ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

IT業界の使命を労働問題の観点から考えてみる

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ひと昔前は「IT業界」といえば花形産業であるとイメージしている方も多かったのではないだろうか?

ITの普及で様々なことが便利になり、生活が豊かになり、問題解決・課題解決がより円滑になるという面は確かにあり、ITを通して社会の要請に応えていくことは明らかに「使命」といって良い。

しかし、長時間労働をはじめとする様々な問題も抱えている。こうした業界内に顕著にみられる「働き方」に関する問題を解決していくことも、また「使命」であると考えている。


1.IT業界の使命として語られるあるあるの内容

IT業界は産業の発展に大きく寄与していることは間違いない。IT業界の使命といえば、

  • 「IT(情報技術)を使って世の中の問題を解決する」
  • 「IT(情報技術)を使って顧客の課題解決に貢献する」
  • 「IT(情報技術)を使った高品質なシステム・サービスを早く、安く提供する」

といったニュアンスの内容を、多くのIT企業が発信している。また、IT業界の使命として部分的に見れば妥当であるとも感じるだろう。

ここで気になることが2点ある。

一つは「高品質を安く・早く」という点、もう一つはこれらの使命を果たすにあたり阻害要因となっている「IT業界の問題を解決する」観点があるべきではないかという点である。

2.「高品質を安く・早く」はサービスを受ける側に都合が良すぎるだけ

一つ目の「高品質を安く・早く」という点は、サービスを受ける側にとっては都合が良いものの、提供する労働者側にとっては自身の犠牲によって実現するブラック労働問題に繋がる可能性がある。

ITによる効率化・自動化や業務上の工夫により、結果的に「高品質・安く・早く」を実現でき、これをウリにすることなら何も問題ない。

しかし、従業員や下請け会社に無理な納期や機能追加、丸投げ等により長時間労働を安い賃金で強いることで実現するといった、一部の人や組織の犠牲の上で成り立っているなら大いに問題である。
o08usyu7231.hatenablog.com

そもそも「高品質を早く」実現するために、開発要員の増投入などリソース面での確保が必要であるならば、費用はそれなりにかかる。リソースの増投入により「早さ」を最優先するなら、「特急料金」のような追加徴収額が発生するのが世の常識である。「高品質」だけでなく「高機能」を実現するためにしなくてはいけないこともあり、時間がかかることもある。

いいかえるなら「高品質を早く適正価格で」くらいが良いのではないだろうか。さらにいうなら「高品質を適正期間・適正価格で」ならもっと良い。いや、それが当たり前である。

「高品質を安く・早く」など都合の良いことばかり並べているのは、多くの場合は裏があると考えるべきであり、ブラック労働など犠牲を強いている部分があるのではないかと疑う余地がある。

「高品質」は多くの場合に求められるであろうが、「高機能」「早さ」「安さ」は場合によって何を優先するか異なってくる。全部実現できるに越したことはないが、くれぐれもこのような表現にはどのような裏があるのかを気にしておく必要がある。

3.「IT業界の問題を解決する」ことも使命の1つ、業界そのものが健全であるべきだ

もう一つは「IT業界の問題を解決する」観点があっても良いのではないかという話である。人によっては、これはIT業界の使命ではなく、そのための阻害要因を解決するものではないかという意見も考えられそうだ。その通りである。

しかし、現実には「長時間労働」「多重下請け構造」など多くの問題が蔓延し、多くの人達が理不尽な現実に苦しんでいる。

某金融系システムでは、たびたびシステム障害が発生しており、ニュースでも報道されている。この裏側には膨大なシステム開発(統合)による無理が祟り、開発体制面では「多重下請け構造」の温床、労働環境面では無理な短納期を求められ「長時間労働」によって現場のエンジニアが疲弊している過酷な実態が潜んでいる。

IT業界の発展によって効率化されていくはずなのだが、そのIT企業が残業まみれということでは話がおかしい。

長時間労働」はIT業界のみならず、あらゆる業界で起きており、その解決は国を挙げてのテーマとなっている。

実際、IT業界では業界団体によって「長時間労働」を是正するためのWebサイトがあり、厚生労働省働き方改革の一環として活動を行っている。セミナーも行われている。詳しくは下記サイトを見ていただきたい。
www.mhlw.go.jp

これを見るとIT業界どころか国の使命でもあるように感じる。単なる阻害要因の除去や問題解決のようにも思えるが、そのスケールが大きい。それだけ国としての危機感を持っている状態である。

IT技術者・ソフトウェアエンジニアは技術に興味を持つ人は多い。しかし、この現実を踏まえ、(技術者である以前にビジネスパーソンとして)労働についての知見も必要であると考えている。
o08usyu7231.hatenablog.com

4.目先のことよりも前段・全体へ目を向けるべきだ!

「○○の使命は□□だ!」とよく言われ、高品質・高機能・より良いサービス・低コスト・短納期と、サービスを受ける側にとって都合の良い要求がエスカレートする。その割には、要求を実現するための前段にはあまり目を向けられず、労働者側へ丸投げされているのが現実である。これによる弊害がさまざまなところで起きている。長時間労働以外にハラスメントも同様である。

「IT業界の問題を解決する」ことが使命になるくらい、国全体が危機的状況だということに全員が早く気づかなければいけない。

「IT業界の問題を解決する」出来てこそ、

  • 「IT(情報技術)を使って世の中の問題を解決する」
  • 「IT(情報技術)を使って顧客の課題解決に貢献する」
  • 「IT(情報技術)を使った高品質なシステム・サービスを早く、安く提供する」

ことが当たり前に出来るのではないだろうか。