ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

時代遅れの転勤が、転職理由の一つとなった

短期間であるが長期出張を強いられ(転勤も同じ)、家庭における大切な時期に家族に負担をかけてしまった。その割にはリターンもなくただ会社に都合良く使われただけではないかと感じて、転職の検討を開始し、実現したという話である。

転職が当たり前になり、価値観の多様化に伴い、もう転勤は時代遅れのものとなった。転勤を強要しようものなら転職されてしまう時代である。

目次

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1.会社の扱いは長期出張だが、家族から見れば転勤と同じ

私が下請けを中心としたIT企業に勤務していた時の話である。IT企業といえば、システムを自社開発しているところもあれば、自社開発といっても下請けが中心のところもあれば、SESというエンジニアを客先常駐させる形態等数種類ある。私が勤務していたIT企業は下請け自社開発と客先常駐がほぼ半々だ。社内に長年居る人も、客先常駐を長年やっている人も、社内と社外を行ったり来たりしている人も様々である。

もう今から何年も前の話だが、私はあるプロジェクトの終盤、上司から呼び出され次のような説明を受けた。

「来月からの業務だけど、お客様先での作業となる。3か月間の派遣契約で、場所は〇〇(遠方)。プロジェクトの状況によっては更に期間が延びる可能性がある。住まいは作業現場に比較的近い地域に会社の寮があるので、そこを用意する。単身で行ってもらう。」

予定しているプロジェクトにおいて作業現場近くの要員が十分に揃わず、その穴埋めのような感じだ。また、私に白羽の矢が当たったのは、私が担当しているプロジェクトが終盤を迎えたことによるプロジェクトの変わり目であること、次のプロジェクトが決まっておらず空き工数を作れないという会社側の事情だった。3か月の期間ではあるため、会社としての扱いは「長期出張」となる。月に1回は帰省が認められ、その分の交通費は支給されるが、実質は1か月間の出張を3回繰り返す形になる。

日本は昔から転勤が当たり前とされてきた中で、期間が短い点は救われたものの家族にとって大きな問題がある。1人目の子供がまだ小さく手がかかる上に、妻は2人目の子供を妊娠している。このような状況で、一家の主である私がいなくなることは、家族にとって大変な負担になる。転勤と同じようなものだ。妻からは大変嫌な顔をされた。当たり前である。会社はこれをわかっていながら、会社都合だけを考え、家族の運命など何の配慮もなく、人を人と思わず駒のように扱うのみである。

上司には遠方での作業について、「家族に相談する」とだけ回答し、後に「家庭の事情もあり本来断りたい内容だが、3か月という条件で了承を得た。期間が延びるのはNG。」と回答した。そして、準備を整え、荷物を最小限にして、遠方へ出向いた。

2.長期出張期間中の状況

家族との連絡は頻繁にとった。妻の親や私の親に協力してもらった。週末は2週間に1回くらいの割合で自宅に戻った。プロジェクト作業現場から新幹線を使えば、金曜日の業務終了後の夜に出発しても何とか深夜0時くらいに自宅に戻れるくらいだった。自宅に戻る休日もあれば、自宅に戻らず一人でのんびりする休日もあった。どちらも私にとっては貴重だった。前述の通り、月1回は出張旅費として交通費は会社支給だったが、それ以外は自己負担での帰省だった。単身での住まいも、家賃・光熱費は会社負担だが、やはり家族含めて二世帯だと生活費はかかってしまう。長年単身で家族と離れて働いている人は、これの数倍も大変なんだろうなと思う。

この長期出張先でのプロジェクトは、最初は順調そうに見えたが、2か月目、3か月目は月残業が70時間を超え過労死基準寸前のブラック労働である。このプロジェクトが進むにつれ、全容や実態が明らかになり、何とかスケジュールを守ろうという考えから、だんだんと諦めの気持ちが増していった。

私は、この当時の時点で既にブラック労働とホワイト労働の両方を経験済みであり、過去の実績から判断して、このプロジェクトにおける長時間のブラック労働の原因が、自分のスキル不足ではないことがわかっていた。そのため、自分を責めすぎることはなく、体力的には疲労があったがメンタルを壊すことはなかった。ただでさえ、家族と離れ離れになっている状態で、家族は大変な生活を強いられているのに、メンタルをはじめ私の体調に問題が発生すれば大変なことだ。

幸い私はこれまでの実績に対する自信や自己肯定感を持っていたし、絶対に無理だけはしないでおこうと決めていたため、最悪の事態は免れた。そして、3か月を乗り越え、当初の予定通り長期出張を終え、自宅へ戻った。私・家族とも頑張って乗りきったと思う。

3.長期出張後から転職に至るまで

長期出張を無事に終え、翌月に2人目の子供が産まれた。母子ともに元気でよかった。今回は乗り切ったが、このままでは将来また同じことが起きるかもしれない。

昔は「色々なところへ転勤して出世していくんだ。」と言われていたが、実際私の会社内を見ると、そのようなことはない。冒頭に、「社内に長年居る人も、客先常駐を長年やっている人も、社内と社外を行ったり来たりしている人も様々である。」と書いた中でも、私の部門では「社内に長年居る人」が圧倒的に昇進しやすい。部長職以上は全国転勤があるが、それ以外は前述の通りだ。

要は「自分は会社に都合良く使われている」のではないかと感じていた。家庭の状況が大変な中、3ヶ月の長期出張という、自分・家族に対して多大な負担をかけておきながら、見返りもなく、感謝もなく、数年間昇進もなく、ただ都合良く使っているだけ。もし自分がその程度の人材ではないことがすでに分かっているため許容できなかった。これは後に、このIT企業の退職理由の一つになる。

長期出張を終えてから進めていったことは、「転職準備」である。上記の退職理由の一つとは別に、勤務地を選択せざるを得ない「家庭の事情」がある。これが後に退職理由のメインとなる。建前であるかのように聞こえるが、本当である。人生にはいくつかのライフステージがあり、ライフステージが変われば、状況や働き方は変わるもの。その意味でも、転職を避けて通れなくなった。私は元々「転職はリスクが高い」「できれば転職せずにこのままやっていきたいなぁ」と考えていたが、この時は既に「転職しないことがリスク」であることに気付いていた。

自分の強み・弱み・実績等は、これ以前から分析していたし、IT資格取得にも、スキルアップにも励んできたのだが、肝心の転職についての情報収集をしなければならない。この時以前から上位企業への転職も視野に入れており、徐々に本格的に取り組み始めた。転職サイトに登録し、業務経歴書を作成し、キャリア面談も実施。長期出張先のプロジェクトはブラックだったが、長期出張を終えた次のプロジェクトはホワイトだったため、今がチャンスと将来のキャリアに向き合うようになった。そして、長期出張終了から一年程度後に、大手メーカーに転職先が決まり、これまでと同じくソフトウェアエンジニアとして業務に携わることになった。勤務場所も自宅から近く、生活面とのバランスが取りやすい。

そして、上司に退職の意向を伝える時がやってきた。一言で言えば「家庭の事情」。具体的な内容も話した。会社がどんなにあがいても、引き留めることのできない理由だ。同時に「今後は、前年度のような長期出張を含む転勤には対応できない。」旨を伝えた。上司は「会社としては残念である」との意向を示したものの、引き留めることなく退職の申し出を受け取った。会社は「退職もやむなし」と判断し円満退職に至った。

退職したIT企業には退職理由を「家庭の事情」とし、「退職もやむなし」というニュアンスを醸し出したが、かといって会社に問題がなかったかというと全く違う。プロジェクトによってはスキルが身に付き、成長でき、多くの人達にサポートいただいた等、良いことがあった反面、長時間のブラック労働、優秀な人材がメンタルを崩壊し通院、時にグレーゾーンを含むパワハラ被害、生活面とのバランス崩壊、高い成果を求められる割には給与が安いという劣悪な労働環境、多重下請け構造の問題、容赦ない転勤、昇進していく人間に偏りあり、未熟なマネジメントと、問題だらけだ。
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4.今の時代に「転勤」はおかしいと言わざるを得ない

「強制転勤」が退職理由になることがある。私がいたIT企業の転職口コミサイトでも、

  • 「容赦なく転勤させられる」
  • 「勤務地の希望が通りにくい」

といった生々しい意見がある。

客先常駐を行っていることもあり、プロジェクトごとに作業場所が変わり、顧客企業の都合を優先しているためそちらに振り回され、人員の融通も利きづらい背景があるから、このような結果になってしまうのだろう。

一方、私は大手メーカーに転職したのだが、「大手メーカーこそ、全国転勤が当たり前のようにあるのではないか。」と言う人もいる。もちろんそのような企業もあるだろう。中には、職種ごとに異なるケースもある。例えば、営業職は全国転勤があるが、研究開発職は特定の拠点での勤務になるといった感じである。転勤の可能性がゼロではないものの、前述のIT企業に比べれば格段に可能性が低くなるといったことも考えられる。大手メーカーはIT企業と異なり、SESのようなことは行っていないため、都合よく会社や顧客に振り回されるといったことも少なくなると考えて良さそうだ。リスクを完全にゼロにすることはできない。しかし、転職前のIT企業に残るのは最もリスクが高そうだ。

世間一般では、もう今の時代に「転勤」はおかしいという風潮になっている。SNSが発達し、個人の意見や思いが世の中に発信される時代になった。転勤に対して悲鳴を上げる従業員やその家族がいる。強制転勤は人権侵害だという声も高まってきている。転勤制度を廃止している企業もある。転勤制度を緩和している企業もある。今の若者は、強制転勤がある企業を敬遠する傾向がある。企業側も時代の流れを掴まないと、優秀な人材の獲得競争に負けてしまうどころか、既存の優秀な人材が流出してしまう。
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私もIT企業にいた頃、「転勤」(厳密には長期出張)を受け入れたが、タイミングが悪かった。会社側は、私の生活面のこと、家族のことなど何も考えていないようだった。私は会社に都合よく使われ、見返りもなく、今後も同様のことが予想される不安定さを感じた。私だけでなく、周囲の従業員が転勤や長期出張となる場面も目の当たりにしてきた。生活面とのバランスを確保したい私にとって、これが退職理由の一つになった。逆の言い方をすれば、IT企業から私が流出した。そのことは企業からすれば痛手なのかどうかわからないが、もし代わりがいくらでもいるなら、私はそのような企業にいてあげる必要は一切ない。人を人と思わず、都合よく駒のように使い潰す企業に未来はない。転職してからは、転職前より収入は微増だが、労働環境は良くなり、生活面とのバランスも取りやすくなった。転職は成功した。でも、安心はできない。次なるリスクに備えておく必要がある。





企業側にとっても考えなければならないことがある。転勤は様々な現場を経験し、社内の様々な人とネットワークを構築し、人材育成の一環として行われてきた。しかし、今は違う。転勤以外の方法での人材育成や成果の最大化が求められる。組織のリーダー、管理職、経営陣には、チーム・組織で成果を最大化するために必要なことを学んでほしい。転勤制度を廃止してもできるはずだ。


そして転勤がますます時代遅れとなる要因として「テレワークの普及」が挙げられる。広義に言えば、働き方の選択肢が増えたということだ。これに対応できない企業は、業種にもよるが、この先、生き残ることが難しいと考えた方が良さそうだ。
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