ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

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業務の準備・片付けも「労働時間」に含まれる。「労働時間」外とするのは違法だ!

業務の準備・片付けは業務時間に含まれないと解釈している人は多いのではないだろうか?

実はこの準備・片付けが業務上義務付けられている場合は、労働時間とみなされるのだが、この法的解釈が意外に知られていない。

この記事では、業務の準備・片付けについての解釈と、実態との乖離について書こうと思う。

目次

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1.「労働時間」の定義を確認

労働時間に当たるかどうか決める3要素として、以下のものが挙げられる。

  1. 法令、就業規則等に決められているか?
  2. 業務の遂行上必要不可欠なものかどうか?
  3. 使用者の指示があったかどうか?

引用元
sharou4.com

労働基準法には「これが労働時間の定義である。」というものは存在しない。しかし、判例により示されている。

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいう。労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと判断できるか否かによって、客観的に決まる。

実作業前後の準備行為の時間は、準備行為が義務付けられている場合や、これを余儀なくされている場合は、特段の事情が無い限り、労働時間として扱われる。

裁判では、使用者に義務付けられているか否か、実作業前後の準備行為を必要とする理由・程度の観点から、個別に判断される。

2.作業服着用を義務付けている職場における着替え時間は労働時間に含む

前章の内容より、業務のために、始業前の準備、終業後の片付けを、使用者によって義務づけられている場合や現実に不可欠である場合には、指揮命令下に置かれたものとされ、労働基準法上の労働時間に該当すると判断される。

その一例として、作業服着用を義務付けている職場における着替え時間がある。具体的には、

  • 始業開始前、更衣所において作業服及び保護具等を装着し作業場まで移動する行為
  • 終業時刻後、作業場から更衣室等まで移動し、作業服及び保護具を脱離する行為

である。これらは、労働者が就業を命じられた業務の準備行為と認めて、これを労働基準法上の労働時間としている判例がある。

使用者から義務付けられた作業服や保護具の着脱等に要した時間については、労働者が就業を命じられた業務の準備行為であり、使用者の指揮命令下に置かれたものとされ、これを労働基準法上の労働時間としている。

3.「勤怠上の終業時刻と事業所の退場時刻は違って当たり前」というおかしな常識

私は元々IT企業にエンジニアとして勤めていた頃、あるプロジェクトで顧客先の大手メーカーで常駐しており、当該顧客先でソフトウェア開発業務に携わっていた。この顧客先では、顧客先の作業服の着用が義務付けられており、始業前と終業後には事業所内の更衣室で着替えを行っていた。

当初私自身、この作業服の着替え時間が労働時間に含まれているものとは知らず、「直接作業していないため、労働時間に含まれていなくて当然」と考えており、何一つ違和感なく過ごしていた。

また、例えば始業時刻が9:00ならば、9:00にはパソコンの起動が完了しており、業務を開始できる状態にしておくのが当然というのが私の感覚であった。はっきりと覚えてはいないが、どこかでそのように教わったのだろう。

この事業所では、事業所入り口にセキュリティカードを通す設備が設置されている。この設備は、セキュリティーカードを通した時刻(事業所の退場時刻)は自動で記憶するのだが、これとは別に各作業者の勤怠(特に残業時間を含む終業時刻)については手動で入力しなければならない。

ある時、この『終業時刻』と『退場時刻』が一致していることについて、常駐先企業内にて注意喚起があり、その内容が従業員に展開された。

  • 「勤怠上の終業時刻と事業所の退場時刻が同じであることはおかしい。」
  • 「終業時刻から退場時刻までの間、着替えの時間があることを考慮すると、退場時刻まで業務をしていないにも関わらず、業務をしたことになっている。」
  • 「終業時刻から退場時刻まで、普通は5~10分くらいの差があるのが自然だ。」

この事業所の上層部は、作業服の着用が義務付けられている職場において、着替え時間が労働時間に含まれていない前提で周知している。

これまで解説で述べてきたように、上述の事例は労働時間に含まれるべきなのである。従って、この事業所内の従業員に展開された注意喚起は間違っており、違法行為を強要していることになるのである。

しかし、実態は使用者も大半の従業員も知らないケースがほとんどであろう。

4.単独ではインパクトが小さくとも他にも違法行為があるかも知れない

本記事で挙げた、作業服の着用が義務付けられている職場での作業服の着替え時間だけなら5~10分程度のものであり、本来労働時間に含まれるべきであるが、労働時間に含まれていなくとも、この件単独ならインパクトは小さいだろう。

また、前述したとおり大半の従業員がこのことを知らず、またはいちいち目くじらを立てて訴える人は少数派かも知れない。

重要なのは、このようなことをしている企業は他にも労働基準法違反などの違法行為がある可能性があるということである。

実際、前章に挙げた事業所の例では、他にも偽装請負も行われている。パワハラも見受けられる。
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この事業所と同一企業の別事業所では、長時間労働パワハラといった労務トラブル、製品出荷時の検査の不正および長年に渡っての隠蔽といった不祥事もあり、ニュースで報道されている。

このような実態を踏まえると、「小さいことだから見過ごす」のではなく、「大きな不祥事が起きる予兆」として捉えなければならない。

正しい労務知識を身につけ、正しく実践し、運用し、それが当たり前となることを願ってやまない。

また、労働法規を守るのは当たり前でありながらも、実態はなかなか守られていないケースが多い中で、しっかり守られていると、世間からはホワイト企業としてのイメージが高まり、企業にとってもアドバンテージになる。そのような企業が消費者からも労働者からも選ばれるべきであり、消費者も労働者もそのような企業を選ぶべきである。