解の対応なのかわからないと当初は考えていた。

やはり、(正しいか間違っているか、良いか悪いかに関わらず、)組織に従順でなければビジネスはやっていけないものなのかとも考えてしまうだろう。しかし、「日高屋」の例にもあるように、世間の目はますます厳しくなると感じている。

私が調べる限りでは、このような社外からパワハラ被害にあったという場合は、被害者は拒絶の意思表示をすべきであり、かつ組織としての対応が求められるということだ。

あるハラスメント対応専門機関のWebページでは、異なる会社間でハラスメントが発生した場合、

  1. 被害者が加害者に対して拒絶の意思表示をする
  2. 被害者側企業が加害者側企業へ改善を要求し、改善されない場合に以降の取引が困難になることを伝える
  3. ハラスメント対応専門機関が、加害者側企業へ被害者側企業の意向を伝える

という3点が記載されていた。取引先のコンプライアンス問題の見落としも重大なリスクになるとのことだ。

もう1つ、下記URLに示す「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」のイベント「労働政策フォーラム」「職場のパワーハラスメントを考える」の内容が参考になる。2020/01/10に開催されている。

後者の資料に、顧客・取引先からの著しい迷惑行為について記載されている。暴言などは言うまでもないが、無理な要求も迷惑行為である。発注元、発注先ともに認識しておかなければならない内容だ。また、日本は全体的にハラスメント対策が遅れているとのことだ。

コンプライアンスは確実にますます厳しくなっている。顧客・取引先によるハラスメントが起きても、被害者に寄り添わず、加害者を守り、是正要求も行わず、そのような企業との取引を重視するような人や企業は脱落するしかない。

被害者側も、コンプライアンスが重視されている企業か、そうでない企業か見極めが必要だ。