ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

「セルフマネジメント」は企業が都合良く悪用可能な言葉!搾取することもされることも避けるべきだ!

「セルフマネジメント」という言葉を聞いたことのあるビジネスパーソンは多いだろう。

「セルフマネジメント」とは、「目標達成や自己実現のために、自分自身を律し管理すること」と説明されている。その本質は、限られたリソースの最大限の活用、自身の能力を最大限発揮しパフォーマンスを上げることにある。管理の対象は、仕事のタスクや時間、感情、精神的・肉体的な健康の維持など、多岐に渡る。

しかし、この「セルフマネジメント」という言葉は企業側にとって都合良く悪用できてしまうので、不当に搾取されることの無いようにしたいところである。

この記事では、ソフトウェア開発において仕事の忙しさ故、どうしてもミスが発生し、ソフトウェア品質を確保できない場面において、「セルフマネジメント」の大切さを発信したい管理職の意向と、ソフトウェア品質を例にその「セルフマネジメント」が都合良く悪用できてしまう懸念について述べたいと思う。

ソフトウェア開発に限らず、あらゆる仕事に言えることであるため、謙虚さを持ちつつも悪用や搾取による労働トラブルの被害を回避する観点で読んでいただきたい。

目次

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1.仕事の忙しさに伴ってミスが増えるのは当然のこと

ソフトウェアエンジニアに限らず、人間誰でもミスをするものである。しかも、コンディションが悪いときや、半端なく忙しいし状態になり、過重労働となってしまうとミスが増えてくるのは当たり前のことである。

ソフトウェアエンジニアであれば、過重労働に巻き込まれ、心身が疲弊し、精神が消耗し、不本意にもソフトウェア不具合を流出させてしまった人もいるだろう。ソフトウェア不具合はご存知の通り、市場に対して多大な迷惑を掛けることになる。だから、ソフトウェア不具合を出した当事者としてもとても辛い。

一方、当事者がしっかりしていれば、ソフトウェア不具合に至ることはなかったということは少なからずある。ソフトウェア不具合を出した当事者は、自身の至らなさを気にかけるも、自らの心を守るために「忙しかったから」という言い訳をする。実際、「忙しかった」のは事実だろう。過重労働やデスマーチが当たり前の状況で、まともなソフトウェア開発などできるわけない。

ソフトウェア開発は知的業務である。頭が疲れるとミスが起きやすくなり、その結果ソフトウェア品質の低下に直結する。人間は朝起きて13時間以上経過すれば、酒酔い運転と同等程度の作業効率の低下に至ることが医学的に証明されている。劣悪な労働環境がソフトウェア品質低下を招くのは、紛れもない事実である。

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2.多くの管理職は「言い訳」を批判し「セルフマネジメント」の重要性を訴える

しかし、上述のようなことをわかっていたとしても、多くの管理職はソフトウェア不具合を発生・流出させた当事者の「言い訳」に対して批判的である。

  • 「忙しかったから」を言い訳にしてはいけない。
  • 言い訳をしている人は成長しない。
  • 忙しくない状態であれば、誰でも丁寧に仕事ができる。
  • 忙しくならないように「セルフマネジメント」を行うべきだ。
  • 仕事する上ではどうしても自らがコントロールできない部分がある。
  • 忙しい状況になることは想定しておかなければいけない。
  • 忙しい時ほど、丁寧に仕事をしなければならない。
  • 心に余裕がない時ほど、その人の本質が出てくるのだ。
  • 常日頃からスキルアップに励むべきだ。

一見正しそうに見える。「忙しさの程度」によっては正しいのだろう。

管理職としては各々のソフトウェアエンジニアに成長してほしいという意図が込められている。また、自分自身がそのようにあるべきと、自分を律する意味でこのようなマインドを持っている人もいるだろう。

ここで、「セルフマネジメント」という言葉が出現している。「セルフマネジメント」の意味は、この記事の冒頭に記載している。まさに、忙しい中でも自分自身を律し、目標実現に向けて自分で自分を管理し、成長へ繋げてほしいという意図を、管理職はソフトウェアエンジニアに対して持ち続けているのである。

ここまでは、管理職が「言い訳」を批判し「セルフマネジメント」の重要性を訴える一般的で表向きの話だ。

3.劣悪な労働環境を放置し「セルフマネジメント」と称して労働者個人に負担を強いる現実

しかし、「セルフマネジメント」の重要性の訴えは、建前である場合や、管理職や企業にとって都合の良い場合がある。

  • 「忙しいときこそ、丁寧に仕事をせよ!」
  • 「心に余裕を持て!」
  • 「忙しさに揉まれることは、ある意味チャレンジだ!」
  • 「他責思考ではなく、自責思考だ!」
  • 「しっかりと自分と向き合え!」

言うだけなら簡単だ。従業員を酷使するだけのブラック企業の管理職でもできる。

実行するのは難しい。また、これができるか否かは、前述したように「忙しさの程度」によるものだ。

現実には、「忙しい」どころではなく、労働者個人の犠牲の上に業務が成り立っているケースが少なくない。劣悪な労働環境にある組織が、組織として何も是正しなければ、労働者個人個人がそのしわ寄せを受けることとなる。そして、しわ寄せを受けた労働者が過負荷な業務をこなせなければ、その結果のみを吊るし上げ、「セルフマネジメント」ができていないと見なされる。これは、「セルフマネジメント」が重要だ!と称して、劣悪な労働環境に対する是正措置を怠る組織・管理者側の「粗悪さ」である。更に、労働者がこのような現実を訴えれば、怠慢な組織の上層部はこれを「言い訳」「他責思考」などと叩く。

ソフトウェア開発においても同じだ。エンジニアの待遇に見合わないハイレベルなアウトプットを求め、過重労働が当たり前となり、そのような劣悪な環境のしわ寄せをエンジニア個人に押し付け、業務遂行不可能なことでも単に「忙しい」程度の表現に矮小化し、それでも品質や納期に問題出れば、徹底的にエンジニアを叩く。エンジニアに対して「もっと『セルフマネジメント』をしっかりすべきだ!」と、口には出さずともそのようなマインドを持っているなど、「セルフマネジメント」と称して都合よくエンジニアに責任をなすりつける現実がある。

企業や人にもよるが、日本の企業の管理職の中には、自分たちのマネジメント力の無さや無計画さを労働者になすりつけて、それをこなせないことを「甘え」などと批判したりする傾向が見受けられる。過重労働が常態化し、労働者個人個人の疲労が溜まり、効率を落としたりミスを増やしたりして余計な時間がかかり、労働者がパワーダウンさせられている状態は、間違い無く企業側の問題だ。

劣悪な労働環境によるしわ寄せを労働者になすりつけることを「セルフマネジメント」と言うべきではない。経営陣や管理職は、このことをしっかり認識しておくべきだ。

このように「セルフマネジメント」を企業にとって都合良く悪用し、労働者を搾取していないかという観点は、労働者にとって、経営陣や管理職の質を見極めるチェックポイントなのだ。
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4.労働者にとっては労働トラブルから身を守ることも「セルフマネジメント」だ

劣悪な労働環境を、労働者個人で解決することは難しい。組織で解決すべきだ。しかし、それすらもまともにできていない組織は少なくない。だから、日本の企業から過重労働がなくならないし、ブラック企業もなくならない。

ブラック企業の管理職が労働者に対して「セルフマネジメント」を押し付けてくるのは、

  • 「忙しい中でも、丁寧に仕事をこなしてほしい。」
  • 「忙しい中でも、会社のために貢献できる人材になってほしい。」
  • 「ネガティブな出来事に対して忙しいことを理由にしないでほしい。」

といった感じで、押し付ける側の人間や企業にとって都合の良いことばかりである。

「セルフマネジメント」を労働者に押し付けるならば、労働者側の解釈を変えればよい。

労働者にとっては労働トラブルから身を守ることも「セルフマネジメント」だ。具体的には労働者が、自分自身の心身の健康状態を管理し、劣悪な労働環境を「自分の甘え」ではなく、自身でコントロールできない領域の問題、即ち「前段の粗悪さ」を正しく見抜き、心身を消耗し壊す前にまともな労働環境に移ること、及び普段からその準備をしておくことだ。








「セルフマネジメント」という言葉を使って、搾取される労働者が悪いとは言わない。搾取する企業が悪いのは確かだ。しかし、労働者側でも対策は可能だ。

日本からブラック企業がなくならない原因の1つに、「(そのブラック企業で)働き続ける従業員が居るから」ということを、専門家が指摘している。従業員がブラック企業を辞めれば、ブラック企業であっても存続することができない。労働者が会社を辞めることは最強の武器なのである。でも、この武器を使えない労働者が少なくない。武器を使うには準備が必要だ。その準備を含めて真の「セルフマネジメント」が求められる。優秀な人材が、劣悪な企業に見切りをつけて辞めていくのは、「セルフマネジメント」ができている証拠だ。更に私自身、真の「セルフマネジメント」の結果、下請けを中心としたIT企業から大手メーカーへ転職した経験のある人間だ。
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冒頭で「セルフマネジメント」とは、「目標達成や自己実現のために、自分自身を律し管理すること」と説明した。転職・独立・環境改善が「目標達成や自己実現」であるならば、それに向けて必要な知見を習得し、自分自身をしっかり管理することだ。会社目線の「セルフマネジメント」ではなく、社会目線の「セルフマネジメント」を心掛けていこう。
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