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「ハラスメント」は「人間関係」の問題ではない!「コンプライアンス」の問題である!

「ハラスメント」は「人間関係」の問題ではない!「コンプライアンス」の問題である!

まさに、タイトルの通りである。しかし、現実には「ハラスメント」に悩まさせると、あたかも「人間関係」がうまくいってないかのような気分になる。この記事では、そうでないことをお伝えしたい。

目次

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1.「人間関係」とは

「人間関係」とは、Wikipediaによると「人間と人間の関係のこと。社会(世間)や集団や組織の場あるいは個人的な場における、感情的な面も含めた、人と人の関係のこと。文脈によっては対人関係とも言う。」と説明されている。よく、職場でも使われているが、曖昧な言葉ではないかと思う。

「人間関係」は退職理由のなかでも上位に入り込んでいる。能力が高く優秀な人材でも「人間関係」に悩まさせると、退職するケースもあれば、心身不調を訴えるケースもある。職場におけるパフォーマンスを下げる、最大の要因かもしれない。

「人間関係」という言葉は、漠然と使われることがある。良い関係でも、悪い関係でもそうであるが、悪い関係で使われるときは、なんとなくうまくいっていない状況であることはわかるのだが、どちらが加害者でどちらが被害者なのかというはっきりしたことが、いまいち分かりにくい。『「人間関係」の問題』と言われても意味が広く、詳細があまりはっきりしないため、何を是正すれば良いのかわからないことがある。価値観・考え方・経験の違いから発生することもあるだろう。本来は、歩み寄ってお互いが理解していくはずだ。

しかし、これを悪用してなのか『「ハラスメント」の問題』を『「人間関係」の問題』と捉えて、本来加害者・被害者がはっきりしているはずの「ハラスメント」に対して、事実関係をわざと曖昧にしているように感じられることがある。ここが残念に感じられる。

2.「ハラスメント」被害を「人間関係」の問題とする過ち

「ハラスメント」を「人間関係」の問題として扱った過ちがある。事例を見てみよう。

他社の管理職(パワハラ加害者)からパワハラを受けた被害者が苦痛により、体調を壊した。この件に関し、後日被害者からパワハラ加害者に対してクレームした。その結果、しばらく当人同士でトラブルになったものの、被害者が屈することなく労働問題に対する正論を発信し、パワハラ加害者が最終的に謝罪した。これは組織内どころか、企業間の垣根を超えた社会的優良事例である。
しかし、後に被害者の上司(被害者側組織の管理職)は被害者に対して、

  • 「他社の管理職(パワハラ加害者)の意図を理解していたか?」
  • 「被害者の体調不良は他社には関係なく、当社内部で解決すべき。」
  • 「会社対会社の関係を考えているか?」

などと被害者を責めた挙げ句の果てに、被害者の人事評価を低評価とした。
被害者の上司の行為は、明らかにパワハラ被害者を黙らせることを目的としていることが見えており、セカンドハラスメントにあたる。

被害者の上司による、被害者への人事評価を低評価とした内容をもう少し詳しく見てみる。「人間関係」「対人影響」の項目が低く評価されており、「他社の人間に対して自己中心的な発言がある」とのコメントがある。被害者がパワハラを受けた背景を知らない人からすれば、被害者に問題があるように見えてしまい、第三者を誤認させてしまう表現である。

しかし、他社の管理職からパワハラを受けたときの証拠、上司がこれについての見解を述べているときの証拠を、被害者が保有しており、人事評価のコメントと上司の見解の内容が合致したことにより、パワハラ被害に対する正当防衛を「自己中心的な発言」とされていることは確かだ。被害者を傷つけてしまう不適切な表現である。

加害者・被害者が明確な「ハラスメント」に対して「人間関係」という曖昧な言葉を使い、わざと内情を見えにくくすることで、「ハラスメントが起きた」というインパクトを弱めている。管理職の責任逃れと隠蔽の常套手段である。

被害者はしかるべき行動を取ったが、それでも被害者の上司からのセカンドハラスメントに対する謝罪は全く無い。「加害者は自分が加害者であることの自覚がない」と、ハラスメント関連の様々なサイトに記載されているが、これはまさにその通りだ。

この事例からもわかるように「ハラスメント」は被害者の「人間関係」の問題ではない。加害者の「コンプライアンス」の問題である。被害者がいくら意識を変えたところで、加害者が変わらなければ意味がないのである。

コンプライアンスは重要だ!」と普段から言っていても、こういうことがある以上、「加害者のコンプライアンス意識が足りない」と言われてしまう。低評価と是正指導をすべき対象は、管理職の「コンプライアンスである。
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3.「ハラスメント」被害が原因で退職したことを「印象が悪い」とすることの違和感

転職関連の話題としてよく語られるが、退職理由で職場の「人間関係」は常に上位にある。パワハラに遭ったら被害者が辞めたくなるのが当然である。

「ハラスメント」被害が原因で退職するならば、退職理由を「人間関係」に分類するのではなく、『社内における「コンプライアンス」に問題があり看過できない』とすれば良いのではないかと思う。世間では、ハラスメントの他、数々の不正、偽装等の不祥事が後を絶たず、これまで以上に「コンプライアンス」への注目が高まりつつある。「人間関係」と言ってしまうと、退職者にも何かトラブルに巻き込まれる要因があるという印象を持たれ、マイナスイメージになりかねないのだが、純粋に被害のみ受けた退職者にとっては迷惑な話である。

転職する際に、自分の持っているスキルや経験、実績をアピールし、転職先の企業でどのように活かして貢献していきたいのかという、ポジティブなアピールポイントを言えるようにしておくことは、全くその通りである。

一方、転職の際に退職理由として『「ハラスメント」を受けた』ことを挙げるのは控えた方が良いというアドバイスを見たことがある。ネガティブな理由であることはわからなくもないが、違和感がある。何故ならこの場合、退職者は被害者であり、退職者自身に問題がなくともネガティブな目で見られることになるためである。

転職先企業の面接官側から見た場合、仮に転職応募者が「人間関係」を理由に転職前の企業を退職しようとすれば、

「転職後当社でも同じ理由で長続きせず退職されてしまうリスク」

を抱えるとよく言われる。応募者自身に問題がある場合は、その通りである。

しかし、「ハラスメント」を理由に退職しようとしている応募者の場合、「ハラスメント」が無い同業他社なら十分活躍できる余地がある。つまり、応募者が退職しようとしている企業及び「ハラスメント」加害者の「コンプライアンス」の問題である。ここで先程と同じような感覚で

「転職後当社でも同じ理由で長続きせず退職されてしまうリスク」

などと言い出すと、転職先企業でも同じような「ハラスメント」が起こりうるほど「コンプライアンス」が欠落しており、退職しようとしている企業と転職先企業が同レベルなのかと捉えられるリスクがある。

また、「ハラスメント」を理由に退職しようとしている応募者に対して、転職先企業の面接官が「あなた自身にも問題があったのではないか?」と問い詰めたり、「ハラスメント」被害者であることを理由に転職先企業が応募者を落とすということをすると、「セカンドハラスメント」として転職先企業の「コンプライアンス」が疑われることとなる。
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かといって、転職先企業の面接官が応募者が受けた「ハラスメント」が事実かどうかわからない。

採用面接官をはじめとする企業側は、「ハラスメント」被害で退職しようとしている応募者を、「人間関係」に問題があるとするのは、短絡的であると認識すべきである。

このような場合どうするか?

採用面接官は、応募者が「ハラスメント」被害を受けてどのような行動を取ったかをヒアリングし、行動パターンを読み取るのが筋だろう。(業務における実績やプロセス、エピソードをヒアリングするのと同じようにである。)

例えば、

  • 上司に相談した
  • 周囲に相談した
  • 社内のハラスメント相談窓口を利用した
  • 加害者に直接抗議した
  • 社外の専門家に相談した
  • 地域の総合労働相談コーナーに連絡した

のような感じで、解決・改善に向けて何らかの行動を起こしていたなら、被害者の行動として素晴らしいことである。ただでさえ、被害者は「転職準備」という解決に向けた行動を起こしている時点で素晴らしい。被害者にも改善する点があるなら、改善すれば良い。改善に向けた努力や行動を評価すれば良いと思う。「ハラスメント」に耐えたり、放置したりするのが、最もいけないのである。

逆に上記のような被害者(応募者)の行動に対して、

  • 「ウチで採用すると面倒くさいことになりそうだ」
  • 「応募者自身の問題では」
  • 「もしかしたらモンスター社員では」

と疑うような企業は、そもそも何かしらの労務問題を抱えていたり、労働環境が悪い企業であることが多い。

ハラスメント被害者からの訴えを含めて、ハラスメント被害者が改善に向けた行動を起こすのを嫌がる企業は、ハラスメントが蔓延している企業と疑って良い。そのような企業ほど、「〇〇(被害者)は、人間関係の点でちょっと・・・」的なマインドを持つものである。

まず自社内の「コンプライアンス」を確固たるものにし、被害者から訴えられる隙間を作らないことを心掛けたほうが良いのではないだろうか。「コンプライアンス」意識が高い応募者が来ただけでビビッてしまうような企業は、世間の変化にもついていけず今後市場から取り残されていく一方である。

「ハラスメント」被害者に限らず、転職を考えている人は、転職先企業の「コンプライアンス」はしっかりと見ておいたほうが良い。

話は逸れるが、転職サイト等ではポジティブなアピールを行い、ネガティブなアピールは避けた方が良いというアドバイスがある。しかし、うわべだけの面接やコミュニケーションの末、入社後に「想定と違っていた」となると、企業、応募者双方にとって不幸である。採用面接官としても本音、真実を知りたいという声もあるし、応募者・採用面接官ともお互いの本音、真実を知ったうえで、中・長期的にマッチするかどうかを見極めたいものだ。



4.「ハラスメント」は加害者側の「コンプライアンス」の問題

まず「ハラスメント」と聞いて、直接の原因はまさにこれである。被害者側の「人間関係」と丸められてしまいそうだが明らかに違う。それから、「ハラスメント」が起きてしまう企業体質の問題、「ハラスメント」を容認してしまう企業風土の問題がある。いずれも「コンプライアンス」の問題である。

よく企業のホームページ等で、「ハラスメント」対策へ向けた取り組みについて記載されている。このようなページはだいたい「コンプライアンス」のページの内部にあることが多い。また、「ハラスメント」教育が「コンプライアンス」教育の中に組み込まれている企業が多い。「ハラスメント」対策への取り組みが、「コンプライアンス」活動の一環として捉えられている証拠である。

これまでの例にも示してきたように、「ハラスメント」と「人間関係」を区別なく扱う企業、管理職が見受けられたなら「コンプライアンス」の観点で疑ってみるのが良いかもしれない。

また、企業側は「ハラスメント」被害者を「人間関係」に難ありとせず、何よりも「コンプライアンス」を最優先し、「ハラスメント」が無い風土を醸成し、「ハラスメント」被害者が存分に活躍できる土壌を作り上げることが急務である。そのためにも、色々な考え方や、色々な人の知見を吸収し、常にアップデートしていく姿勢が必要である。


最後にひとこと。
コンプライアンス」とは、
× 「法令遵守」(「法律さえ守っていれば、あとは何でも良い」)
〇 「法令遵守」のみならず「時代とともに変化する社会的要請を正確に把握し、それに応じた行動を取ること」