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ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

残業禁止・ホワイト企業でのシステム開発プロジェクト経験とキャリアへの影響

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IT業界やソフトウェア開発というと、顧客からの過度な要求、前行程の遅れ、要求や仕様が曖昧で見積りが困難なこと、派生開発の場合はベース製品の設計・ドキュメントの不備等、様々な要因によるしわ寄せを受け、ブラック労働になりやすいということを多くの関係者が経験するだろう。

しかし、ソフトウェアを含むシステム開発プロジェクトで、残業ゼロを実現しているホワイト企業がある。私は、その企業に期間は短いが客先常駐としてお世話になり、それまで見たことのないホワイト労働を経験した。

更にそのことが以降のキャリアへ影響している。そのお話を紹介しよう。


1.常駐先ホワイト企業でのプロジェクト開始前の背景 ~直前まではブラック労働で疲弊していた~

私が昔IT企業に勤務していたときの話である。本記事で紹介するホワイト労働プロジェクトの直前まで、私が担当していた自社開発プロジェクトがブラック労働であり、異常な納期や作業負荷により、私は体調を崩していた。一時はうつ病のような症状もあり、数ヶ月間に渡って微熱が続くという、これまでにない体調不良を経験した。

そこで、ある時上司に呼び出され

「来月からの業務だが、お客様先である○○に行ってもらう。そのお客様先企業は、現在残業を禁止している。」

と説明を受けた。

私がブラック労働に巻き込まれたプロジェクト最中での出来事だった。上司からの説明によると、建前上は組織全体の人員配置の都合であるかのようなニュアンスだった。しかし、本音はおそらく私のコンディションが良くないための配置転換である可能性が高い。となると、私はもう自社内の中核として出世する見込みは薄く、ネガティブな気分にもなった。しかし、この時はキャリアのことを言っている場合ではなく、自分の健康第一であり、自分の心身の負担を軽減することを最優先させるべきであった。

常駐先ホワイト企業は中堅のメーカーである。そこでの私の予定業務は、産業用安全システムのシステム/ソフトウェア評価である。半年程度の常駐予定だ。現行システムからの変更による新システムの開発における評価行程に携わる。常駐先企業の社員だけではリソースが不足し、応援要員として私が抜擢された。前述の上司からの説明にもあったように、この企業では残業禁止である。

聞いた話によると、昔は他のシステム開発企業と同じように残業まみれであり、一時業績も下がったらしい。そして、残業代を削減するために、サービス残業ではなく、本当に残業を減らし、無駄を省き、業務量を減らし、スケジュールを全て見直したらしい。トップの意向で、全社一貫して徹底しているらしい。どんなに素晴らしい企業なのかと気になっていた。私が担当するプロジェクトも、かなり余裕を持ったスケジュールになっているようだ。

2.常駐先ホワイト企業でのプロジェクトは序盤から順調 ~健全な生活が功を奏す~

私の体調がすぐれない中で不安を抱えながらプロジェクトが始まった。常駐先企業での業務が始まると、事前に聞いていた話は本当だ。毎日定時で退社している。18時になるとオフィス内の見回りを担当する社員が開発現場に入ってきて

「お疲れ様でーす。退社してくださーい。」

と、声をかけてフロアを回る。そして、社員も我々常駐要員も慌ただしそうに片付け、退社していく。このような光景はそれまで見たことがない。当然私も毎日定時退社だ。

私の業務は、主に

  • 「新システムの仕様理解」
  • 「新システムのテスト仕様書作成」
  • 「テスト仕様書に沿ったテスト作業」
  • 「その他ソフトウェア設計検証」

である。

そのためには、現行システムの理解と、現行システムから新システムの仕様差異の把握が必要である。

まず、現行システムのテスト仕様書と、現行システム(製品)が提供され、これの理解を進めた。実際に動くモノがあるため、仕様の理解が早かった。仕様書、設計書、ソースコードも提供され、更にイメージが湧いた。プロジェクト開始最初の1ヶ月は現行システムの理解に費やした。別に時間がかかりすぎとかではなく、元々このようなスケジュールであった。

この時点では、新システムの仕様は決まっているものの、まだ完成しておらず、常駐先の社員によって設計作業が進められている。評価要員としてこのプロジェクトに投入された私は、行程上まだ出番が無いように思えるが、現行システムの仕様・設計、新システムの仕様・設計を前倒しで理解し、新システムのテスト仕様書作成、新システムのテストを円滑に進める狙いである。システム評価要員をプロジェクトの前行程から参画することは良いことだ。

当時の私は、新しいプロジェクトに慣れるまでに時間がかかることを自覚していた。慣れれば高いパフォーマンスを発揮し、過去には長年成功実績を積んできていることもわかっている。このホワイト企業でのプロジェクトはかなり、余裕のあるスケジュールで進めていることを実感している。序盤にしっかり時間をかけて、仕様の理解や、不明点の洗い出しや、プロジェクトの阻害要因を取り除くことは重要だ。

対照的に、よくあるブラック労働に至るプロジェクトは、見積りがいい加減で、目先の納期しか見えておらず、とにかく納期優先で定量的な進捗報告を求め、圧力をかけて激詰めし、パワハラも珍しくない。このホワイト企業は全く逆だ。

3.常駐先ホワイト企業でのプロジェクト中終盤は高パフォーマンス ~序盤の準備が功を奏す~

常駐先の社員は毎日定時退社しているとはいえ、みな忙しい。忙しい中で効率を上げ、無駄な作業を省き、定時退社していることは良いことだ。

常駐先の社員は、私が関わっているプロジェクトと別プロジェクトを兼務している。対して、私はこのプロジェクトに専念している。専念しているため、そうでない場合と比べて中身の理解を深めやすい。常駐先の社員の業務が多忙を極め、段々と回らなくなり、新システムの設計書やソースコードの検証、単体テストツールを使用した検証、単体テストツールの手順書作成等も依頼を受け、私が対応した。評価要員という建前であるものの、ソースコードを編集しないこと以外は、開発者と作業が変わらない。

常駐先社員からすると、自分たちの多忙さにより私にしわ寄せが行き、私に対してかなりの負荷をかけているような印象であった。しかし、私は余裕だった。

毎日定時退社という健全な生活、余裕を持ったスケジュール、序盤からシステムの理解に時間を費やしたことが、高いパフォーマンスと順調な進捗に繋がった。「無理を強いているつもりはない」「(長時間労働は)業界の常識」などとマインドコントロールしてくるブラック企業とは真逆である。
o08usyu7231.hatenablog.com
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開発にトラブルはつきもの。トラブルが無いに越したことはないが、そうはいかない。本プロジェクトでも、テスト環境や使用ツールのトラブルが発生し、解決に半日から一日かかったこともあった。他の企業なら進捗遅れに繋がり、残業で挽回する措置をとるところがほとんどだろう。しかし、それでも残業することはなかった。

私の作業が立て込んでいることや、トラブル発生の挽回を試みるため、少しだけ残業できないかと申し出ても、認めてもらえなかった。「例外を認めない」という考え方だ。一件でも、例外を認めてしまうと、他の要員からの残業の申し出を受け入れなければいけなくなったり、残業の申し出を受け入れたり受け入れなかったりするとトラブルになるからである。他の企業もこれくらい徹底してほしいものだ。

開発終盤になり、スケジュールが切羽詰まってきた。それでも残業禁止のままだった。そのまま作業を続けていても予定通りプロジェクトは完了しないため、作業順序の変更で対応した。プロジェクトにおける残作業を

(1)顧客や認証機関等対外的に提出が必要なシステムやドキュメントの完成
(2)社内に蓄積しておく引き継ぎ資料の完成

の二つに分け、(1)に専念することとした。

(1)は元々のプロジェクト完了予定時期に間に合わせ、(2)は元々のプロジェクト完了時期から1ヶ月延期しての対応だった。従業員に無理を強いて酷使するブラック企業とは大きな違いだ。

全体としてプロジェクトは成功し、常駐先顧客からは高く評価していただけた。これだけではなく「健全な生活」が実現でき、プロジェクト開始前万全ではなかった体調が回復した。色々とインプットがあった。良いことしかなかった。

4.以降のキャリアに大きな影響を与えたプロジェクトだった ~上昇志向一点張りからの転換~

前述した通り、このプロジェクト開始前までは、過重労働により体調を壊し、通院もしていた。

過重労働により体調を崩した際に回復する手段といえば、長期休暇や(産業医と面談して)休職というケースが多い。しかし、このケースは違う。「健全な生活」をすることが回復に繋がった

そして、「健全な生活」をしながら、プロジェクトを順調に進めたどころか、大きく貢献したのではないかと思う。

その背景には、

  • 残業しない体質
  • 余裕を持ったスケジュール
  • 序盤でしっかり業務内容を理解するだけの工数の確保
  • 様々な人達の協力と理解
  • 無理の無い業務プロセスの見直し

という、「前段」が出来ていることにある。お世話になった常駐先の企業には感謝しかない。

一時は、この常駐先企業に転職できないかとも考えた。
o08usyu7231.hatenablog.com

このプロジェクトを通して、キャリアに大きな影響を与えた。

このプロジェクトの開始前までは、長時間労働に耐え、将来の見返りを求め、組織の中でひたすら上位のポジションに就くことを考え、努力を惜しまなかった。しかし、無理なく高いパフォーマンスを発揮でき、楽に高く評価される場所があることを知り、転職を含めて視野を広げ、キャリアを考え直すきっかけとなった。無理をして、今の会社に必ずしも一生居る必要は無い。わずか半年程度の客先常駐プロジェクトであったが、キャリアへの影響は大きかった。

同じスキルのエンジニアが、企業・開発案件・依頼元顧客によって、あるプロジェクトでは残業まみれのブラック労働に巻き込まれ、またあるプロジェクトでは健全な生活を送りながらパフォーマンスを発揮でき楽に高く評価されるホワイト労働に巡り合うこともある。

私は、これまで長年「長時間労働の原因は、自分自身のスキル不足である。」と考えていたが、この考え方を根底から覆すこととなった

私はこれまで、ブラック労働もホワイト労働も経験がある。優秀な人材がブラック労働に巻き込まれ、健康面の被害を受け、パフォーマンスを低下させてしまうことがいかに勿体ないことであるか、体感してきた。エンジニアとしての自分のスキルを高めることも重要だが、企業や開発現場の良し悪しを見抜く「労働のスキル」を高めることはさらに重要だ。良い企業、良い人材に巡り合えることが、自身の成長に繋がる。

私は、昔IT企業に勤務していたと冒頭に述べたが、今は大手メーカーに転職している。ホワイト企業での開発経験や実績が無ければ、今も転職前のIT企業でブラック労働に巻き込まれ、都合よく使い潰され、更にそのことが問題だと気づきもしないほど麻痺していたかもしれない。

視野を広げることは大切だ。そして、転職を含めてチャンスには常にアンテナを張っておく必要がある。

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