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パワハラ事例解説(23) - 残業代の上限超過分の請求を禁止する違法行為の強要

このシリーズの記事では、パワハラの定義と類型、私の身近に起きたグレーゾーンを含む事例について、定義と類型をもとに解説している。内容によっては考え方や改善策についても述べているので参考にしてほしい。

自分が加害者にならないように注意することをはじめ、被害に遭いそうな場合はいち早く予兆に気付くことが求められる。

目次


【最初に】パワハラの定義と6つの類型

パワハラはご存知の通り「パワーハラスメント」の略であり、権力や地位を利用した嫌がらせという意味である。2001年に株式会社クオレ・シー・キューブによる造語である。ただ、その定義は曖昧で指導との区別が困難である現実を抱えていた。2020年6月にパワハラ防止法が適用され(中小企業は2022年4月より適用)、同時に厚生労働省による定義が明確になった。

パワハラの定義

パワハラパワーハラスメント)とは、職場において行われる

  • ①優越的な関係を背景とした言動であって、
  • ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • ③労働者の就業環境が害されるものであり、

①から③までの3つの要素を全て満たすものをいう。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。

詳しくはこちらを見てほしい。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

パワハラの6類型

パワハラは6類型といって、6つのパターンに分類されている。項目だけ紹介しておく。

  • (1)身体的な攻撃
  • (2)精神的な攻撃
  • (3)人間関係からの切り離し
  • (4)過大な要求
  • (5)過小な要求
  • (6)個の侵害

詳しくはこちらを見てほしい。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

このシリーズの記事で紹介するパワハラの事例

ニュースで取り上げられているものや、裁判になったものは組織内で解決できなかった手遅れ案件である。また、世間の目も段々厳しくなってきており、損害賠償の相場も数百万単位(被害者が死亡の場合は数千万単位)に上がってきているという情報もある。いくら正論であっても、相手が嫌がるやり方であれば、法律に触れることになる。

ただでさえニュースで見ることが多くなってきているのだが、これらは氷山の一角であり、水面下には程度の大小を問わずさらに多くの案件が潜んでいる。上述の定義や類型を基に、私が実際に見たことがある事例を紹介し、定義や類型を元に解説する。程度や被害の大小は様々である。

  • グレーゾーンであるもの、パワハラと断言できないもの
  • 「こんなのがパワハラになるのか?」というもの
  • 出来事が起きた当時はあまり意識しなかったものの今考えると「あのときのあの出来事はもしかするとパワハラにあたるのでは?自分も加害者にならないように気を付けよう。」と思ったもの

いずれにしても、加害者側に問題があり是正が必要であることは間違いなく言えるので、立場関係なく参考にしていただきたい。その上でパワハラの予兆を見極め、未然防止に繋げることが重要てある。

このシリーズの記事で紹介するパワハラの事例一覧については、こちらを参考にしていただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

【事例23】残業代の上限超過分の請求を禁止する違法行為の強要

残業時間が月45時間というのは、36協定上の時間であったり、この時間を超えると健康面でのリスクが増加傾向にあると言われることが多い。

私が若い頃、下請けIT企業において、月残業が50時間まで達した月があった。この企業では月に一回、勤怠実績を記入した月報を、各々の社員が組織の所属長に提出することとなっている。

私は、その月の勤怠実績として月50時間分の残業をそのまま月報に入力し、所属長に提出した。すると、所属長から、

「残業は月45時間まで。36協定で決まっている。」

と、月報の修正を求められた。

当時、私は「そんなものか」と思い、月残業を45時間までの計上とし、指示通りに月報を修正し、所属長に再提出した。45時間を超えた分は実質残業代が支払われない。泣き寝入りである。

しかし、既にご存知の通り、残業時間の過小計上は、削減した分の残業代未払いとなり、労働基準法違反である。

所属長としての立場、若手社員(当時の私)に対しての力関係を背景とし(①)、そもそも業務に必要相当な範囲を超えた言動どころか、労働基準法違反という違法行為の強要により(②)、45時間を超えた分の残業代未払いを放置し、若手社員に泣き寝入りをさせることで就労環境を悪化させている(③)ことから、パワハラの定義を満たしている。6類型での分類は困難だが、法令遵守の面で相手に不信感を与えつつ、所属長に従わなければならないという暗に示していることから(2)「精神的な攻撃」に分類されると考えられる。

45時間以上残業をしようが、45時間以上は計上させないという労働基準法違反と、36協定上馴染みのある数字とを絡ませて、分かりにくくしているところが、「ブラック」であるといえる。

また、所属長の言葉による表現と、実際意図しているところが紙一重である。

「残業は月45時間まで。36協定で決まっている。」

この言葉でもって、月残業50時間を記載した月報の修正を求めるということは、

「残業代の請求は月45時間分まで。それ以上は支払いできないし、支払いしてしまうと36協定で決まった時間を超えて残業したことが後からバレてしまうからヤバい。」

ということが言いたかったのだ。社会人経験の浅い若者を騙すためのブラックな手口である。

残業時間には従業員の健康面を考慮して法律や36協定により上限を設けているが、残業代に上限を設けているのは単なる「これ以上支払うと、企業内の財政が・・・」という会社都合である。

この事例では、「残業代の上限を超える分の請求を禁止」する違法の強要であるが、「残業代は出ないが、今日中に残業してでもやれ!」という類いと同じだ。立場や力関係を利用した違法行為の強要はパワハラである。

尚、この企業はある年からは改善され、月残業時間計上の上限は既に撤廃されている。しかし、まだまだ違法状態の企業は少なからずあるため、本例をインプットに少しでも未然防止ができれば幸いだ。

また、本件にかかわらず、企業の不正やネガティブな兆候を見抜くことができるよう、下記記事を参考にインプットしていただきたい。不正や違法行為を行う企業は淘汰され、正しく誠実な人たちが報われる社会になってほしいとと願っている。
o08usyu7231.hatenablog.com
o08usyu7231.hatenablog.com
o08usyu7231.hatenablog.com
o08usyu7231.hatenablog.com

【最後に】パワハラにおける考え方・まとめ

パワハラは加害者および組織の問題、被害者に責任はない

パワハラは加害者が未熟であることによって発生する。パワハラに関して被害者には非はない。被害者に改めるべき部分があると思えば、改めることは素晴らしいことである。しかし、パワハラを受けたことに対する責任まで取る必要はない

一方、パワハラ加害者は重い軽いいずれにしてもそれなりの処分と教育を受け、更正してほしい。パワハラの加害者を絶対に昇格させてはいけない。降格するくらいを当たり前にしてほしい。

パワハラ加害者となる可能性が高いリーダー、管理職には、パワハラの重大さを知ったうえで、チーム・組織で成果を最大化するために必要なことを学んでほしい。私は様々なリーダー、管理職を見てきた。技術や能力が高いベテラン社員はある程度いる。しかし、いくら能力が高くてもパワハラ気質なベテラン社員は、管理職にふさわしくないと判断している。組織のメンバーのパフォーマンスの最大化の妨げとなっているからである。チーム・組織で成果を最大化するためにパワハラはいらない。一方、被害者はパワハラを受けた状況にもかかわらず業務において一定のアウトプットを出しているなら、優秀な人材であると考えて良さそうだ。

パワハラがいけないことであるということは皆知っている。しかし、何がパワハラに当たるか、パワハラが発生したときにどのような影響が出るかを理解していないのではないだろうか。パワハラに関する研修や教育は行われているが、最悪命に関わるということを教えていないのではないだろうか。

パワハラ対策の第一歩は証拠集め

パワハラは加害者および組織の問題としながらも、被害者が対策しなければならない。実に理不尽だ。放置や無策、我慢することはお勧めできない。エスカレートするからだ。その対策の第一歩としては証拠を集めることだ。電子メールやチャットのやりとりでパワハラに繋がりそうなものがあれば残しておく、会話についてはスマホでも良いがICレコーダーで録音しておくことをお勧めする。裁判等で確実な証拠となる。

自分を守るための準備も並行して進める必要がある

こちらも本来被害者側に要求しなければならないことは社会的に非常に残念ではあり、理不尽ではあるが、パワハラ被害に遭う前から、転職、起業、フリーランス、副業など準備を進めておくことが、被害者個人でできる対策だろう。あらゆる手段で自分の人生を守るよう、準備を進めておくことをお勧めする。それくらい日本のハラスメント対策は国際的に見ても遅れている。






o08usyu7231.hatenablog.com

いざというときの退職も安心!

そして準備が整った後、いざパワハラ被害を理由に退職する際に、損害賠償など、企業の不祥事によって受けた不利益を取り返すアクションを起こしたいと考えている方は、弁護士が運営する退職代行を、なるべく安い費用で退職代行の活用を考えておられる方は労働組合が運営する退職代行の活用を視野に入れていただきたい。