「ブラック企業」
「ブラック労働」
「ハラスメント」
このような言葉が世の中にだいぶ浸透し、様々な情報が出回っている。
世間一般の方々も、コンプライアンスに関する関心が高まり、「ブラック」な実態を排除していこうという動きが高まっていることは、歓迎されるべきことだ。
そして、明らかな法律違反、暴言、暴行等、
「ブラックだ!」
「ハラスメントだ!」
それでも、組織によっては世間の感覚から逸脱し、まかり通ってしまうことがある。
一方で、
「表の言葉だけを切り取れば正しいため、反論できない」
ケースがある。
一見正しそうに聞こえるが、、、、
受け手にとっては不利益・・・、
迷惑や被害を受けているにも関わらず声をあげにくい・・・、
声をあげても相手の都合のいいように言いくるめられる・・・、
受け手が受ける被害や迷惑を理解してもらえない・・・、
など、「ブラック」とまでは言いづらい場面でも、大いに悩まされることが残念ながらある。私自身もこのような言葉に悩まされてきた。
「グレーゾーン」という言葉は聞いたことがあるという人は多くおられるだろう。
しかも、「グレー」という言葉が「ブラック」よりも更に曖昧だというふうにも感じる。人によっては「それ『グレー』ではなく、完全な『ブラック』だ!」という人もいるし、そのように言いきれる内容もある。
この記事では、一見正しそうに聞こえ、かつ表面上は正しい内容ではあるが、背景状況によっては裏がある言葉について、その建前(表)と本音(裏)を対比させ、解説する。
1.「ステークホルダーとの関係性」→「コンプライアンスは二の次」
ビジネスにおいてステークホルダー(利害関係者)は重要である。
(様々な部門の)社員、関連会社、取引先、お客様、エンドユーザ、株主、・・・、これらを無視してビジネスはできないし、何よりも信頼関係は大切である。信頼関係を失えばビジネスに影響が出る。誰も異論はないだろう。
しかし、ステークホルダーからのどのような要望にも応えなければならないのかというと、それは違う。
それは、関係者にとっては都合が良くても、社会的には正しいと言えないことである。即ち、コンプライアンスを土台としてビジネスが成り立っていることを常日頃から意識しておかなければならない。
製品開発のためのコストを下げるために労働者を安く働かせたり、納期を早めるために長時間労働を強いるやり方は、「努力」ではなく「犠牲」である。労働者の「犠牲」の上にビジネスを成り立たせるのは「人権侵害」である。
このようなことを、コンプライアンス教育で周知している企業でさえ、いざ関連部門のしわ寄せを受けて長時間労働に至った問題について是正が必要である旨、声を挙げた社員に対して、社会的優良事例に値するにも関わらず、その社員の上司が不正な低評価をした事例が実際にある。「ステークホルダーとの関係性」を重視し、「コンプライアンスは二の次」となったケースだ。
世間では段々と、コンプライアンスが欠落しているステークホルダーとは、ビジネスを控えるべきという風潮になってきている。特定の企業や組織が、どれだけ儲かろうが、コンプライアンスを無視できない時代になっていることは既にお分かりだろう。
「ステークホルダーとの関係性」を「コンプライアンスは二の次」とすることでしか実現できない組織は、そもそも成り立たないのである。
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2.「顧客に迷惑をかけない」→「社員は我慢」
これも前章の、「ステークホルダーとの関係性」や「コンプライアンスは二の次」の内容と重複する部分がある。
「顧客に迷惑をかけない」ことは、ビジネスの鉄則であり、どの企業も新入社員に対して教えられる。ここだけを切り取れば、誰も異論がないくらい正しい。
しかし、「顧客に迷惑をかけない」ために、長時間労働に代表されるように、社員の我慢の上にビジネスが成り立っているケースが少なくない。
「顧客に迷惑をかけない」部分だけが強調され、「社員に迷惑をかけている」ところはスルーしているケースがある。だから、社員が見切りをつけて離職していくのである。社員に我慢させる状態がいつまでも続いては、ビジネスは成り立たない。結局片手落ちである。
長時間労働以外には、「カスタマーハラスメント」という問題も着目されてきている。
「お客様に失礼の無いように!」という部分は強調されるが、「カスタマーハラスメント」の対策が進んでいない職場では、依然として「社員は我慢」で成り立っている。このような状態を放置して良いわけがない。
「顧客に迷惑をかけない」ことを、「社員は我慢」することでしか実現できない組織は、そもそも成り立たないのである。
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3.「協調性は大事」→「同調圧力の強要」
「協調性は大事」というのはビジネスに必要なマインドである。
ただ、これを発信する人が「協調性」と「同調圧力」の違いを分かっているかどうかが見どころである。
「協調性」は、「異なった環境や立場にある複数の者が互いに助け合ったり譲り合ったりしながら同じ目標に向かって任務を遂行する素質」である。
「同調圧力」は、「特定のグループにおいて意思決定、合意形成を行う際に、少数意見を有する者に対して、暗黙のうちに多数意見に合わせるように強制・誘導すること」である。
「同調圧力」のことを「協調性」と称する組織は、破綻への扉を開いていると言っても過言ではない。
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4.「無理な要求をしているつもりはない」→「要求する側が無自覚」
「無理な要求をしているつもりはない」というのは要求する側が言う言葉で、一見要求相手に配慮しているように感じられる。
ビジネスにおいても、プライベートにおいても、相手への配慮は大事である。
しかし、要求する側が「無理な要求をしているつもりはない」としながらも、受け手には「無理な要求」と感じることがある。
そもそも「無理な要求」かどうかは受け手が決めることであり、要求する側がどう思っているかは関係ないのである。
要求する側が「無理な要求かどうか」について言及すること自体は悪くないが、最終的には受け手の判断に委ねるべきである。これをせずに一方的に要求する側の感覚を押し通すことで、受け手に迷惑をかけたり、最悪の場合要求側の責任において受け手のメンタルトラブルを招く事態にまで発展する。
要求する側が、配慮しているつもりではあっても、無自覚であるという可能性が少なくない。
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5.「成長のために負荷をかける」→「長時間労働」
何事においても「成長」するためには一定の時間がかかる。
そして、自ら「成長」できる人材はその限りではないのだが、「成長」のためのきっかけを与えてやる必要のある人、「成長」するために多少の「負荷」をかけなければならないケースも存在する。
しかし、「長時間労働」はまた別次元の話であり、「長時間労働」でなくても「成長」できる場合はある。業務の中身なども然りである。
「長時間労働」の原因は、大抵の場合「長時間労働」に巻き込まれる社員とは別のところに原因がある。
法律や罰則の甘さに代表される労働行政・司法の問題
誰でも出世のチャンスがある代わりに重い責任を背負わされる組織風土の問題
無理な要求をする顧客の問題
マネジメントの問題
・・・
私自身元々
「長時間労働の原因は自分のスキル不足である」
と思い込んでいたが、多くのプロジェクトを経験し、これはウソであることがわかっている。
長時間労働の原因は、自身の経験、世間一般の認識、専門家の見解を踏まえると、大抵は
「業務量とリソースのミスマッチ」
「自分・自部門の利益を最優先し、コンプライアンスが二の次」
「マネジメント不足」
という「前段の粗悪さ」に集約される。
この「前段の粗悪さ」を揉み消すために、「成長」という言葉を引き出して正当化し、
「『長時間労働』が『問題』である」
という認識から少しでも反らし、業務を押し付ける側にとって都合の良いように洗脳していくという手口を、自覚の有無にかかわらずやっているのである。
「業務の遂行」や「社員の成長」を、「長時間労働」でしか実現できない組織は、そもそも成り立たないのである。
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6.「ストレス耐性」→「社畜の量産」
「ストレス耐性」は、文字通り「(業務などで発生する)ストレスに対して耐えることのできる強さ」であり、ビジネスにおいてある程度必要とされている。
実際、「ストレス耐性」が必要な業務もある。特に顕著なのは、警察、消防、医療機関、自衛隊等、人命をはじめとする人々の安全を守ることを主な業務とする職業である。過酷な状況でも、業務に邁進しなければならず、最悪の場合は職務中に命を落とすケースもある。これによって支えられている我々としては、素直に敬意を表するしかない。ストレスを多く抱える分、このような職業にはパワハラ等が発生しやすく、たびたびニュース報道でも目にする。この部分は改善が必要である。
そもそも、私は「ストレス耐性」という言葉が嫌いである。
本来、労働者に「ストレス耐性」、すなわち耐えることを求めるのではなく、「ストレス」の元を除去するための取り組みが求められるからだ。組織や管理職が、これを怠ることで一般労働者がしわ寄せを受け、これに我慢することを「ストレス耐性」と称する構造は、「ストレス耐性」を組織にとって都合よく使っているだけなのである。
グレーゾーン、違法行為、長時間労働、ハラスメントがまかり通り、それを自覚しながらも正そうとしないにも関わらず、組織に合わせることを労働者に要求する体質であるとともに、これに染まっていく社畜が量産されていくというケースも十分にありうるので、「ストレス耐性」は、使い方、使う場面によっては最大の警戒が必要な言葉と言える。
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7.「全体最適」→「特定の人や組織の犠牲」
「全体最適」は、文字通り「全体を最適にする」ことを指しており、ビジネスにおいて必要な概念である。別の言葉ではWin-Winと言い換えても良い。反対の言葉として「部分最適」がある。経営者や管理職には「部分最適」ではなく、「全体最適」が求められる。
一方、「全体最適」というと、組織のために、社会のために、全体を最適にするために、自分が我慢しなければいけない可能ような心理に陥るが、決してそうではない。特定の人や組織の犠牲の上に全体が成り立つ組織構造、個人が我慢を強いられる組織体質は、極めて不健全である。
また、我慢した組織や個人から歪みが肥大化に耐えきれず破綻するケースもある。具体的には、パフォーマンスの低下、モチベーションの低下、メンタルトラブル、離職といった感じである。これでは結局「全体最適」にはならない。
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8.「他責思考はダメ!」→「被害者を黙らせるためのキラーワード」
「他責思考はダメ!」なのは、ビジネスにおいて正しい場面もある。何か問題が発生したときに自分事として捉え、自分がコントロールできる範囲のことに全力で取り組むことは、ビジネスにおいて必要なことである。
そして、「自責思考」を是とし、「他責思考」を悪とする風潮がある。しかし、「自責思考」「他責思考」ともにメリット・デメリットがあることをあまり知られていない。
一方、「他責思考」はダメであり「自責思考」であるべきだというマインドを他人に都合良く押し付ける悪用の懸念がある。他人に「自責思考」を押し付ける時点で押し付ける側は十分「他責思考」である。
一番あってはいけないのが被害者のせいにすることだ。ハラスメントであれば、被害者に原因があるとして責任を押し付けることで、「セカンドハラスメント」として二重に被害を受けることになる。絶対にあってはいけない深刻な事態だ。
「他責思考はダメ!」というマインドを悪用すると、被害者が声をあげることができなくなり、根本問題が解決されないままである。被害者を黙らせるキラーワードだ。
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【最後に】事例をインプットして、常に自分の頭で考える習慣をつける
この記事で扱った内容は、一見正しく聞こえる言葉で、実際ビジネスにおいて必要なマインドである一方で、使う側が自分(達)に都合良く悪用しやすい言葉でもある。
表面的な言葉に惑わされず、背景を加味し、裏側を読み取り、常に自分の頭で考える習慣を身に付けなければいけない。そのためにも、事例を含めた情報収集は重要だ。
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最近よく目にする一例をあげると、ブラック企業の求人広告である。
「アットホームな会社」→「他にアピールする内容がない」
「少数精鋭」→「大量に人が離職した後」
「20代の若いメンバーが多数」→「マネジメントが未熟」
「圧倒的成長」→「ストレスフル」
「幹部候補生急募」→「薄給激務」
・・・
これらの言葉には裏側があることが、インターネット等様々なメディアで解説されているため、だいぶ世の中に浸透してきた。
しかし、この記事で扱った内容は、より労働者の身近に迫りやすいものだ。特定の組織に洗脳されることなく、広く世の中を知り、あなたが能力を最大限発揮することで貢献し、それに見合った十分なリターンを得られる環境へ移る努力をしていただきたい。転職活動、副業、フリーランス、人によって選択肢は様々だ。
この資格を取得するためには、認定講座を受講していただく必要があります。受講後の試験に合格した方が資格を取得できます。講座は全てオンラインで受講できます。資格の内容は、人事や労働に関する知識です。就職、労働条件、退職、残業、休職、解雇などの法律や決まり、トラブルに関する知識を得ることができます。
「ブラック企業対策のノウハウを知りたい」