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「自責思考」と「他責思考」、事例とともに両面から解説する-【事例5】労働問題言及による不利益

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ビジネスの世界をはじめ、「自責思考」「他責思考」という言葉をよく聞く。

「自責思考」とは

何か問題が発生した時に、自分自身に問題があると捉え、自分自身の改善点を追求していく考え方

を指す。

「他責思考」とは

何か問題が発生した時に、自分自身の問題ではなく、周囲や環境に原因があるという考え方

を指す。


以前、「自責思考」と「他責思考」について、それぞれのメリット、デメリットについてまとめ、「自責」「他責」問わず広範囲で俯瞰的に捉え根本を見極めることが成長の条件だと締めくくった。
o08usyu7231.hatenablog.com

同時に、何か理不尽な不利益を受けた被害者は、次の3本立てで考えると良いと述べた。

  1. 自分自身の行いを振り返る。(「自責思考」)
  2. 他人・周囲・環境に問題がないか探り、あれば改善を促す。もしくは反面教師とする。(「他責思考」)
  3. 他人・周囲・環境に問題があっても、自分が回避できないか考える。(「他責思考」であるが、対策するのは自分。)

この記事では事例を紹介する。

「自責思考」を周囲から押し付けられて辛い生き方をしている人は、是非この記事をインプットしていただき、ヒントを得ていただければと考えている。


【事例5】ソフトウェアエンジニアがしわ寄せを受ける組織体質について問題提起した人が上司から評価を下げられた

長時間労働は昔から日本で社会的に問題視されている割には、現在も人手不足や業界の慣習等によって、依然としてなくならないテーマである。

なかでも今回紹介する事例にて顕在化した問題は、製品開発におけるソフトウェア開発が、前工程の要因によりしわ寄せを受け、力技で乗り切るという、ソフトウェアエンジニアの犠牲の上に製品開発が成り立つ事業構造である。

近年、ソフトウェアは製品の価値を生み出す重要ファクターとして認識されつつある。ソフトウェア開発部門に属するソフトウェアエンジニアは、製品・サービス企画部門、製品開発・ハードウェア開発部門等の様々なステークホルダーからの要求を受け、製品にとっての頭脳とも言えるソフトウェアを開発する。

このような状況の中で、製品仕様決定の遅れによるソフトウェア開発期間の短縮、製品内部のメカ構造、ハードウェアの問題をソフトウェアで解決する仕様追加といった外的要因によって、ソフトウェアエンジニアがしわ寄せを受けることがある。納期を延期することが許容されるなら良いが、納期は後ろにはずらせないどころか前倒しを要求され、しかもソフトウェアでの品質問題が起きればソフトウェア部門の責任という、ソフトウェアエンジニアにとっては鬼畜極まりない開発となった。

幸い、このプロジェクトはソフトウェアエンジニアの工夫や力技で乗り切り、前倒しされた納期を守り、品質にも大きな問題はなかった。ソフトウェアエンジニアが優秀であるおかげでステークホルダー全体が救われたのだ。

ここまではソフトウェアエンジニアの活躍により、逆境を乗り切ったという美談に聞こえる。しかし、このような実態は大きな問題だ。人手不足の中での労働環境悪化は、品質面のリスクにとどまらず、ソフトウェアエンジニア確保の面でも致命的である。このようなことがまかり通ると、次からこの状況が当たり前になり、多大な負担の中、高いパフォーマンスが求められる割には、そのリターンが見合わない状態となる。ソフトウェアエンジニアとして貧しくなるという、業界・社会レベルでの問題となる。
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このプロジェクトの終了後、上述した危機感を持った一人のソフトウェアエンジニアA氏は、関連する一部のステークホルダーを召集し、プロジェクトの振り返りを主導した。

このエンジニアA氏は、製品開発においてソフトウェア部門に負担やしわ寄せが来る構造と開発スタイルについての実態をステークホルダーで共有し、すぐに改善することは困難ではあるものの、改善が必要である旨、ステークホルダーに丁寧に説明した。

説明を受けたステークホルダーからも、


「すぐに改善することは難しいが、ソフトウェア開発部門の思いを知ることができて良かった」

とA氏に対して前向きなコメントがあった。

しかし、その裏側ではこのプロジェクトの振り返りに関して評判が悪かったようだ。そして、この期におけるA氏の人事評価面談で、上司である管理職のB氏はA氏に対して、

  • 「あのプロジェクトの開発振り返りはいかがなものかとみんな言っている」
  • ステークホルダーは困っている」
  • 「今後プロジェクトの主要なポジションは任せられない」
  • 「そのことを踏まえて、今期は低評価にする」
  • 「今期の自分の行いを振り返るべき」

と、一方的に言い放った。

A氏はこの人事評価結果、その根拠、B氏の説明に対して違和感を感じていた。

人事評価システムにも、

  • 「A氏の立ち振る舞いについて上司へ相談が◯件寄せられた」
  • 「自分の考えを押し付ける形となった」
  • 「ステークホルダからの信頼を失う発言があった」

などと入力されていた。人事評価システムに入力された評価根拠が、行動事実ではなく、風評被害や主観による記載が多い上、改善点が見えない。A氏は、前向きな行動が低評価に繋がったことで、以降何か行動を起こすにも、身動きが取れず、組織へのエンゲージメントが大きく下落することとなった。

このようなソフトウェア開発部門へのしわ寄せにより力技でプロジェクトを成り立たせたように、一部の部門の犠牲によって全体を成り立たせることは問題がある。この企業では、過去に「ビジネスと人権」というタイトルで、このような題材を扱ったコンプライアンス教育が社内で行われている。にも関わらず、開発に関与するステークホルダー、および上司のB氏はこのコンプライアンス教育の内容を活かすことができなかった。

前置きが長くなったが、以後はA氏の立場で「自責思考」「他責思考」でアプローチする。

「自責思考」によるアプローチ

長時間労働やソフトウェアエンジニアへのしわ寄せによる負担増加というデリケートな問題を、ステークホルダーに対してどのように伝えるかは、着目するポイントであると考えられる。

A氏からステークホルダーとともに開発振り返りを行った内容は、ステークホルダーにとってかなりハードルが高いのではないかと思われる。ステークホルダーも悪意あってソフトウェアエンジニアに負担をかけているわけではないし、各ステークホルダーもそれぞれが大変と思われる状況で、ソフトウェアエンジニアの労働環境の問題を言われたところで、なす術がなかったのではないか、ということも想像しなければならない。

しかし、本事例におけるA氏からステークホルダーに対する伝え方については、まずは現状を共有する形で、丁寧に伝えていることから、問題ないと判断できる。

早期解決を執拗に迫ったり、横柄な態度で高圧的に接したりしていたならば、A氏に問題があるだろう。しかし、A氏は高いハードルを感じながらも、ステークホルダー一体になって改善に向けた一歩を踏み出した次第だ。

また、A氏はステークホルダーとの関係性を考えて、ソフトウェアエンジニアがしわ寄せを受けていることを口に出すべきではないという意見も考えられる。ただ、これはA氏が声を挙げた面倒な問題点に対して、蓋をしたいと考える人達でしかない。

製品開発のプロセスやステークホルダー間のコミュニケーションの在り方を中心に、プロジェクトの振り返りを行ってほしいと考えている人も存在しているのは事実である。このような人達にとっては、労働環境や労働問題の話を出されると都合が悪いと感じる、もしくはスケールが大きすぎると考えて好まない人もいる。このような人達に対して、

「ソフトウェアエンジニアへのしわ寄せによる労働環境の悪化」

というテーマの話をインプットしたときに、どのように感じるかを考えるべきだとの意見もある。しかし、これも先程と同じで、A氏が声を挙げた面倒な問題点に対して、蓋をしたいと考える人達でしかない。

「他責思考」によるアプローチ

A氏は開発対象となる製品・ソフトウェアの品質やスケジュールを死守したことに加え、コンプライアンスを意識した行動が高く評価されると考えられる。にも関わらず、会社にとって都合が悪いと考えられる理由で低く評価されてしまった。前工程の要因によりソフトウェア開発部門がしわ寄せを受けたところをソフトウェアエンジニアが吸収し、納期を守ったにも関わらず、恩を仇で返すようなあり得ない評価である。

そもそも、A氏が行った問題提起によってステークホルダー間の関係が悪化するならば、それはA氏の問題ではなく、その程度のステークホルダーでしかないということだ。即ち、ステークホルダーにおけるコンプライアンス意識や、労働リテラシーの低さの問題だ。

上述した「ビジネスと人権」というタイトルのコンプライアンス教育が全く実業務で活かされておらず、コンプライアンス教育がコンプライアンス教育だけで終わってしまっている典型的な事例だ。

折角A氏が労働環境を含めた開発全体の改善という、視座の高い取り組みを行ったことに対して、B氏が一方的な低評価を行ったことと、人事評価面談での不適切なコメントによって、A氏の心理的安全性を失い、A氏からの信頼を壊してしまったことは、B氏の管理職としての致命的な失敗だ。

特にB氏からの発言にある、

  • 「あのプロジェクトの開発振り返りはいかがなものかとみんな言っている」

という点である。

「みんな」とは誰なのか? 全社員なのか? 全ステークホルダーなのか? ネガティブなことを曖昧に伝えるのは、何も改善効果を産み出さないどころか、かえって害悪でしかない。発言元を「みんな」という表現で責任を分散させる行為は、管理職として絶対にあってはならないことだ。私が過去に拝聴したことのあるマネジメントセミナーでも、このような話があった。管理職には、人事評価結果とその根拠につき、説明責任がある。
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また、当該プロジェクトにおけるA氏の立ち振る舞いに関してB氏に相談が寄せられたという表面的な事実だけで、B氏は短絡的にA氏を低評価にした次第だ。

  • 「A氏の立ち振る舞いについて上司へ相談が◯件寄せられた」

この発言も、B氏が数を示した事実であろう。数を示すことでA氏をコントロールしようとしている意図なのだが、肝心の中身がなく、妥当性が全く見えず、上述したコンプライアンス意識の低い人達が何人も声を挙げているとしか思えない内容だ。これを元に不当に低評価をするのではなく、管理職こそがコンプライアンスの確保に全力を挙げるべきではないだろうか。
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  • 「自分の考えを押し付ける形となった」
  • 「ステークホルダからの信頼を失う発言があった」

この部分においても、全く具体性がないことを考えると、具体的に示すことがB氏にとって都合が悪い、何か後ろめたい理由があると考えられるような内容だ。

この一連の内容をA氏の問題としたがる人たちは、

コンプライアンス」 < 「(ステークホルダーとの)関係性」「信頼関係」「立場」

と考えている。本来は逆である。「コンプライアンス」は全ての事業活動における土台であり、世間でよく起きる不祥事を見ていると決して他人ごとではないのである。

「他責思考」だが自分で対策を取る場合

組織のコンプライアンス意識の低さ、一方の立場のことを考えているように見える片手落ちの対応、これによる被害を受けたA氏としては「自責思考」で捉えても、自分自身を苦しめる結果にしかならない。そのようなときは、全く別の対策を取ることを検討すべきである。

A氏の主張を周囲が本当に理解し、改善に向かっていくならばまだその組織に見込みはあると思われるが、改善されないならA氏としてもいつまでも被害を受け続けるわけにはいかない。即ち、「他責思考」としながらも、自分で対策を取る必要があるのだ。

A氏の立場からすると、無理に改善を推し進めるのではなく、長い期間をかけてでも少しづつ改善を進める他、労働リテラシーの低い組織との付き合い方を考えると同時に、コンプライアンス意識が高く労働環境の良い組織へ移ることの検討が必要だ。その一例としては、転職市場の動向に関する情報収集、自身の市場価値を改めて知る、副業についての動向を知る等、「会社への依存度を下げる」取り組みが必要である。

「会社への依存度を下げる」ことで、いざというときに自分が被害に遭う前に、問題のある組織を離れることができる。逆にこれが出来ていなければ、理不尽なことによるしわ寄せを受け続けるが身動きが取れず、メンタルトラブルを起こして最悪の場合再起不能ということにもなる。

誤解してほしくないのが、「会社への依存度を下げる」とは、業務に対して手を抜くことではない。業務で結果を出し、個人としての価値を高め、他社でも通用する人材になったり、個人で稼ぐことのできる状態を指すため、会社でそれなりにやっていくよりもハードルが高いかもしれない。

本事例のまとめ

そもそも、前章に記述した労働環境によるメンタルトラブルといった深刻な事態にまでならなくとも、A氏を中心に製品開発の前工程のしわ寄せを、ソフトウェア開発で吸収し、スケジュールと品質を守り、ソフトウェアエンジニアがしわ寄せを受ける組織体質について改善を試み問題提起するといった視座の高い取り組みに対して、B氏から低評価などというリターンが全く見合っていない時点で、危機的状況であることには変わりなく、上述した内容を中心にA氏としても何かしらのアクションは必要だ。

他社に合わせること、他社や組織に協力することは必要なことであるが、自分自身が犠牲になってしまっては元も子もない。頑張りは必要だが、頑張りすぎてはいけない。頑張りだけで賄っては、それが前例となってしまい、後々の組織にも悪影響を与える。私自身の経験を踏まえると我慢すれば失敗する、視野を広げることで成功すると言って良い。
o08usyu7231.hatenablog.com

組織に改善を求めることは必要なことであるが、まず自分の身を守り、自分にとってのセーフティネットを充実させることだ。組織の流れに身を任せると、キャリアを狂わされることもある。キャリアの選択肢は多い方が良い。転職の他、副業等、今は働き方が多様化してきた時代だ。組織の問題・不祥事を目の当たりにしながらも、特定の組織にしがみついていることが、自分の責任なのかもしれない。視野を広げるためにも、まずは転職サイトに登録し情報だけでも入手する、副業に関する情報を収集し小さく始めてみる、フリーランスに関する知識も得ておくといった形で、できるところからアクションしていくことをお勧めする。

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