転職活動において内定を得ると応募者は喜び、不採用になると応募者は落胆する姿が思い浮かぶ人は少なくない。特に、書類選考でお見送りとなると、面接にも進めず、応募者としては手の打ちようがないという気分になってしまうだろう。
また、不採用理由が不自然なものであると、応募者自身は何を対策すれば良いのかわからない。一般的に、不採用理由を、応募先企業や転職エージェントに問い合わせること自体は何の問題もないのだが、企業はこれに回答する義務はない。
重要なのはそこではない。書類選考であろうと、面接であろうと、お見送りになることは最悪なストーリーではない。入社後にミスマッチが発覚することが、最悪なのである。
また、企業が人を選ぶなどという価値観は、今のご時世において、とっくに廃れていると言える。応募者も企業を選ぶのである。良い、悪いではなく、マッチかミスマッチかである。
採用お見送りとなっても、必ずしも応募者に落ち度があるわけではない。この記事では、不自然な不採用理由から企業の内情や抱えている可能性のある問題を事例と共に挙げ、応募者が不必要な落胆なく、応募者が企業を見抜くスキルの重要性について語る。
1.不自然な理由でお見送りとなった書類選考
転職活動中のA氏は転職エージェントXサービスに登録しており、同サービスのキャリアアドバイザーB氏が、A氏を担当していた。A氏は、エンジニアとして様々なプロジェクトで数多くの実績を残してきたベテランである。
キャリアアドバイザーB氏は、コンサルティング企業のY社を、A氏へ紹介した。Y社は、世の中の技術者不足を解消する技術者教育の分野を事業の一つとしている。Y社は同事業における「技術教育スタッフ」を募集案件として、転職エージェントXサービスへ求人を提示していた。
A氏はB氏と面談し、A氏自身のキャリアの棚卸しをするとともに、Y社の説明を受けた。B氏はA氏の経験からY社の「技術教育スタッフ」の募集案件に適していると判断し、A氏に応募検討を依頼した。
A氏はこれまでのシステム開発、及び技術者教育両方の経験を保有しており、これらを活かして、後世に技術を伝授することで、世の中の技術者不足を解消する技術者教育の分野で社会貢献したいと考え、上記案件に応募した。
A氏は履歴書、職務経歴書をB氏へ提供し、B氏がこれを確認した。その翌日、B氏はA氏に対して、
「職務経歴書の内容が非常に分かりやすくて、大変良いと思います。このまま修正なしで、Y社へ推薦させていただきます。」
と連絡し、書類をY社へ提供した。
推薦から二週間後、A氏はB氏へY社案件の書類選考の状況を確認した。するとB氏はすぐにY社へ確認し、その回答はお見送りとのことであった。
お見送りの理由は、エンジニアとしての経験が豊富であるとの判断であったが、直近の業務における対象の製品分野が、Y社の求める分野と異なっているとのことであった。
2.選考中・選考結果に応募者が感じた違和感
A氏は書類選考期間中もY社のホームページ等で調べ、Y社に対する理解を深めていった。その過程で、違和感や不審な点が二点見受けられた。
一つは、求人票と応募先企業のホームページの内容に矛盾があった。月平均残業時間が、
ホームページ:15時間
求人票:20~40時間
となっていた。平均残業時間とはいえ、対象が全社のものか、募集部門のものかの疑問があったため、A氏は求人票に記載されている月平均残業時間の対象について、B氏に確認したところ、全社との回答であった。
ホームページに記載のある月平均残業時間は全社のものと考えるられるため、両者で矛盾があり、かつ20~40時間は多めであると、A氏は感じていた。
二つ目は、書類選考の結果連絡が無く、応募日からかなり時間がかかっているという点である。Y社のホームページ内にも中途採用に関するページがあり、同所には、
「各段階の選考結果については、5営業日以内にご連絡差し上げます。」
「応募から内定まで、2~3週間程度の予定です。」
と記載があった。
Y社のホームページの内容は、ホームページからエントリーした時の選考日程で、人材会社を経由するともっと時間がかかるのことも考えられる。それでも書類選考だけで二週間は時間がかかっている印象を受けた。
そして、書類選考の結果においても、A氏は二点違和感を感じた。
一つは、直近の業務における対象の製品分野を理由に不採用としたことだ。「技術教育スタッフ」は製品に依存しない汎用的なスキルが求められると考えられる。A氏はエンジニアとしての実績に加え、技術者教育の経験を保有していることが優位性なのだが、Y社はここをあまり重視しなかったようだ。様々な製品開発を経験した多様な技術者が集まってこそ、組織としてシナジーが生まれるというのが、モダンな考え方だ。しかし、Y社の場合は、直近の業務における対象の製品分野を絞った形での採用ではないかと考えられる。
二つ目は、直近の業務における対象の製品分野が求めているものと異なることは職務経歴書を一目見れば分かるはずだが、他の応募者もいるとはいえ、お見送りの判断になぜ二週間もかかるのかという点である。応募から二週間も経過した時点でも、A氏からわざわざB氏経由で状況を問い合わせしないと、結果連絡が得られないということは、問い合わせしないまま放置していると結果を知る時期がもっと後になっていたということである。
3.開示されないが可能性のある理由を全て挙げる
A氏は、書類選考でお見送り連絡を受けた週末、不採用になる一般的な理由を調査した。概ね次のようなものである。
- 書類不備。書類の内容がわかりづらい。
- 応募先企業が求めるスキルや経験が不足している。
- 応募者の経歴から、応募先企業に応募している理由が不明。
- 応募者の年齢。(応募者に伝えられることはない)
- 応募者がオーバースペックであり、既存社員との調和が取れない。
スキルや経験のミスマッチならお見送り理由としてわかりやすいが、A氏の場合は「直近の業務対象の製品分野」である。求人票と照らし合わせても問題なく、だからこそキャリアアドバイザーB氏は勧めているのだ。ただ、求人票に全てが記載されているとは限らない。これら以外に考えられる理由を想定しなければならない。
- 応募人数制限があり、他の応募者との比較やタイミングの問題。
- 企業側の採用方針の転換。
- 経験した製品分野を絞りたかった。
- ポジション、勤務地、働き方において、企業側が応募者の希望を実現できない。
- 企業側に裏事情があり、発覚されたくない。
- 何かしらのミスマッチ。特に、企業側にとって都合が悪いもの。
一般的におさえておかなければいけないことは、不採用になっても一概に応募者に落ち度があるわけではないということである。書類の不備や、応募者による失礼な振る舞いは論外として、スキルや経験以外に、応募者ではどうしても避けられないこともあるということである。
良いか悪いかではない。マッチかミスマッチだ。
4.不採用で落ち込むのではなく、企業を見極めるスキルを高めるべきだ!
転職活動において、企業に応募するということは、「応募者が企業に採用してもらう」のではない。企業側も、「応募者を採用してやる」という姿勢ではいけない。お互いにマッチ/ミスマッチを見極める場だ。
応募者は企業に応募し、選考で不採用になったからといって落胆せず、応募者も企業を見極めるスキルを高めるべきだ。
重要なのでもう一度述べる。
「不採用になることは最悪なストーリーではない。入社後にミスマッチが発覚することが、最悪なのである。」
そのためには、応募者も企業を見極めなければならない。
本記事の例でいうと、上述の月平均残業時間の記載が、ホームページと求人票で異なっているように、媒体によって矛盾が生じていることはあってはいけない。多少の対象時期のずれはあっても、片や「15時間」、他方は「20~40時間」というのは差があるように見える。
書類選考にかかる期間についても、一概に〇日とは言えないが、時間がかかるならその旨いつごろまでに結果を出すのか予定を明示することが望ましい。他の応募者の対応もあるため、予定よりも時間がかかりそうであれば、その旨応募者なり、人材会社へ伝えると親切である。
ここまででも、細かいことだが企業イメージを落としかねない。応募者としては心配になる。やはり企業としては顧客であれ、取引先であれ、応募者であれ、対外的な対応は失礼のないよう、丁寧な対応を心掛けるべきである。
一方、書類選考に時間がかかる理由として、応募者の希望するポジションにはマッチしなくとも、別ポジションでの検討を行い、そちらを含めて時間がかかっているというケースも考えられる。企業にとっても人手不足であり、別ポジションにマッチする人材であれば、そちらで活躍してもらうほうが良いと考えることもある。ある意味親切ではある。しかし、応募者の意向にもよる。まず、応募したポジションの不採用を早く伝えた方が、応募者としても別ポジションで応募するか、別企業へ応募するか意思決定が早くできる。やはり、必要以上に応募者を待たせるのは良くないと考える。
あと、不自然な不採用理由には裏があると考えられる。不採用理由は全て応募者に開示されるとは限らない。特に「年齢」を不採用理由とするのは現在ではタブーである。もっともらしい不採用理由を考えるのに時間がかかるというケースも考えられる。応募者のコンプライアンス意識が高かったり、応募者が労働法に詳しかったりすると、違法やグレーゾーンがまかり通る企業にとっては都合が悪いので、採用を避けたいというケースもあるだろう。
不採用理由が不自然だと分かれば、別企業への応募を検討するのが良い。そのためにも、複数の転職エージェントに登録しておき、多方面から意見や助言をもらうことをお勧めする。転職以外のキャリアを検討するのも一手だ。
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