この記事では、ビジネスの世界で正しそうに見えるが、実はとんでもない勘違いをしていることを挙げてみようと思う。
それは「立場」と「価値」の違いである。
実は「立場」と「価値」は全く別物である。そして、これからの時代ビジネスパーソンとして、どのようなことが必要か考えてみたい。
1.「立場」に関するよくある勘違い
「立場が上の人の方が偉い」。
こんなイメージを持っていないだろうか?
○○さんはリーダーだから、
○○さんはマネージャーだから、
○○さんは部長だから、
○○さんは役員だから、
・・・、
一般社員△△より上だ。
口に出さなかったとしてもこんなマインドを持っている人は考え直した方が良い。
「お客様や発注元の方が力関係が上」という考え方も同様である。
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社内の組織であれば、一般的には「立場」が上がれば責任は重く、報酬も大きくなる。今のご時世では、責任は重くなるが、報酬の上昇率が見合っていないという見方もある。
また、当たり前のように、一般社員→リーダー→マネージャー→部長→役員のように、キャリアが進んでいくため、あたかも偉くなったように感じてしまうし、周りからもそのように見えてしまう。昇進していくと組織内での立場は上であるようにも思える。
ここで問うてみたい。
「立場」と「価値」を混同していないだろうか?
2.「立場」が上でも「価値」が低い人はいる
なぜ、このような内容に目を向けているかというと、「立場」が上でも「価値」が低い人は少なからずいるからである。
もちろん、そのような人ばかりではなく出世して立派な人もいるし、組織内でも一目置くような「立場が上」の人もいる。
世間でよく見るのは「立場が上」の人による違法行為や不祥事である。このような人は、「立場」が上でも「価値」が低いと言わざるを得ない。
例えば、「パワハラをする管理職」と「パワハラをしない平社員」、どちらが偉いか?
答えは「パワハラをしない平社員」である。
「パワハラをする管理職」は、自分の方が偉いと勘違いする。
「立場」と「価値」の考え方について後述するが、ざっくりそれぞれ別の表現をするとすれば、positionとvalueかなと思う。positionは位置、職務、役割と捉えると良い。地位、身分という意味もあるが、「パワハラをする管理職」が勘違いする原因となるから、ここではこの意味では扱わない。valueは価値、価格、値打ち、値の意味を持つ。高めるべきはpositionではない。valueだ。
最近パワハラのニュースをよく見る。民間企業に限らず、被害者やその遺族が裁判を起こしてニュースになることが多い。長時間労働とセットで報道されることも多い。公務員では加害者が組織内で処分されたことも含めてニュースになることが多い。パワハラは厚生労働省の定義によると
1.立場の優位性を背景に、
2.業務に必要相当の範囲を超えた言動により、
3.就労環境を悪化させること
となっている。多くの場合、上司・顧客といった「立場」を背景としている。
ある専門家は、パワハラが発生する理由を「加害者が未熟であるから」と説明している。私も同感である。いくら「立場が上」でも未熟者は一定割合存在する。
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なぜそのような人が存在するのか?
よくあることだが昇進して「立場が上」になる人は、限られた領域で一定の成果や実績を挙げ、それが認められた人であることが多い一方、人間として未熟な点があるまま、影響力のある立場になることによる弊害であると言える。パワハラはほんの一例に過ぎず、これ限った話ではない。偽装、不正、マネジメント能力不足、人事評価の失敗で優秀な人材を潰す、その他諸々に見られるように、「立場」が上でも「価値」が高い人とは限らない。
3.「立場」は「役割」、「能力・実績」は「価値」と考えるべき
そもそも「立場」が上とか偉いとか、この時点で語弊がある。「立場」とは「役割」と言い換えて良いだろう。
組織内であれば、
- 「担当者」=「実務」
- 「リーダー」=「ローワーマネジメント」「実務指導」「対外的関係先との調整」
- 「マネージャー」=「ミドルマネジメント」
- 「部長」=「部門とりまとめ」「経営層との橋渡し」
- 「役員」=「トップマネジメント」「経営戦略立案」
などである。
これらをうまくこなすか否かと、「立場」そのものは全く別。組織間の場合は、「発注元」「発注先」のような感じである。
どちらが偉いとか無い。互いに敬意を払い、互いに協力関係にないと、何事もうまくいかない。
一方、同じ立場でも「能力」や「実績」が人によって異なることがある。各々の人の「特性」「経験」「強み」も違う。このような要素は「価値」と呼んで良いだろう。
管理職や経営者で組織の舵取りに大いに力を発揮している人は、「立場」が偉いのではなく「価値」が高いのだ。また、「立場」「役職」にこだわらなくとも、特定のスキルが非常に長けていたり、複数のスキルを併せ持っているような状態なら、それはその人が持つ「価値」である。特定の会社組織に属さないフリーランスはなおさら「価値」が持つ重みが大きい。
4.「価値」を高める取り組みを
「立場」は組織内での位置付けであるのに対して、「価値」は「市場価値」というように組織外でも通用するイメージがある。
終身雇用制がとっくに崩壊した今、働き方が多様化しつつある今、組織よりも個を重視するようになってきた今、「価値」を高めることこそが急務だ。優秀な人が上の「立場」に上がる以外に、「価値」を活かし更に高めることのできる、より良い企業へ転職する動きも盛んである。
スキルを身に着けるもよし、資格を取得するも良し。私も若い頃はできる限り資格取得に注力した。会社内にあり肩書きに代表される「立場」は会社を辞めれば消えてしまう。資格など「価値」は会社を辞めても消えない。会社が姿を消したときも同じだ。
実際私は、下請け中心のIT企業から大手メーカーへ転職しており、転職前後ともソフトウェアエンジニアである。下請け中心のIT企業で上の「立場」を目指すことよりも、自分が持つ「価値」を活かし大手メーカーで「価値」を更に高めることの方を選んだ。転職して正解だったと思う。
「価値」を高めた結果「立場」が変わり、その後も「価値」を高め続けることが理想だ。
「立場」を上げるためのごますりに「価値」はないと感じる。
「立場」が上がっても、不祥事やパワハラなどをやってしまう、またそうでなくても人を潰す管理職の「価値」はあっという間に無くなる。
ただ、残念なのは得られる報酬が、「価値」ではなく「立場」に基づいているところだ。
日本では報酬を高めようとすると管理職になるのがオーソドックスなキャリアだが、最近は人事制度の見直し等によりこれも変わっていくものと思われる。
「立場」を上げるよりも、「価値」を上げた方が、市場レベルで見ると、フットワークが軽いのは確かである。実際、私は新卒で入社して10年くらいは、組織内で昇進することばかり考えていたが、今は全く逆であり、フットワークが軽いことの恩恵を受けている。
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