ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

「全体最適」とは特定の人や組織を犠牲にすることではない

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全体最適」という言葉をよく聞く。

言葉の通り「全体を最適にする」ことなのだが、そのために

  • 「何かを犠牲にする」
  • 「個人を犠牲にする」
  • 「全体のために尽くすことを何よりも優先する」

など、ネガティブなことをイメージしてしまうのではないだろうか?

「滅私奉公」という言葉が示すように、個人よりも組織を優先するというマインドは、従来多くの日本人によく見られるものだった。個人が我慢を強いられ、その我慢の上に物事が成り立つことに疑問を持つことはなかった。

しかし、今は違う。

全体最適」を「個人」が我慢し続けなければならない環境は異常である。この記事では、「全体最適」が「個人の我慢」ではないことについて解説していく。


1.「全体最適」と勘違いしやすい点

全体最適とは、チームやシステムなどの組織全体が最適である状態のことを指す、経営用語のひとつである。全体最適を達成することで、業務の効率アップやコスト削減、労働生産性の向上などさまざまなメリットが期待できる。全体最適を目指すには、組織にとって最適な落としどころを見つけ、そこに向かっていくことが必要である。一部の人や部門にとっては最適ではないこともある。また、異なる複数の立場においてWin-Winの関係であることも必要である。

一方、旧態依然の組織や、滅私奉公が当たり前の組織、古い考え方の上層部・管理職・ベテラン社員が幅を利かせている組織においては、全体最適のために我慢を強いるような精神論を持っているケースがある。勘違いしてはいけないのは、「全体最適」を大義名分に、「個人や一部の部門を犠牲にしてでも全体のために尽くす」ことである。このようなことになると・・・、

  • 無理を強いられた一部の個人、一部の組織に無理が祟り、業務が回らなくなり、そこから全体が破綻する。
  • 従業員におけるモチベーションの低下。
  • 組織におけるパフォーマンスの低下。
  • 業績の低下。
  • 無理を強いられたことで被害を受けた個人や組織からの訴訟のリスクの保有
  • 長時間労働をはじめとする安全配慮義務違反等による法的リスクの保有
  • 企業イメージの悪化。
  • 優秀な人材の流出。
  • 新たな人材確保困難。
  • 労働行政からの指導、是正勧告。

これを「全体最適」というだろうか?

ここまでで言えることは、

「『労務問題』を出せば、それは『全体最適』ではない。」

である。ただの「ブラック体質」である。

2.ソフトウェア開発における「全体最適」を考える

「顧客目線」
顧客満足
「お客様の要望に、早く、安く、・・・」

新入社員の頃にこのようなことを教わった人は多くいるはずである。

しかし、

「『顧客目線』は大切だが、それが何よりも勝る正義となってしまい、社員の生活や健康を脅かすことは『全体最適』ではない」

ということを教わる機会があっただろうか?

教わる企業にいた人もいるだろう。形だけ教わっても、具体的な行動に結びついておらず、目先の「納期」「スケジュール」ばかり気にして、気づいたら『ブラック』になっていたという人もいるだろう。

ソフトウェアエンジニアで言うと、顧客からの要求を受け続け、ソフトウェア要求仕様が複雑になり、ソフトウェア開発に負荷がかかり、ソフトウェアエンジニアに力技で乗り切らせ、品質面でリスクを負う、もしくはコストが膨らみ、その割にはリターンが伴わず、次回からそれが当たり前になるというような感じだ。

また、短納期で無理なシステム開発や調査を要求してくる顧客、これを誠意をもって受け入れようとしている管理職は、本当の意味で「全体最適」をわかっていない。顧客にとっての「全体最適」のことを「全体最適」と言っているのなら、その企業との将来の取引を見直した方が良い可能性がある。

理想を追及しすぎるとキリがないので、ソフトウェアエンジニアの負担を軽減するなど、最適な落としどころを見つけ、そこに着地するよう仕向ける、そして関連するステークホルダを誰一人犠牲にすることなくシステム開発を成功させることが、本当の意味で「全体最適」だ。

ソフトウェア開発では、良いものを安く作りたいという欲望のもと、発注元からシステム開発の依頼を請けると、下請けやオフショアを安く使い、下請けのソフトウェアエンジニアに犠牲を強いてシステム開発を達成させようとする傾向がある。これが多段階になると多重下請け構造となる。多重下請け構造は、発注元から開発依頼を受けた「元請け」が、

「元請け」→「一次下請け」→「二次下請け」→「三次下請け」→「四次下請け」→「五次下請け」・・・・

のように、下位の下請けに開発のほとんどを丸投げし、自らはマージンのみ搾取してほとんど価値を提供しないスタイルが、多段階にわたって行われるものであり、下位の下請け企業になるほどブラック労働になりやすい。これは、「全体最適」からは遠くかけ離れたものである。中間の各下請け企業が、各企業ごとの「最適」を「全体最適」と言っているようでは、本当の「全体最適」ではない。「部分最適」だ。

全体最適」ソフトウェア開発は、多重下請け構造を廃止し、内製化できる部分はできるだけ内製化し、関わる企業を少なくし、自動化や汎用設計を行い、余計な機能を開発せず対象の絞り込みによってコスト(ソフトウェア開発のコストのほとんどは人件費である)を達成する、もしくはソフトウェアにて製品の価値を出すことに注力するかのどちらかである。

3.「全体最適」と称して特定の人や組織を犠牲にすることは全体の破綻に繋がる

ソフトウェアだけではない。製品の製造や開発における「コストの安さ」を追及するあまり、「強制労働」や「無償要求」という手段を取ると、その弊害の方が大きくなるリスクがある。

  • 賃金の面における経済的犠牲を強いることでコストを抑えていることが、内部告発やメディアによって世間に広まる。
  • 世間からは「人権侵害」と認識される。
  • 「人権」を「侵害」して製造された製品は、「不買運動」等により消費者から購入を控える動きが出てくる。
  • 同様に「人権」を「侵害」してビジネスを成り立たせる企業との取引は、(まともな企業であれば)見合わせる動きが出てくる。
  • 「人権侵害」をしている企業は、世間、消費者、取引先、社会から応援されなくなる。
  • 「人権侵害」をしている企業は、これらの要因により、業績が下がり、以降の存亡に影響する。

「コスト削減」で「全体最適」を実現しようとした結果、方法を間違えると「全体の破綻」に繋がることになる。全ての人の人権を守り、誰を犠牲にすることもなく、ビジネスを成功させるのが「全体最適」である。

このような内容は、コンプライアンス教育などで啓蒙されておくべきだし、私の会社でも以下のようなコンプライアンス教育が行われている。「全体最適」を達成するにはコンプライアンスが徹底できていることは最低限の条件だろう。
o08usyu7231.hatenablog.com
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労働者に対する賃金を安くすることでコスト削減を実現することが問題であるように、長時間労働により短納期での完成を実現することも問題だ。前行程の問題や遅れによるしわ寄せを、後行程の過重労働により吸収する事業構造も問題だ。これらは「全体最適」に見えても、一部の人や組織の犠牲の上に成り立つ構造であり、いつ限界に達して破綻してもおかしくない。
o08usyu7231.hatenablog.com
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4.「全体最適」を大義名分とした我慢の時代は終わった!目指すはWin-Winだ!

昔は単純な時代だった。
モノを作れば作るほど売れる時代だった。
理不尽なこともあった。
我慢することも必要だった。
偉い人に従っていればいい時代だった。
企業に尽くせば雇用は保証してくれる時代だった。
年功序列で長く勤めれば報われた。
頑張れば更に報われる時代だった。

今はどうだろうか?
モノを作れば作るほど売れるだろうか?
理不尽なことを許せる時代だろうか?
我慢して報われるだろうか?
地位のある人に従っていればいいと言えるだろうか?
終身雇用は破綻していないか?
年功序列ほ破綻していないか?
頑張っても報われるだろうか?

全体最適」は「全体」のために自分が「我慢」することではない。犠牲になるなどもってのほかである。「我慢」して報われる時代は終わった。

必要なのはWin-Winである。Win-Win以外は破綻なのである。個別のチーム、組織でそれぞれ事情は異なるが、個人を犠牲にすることなく、全体にとってベストな状態を模索してほしい。

更に、働き方に話を広げる。「全体最適」と「働き方改革」の本質は似ている。労働人口が減ってきているなかで、いかに企業が個人個人のパフォーマンスを最大限活用し、組織として最大のアウトプットを出し、尚且つ個人個人がいきいきと働くことができ、世間・社会から応援され、企業・個人共にWin-Winの状態を目指すかが鍵である。

働き方の多様性を認め、長時間労働の強要を廃止し、(可能な業務については)テレワークを推奨し、副業を容認し、制約を抱える多様な人材が集まれる環境にすることだ。現在ではそのような企業の方が優位性が高いとされ、優秀な人材が集まりやすい。

滅私奉公、企業への忠誠心、パワハラ的マインド、我慢の強要、間違った意味の「全体最適」、・・・、こんなことがまかり通る企業は、市場から退場させられる時代である。

今後は人材の流動性はますます高まる。Win-Winの時代となるためにも、犠牲や不利益を受けている労働者、そうでない労働者とも、まずは転職サイトに登録し、いざというときに備え、「全体最適」を正しく理解できる企業へシフトしてほしいと願っている。

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