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ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

求められる「社会目線」、管理職に多い「会社目線」

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「社会目線」と「会社目線」。

言葉はよく似ているが、意味は全く違う。近年の世の中を見ていると「社会目線」が求められると思うことが多いのだが、「会社目線」の経営者や管理職が多いように感じる。

どちらも言葉の聞こえは良いのだが、この2つにどのような違いがあり、具体的にどのようなことが求められるのか掘り下げていこうと思う。


1.「社会目線」と「会社目線」、それぞれのイメージ

まずは「社会目線」と「会社目線」をそれぞれイメージしてみよう。

「社会目線」は社会全体を見渡した目線である。「ITやソフトウェアを活用して社会貢献」などとよく言われる。この部分はこの通であり、経営者、管理職、一般従業員、取引先企業、様々な人が一丸となって取り組んでいる。世の中のために、お客様のために良い商品や良いサービスを提供することはもちろんなのだが、それ以外に、従業員、従業員の家族、地域社会にも目を向けることで、ステークホルダ、一般消費者、行政から応援される企業が、本当の意味での「社会目線」であると考える。

一方、「会社目線」。会社全体を見渡す意味で、中堅社員や管理職、経営者に対して「(特定部門のみならず)広い視野を持て」などと高いハードルのことが求められそうだ。一般社員に対して「管理職目線を持て!」、管理職に対して「経営者目線を持て!」などとよく言われる。しかし、あまり良い響きではないと感じるのは私だけだろうか?

「社会目線」は社会全体を見渡した目線であるのに対し 「会社目線」は会社にとって都合が良いかどうかがその判断基準となるように思える。私のイメージだが・・・。

2.「会社目線」のイメージ

「会社目線」のイメージと言われて思い当たるものを書いてみる。個人のイメージであり、世間一般によるものではないことを最初にお断りしておく。しかし、労働環境が悪い企業や不祥事の多い企業に当てはまるのではないかと考えられる。

会社にとって都合が良い

  • 「納期を守れ!」
  • 「高品質の製品を開発しろ!」
  • 「最低限これだけのノルマを必須で達成しろ!」

このような言い分は、この部分のみを切り取れば正しい。真面目で情弱な人は、無理だと分かっていても反論できない。しかし、このようなことを要求し実現させようとする「スケジュール」、「リソース」、「背景」等「前段」が破綻していることで、要求されたほうは疲弊し、自己犠牲を強いられる場合がある。ここをケアせずに「根性」「気合い」「適当な理屈」をもって、従業員に負担を強いる。「目の前の目標達成」には固執するものの、それ以外については希薄な状況を考えると、「自分(=会社)にとって都合が良ければ、そのほかはどうでも良いのか?」という気分になる。これが「会社目線」の一つである。

ブラック労働の強要に代表されるように、従業員を安い賃金で長時間酷使し、会社にとって都合のいいように使い潰すことも含めて、ブラック企業とまではいかなくても、このような個人を尊重せず、人権を軽視する状況は、たとえ会社の業績が良くても、社員や世の中から見てあまり良いものとは思えないものだ。
o08usyu7231.hatenablog.com

顧客に良い顔、社員に負担

これも前項と類似するものがあるが、「世の中の為」「顧客のため」だと言って、従業員の生活面、健康面を犠牲にするような働き方をしている会社が「会社目線」であると感じる。一方の利益を得るために、一方を犠牲にする考え方が、グレーゾーンどころかブラックであると考えたほうが良い。また、「立場」「力関係」を重視し、顧客重視、社員軽視する管理職も同様である。たとえ、顧客側の迷惑行為であってもである。

これとは逆の優良事例については、こちらに記事を参照していただきたい。
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ハラスメント問題で被害者を指導

(予兆やグレーゾーンを含め)ハラスメントを訴えられると、世の中にとっては良い事でも、会社にとっては都合が悪いかもしれない。それゆえ、「物事の正しさ」よりも

  • 「力関係」
  • 同調圧力
  • 「集団における調和」

のほうを優先するがあまり、被害者の訴えを黙らせたり、退けたり、重箱の隅を含めた被害者のあら探しを行ない、被害者への指導を試みてかえって逆効果になったケースがある。

パワハラ被害者が相談したり、声を挙げたりすることで、ハラスメント被害者を不利益扱いするケースがある。これを「セカンドハラスメント」という。加害者はこれまでの実績が認められ、その企業内では重宝されていることが多く、加害者を処分することが会社にとって痛手になるケースがある。その際に被害者を黙らせる手段をとることがある。加害者が平然とし、被害者が二重に被害を受ける。また、将来ハラスメント被害者になるかもしれない人に対して、「声を挙げると二次被害を受ける」ということを学ばせてしまい、コンプライアンスがますます傾く。これは社会的に大いにマイナスである。
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売上・利益最優先

自分たちの売上利益を最優先する体質は、組織ぐるみで不祥事を起こすことがよくある。これまでニュースでの報道等いろいろあるのでここでは省略する。

データの改竄、不正隠し

これも前項の内容と類似しており、「売上・利益」にとって都合が悪いから、その部分をごまかし(もしくは隠蔽)してしまうのである。最近起きたものなら、三菱電機の空気圧縮機(鉄道車両のブレーキシステムの一部を成す装置)をはじめ、あらゆる事業所で検査不正の不祥事が立て続けに報道されている。2014年頃、某自動車メーカーで起きた、検査時の排ガス規制逃れは、不正なソフトウェアで実現している。ソフトウェアで検査中であることを検知すればクリーンなモードに、それ以外はパワーを重視したモードになり多量のNOxが排出される。ソフトウェアでこのようなことができてしまうから、本当に残念である。

公害・環境問題

製造業等において公害を出している会社。高度経済成長期の頃の、工業地帯ではよく問題になっていた。企業にとっては産業の成長のためにやっているものであるが、公害を受けている地域の人たちにとっては、考えられないくらいの絶望感に包まれていただろう。このような企業が地域社会から応援されるはずがない。

現在でもSDGsが話題になっている。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、環境、貧困、エネルギー、教育、格差、経済、資源、平和等の観点から17の目標が掲げらえている。

やりがい搾取

労働における成果に対して報酬が見合わない企業によく見られる。高いレベルのアウトプットを出すことを要求しながらも、その労働環境は悪く、低賃金であることから、従業員を使用している企業にとっては都合が良い。「従業員を都合良く使い潰している」ともいう。このような状態にありながらも、「やりがい」や「圧倒的成長」などと、ポジティブな面のみを謳っている。本当に「やりがい」を感じているかどうかは、従業員自身が判断すべきであり、違和感があれば「やりがい搾取」と疑ってみてほしい。

人事評価においても、「成果」に見合った「評価」になっていないことがよくある。「パワハラ」を「厳しい指導」と言うこともある。全部会社目線。

必要なのは「やりがい(搾取)」ではなく「良好な労働環境と充分な報酬」である。
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理不尽な下請け扱い

発注先を理不尽な下請け扱いし、自分達の労働環境がホワイトになっているが、業務を丸投げしている発注先にそのしわ寄せが行き、発注先企業の労働環境がブラックになってしまっているケースがある。このような発注元企業は、自分たちさえ良ければいいという考えしかない「会社目線」。発注先企業を含めた取引全体(プロジェクト全体)でより良い状態にすべきであり、一部の人や組織が犠牲になり、被害を受けるるような取引形態の放置は、ブラックと言ってよい。
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不当な断り

逆に、発注元の依頼を不当に断り、ひたすら自社の従業員を守ることだけに専念する発注先企業。従業員が安全に働けるように守ること自体は義務である。ただ、現実として、私はこちらのパターンを見たことがなく、大体は前項にあるような、発注先が被害を受けるパターンである。

コンプライアンス軽視

目の前の業務、売上・利益に直結する業務のアウトプットだけを評価し、コンプライアンスの改善のために行動を起こして、コンプライアンスを重視した判断をしても評価しない、というケースがある。「コンプライアンスは二の次」という姿勢が出来上がっており、特に管理職にこの姿勢が見られると、その組織を疑った方がよい。

物事の判断基準が「正しいかどうか」ではなく「力関係」

いつ不祥事が起きてもおかしくない。このような企業は、上にものが言いにくく、管理職の権限が異常に強く、閉鎖的な組織であることが多い。よほど固い意思を持った社員でなければ、権限の強い人間の顔色を伺う。優秀な人材が退職していくことがある。
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個人や一部の組織の犠牲により実現しようとする「全体最適

下記の記事で解説しているので、参照いただきたい。
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もっともらしい理由をつけてなかなかやめようとしない「偽装請負

偽装請負」という時点で違法であり、「社会目線」ではない。「会社目線」である。
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3.「社会目線」のイメージ

「社会目線」のイメージと言われて思い当たるものを書いてみる。こちらも同様個人のイメージである。業績は重要だが、業績のみならず我々一般人が応援したくなる企業に当てはまるのではないかと考えられる。

働き方の多様性

これまでは長時間労働前提であった。また、そうした人が評価される時代でもあった。しかし、今は違う。人口の減少(人口オーナス期)にともない、労働人口も減少の一途を辿っている。育児・介護等を家庭の事情を抱えた時間的制約のある人をはじめ、多様な働き方を選択できる企業が求職者から選ばれる傾向が強くなっている。それぞれの人を尊重し、多様な価値観、多様な働き方を受け入れられる企業こそ「社会目線」の企業である。。

テレワークの推進

テレワークが可能な業務は、テレワークを推進している企業。新型コロナウィルス感染拡大前から推進されてきたテーマである。大雨、台風、大雪等出社できない状況のとき、テレワーク可能な社員はテレワークを実践する。このようにすることで、公共交通機関等限られたリソースを、インフラ・医療・警察など、出社しないと業務ができないような人達に優先的に割り当てることができる。その意味で社会的意義が大きい。
o08usyu7231.hatenablog.com
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正しい公表、誠意ある対応

社会にとって都合が悪いことでも正しく公表し、誠意ある対応をとる企業。あるメーカーの製品が、稀に発火に至り数件の火災が報告された。原因究明の結果、その製品に使用しているある部品が希少条件下において、発火に至るケースがあるというものだった。そのメーカーは、お客様への説明の上、対象製品の無償点検と、対象部品の取り替えを順次行っていった。火災を発生させてしまい、企業としては大きな損失だが、無償点検という姿勢が世間から評価された一面もあった。

コンプライアンス重視

売上・利益よりもコンプライアンスを重視する企業。売上・利益は企業活動にとってなくてはならないものだが、コンプライアンスをおろそかにしたまま進めるから、不祥事に至るのである。このケースはその逆である。一時的に損失はあっても、世間や取引先からの信用を失わず、逆に応援される企業でありたい。

内部告発

内部告発する末端社員等(パート、アルバイト含む)。会社や組織の一員である以前に、社会の一員として良心が許さないことがあるとき、労働局をはじめ社外の相談機関やメディアに垂れ込むことがある。これこそ素晴らしい「社会目線」である。

ブラック企業との決別

ブラック企業に力を貸さない」という世の中全体にとっての効果を見据えた考え方。ブラック企業だとわかれば、そこで頑張り続けるのてはなく、抜け出してほしい、また、抜け出せるだけのスキルを持っていてほしい。ブラック企業で頑張り続けるのは、ブラック企業を稼がせてしまい、潰れてほしいのに潰れない。ブラック企業と取引を継続することも同じである。だから、この逆をやってほしい。

4.まとめ

我々が持つべきは「社会目線」である。「会社目線」ではない。昇進すればするほど組織内における責任が重くなるため、管理職の中には企業を守ることで自分の立場を守ろうとする人が増加しがちである。一般従業員のときは「社会目線」なのに、管理職になったら「会社目線」といったケースは珍しくない。会社という組織は、社会の中にあって、閉鎖的な印象を受ける。だからこそ、「会社目線」ではなく「社会目線」が求められるのだ。

「会社目線」が行き過ぎて、「社会目線」から逸脱するところがあれば、是正が必要だ。是正が見られないなら、ブラックであることを見抜く必要があるかもしれない。