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「長時間労働」「過重労働」「デスマーチ」「ブラック労働」、言葉の使い分け

長時間労働」「過重労働」「デスマーチ」「ブラック労働」、言葉の使い分けについて調べてみた。

これらの言葉はIT業界における過酷な労働実態を表すイメージがあるが、IT業界に関わらず社会問題という共通点がある。

どれもネガティブなイメージを与えるものの、これまでこれらの言葉をあまり厳密に意識して使い分けることがなかったため、どのように使い分けるべきか調べることにした。

目次


1.「長時間労働」「過重労働」「デスマーチ」「ブラック労働」各々の説明

まずは、各々の言葉の意味を簡単に書き並べてみた。

長時間労働

長時間労働とは、文字通り労働時間が本来予定されている時間数と比較して特に長い状態を指す。日々残業まみれの状態。

日本では、具体的にどのくらいの時間数を超えれば「長時間労働」にあてはまるかの明確な定義はない。しかし、おおむね以下の指標を目安として、数段階に分けられる。

・月45時間以上の時間外労働
・月60時間以上の時間外労働
・月80時間以上の時間外労働
・月100時間以上の時間外労働

原則として三六協定による労働時間の延長の上限が月45時間となっている。時間外労働月45時間が一つの基準となる。月60時間以上の時間外労働となると、割増賃金の割増率が引き上げられる。月80時間以上の時間外労働は、いわゆる過労死ラインと呼ばれる。脳・心臓疾患の場合、発症前直近の2~6ヶ月間の平均で80時間を超える時間外労働をしている場合には、その業務と発症の関連性が強いと判断され、労働基準監督署が業務災害を認定する可能性が高くなる。月100時間以上の時間外労働については、脳・心臓疾患の発症前月に100時間を超える時間外労働をしていた場合、その業務と発症の関連性が強いと判定され、労働基準監督署が業務災害を認定する可能性が高くなる。

「過重労働」

過重労働とは長時間労働等により、労働者に身体的・精神的に過重な負荷を負わせる労働・業務形態をいう。不規則な勤務や頻繁な出張もこれに含まれる。長期間にわたる疲労の蓄積やストレスには脳疾患や心臓疾患、精神疾患を招く。また、過重労働が原因の疾患による病死や自殺は過労死と呼ばれる。

ただし、疾病と過重労働の関連性は、労働時間だけでなく職場でのポジションや業務内容等も吟味されたうえで判断される。

デスマーチ

デスマーチ とは、プロジェクトにおいて過酷な労働状況をいう。ソフトウェア産業に限らず、コンピュータが関係する一般的なプロジェクト全般で使われるようになってきており、特に納期直前等の状態が破綻寸前で、関係者の負荷が膨大になったプロジェクトの状況を表現するのに使われる。

プロジェクトが死に向かう過酷な状況でプロジェクト要員が行進するという意味から、「デスマーチ」は「死の行進」とも呼ばれる。

具体的には、長時間の残業や徹夜・休日出勤の常態化といった、プロジェクトメンバーに極端な負荷・過重労働を強い、通常の勤務状態では成功する可能性がとても低いプロジェクト、およびこれに参加させられている状況を指す。

プロジェクト要員は、心身ともに極めて重い負担を強いられるため、急激な体調不良、離職、開発の破棄ともとれる中途半端な状態での強引な納品、場合によっては過労死や過労自殺に至る。

その発生要因は、顧客からの無理な要求、開発側による無理な計画、前行程の遅延を後行程で長時間労働といった力技によって穴埋めする企業体質、プロジェクトマネジメントが不適切であることとされている。

「ブラック労働」

Wikipediaによると、「ブラック企業」または「ブラック会社」は、「違法行為、不法行為、脱法行為などにより従業員に無給の残業・朝残業などの不当な労働を強制したりパワハラなど人権を踏みにじる行為を日常的に行っている企業、もしくはそのような行為を行ってる社員を放置、黙認している企業のことを指す俗語である。」とある。このことから「ブラック労働」は上述のような労働スタイルを指すと考えられ、「ブラック企業」に限った話ではなく、一部の部門、一部のプロジェクトでも当てはまることがある。

世間一般のイメージでは、長時間労働、ハラスメント、低賃金、専門家によると違法状態の放置、個人個人の価値観への依存(働くうえで何を重視したいかの個人と企業のミスマッチ)などが挙げられる。つまり、ブルーカラー・ホワイトカラーや正規・非正規雇用を問わず、末端の従業員に過重な心身の負担や長時間の労働など劣悪な労働環境での勤務を強いて改善しないこと、すなわち、入社をお勧めできず、早期の転職が推奨されるような体質のことを「ブラック」と総称される。

従来の日本型雇用においては、単身赴任、長時間労働サービス残業にみられる企業の強大な指揮命令が労働者に課される一方で、年功賃金や終身雇用が保障され、福利厚生が充実していた。しかし、近年では長期雇用保障や手厚い企業福祉がないにもかかわらず指揮命令の強さや上層部の強大な権力が残っている。この点を「ブラック」と世間一般からの強い批判を浴びることとなった経緯もある。

私の「ブラック」の定義については、こちらの記事を参照いただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

あと本記事のタイトルには無いが、「強制労働」については「ブラック労働」と対比されている以下の記事を参照いただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

2.「長時間労働」「過重労働」「デスマーチ」「ブラック労働」比較してみた所感

長時間労働は単純に労働時間が本来の規定と比べて大幅に長いことを指している。IT業界の長時間労働対策に関するサイトやセミナーがあり、ここで使われている言葉の多くは「長時間労働」だ。
www.mhlw.go.jp

「過重労働」は「長時間労働」を含んでいるが、心身への負荷が重すぎることを全面に出しているイメージである。「長時間労働」よりも広い意味で使われる印象を受けている。医療機関や納期直前のシステム開発プロジェクトのように職業柄心身に負荷がかかるケースと、パワハラにより心身に負荷がかかるケースがあり、一見前者はやむを得ず、後者は早急な改善・対策が必要と受け取られるそうだが、この負荷がかかることで健康面に影響を与えることを考えれば、どちらも問題ありと言わざるを得ない。

デスマーチシステム開発プロジェクトでよく使われる以外は、「過重労働」とあまり区別がつかないようなイメージを持っていた。労働者にとって過酷な状態であることは両者変わりないが、前述の説明からすると「過重労働」が「労働」もしくは「労働者」にフォーカスしているのに対し、「デスマーチ」(死の行進)は破綻寸前で死に向かっている「プロジェクト」にフォーカスしている印象を受ける。

「ブラック労働」は「長時間労働」を含んでいるが、それ以外にも膨大な業務量に対してスケジュールが短く設定されている等、パワハラ体質、労働力の搾取、違法性といった要素が加味されているイメージである。また、「ブラック」の定義が曖昧で、労働者個人個人の価値観に左右され、これらの言葉の中で最も非公式な言葉でマイナスイメージの強いものと言える。それゆえ、公式な場やサイトで使われることは少なく、口コミサイト等でよく使われるイメージである。

3.まとめると微妙な違いはあるが、どれも問題である

長時間労働」「過重労働」「デスマーチ」「ブラック労働」、それぞれの違いに着目してまとめるとざっくりこんな感じである。

長時間労働
(文字通り)労働時間が長いことを指す。

「過重労働」
長時間労働の他、心身への負荷が重すぎることによる、劣悪な労働環境を指す。

デスマーチ
過酷な労働環境とともにプロジェクトが破綻へ向かっている様子を指す。

「ブラック労働」
違法性が高く、長時間労働、労働に見合わない賃金、ハラスメントの発生を含め、劣悪な労働環境を指す。働く人の価値観に左右される。

長時間労働」「過重労働」「デスマーチ」「ブラック労働」、これらの言葉の使い分けやニュアンスの違いについて調べ考えてみた。微妙な違いはあるもののどれも問題であることには変わりなく、どの状態であっても、健康、キャリア、生活、人生に悪影響を与えるものでしかない。企業としては組織単位での是正が必須であり、これらに巻き込まれている被害者はまず改善を訴え、改善の見込みがなければ、転職をはじめこれらの状態から抜け出すことが必要だ。