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パワハラ事例解説(14) - 杜撰なマネジメント・危機的状況軽視・メンバへの冷遇によりメンバのメンタルトラブルが悪化

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このシリーズの記事では、パワハラの定義と類型、私の身近に起きたグレーゾーンを含む事例について、定義と類型をもとに解説している。内容によっては考え方や改善策についても述べているので参考にしてほしい。

自分が加害者にならないように注意することをはじめ、被害に遭いそうな場合はいち早く予兆に気付くことが求められる。


【最初に】パワハラの定義と6つの類型

パワハラはご存知の通り「パワーハラスメント」の略であり、権力や地位を利用した嫌がらせという意味である。2001年に株式会社クオレ・シー・キューブによる造語である。ただ、その定義は曖昧で指導との区別が困難である現実を抱えていた。2020年6月にパワハラ防止法が適用され(中小企業は2022年4月より適用)、同時に厚生労働省による定義が明確になった。

パワハラの定義

パワハラパワーハラスメント)とは、職場において行われる

  • ①優越的な関係を背景とした言動であって、
  • ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • ③労働者の就業環境が害されるものであり、

①から③までの3つの要素を全て満たすものをいう。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

パワハラの6類型

パワハラは次の6つのパターンに分類され、6類型と呼ばれている。

  • (1)身体的な攻撃
  • (2)精神的な攻撃
  • (3)人間関係からの切り離し
  • (4)過大な要求
  • (5)過小な要求
  • (6)個の侵害

「(1)身体的な攻撃」は暴力の他、モノを叩くことによる威嚇がこれに該当する。「(2)精神的な攻撃」は暴言の他にも、他人を心理的に苦しめる発言が該当し、パワハラ事例の中でも最も多い。特定の人だけ仲間外れにしたり、情報を与えない、無視をするのは「(3)人間関係からの切り離し」に該当する。到底達成できないノルマを与える「(4)過大な要求」、能力に見合わない仕事を与える、もしくは仕事を与えないことで心理的に苦しめる「(5)過小な要求」、プライベートに踏み込みすぎる「(6)個の侵害」、これらを総称してパワハラと呼ばれる。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

このシリーズの記事で紹介するパワハラの事例

ニュースで取り上げられているものや、裁判になったものは組織内で解決できなかった手遅れ案件である。また、世間の目も段々厳しくなってきており、損害賠償の相場も数百万単位(被害者が死亡の場合は数千万単位)に上がってきているという情報もある。いくら正論であっても、相手が嫌がるやり方であれば、法律に触れることになる。

ただでさえニュースで見ることが多くなってきているのだが、これらは氷山の一角であり、水面下には程度の大小を問わずさらに多くの案件が潜んでいる。上述の定義や類型を基に、私が実際に見たことがある事例を紹介し、定義や類型を元に解説する。程度や被害の大小は様々である。

  • グレーゾーンであるもの、パワハラと断言できないもの
  • 「こんなのがパワハラになるのか?」というもの
  • 出来事が起きた当時はあまり意識しなかったものの今考えると「あのときのあの出来事はもしかするとパワハラにあたるのでは?自分も加害者にならないように気を付けよう。」と思ったもの

いずれにしても、加害者側に問題があり是正が必要であることは間違いなく言えるので、立場関係なく参考にしていただきたい。その上でパワハラの予兆を見極め、未然防止に繋げることが重要てある。

このシリーズの記事で紹介するパワハラの事例一覧については、こちらを参考にしていただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

【事例14】杜撰なマネジメント・危機的状況軽視・メンバへの冷遇によりメンバのメンタルトラブルが悪化

被害者A氏は加害者B部長からの指示により、過重労働の温床となっているシステム開発プロジェクトへ応援要員として投入されることとなった。投入されて数ヶ月、スキルもつかず面白味のない内容で、過労死基準に達する過重労働であった。リーダー、メンバーとも体調を壊す人が出てきた。

その後、人員リソースが大幅に削減された。加害者Bは当プロジェクトに関する追加業務を受注し、プロジェクトに不慣れな被害者Aをリーダーに指名し、A氏以外は数名の協力会社要員しかいない状況であった。A氏は、手が回らず、頭が回らず、心身疲弊により体調を崩すようになった。

A氏は、次第に夜も眠れなくなり、朝早く目が覚め、寝ても疲れが取れず、夏であったこともありいつも以上に汗をかき、食欲もなくなり、何事にも気力を失った。うつ病にみられる傾向である。被害者Aは加害者Bに体調不良を訴えた。

加害者Bは威圧的な罵倒などなかったものの

「これくらいのことで何故体調を壊すのか全く理解できない。」

といった態度で状況を軽視しており、しばらく何の対応も取らなかった。その後、A氏の体調悪化が進み、B氏はやむなくA氏の業務に別の正社員をアサインさせ、引き継ぎを指示した。A氏はしばらく休養した。

休養中もA氏は頭がまともに回らず、発熱が続いた。A氏は病院に出向いたが内科では解決せず、心療内科神経内科を探し周り、しばらく通院となった。A氏にとっては過去にない大ごとであり、初めてのことである。

A氏の状況をもう少し状況を補足する。A氏は真面目で、信頼があり、責任感が強く、丁寧な仕事ぶりで、慣れるまでに時間はかかるがコツコツと努力するタイプあり、特定顧客のシステム開発プロジェクトで長年優秀な実績を挙げていた。A氏にとっては過去の成功実績からすると落差が大きかった。この落差が大きかった点がA氏と他の社員との大きな違いである。後にA氏とB氏は面談し、状況や経緯の詳細を確認した。A氏は、この時B氏以外に社長、メンタルヘルスアドバイザーと面談をしている。

一方、B氏の状況をもう少し補足する。B氏はA氏が体調悪化で離脱した時点では、A氏の過去の実績、強み、特徴、心理状況、モチベーションに関して無関心であり、A氏をあまり優秀な人材とは見ていなかった。B氏は昔から長時間労働を乗り越えてきた人間であり、技術面では優れた実績を残してきているものの、A氏との価値観の違いをあまり意識せず、B氏の価値観で進めてきた面がある。部長であるという立場もあり現場の状況をよく確認しないまま、売上重視で業務を受注していた。上述の通り、後にA氏とB氏の面談によって、B氏はA氏に対する理解を徐々に深めていった。

これはパワハラと言えるかどうかはグレーゾーンだが、A氏は健康被害(メンタルトラブル)を受けており、B氏におけるマネジメントの未熟さであると言える。パワハラの定義に基づくと、①部長という優越的な立場を背景に、②A氏にとっては過負荷である業務をアサインしながらもその自覚がなく、A氏の体調が悪化するまで状況を軽視し、③結果A氏程の優秀な実績を挙げた人材に、健康被害を負わせ、台無しにしてしまった。パワハラ6類型では、(4)「過大な要求」が該当するほか、「大したことない」「体調を壊す理由が理解できない」などの心無い言葉は(2)「精神的な攻撃」にあたる。その他、安全配慮義務違反も考えられる。

上述したように、罵倒や威圧はなかったものの、

  • 状況軽視
  • 自身の価値観のみでの判断
  • 杜撰なマネジメント
  • A氏に対する冷遇
  • A氏がダウンしたときの体調面よりも業務の引き継ぎを重視する体質
  • A氏の苦労を理解できない想像力の無さ

このような点がB氏の問題だろう。

B氏においては、A氏の体調悪化が進んでからではなく、未然防止の観点が備わっていなかった点が問題である。このようなことが発生する前から、A氏の特徴を掴んでおき、A氏が最高のパフォーマンスを発揮できるようにすることがマネジメントである。B氏は技術では優れている。技術が優れているからといってマネジメントが優れているとは限らないことは、多くの記事で述べられている。

A氏はこの出来事の数年後に優良企業へ転職した。その更に数年後B氏は部長から執行役員へ昇進している。グレーゾーンとはいえ、健康被害(メンタルトラブル)を出し、退職者を出している人が昇進するような組織に優秀な人材が定着するだろうか?

A氏は転職して正解だ。

私は、管理職向けのメンタルヘルスセミナーを受講したことがある。このときの講師の方の説明によると「メンタルトラブルを起こした企業は信頼を無くす」ということである。まさに、本事例だ。

【最後に】パワハラにおける考え方・まとめ

パワハラは加害者および組織の問題、被害者に責任はない

パワハラは加害者が未熟であることによって発生する。パワハラに関して被害者には非はない。被害者に改めるべき部分があると思えば、改めることは素晴らしいことである。しかし、パワハラを受けたことに対する責任まで取る必要はない

一方、パワハラ加害者は重い軽いいずれにしてもそれなりの処分と教育を受け、更正してほしい。パワハラの加害者を絶対に昇格させてはいけない。降格するくらいを当たり前にしてほしい。

パワハラ加害者となる可能性が高いリーダー、管理職には、パワハラの重大さを知ったうえで、チーム・組織で成果を最大化するために必要なことを学んでほしい。私は様々なリーダー、管理職を見てきた。技術や能力が高いベテラン社員はある程度いる。しかし、いくら能力が高くてもパワハラ気質なベテラン社員は、管理職にふさわしくないと判断している。組織のメンバーのパフォーマンスの最大化の妨げとなっているからである。チーム・組織で成果を最大化するためにパワハラはいらない。一方、被害者はパワハラを受けた状況にもかかわらず業務において一定のアウトプットを出しているなら、優秀な人材であると考えて良さそうだ。

パワハラがいけないことであるということは皆知っている。しかし、何がパワハラに当たるか、パワハラが発生したときにどのような影響が出るかを理解していないのではないだろうか。パワハラに関する研修や教育は行われているが、最悪命に関わるということを教えていないのではないだろうか。

パワハラ対策の第一歩は証拠集め

パワハラは加害者および組織の問題としながらも、被害者が対策しなければならない。実に理不尽だ。放置や無策、我慢することはお勧めできない。エスカレートするからだ。その対策の第一歩としては証拠を集めることだ。電子メールやチャットのやりとりでパワハラに繋がりそうなものがあれば残しておく、会話についてはスマホでも良いがICレコーダーで録音しておくことをお勧めする。裁判等で確実な証拠となる。

防犯カメラはこれまでは文字通り、犯罪調査に使用されることがメインでした。最近では、これに加えて職場などにおけるパワハラの証拠収集等、ハラスメント対策においてより重要性が高まっております。小型であり持ち運びしやすいこともあり、いつハラスメントに巻き込まれるか予測できない状況において、自分の身を守るためにも、是非携帯しておくことをお勧めします。


自分を守るための準備も並行して進める必要がある

パワハラは加害者を直接コントロールすることは難しい。被害者の方々には、まず自分を守ることを優先していただきたい。できればパワハラが発生するような環境から離れ、他の環境に移ることができるようにしておくことが望ましい。本来、被害者側に要求しなければならないことは社会的に非常に残念ではあり、理不尽ではあるが、パワハラ被害に遭う前から、転職、起業、フリーランス、副業など準備を進めておくことが、被害者個人でできる対策である。あらゆる手段で自分の人生を守るよう、準備を進めておくことをお勧めする。それくらい日本のハラスメント対策は国際的に見ても遅れている。
o08usyu7231.hatenablog.com
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