ビジネスの場面では、
「『時間がない』は『言い訳』」だ!
「『時間がない』と言った時点でアウトだ!」
などと教え込まれたりする。
確かに、時間をうまく使う人は、優先順位付け、やらない仕事、隙間時間の活用などで、忙しい中でも生産性を高め、次々と業務をこなして人もいる。時間活用術等のビジネス書籍も少なからず存在する。
一方で、予定している業務量に対して全然時間が足りないどころではなく、達成不可能なレベルにまで前段が破綻していることはよくあることだ。従業員は疲弊し、達成感を得られず、生産性が低下し、メンタルの不調や、過労による退職といった現実もある。
このような理不尽な状況に対してまで、
「『時間がない』は『言い訳』」だ!
とひと括りにするのはいかがなものかも思うが、これを使って信用を失う人は少なくない。
1.「『時間がない』は『言い訳』」をあらゆるケースでひと括りにすることが問題だ!
「1日24時間という与えられた時間は、誰であっても変わりはない。」
「その制約の中でいかに使える時間を作り出すかだ。」
前者は確実に正しいと言える。後者は、これも正しそうに見えて、言われると言い返せなさそうだが、人による前提条件が異なる。極端な例を挙げると、育児・介護を抱えている人とそうでない人といった具合にである。また、睡眠時間を削ってまで時間を作り出そうとすることは、健康面のリスクにも繋がるため、良い方法とは言えない。
効率を上げるために工夫できるところは工夫すべきだ。効率良くやるためのノウハウがあるならば実践すべきだ。しかし、背景や前提条件が異なる様々なケースを、ひと括りに
「『時間がない』は『言い訳』」だ!
とすることは、不信感を抱かれることになる。
それぞれのケースで、どのように時間がなかったのかを明確にし、時間がかかる要因を個別に分解し、具体的な方法も交えながら、ポジティブな思考を持たせるように教えるべきである。
- 作業に手戻りがあった→もう一段階確認が必要ではなかったか?
- 意志疎通に不備がありロスした時間が大きい→コミュニケーションのやり方に問題はなかったか?
- 無駄な作業があった→その作業をしない場合の影響は?
- 過重労働になった→作業の割り振りに問題はなかったか?
また、
「『時間がない』という人は、結局時間があってもやらない。」
ということも教え込まれたりする。
確かに、これに当てはまる人はいる。そのような人は『時間がない』のではなく『やる気がない』のである。
ただ、これも先程と同じであらゆるケースをひと括りにすることは問題だ。本来、丁寧に仕事をやりきる人が、時間がなくて、簡略化されたりするケースに当てはめるべきではない。
2.「『時間がない』は『言い訳』」はパワハラ発言になるリスクがある
前章で述べたように「『時間がない』は『言い訳』」と、あらゆるケースでひと括りにすることは問題だ。「『時間がない』は『言い訳』」と教えても何のプラスにもならないどころか不信感にも繋がるし、相手を追い詰めることとなりパワハラのリスクもある。
パワハラの定義と6類型を確認しておく。
パワハラの定義
- ①優越的な関係を背景とした言動であって、
- ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
- ③労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの3つの要素を全て満たすものをいう。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。
詳しくはこちらを見てほしい。 www.no-harassment.mhlw.go.jp
パワハラの6類型
パワハラは6類型といって、6つのパターンに分類されている。項目だけ紹介しておく。
- (1)身体的な攻撃
- (2)精神的な攻撃
- (3)人間関係からの切り離し
- (4)過大な要求
- (5)過小な要求
- (6)個の侵害
詳しくはこちらを見てほしい。 www.no-harassment.mhlw.go.jp
「『時間がない』は『言い訳』」だ!
などと追い詰めることは、力関係を背景に(①)行われることが多い。
本来、様々なケースで、どのように時間がなかったのかを明確にし、具体的な方法も交えながら、ポジティブな思考を持たせるように教えるべきである(前章参照)にも関わらず、ただ相手を追い詰め、心理的安全性を損なうことは、業務上必要とは認められない(②)。
そしてこれを言われた側は、「何を言っても聞いてくれない。言うだけ無駄だ。」と考えるようになり、これがモチベーションダウンなど、就労環境の悪化に繋がる(③)。
6類型では、相手を追い詰める「(2)精神的な攻撃」に該当する他、短期間で膨大な業務を与え未達成である場合にこれを使うとなると「(4)過大な要求」に該当する。
このような相手を追い詰める、恐怖や力関係をもって奮い起たせるようなことを平気で行う組織は、元々時間的余裕がない、人的余裕がない、破綻した「前段」によるしわ寄せを労働者個人に押し付けているだけである。そして、ますます人材が流出し、ますます人的余裕がなくなるのである。
3.『時間がない』状態を作りこまないための工夫や考え方を紹介する
私は過去に、IT業界向けの働き方改革に関するセミナーに参加したことがある。その中で印象に残った考え方、単に『時間がない』というよりも前向きであると感じる考え方を紹介する。
×「時間がない」
○「限られた時間内の業務量が多すぎる」
つい「時間がない」と言ってしまいがちだが、「時間がない」のは「こなすべき業務量」に対する「時間」に着目しているからである。冒頭で述べた通り1日24時間という持ち時間は誰でも共通だ。
ここでは限られた「時間」に対する「業務量」に着目する考え方だ。「業務量が多すぎる」となると、優先度をつけたり、作業配分を再検討したり、次に何をすべきかが見えてくるというものだ。
×「優先順位をつける」
○「劣位のタスクをやめる」
よく、仕事に「優先順位をつけよ!」と言われる。これが落とし穴なのは、優先順位をつけただけでは、文字通り作業の順序を並べ替えただけで、作業の総量が変わらないことが多い。何のために優先順位をつけるのか、その先を考えなければならない。
作業の総量を調整しようと思えば、優先順位の低い仕事(劣位のタスク)をやめることができないか検討することである。あるいは(当初予定していた)限られた期間以降の作業にするかである。何かしらの工夫で減らしていく必要がある。
このような個別個別のケースに応じて、その状況を乗り切るためのノウハウは積み上げておくべきである。
4.それでも『時間がない』のであれば『粗悪さ』を正しく見抜くべき!
これを実施した上でも、乗り切れないケースは少なからずあり、本当に『時間がない』、更にはこなしきれない量の業務を抱える人が出てきてしまうというとなると、組織の問題であると見極めるべきである。
人それぞれに限界はある。無理をすると今以上に状況は悪化する。それでも綺麗事だけが独り歩きし、
「『時間がない』は『言い訳』」だ!
とするのは、相手を追い詰めるだけのパワハラである。
言われた側も従順な人ほど『厳しさ』と捉え、『粗悪さ』であると見抜けない。そしてその『粗悪さ』が普通になり、閉じた組織内では『粗悪さ』ではなくなる。ブラック企業によくある、ブラック企業でなくても昭和的価値観で旧態依然の体質の組織では起こりうることだ。
o08usyu7231.hatenablog.com
「『時間がない』は『言い訳』」だ!
このような「いかにも全てのケースに当てはまる」ようなマインドは高確率でブラックであり、労働環境の劣悪さによるしわ寄せを、末端の労働者に擦り付けていることが多い。『厳しさ』ではなく『粗悪さ』であることを正しく見極め、心身の限界が来る前に劣悪な環境を切り捨て、まともな環境に移ることを検討すべきである。あなたの人生を壊さないために。
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