転職する際には、転職先の企業がどのような企業か見極める必要がある。一般的に企業のホームページや求人サイトからブラック企業を見抜くのは困難であると言われているが、面接で見抜くことはある程度可能である。
今回は「面接官インタビュー」の内容から見抜くことができる例を紹介したいと思う。
企業と求職者が不幸なミスマッチを防ぐためにも、ぜひ本記事の内容をインプットして活用いただけることを願っている。
1. 「転職体験記」と「面接官インタビュー」の一部引用
ある転職サイトに下記のような「転職体験記」および「面接官インタビュー」が掲載されていた。
ソフトウェア開発の技術者を中途採用したときの事例で、面接の内容(一部)と面接官が見るポイントを示している。
「面接官」と「応募者」がしばらく技術的な内容のやりとりをした後、・・・
【1】
「面接官」:
ところで、残業時間はどのくらいでしたか?
【2】
「応募者」:
多いときは月に150時間くらい。少ない時期だと50~60時間でした。
【3】
「面接官」:
ストレスがたまると思うのですが、解消法はありますか?
【4】
「応募者」:
休日のスポーツが私のストレス解消法です。テニス、スキー、それに山登りが好きです。週に1度は何かのスポーツをしています。
【5】
「面接官」:
残業が多いと仕事に嫌気が差すこともありますか?
【6】
「応募者」:
さすがに体は参りますが、休日にリフレッシュして、次の週の活力を作り出すようにしてきました。
【7】
「面接官インタビュー」:
この質問(【1】)はほとんどすべての応募者にします。というのは、当社でもピーク時には残業が多くなるからです。応募者の中には、残業の少ない会社を希望する人もいますが、残念ながら当社に適していないと思います。
最終的にこの「応募者」は、この面接を受けた企業から内定を得て、入社に至っているようだ。
このやりとり、あらゆる点に疑問と違和感を感じる。
皆さんはどのように感じただろうか?
また、このような企業に応募したいだろうか?
2. 各「質問」「回答」箇所に対する解説
各箇所を細かく見ていこう。
【1】
「面接官」:
ところで、残業時間はどのくらいでしたか?
【解説】
前職の残業時間を聞く目的が不明である。
「多い」方が良いのか、「少ない」方が良いのか、絶対的な正解はない。「この企業にとって、どちらが都合が良いか」である。
都合良く従業員を長時間使いたいなら、「残業時間が多く、それでも耐えてきた」とアピールする方が、この面接官には印象が良いのだろう。応募者の「能力」ではなく「忍耐」を見るための質問になっているのではないかと感じる。
長時間労働か常態化している可能性を疑った方が良いだろう。
働き方改革が進んで残業が少ない企業なら、わざわざこのようなことを聞く必要はない。せいぜい雑談程度である。
【2】
「応募者」:
多いときは月に150時間くらい。少ない時期だと50~60時間でした。
【解説】
この応募者は、体力自慢をアピールすることでこの面接官に好印象を持ってもらいたい意図か、実際の結果を答えただけなのかわからないが、これが本当なら応募者の転職前の企業の労務管理はかなり問題がある。
月残業45時間を超えると次第に健康面へのリスクが増加してくる。36協定違反のリスクもある。月80時間は過労死基準と言われている。月150時間は過労死基準を大幅に超えている。
健康面のリスクが増加してくる月残業45時間を超えていても「少ない時期」と言っているのは、体力自慢か、感覚が麻痺している可能性がある。
o08usyu7231.hatenablog.com
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【3】
「面接官」:
ストレスがたまると思うのですが、解消法はありますか?
【解説】
「ストレス耐性」を見ようとしている印象に受けとれるが、「ストレス耐性」と称する「ブラック耐性」である可能性が高い。「長時間労働で都合良く酷使しても、その回復方法が備わっていれば、また改めて長時間労働で都合良く酷使できる」ことを確認したい意図であることを見抜く必要がある。
そもそも「ストレスの解消法」云々の話ではなく、ストレスを溜めざるを得ない、劣悪な労働環境であることが問題である。ストレスの元を断つ改善に取り組むこともせず、それによるしわ寄せを労働者に擦り付け、労働者の我慢によって成り立つ事業構造であることが容易に想像できる。
【4】
「応募者」:
休日のスポーツが私のストレス解消法です。テニス、スキー、それに山登りが好きです。週に1度は何かのスポーツをしています。
【解説】
そもそも前述の月残業時間だと、多いときは休日出勤もあり得るため、休日にスポーツをする時間的余裕も、体力的余裕も無いのではないかと考えられる。
この労働環境で週に一度のスポーツとか、山登りとか、かなり体力に自信がある人なのだろうと考えてしまう。
【5】
「面接官」:
残業が多いと仕事に嫌気が差すこともありますか?
【解説】
この質問は、長時間の残業に嫌気が差さない人材を求めているということなのだろうか?
「嫌気を差す」のは当然であり、その耐性を見ようとしているのか?
「嫌気が差す」と答えると、面接官にとってマイナスイメージなのか?
本来、嫌気が差す程の長時間労働にならないように管理するのが、管理職の仕事であり、長時間労働でなくとも高い価値を生み出すビジネスを創出するのが経営者の仕事である。
それを怠っても耐えてくれる、都合の良い人材を募集しているものと見抜く必要がある。
【6】
「応募者」:
さすがに体は参りますが、休日にリフレッシュして、次の週の活力を作り出すようにしてきました。
【解説】
長時間労働で心身共に疲弊し、健康被害に至ることが一般的だが、この応募者は体に限界があることについては正直に答えるものの、精神(心)については休日にリフレッシュして翌週の長時間労働に耐えるというアピールをしているようだ。
ただ、矛盾するのが月残業100時間を超えるくらいの長時間労働なら、休日出勤もあると考えられるため、そもそも休日にリフレッシュして翌週の活力を作り出すことなどできないのではないかという点である。
【7】
「面接官インタビュー」:
この質問(【1】)はほとんどすべての応募者にします。というのは、当社でもピーク時には残業が多くなるからです。応募者の中には、残業の少ない会社を希望する人もいますが、残念ながら当社に適していないと思います。
【解説】
私の見解は以下のとおりである。
×「応募者の中には、残業の少ない会社を希望する人もいますが、残念ながら当社に適していないと思います。」
○「求人企業の中には、残業の多さに耐えることが可能な応募者を求める企業もいますが、残念ながら今の時代に適していないと思います。」
面接官へのインタビューでは、「残業時間についての質問は、ほとんどすべての応募者にする」と明言している。更に、「残業の少ない会社を希望する人は、当社には適していない」と明言している。
これは
- 「当社は残業が多いため、これに耐えることのできる人材を募集している」
- 「当社は長時間労働に目くじらを立てない、素直で従順な人材を募集している」
- 「当社は労務管理が杜撰であるため、これを体力、気合い、根性でカバーできる人材を求めている」
- 「当社は労働環境を改善するつもりがない」
と言っているようなものだ。
また、「ピーク時に残業が多くなる」と語っているが、これには裏がある。普段は残業が少ないならば「残業の少ない会社を希望する人が当社に適していない」とも言い切れず、長時間の残業に対応できない人でも普段の業務には支障が出ないはずである。問題はピークをどう乗り越えるかであり、いかにピークを平準化する取り組みが課題化され、改善が進められるはずである。
しかし、その後に「残業の少ない会社を希望する人は、当社には適していない」と言い切っていることから、拡大解釈するとピーク時どころか長時間労働が常態化していると捉えることが出来そうだ。すなわち
「当社は長時間労働を前提としたブラック体質です」
という実態を矮小化した表現である可能性が高い。
3. 総評・まとめ
まだまだ気になることはある。
長時間労働前提ということは、育児や介護を抱える社員や応募者はどうなるのだろうか?
そのような応募者は応募するなと言いたいのだろうか?
私生活を大切にする最近の若手等、多様化した価値観に対応できていない企業という印象を与えてしまっている。
今時ピークを超えるだけの長時間労働に耐えられる人材を求めるのは、「昭和」の感覚から抜けきれていないのだろうか?
そもそも劣悪な労働環境に優秀な人材が集まるわけがなく、それでリソースが不足し、既存社員がますます長時間労働に巻き込まれる悪循環となる。
育児や介護を抱える人や家庭を持った人のみならず、独身者であっても長時間労働は弊害しかなく、婚活や自己研鑽に時間を投入できないし、このような企業が増えることで少子化が加速する結果となるため、社会的にも害悪である。
本来この面接官がインタビューでは、次のような誠実なコメントが出てきてほしいものだ。
「システム開発であるため、現実として忙しさの波はあります。現在、正直なところ長時間労働の問題も抱えています。できるだけこの波を平準化し、長時間労働を無くし、労働環境を良くするよう業務プロセスを徹底的に見直し、無駄を省き、改善を継続して試みていきます。良い労働環境を提供し、優秀な人材に来ていただき、疲弊することなく最大限のパフォーマンスを発揮していただきたいと考えています。」
これからは、育児・介護等時間的制約を持った人たちが増え、いかに短時間でアウトプットを出すか、そのような仕組みを作るかであり、これが出来ている企業では、制約を持った社員が活躍しているのである。
社員個人に負荷をかけ、労務管理の杜撰さを社員個人の体力、気合い、根性でカバーすることを求める企業に優秀な人材が集まるとは思えず、未来は無いと考えたほうがよさそうだ。
次に示す転職サイトは、本記事の引用元ではないが、最終的には転職希望者自身で見抜くしかない。優良企業に転職して、良い人生を送ってほしい。
30代後半〜40代前半は、キャリアチェンジも容易ではなく、かつ家庭がある方が多く、自由度が低い、リスクが取りにくい、といったキャリアを築く上では、あまりに大きな課題を抱えています。RYOMEIのトレーナーも同じ世代であり、自身も子育てと仕事の両立に試行錯誤していたり、順風満帆にキャリアを築いているわけではないからこそ、受講者の痛みに共感しながら、一緒に考えていくことができます。
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