ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

ブラック労働かも!と感じたときに思い出したい言葉の言い換え事例

ブラック労働が常態化している現場、ブラック労働の予兆がある現場、またそうでなくても、ネガティブな状況をポジティブな言葉に変えて表現することがあるブラック企業の求人広告にも見受けられる。

叱責を受けたが何か違和感があると感じたときに、以降の各【項目】に示す内容について、後述する【観点】に基づいて思い出してほしい。


【観点】

  • 各【項目】の【○】に示す状態を、【×】に示す言葉で表現していないか?
  • 各【項目】の【×】に示す言葉が、【○】に示す意味になっていないか?
  • 各【項目】の【×】と【○】を混同していないか?

これらの【観点】で着目し、【×】に示す表現(以下に示す一覧)は、背景状況を含め、本当に適切に使われているか疑うべき表現だ。

「自分の圧倒的な成長のために頑張らなければいけない」と思っていたこれまでの状態からマインドが変化し、「ブラック労働」であることに気づくかもしれない。

「自分のためを思って指導してくれているのだから、辛いけど我慢しなければならない」と思っていたこれまでの状態からマインドが変化し、「パワハラに巻き込まれている」ことに気づくかもしれない。

「頑張っても評価されないのは、自分が努力不足だからだ」というこれまでの状態からマインドが変化し、「真面目さ・謙虚さ・優しさに漬け込まれ、安く使い潰されて、過小評価されているのではないか」と気づくかもしれない。

知識を身に付け、労働トラブルの予防に役に立てば幸いである。


協調性がない

  • 【×】協調性がない
  • 【○】同調圧力に屈しない

【解説】
「協調性」とは「異なった環境や立場にある複数の者が互いに助け合ったり譲り合ったりしながら同じ目標に向かって任務を遂行する素質」、「同調圧力」とは少数意見を有する者に対して暗黙のうちに多数意見に合わせるように強制・誘導することを指す。自らの意思で行うか、強要されるかで全く異なる。
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会社目線

  • 【×】会社目線
  • 【○】社会目線

【解説】
「社会のため」と労働者に過重労働を強要する姿は、労働者に対する不利益を考慮していないことから「社会のため」ではなく「会社のため」。「会社にとって都合が良いか否か」が判断基準になっている場合は、コンプライアンス意識が薄い可能性がある。「世間、社会にとって良いか否か」を考えてみてほしい。
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圧倒的成長

  • 【×】圧倒的成長
  • 【○】激務でストレスフルな労働環境

【解説】
【×】はブラック企業の求人広告でよく見かける言葉。実際には【○】の状況であり、圧倒的成長など見込めるはずがなく、企業イメージが低下し、法的リスクを抱え、優秀な人材が流出する状況。現実的には「圧倒的成長」など簡単にできるものではなく、時間をかけて少しずつ地道に成長していき、長い目で見たときに「大きく成長した」と言える。従業員に業務を丸投げし、使い潰す状況を、正当化するために使われる可能性のある言葉である。

少数精鋭

  • 【×】少数精鋭
  • 【○】メンバーがどんどん辞めていった(減っていった)結果、人がいないので、社員1人当たりの業務量が膨大である

【解説】
ブラック企業の求人広告でよく見かける言葉。必要な業務量に対して圧倒的に少ない人数である状態。「少数精鋭」とは、本来、「優秀でえりぬきの人材。数は少ないが能力にすぐれた集団」を意味する。少数精鋭の結果、どのようなアウトプットを出し、どのような製品・サービスを提供し、どのように効率化をはかっているかが重要である。しかし、これが明確になっていないということは、人がいない分社員1人当たりに負荷をかけ、力技で凌いでおり、辛うじて会社が回っている状態といえる。

裁量が大きい

  • 【×】裁量が大きい
  • 【○】上位者や依頼者からの丸投げが当たり前でそのしわ寄せを受けやすい状態

【解説】
「裁量が大きい」とは、自分で決定できる事柄が増えるというメリットがあり、様々なチャレンジをしやすい反面、責任が重いこと。しかし、これを悪用する企業は、上位者や依頼者の怠慢を、このような言葉で免れようとする傾向がある。

幅広く経験を積める

  • 【×】幅広く経験を積める
  • 【○】業務範囲が曖昧でカオス状態

【解説】
これも前述の「裁量が大きい」と同じく、前段が破綻している状況を、肯定的に言い替えたものである。

幹部候補

  • 【×】幹部候補
  • 【○】責任が重たい割には賃金が安い

【解説】
ブラック企業の求人広告でよく見かける言葉。幹部候補といいながら入社直後はほぼ間違いなく普通の社員。そこから重い責任が課せられ、業務量が膨大になるが、給料は据え置き。「候補」であるため、「幹部」となるかどうかまでは保証しないことを都合よく使う表現。

アットホームな職場

  • 【×】アットホームな職場
  • 【○】他に何もアピールできない

【解説】
ブラック企業の求人広告でよく見かける言葉だが、絶対に信用してはいけない。普通は売上(「前年比○○%アップしました。」)や実績(「公的機関から○○について受賞いたしました」)など具体的なアピールがあるはずである。しかし、このようなポジティブで抽象的なアピールは、これしかアピールすることが無いということの裏付けである。また、社員を家族のように大切に扱うという印象操作の裏に、長時間労働等束縛したい意図が隠れている。滅私奉公、公私混同の意味でも用いられる。

厳しさ

  • 【×】厳しさ
  • 【○】粗悪さ(劣悪さ)

【解説】
顧客や上層部からの無理な納期でのシステム完成を迫られるなど、そもそもの計画自体が破綻しており、そのしわ寄せを受けてブラック労働となり、労働者個人の努力でどうしようもない状態を、「厳しさ」とは言わない。この状態を「社会の厳しさ」であるかのように刷り込む組織であるならば、心身を破壊する前に、「粗悪さ」を正しく見抜くスキルが必要がある。
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会社対会社の関係

  • 【×】会社対会社の関係
  • 【○】他社からの理不尽な要求やパワハラを受けても、話をややこしくせず取引を継続したいために、被害者を黙らせたい

【解説】
他社(顧客)から無理な要求を受けたり、ハラスメントを受けても、波風立てず他社(顧客)との関係を維持したいために、被害者に対して使われることがある。当然のことながら不適切な対応であり、組織ぐるみで行われているならば、異常であることを見抜くべき。パワハラ以外にも、

  • 「相手はお客様だから」
  • 「無理な要求でも対応して誠意を見せるべき」

等のように、社員の人権侵害を助長し、社員の犠牲の上でビジネスを成立させるケースといった、言っている方は意識が無くとも悪質なものであり、これを素直に受け入れる真面目な社員ほど被害に遭いやすい傾向があるので、正しく見抜く必要がある。
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自己中心的

  • 【×】自己中心的
  • 【○】自己を犠牲にしない

【解説】
「自己中心的」は「自分さえよければ、他はどうでもよい」という考え方。また、他人を犠牲にしてでも自分の利益に繋げる考え方を言う。「自己を犠牲にしない」は、通常は全体・組織・他人のために尽力するが、自分を犠牲にまではしないという意味。よって両者は全く異なる。

  • ブラック企業を辞める」
  • パワハラ被害を訴える」
  • 「個人や一部の組織の犠牲の上にビジネス全体が成り立つ状況に声を挙げる」

など社会的には普通と解釈される行為であっても、一部これによって都合が悪いと感じる人間が、被害者を叩くために使われる。
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ストレス耐性

【解説】
ブラック体質の人間や企業が、パワハラ被害者に求める素養として、「パワハラ」という言葉を隠蔽する、あるいは「パワハラ」を正当化するために「ストレス耐性」という言葉が用いられる。

信頼関係

  • 【×】信頼関係
  • 【○】主従関係、従属関係

【解説】
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「だからお前はダメなんだ!」

  • 【×】「だからお前はダメなんだ!」
  • 【○】「ブラック体質な私にとって都合が悪いだけでございます。」

【解説】
見ての通り。

進捗遅れ

  • 【×】進捗遅れ
  • 【○】そもそも無理なスケジュール、過大な業務配分、担当分野に不慣れなメンバーに対して丸投げし、優秀な人材が悲鳴をあげる程、前段が破綻している

【解説】
見ての通り。
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スケジュールを守る

  • 【×】(適切に設定された)スケジュールを(確実に)守る
  • 【○】無理な計画であっても、破綻した前段のしわ寄せを受けても、長時間労働・休日出勤をしてでも最終納期を守り切る、従業員の立場や人権を無視した状態

【解説】
見ての通り。
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「他人のせいにするな!」

  • 【×】「他人のせいにするな!」
  • 【○】誰のせいか関係なく、問題の根本を正しく見極める

【解説】
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怠慢

  • 【×】(ブラック労働やパワハラ被害者に対して)怠慢
  • 【○】疲労がピークに達して動けない

【解説】
見ての通り。【○】の状態を作り出したにも関わらず、あたかも被害者の怠慢であるかのような論調で、被害者に責任を押し付けることによる責任逃れのために使うことが多い。

スキル不足

  • 【×】(優秀な人材に対して)スキル不足
  • 【○】担当分野において不慣れ

【解説】
これは、非常に勘違いを起こしやすい。その人の持つ能力や実績ではなく、いかに自分たちの組織や現業務分野に馴染んでいるかに着目して、その人の価値を決めていることの現れ。

業務を任せる

  • 【×】業務を任せる
  • 【○】業務を丸投げ

【解説】
「任せる」は、進め方は作業者の裁量の範囲で進めサポートはするものの、結果に対する責任は取るという意味。「丸投げ」は責任を放棄すること。

お前のためを思って言ってるんだ!

  • 【×】お前のためを思って言ってるんだ!
  • 【○】焦点(ターゲット)を「お前」に宛て、都合の悪い話を反らすことで、自分の責任逃れのために言っています

【解説】
「お前」のためを思っているのではなく、「自分」のためを思っている。責任逃れのために使うことがある。ハラスメント被害者を非難し是正を要求する(セカンドハラスメント)場面でも見受けられる。
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人事評価結果を納得感あるものにするための、考課者&被考課者の面談やコミュニケーション

  • 【×】人事評価結果を納得感あるものにするための、考課者&被考課者の面談やコミュニケーション
  • 【○】考課者が一方的に決めつけた人事評価結果を被考課者へ飲み込ませるための、マインドコントロール

【解説】
人事評価結果を考課者(上司)が被考課者(部下)に対して説明を行い、被考課者が「なぜ、そのような人事評価結果になったのか」納得いくならばそれはそれで良い。しかし、被考課者が納得いかない場合は少なくない。正しく人事評価が行われていないケース、考課者が被考課者の成果やアウトプットを見落としているケース、そもそも人事評価で不正やハラスメントが行われているケース。人事評価結果が間違っていたとしても、修正されたという事例を聞いたことがない。むしろ、

  • 「考課者はこのように判断した。」
  • 「修正はできない。」
  • 「期待を込めて厳しく評価した。」

などと、納得もしていない結果を被考課者に飲み込ませ、それが妥当な評価結果であるかのうように正当化し、マインドコントロールさせることがある。考課者のモラルと、組織がそれをチェックする仕組み、ハラスメントを防ぐための企業ぐるみの取り組みが必要だ。
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「やりがい」があるよ!

  • 【×】「やりがい」があるよ!
  • 【○】労働環境が劣悪で、苦労に対するリターン(報酬)が見合わない

【解説】
「やりがい」とは、労働者自身が仕事に関して自ら感じる充足感のこと。他人に対して、

  • 「やりがいを持て!」
  • 「やりがいを感じるだろう!」

と強要するものではない。そもそも、ブラック企業の求人広告にあるのだが、労働環境が劣悪で、苦労に対するリターン(報酬)が見合わない現実を、「やりがい」という言葉で隠蔽し、労働者の仕事に対する使命感を都合よく搾取するための手法として用いられる。これを「やりがい搾取」という。
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「セルフマネジメント」「仕事のやりくり」

  • 【×】「セルフマネジメント」「仕事のやりくり」
  • 【○】劣悪な労働環境によるしわ寄せを労働者になすりつけ、それでも業務をこなせなければ「甘え」として批判する組織の愚行

【解説】
セルフマネジメントとは、「目標達成や自己実現のために、自分自身を律し管理すること」である。その本質は、限られたリソースの最大限の活用、自身の能力を最大限発揮しパフォーマンスを上げることにある。管理の対象は、仕事のタスクや時間、感情、精神的・肉体的な健康の維持など、多岐に渡る。しかし、劣悪な労働環境にある組織が、組織として何も是正しなければ、労働者個人個人がそのしわ寄せを受けることとなる。そして、しわ寄せを受けた労働者が過負荷な業務をこなせなければ、その結果のみを吊るし上げ「甘え」等と批判し、「セルフマネジメント」「仕事のやりくり」ができていないと見なすケースがある。これは、「セルフマネジメント」「仕事のやりくり」が重要だ!と称して、劣悪な労働環境に対する是正措置を怠る組織・管理者側の「粗悪さ」である。
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「3年で会社を辞める若者」

  • 【×】「3年で会社を辞める若者」
  • 【○】「若者に3年で辞められる会社」

【解説】
「3年で会社を辞める若者」は、ビジネス関連の記事の見出しで見受けられることがあるが、若者が描くキャリアとのミスマッチ、激務の割には安い報酬、生活面とのバランスの破綻等、その実態は辞められる会社側に原因があることが多い。今の時代、終身雇用は完全に崩壊し、転職は当たり前になり、フリーランスや副業も当たり前になってきた。「3年で辞める若者」という表現は、いかにも辞める原因が「若者」にあると考えている論調であり、旧態依然の体質の会社ほど「若者」に責任転嫁したがる傾向だ。時代の変化に対応できず、「若者」にとって魅力的でない「会社」に原因があることを踏まえ、「3年で会社を辞める若者」は「若者に3年で辞められる会社」と言い直すべきである。

「お前はどこへ行っても通用しない」

  • 【×】「お前はどこへ行っても通用しない」
  • 【○】「ウチではあなたの能力を最大限に発揮させることができず、有効に活用できない程、我々組織側のマネジメントが未熟です!」

【解説】
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【最後に】ネガティブな状況をポジティブな言葉で表現する劣悪企業の管理職以上が心得るべきこと

  • 人員が辞める等で減り続けている状態を「少数精鋭」と言うな!
  • 業務範囲が曖昧で未整備なことを「自由度が高い職場」と言うな!
  • 一人当たりの業務負担が過多な状態を「圧倒的成長のため」と言うな!
  • 社員に仕事を丸投げすることを「業務を任せている」と言うな!
  • パワハラを「指導」と言うな!
  • パワハラに耐えることを「ストレス耐性」と言うな!
  • パワハラ加害者に寄り添うことを「被害者の成長」と言うな!
  • パワハラ被害者を黙らせることを「人間関係の改善」と言うな!
  • 膨大な設計資料がありインプットに時間を要する状態を「設計資料があるから円滑に開発できる」と言うな!
  • 自分の都合のいいように相手をマインドコントロールすることを「コミュニケーションを密に取っている」と言うな!
  • 無理な計画や異常な短納期を、一部の従業員の犠牲によって達成する状態のことを「スケジュールを守る」と言うな!
  • 劣悪な労働環境で業務量の割には工数が少なすぎて無理が祟る状態のことを「厳しい職場」と言うな!
  • ただマウントを取りたがる未熟者のことを「厳しい人」と言うな!
  • 劣悪な労働環境によるしわ寄せを労働者になすりつけることを「セルフマネジメント」と言うな!
  • 「若者に3年で辞められる会社」が「3年で会社を辞める若者」と言うな!
  • 上司のマネジメントが悪くて辞めていく社員に対して「お前はどこへ行っても通用しない」と言うな!