働き方改革、および新型コロナウィルス感染拡大による対策を背景に、テレワークが浸透してきたことは、多くの方々が御存知の内容である。ひと昔前は出社して業務をするのが当たり前だったが、今はそうではない。
また、働き方改革の一環で、残業、休日出勤といった時間外勤務の削減に取り組んでいる企業も少なくない。
テレワークは時間に融通が利くメリットがある一方で、
「仕事とプライベート、オン/オフの区別がつきにくく、かえって長時間労働になる傾向がある。」
と一般的に言われている。
そこで、
「テレワークで残業・休日勤務は禁止」
というルールを設けている企業もあり、一定の理解は示す。
しかし、このルールは中途半端であり、もっと根本的なところを見直すべきではないかと感じるのである。
そのように感じる理由と、ルールの目的や背景を考え、広く情報収集することの大切さについて語りたいと思う。
目次
- 1.残業が常態化しているならその真因を追及すべき
- 2.休日出勤が必要な状況なら休日在宅で仕事する方が負担が少ない
- 3.テレワークと出社では働く場所が違うだけ!それ以外は同じにするか、テレワークのメリットを活かすべき!
- 4.組織のルールにおける背景や根本的な目的を知り、ルールの妥当性を見極めるべき
1.残業が常態化しているならその真因を追及すべき
そもそも、残業が常態化しているならば、その原因を洗い出しておくべきである。出社かテレワークかは関係ない。
例えば、
- 元々の業務量が多すぎる
- 顧客からの無理な依頼を受けてしまう
- 人員不足
- ノウハウ不足
- 無駄な業務、無駄な会議
- 自動化ができていない
といったところに着目すべきである。
業種によっては出社しなければならない業種もあるため一概には言えないが、出社かテレワークかで、残業・休日勤務を許可/禁止することにあまり意味はない。
多忙な時は出社でもテレワークでも労働時間が長くなりがちである。
過重労働による従業員の健康面に配慮するならば、出社でもテレワークでも同じである。
労務管理を徹底しなければならないことは、出社でもテレワークでも同じである。
テレワークだから労務管理が疎かになり、例えばサビ残等が発生しやすい状況にあるなら、テレワーク以前の問題であり、従業員側も管理職側も最低限守るルールやコンプライアンスを徹底すべきである。
出社かテレワークか選択できる企業の従業員が、テレワークよりも出社を選択するであろうケースは、一般的に
- 出社しなければ使用できない設備や道具を使用した業務を行うため
- リモートよりも対面でコミュニケーションを取った方が良い場面があるため
- 従業員同士が同じ場所で共同で作業したほうが効率が良い
- テレワークの設備が現段階では十分整っていない過渡期である
くらいである。これ以外ならはテレワークで十分である。
このことからすると、「残業するために出社する」というのは不自然である。
2.休日出勤が必要な状況なら休日在宅で仕事する方が負担が少ない
あってほしくはないのだが、休日出勤が必要な状況になった場合を想定する。休日において、出社はOK、テレワークはNGというのも、いまいち意味が分からない。前述の通り、業務過多ならば出社/テレワークに関係なく対策を取るべきである。
それ以外に、休日にしかできない作業ならば休日にする必要がある。(例:職場で使用するサーバの管理者がサーバをメンテナンスする)
ここでも出社するか在宅で仕事するかの選択基準は、出社しなければできない作業か否かのみとなる。
「テレワークで残業・休日勤務は禁止」となると、「休日に仕事をする場合は必ず(無条件に)出社せよ」となってしまう。
従業員にとって、平日の残業と違い、休日なのにわざわざ出社するのは、業務時間以外に通勤時間がプラスになる。休日に通勤するくらいなら、在宅でできる仕事は在宅でしたいものだ。その意味では、「テレワークで残業・休日勤務は禁止」はというルールは、わざわざ従業員の通勤という効率を悪化させる結果にもなる。
それだけではない、大手メーカー等で、工場を含めある程度の敷地を持つ事業所であれば、敷地の入り口に守衛さんが待機していることがある。休日出勤が一人でもいれば、守衛さんが出勤しなければならず、守衛さんの負担にもなる。
その他、休日にオフィスに人が出入りし、業務をするということは、企業の光熱費等のコスト増加にもなる。子育て世代が、在宅勤務なら子供を保育園に預ける必要が無く、出勤なら保育園に預ける必要がある場合、保育園にも負担がかかる。
「テレワークで残業・休日勤務は禁止」となると、休日に負担が増える人を増やしてしまうという事態を助長していることになる。
3.テレワークと出社では働く場所が違うだけ!それ以外は同じにするか、テレワークのメリットを活かすべき!
ここまでを見てもわかる通り、テレワークと出社では、働く場所が違うだけで、それ以外は同じであることが基本である。
「テレワークで残業・休日勤務は禁止」なら、出社でも「残業・休日勤務は禁止」とするのが筋だ。あるいは「テレワークで残業・休日勤務は禁止」はしないが、残業や休日勤務をしなくても良い「前段」にすべきである。
テレワークで長時間労働になることは問題だが、長時間労働になるならば出社しても同じだし、作業環境面等テレワーク特有で何か効率が悪くなる要因があれば、そこをピンポイントで対策すべきだ。
テレワークをはじめ、在宅フリーランスは「時間の融通が利く」といわれている。「時間の融通が利く」ことで業務効率が上がるなら、これは取り入れてい貰いたい観点だ。テレワークのメリットは、働き方改革の意味も含め、ぜひとも活かしてもらいたいものである。
結局、「テレワークで残業・休日勤務は禁止」する理由はテレワークとは全く関係ないと言える。「テレワークで残業・休日勤務は禁止」して長時間労働を防止しようと、一見従業員に配慮しているように見える。しかし、これでは不十分である。業務過多をはじめ、作業環境面等テレワーク特有で発生する問題は一部であり、大半の問題は出社/テレワーク関係なく発生すると考えてもらいたいものだ。
4.組織のルールにおける背景や根本的な目的を知り、ルールの妥当性を見極めるべき
この記事のまとめとしては、まさにこれである。組織のルールの必要性、背景、目的を理解し、そのルール自体がこれらにマッチしているかという部分に着目することが重要だ。
この観点から考えると、「テレワークで残業・休日勤務は禁止」したところで、一見従業員に配慮しているように見えてるが、「何が達成できるの?」という疑問が生ずる。このルールを適用することで、効果が薄いどころか、かえって弊害が生じる。
そもそも、元々残業が少ない企業では「テレワークで残業・休日勤務は禁止」のような謎のルールが無くても、常に従業員への健康に配慮し、パフォーマンスを最大化する狙いが十分に伝わる。
例えば、全社的に残業削減に取り組んでいて、その過渡期として「テレワークで残業・休日勤務は禁止」とし、最終的に「残業・休日勤務は禁止」とする狙いがあるなら、目的が十分理解できる。そうでなければ単なる中途半端な謎ルールだ。
転職サイトでの求人を見ていると、
- リモートワーク推奨(出社率〇%)あるいはフルリモート
- 残業少なく、ワーク・ライフ・バランス良好(平均残業時間〇時間/月)
というものを見るようになってきた。今の時代を反映している。
人にもよるが、
- 「テレワークで残業・休日勤務は禁止」
というルールが無くても、リモートワークやワーク・ライフ・バランスを重視する人にとっては、魅力的な求人といえるだろう。
組織のルールに疑問を感じたら、その背景や目的を確認するのはもちろんなのだが、今所属している組織が全てではないし、世の中広いから世間や他社の動向を見ることを怠ってはいけない。そのためにもまずは、転職する/しないに関わらず、転職サイトに登録して、情報収集することだ。