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「自責思考」と「他責思考」、事例とともに両面から解説する-【事例3】過重労働による体調不良

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ビジネスの世界をはじめ、「自責思考」「他責思考」という言葉をよく聞く。

「自責思考」とは

何か問題が発生した時に、自分自身に問題があると捉え、自分自身の改善点を追求していく考え方

を指す。

「他責思考」とは

何か問題が発生した時に、自分自身の問題ではなく、周囲や環境に原因があるという考え方

を指す。


以前、「自責思考」と「他責思考」について、それぞれのメリット、デメリットについてまとめ、「自責」「他責」問わず広範囲で俯瞰的に捉え根本を見極めることが成長の条件だと締めくくった。
o08usyu7231.hatenablog.com

同時に、何か理不尽な不利益を受けた被害者は、次の3本立てで考えると良いと述べた。

  1. 自分自身の行いを振り返る。(「自責思考」)
  2. 他人・周囲・環境に問題がないか探り、あれば改善を促す。もしくは反面教師とする。(「他責思考」)
  3. 他人・周囲・環境に問題があっても、自分が回避できないか考える。(「他責思考」であるが、対策するのは自分。)

この記事では事例を紹介する。

「自責思考」を周囲から押し付けられて辛い生き方をしている人は、是非この記事をインプットしていただき、ヒントを得ていただければと考えている。


【事例3】過重労働による負担がかかりすぎて体調を壊してしまった

日本では過重労働による健康面への影響、生産性低下が問題視されて久しい。国や専門家はこのような指摘をする一方で、根性論の強い企業では、


「体調管理も仕事のうち。体調を壊すなどセルフマネジメントができていない。即ち、仕事ができない!」

といった考え方もまかり通っている。

また、一方では体調不良に至った社員の上司によるマネジメントの問題で、


「部下の健康管理も上司の仕事!」

という説もある。

私も過重労働で体調を壊したことがある。新卒で下請け・派遣を中心としたIT企業に入社し、大手メーカーへ客先常駐エンジニアとして10年以上同一開発現場で実績を挙げ、常駐先から高い評価を得た。その後、自社開発に移り、環境の変化による勝手の違い、業務の不慣れ、過重労働、上司との相性、責任感の高さと重圧諸々により、体調を崩してしまった。うつ病と診断されたわけではないが、普段以上に汗をかき、夜も眠れず、早朝に目が覚め、何もやる気が起きない症状から、うつ病と同じだ。大手メーカーでの客先常駐の時の成功体験から、大きな落差を感じた。

長期休暇や休職といったところまでは当たらなかったが、心療内科神経内科を探し回り、通院するも微熱が数カ月も続いた。自社開発の案件後、再び当初のメーカーとは別の客先常駐となったが、この客先常駐先が残業禁止のホワイト企業で、プロジェクト序盤から順調に進み、健全な生活を送りながら当該常駐先でのプロジェクトを進めた。常駐先顧客から高く評価された当該プロジェクト末期になって、やっと体調が回復した。

その後も、ブラック労働、ホワイト労働両方とも経験したのち、このIT企業から大手メーカーへ転職した。

その経験を踏まえて、過重労働による体調不良における「自責思考」「他責思考」のアプローチについて述べたい。

「自責思考」によるアプローチ

まず、純粋に過重労働に至るほど自分自身の「スキル」の不足ということが考えられた。しかし、上述の通り、過重労働による体調不良が発生する時点よりも前に、別プロジェクトで高い実績を挙げており、今更「スキル」の不足では説明がつかない。そのため、この体調不良の原因分析については難航し、明確になるまで多大な期間を要した。

過去に大手メーカーでの客先常駐で高い実績を挙げたにも関わらず、プロジェクトが変わり、過重労働諸々にて体調不良に至ったことを考えると、次に考えられたのは「環境適応能力」の不足である。プロジェクトや取り扱う技術、開発環境が変わると慣れるのに時間がかかることがある。私の場合、大手メーカーへの客先常駐が10年以上同一現場で実績を挙げた後、自社開発へ移ったため、同一開発現場での在籍期間が長すぎたことによる弊害ではないかと考えた。しかし、これについてもこの後の別プロジェクトで、序盤から順調に進み、成功しているため「環境適用能力」の不足についても説明がつかなかったのである。

その他、扱う技術や開発環境の違いについても考えられたが、体調不良から回復した以降のプロジェクトで、それぞれに必要なスキルは身に付き、順調に進められたプロジェクトもあるため、これも説明がつかないのである。

あとは、過重労働で体調不良になるということは「メンタル」の弱さが挙げられる。更なる過重労働でも「メンタル」に異常をきたさない人もいる。若い時には過重労働を乗り切った経験があるが、この体調不良に陥った時は、年齢も決して若くなかった。

劣悪な労働環境でも、真面目に頑張り、体調不良になる前に予防できなかった点は自分自身の責任とも考えられるが、周囲のステークホルダとの関係からも、なかなか業務を断ったり、スケジュール延期を申し出たりすることはやりにくいものだ。

「スキル」「環境適用能力」「メンタル」いずれにしても「ない」よりは「ある」方が、「弱い」よりは「強い」方が良い。ここまでは自分自身の能力や姿勢にフォーカスしてきたのだが、以降「他責思考」を踏まえると、ますます重要なことに気付くこととなる。

「他責思考」によるアプローチ

「スキル」「環境適用能力」「メンタル」を自分自身の問題としてフォーカスしたが、そもそも(客先常駐とはいえ)大手メーカーで高い実績を挙げた人材が「メンタル」を壊し体調不良になるような「前段」に問題がある。どちらかと言えばこちらの方が濃厚だ。自社開発以外の経歴や実績から、「スキル」や「環境適用能力」の問題と考えると説明がつかなくなる。

この記事の冒頭に記述した通り、過重労働自体、国や専門家の間では問題視されている。IT業界の過酷な状況、多重下請け構造等の特異性、モノ・ハードウエアを中心とした製品開発故ITやソフトウェアを軽視する日本の歴史的背景といった異常さが、私に限らずエンジニアの「メンタル」を壊し、IT業界離れが進み、加えて人手不足の中IT人材が特に不足しているという深刻な事態に陥っている。更に「ブラック企業」「ブラック労働」という言葉が世間に流通し、労働環境が悪い企業のことを一言で「ブラック」と呼ぶようになった。

決して「メンタル」が弱いのではなく、前段が異常なのだ。個人に我慢や理不尽を強いることによって、企業利益を最優先し、劣悪な労働環境に対して手を打ってこなかった管理職の責任であり、「メンタル」を壊した人はその被害者なのだ。

発注側が無理な要求をし、受注側が安易に受け入れ、不慣れな業務を丸投げで、尽力してやりきっても讃えず、過重労働に対しても対策が不十分で、メンバの体調不良を発生させたことを踏まえると、マネジメントの問題であることは間違いない。

私は、過重労働による体調不良から回復した数年後に、管理職向けのメンタルヘルスセミナーに参加したことがある。日本のIT業界に限らず、世間で問題視されていたメンタルヘルスの問題においてどのように向き合うべきか、私の過重労働による体調不良が発生に至った当時の上司の対応は適切だったのかについてヒントを得るために、敢えて私が自らこのセミナーに参加したのだ。

そのセミナーの講師の方は


「メンタルトラブルを起こした企業は信頼を無くす」

と説明されていた。当時の私の所属企業、上司は「信頼を無くす」のである。メンタルトラブルの発生は、企業・使用者の責任だ。

ここを


「自分のメンタルが弱かったことが原因でした! 対策や強化に努めます!」

などと「自責思考」に陥ると、これこそ企業や使用者にとって都合が良いだけであったり、ブラック企業が好む手口であったりするのみであり、全く根本的な解決にはならない。

「他責思考」だが自分で対策を取る場合

私はこのIT企業から大手メーカーへ転職した。転職理由の一つがこの「メンタルトラブル」である。労働環境は重要だ。
o08usyu7231.hatenablog.com

あと、過重労働になりやすい原因の一つとして、多重下請け構造の問題を取り上げた。確かに私の経験上、多重下請け構造の末端部分を担当したプロジェクトでは、過重労働になりやすい傾向があった。個人のスキルの問題ではなく、業界構造・事業構造上の問題だ。このことから、転職先に大手メーカーを選定した。多重下請け構造の下位層の企業から優秀な人材が流出し、大手メーカーへ移ることになれば、たった一人のエンジニアの転職に過ぎないとはいえ、多重下請け構造を解消する方向に向かうことは間違いない。

実際、転職先の大手メーカーではスキル面でも問題ないどころか、実務担当者、チームリーダーとして、担当プロジェクトの成功へ導くという実績を挙げることができた。下請けIT企業で見舞われた「過重労働によるメンタルトラブル」にも遭遇することが無く、転職したことは正解だった。

この事例に関して言えることは、過重労働でメンタルを壊すような状況は、環境や上司のマネジメントが悪いという「他責思考」でありながらも、これによる被害に遭わないために、もしくは被害を最小限に抑えるために「転職」という対策を取ったことだ。

過重労働に至った結果を「自責思考」で捉え、過酷な状況に我慢を重ね続けていたならば、恐らく解決することはなかったと容易に想像がつく。

もちろん過酷な状況にも耐えることができる「メンタル」が備わっていれば、乗り越えることができるであろうが、乗り越える術はそれだけではない。辞めることも立派な選択肢だ。
o08usyu7231.hatenablog.com
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本事例のまとめ

多重下請け構造の問題にせよ、管理職によるマネジメントの問題にせよ、労働者個人がコントロールできる範疇ではない。特に、マネジメントに向いていない管理職の下にいるメンバは、非常にストレスが大きい。労働者がコントロールできない領域で、労働者が被害や迷惑を受けるのである。

これを防ぐためには、転職等により、環境を変えるしかない。

今は転職は珍しくない。当たり前である。労働環境が悪い企業、理不尽な企業、ブラックな企業に居続け、我慢しすぎる必要はない。「メンタル」が弱くてもやっていける環境の方が望まれるのである。「ストレス耐性」という言葉を多用し、いかにも「メンタル」が強くないとやっていけないよという雰囲気を醸し出している組織は、そもそも根本的に何か問題があると疑うべきである。本来、「ストレス」の元となる要因を除去しなければならないのに、これを怠り、被害を受ける人に我慢させるという『厳しさ』ならぬ『粗悪さ』だ。

この「『粗悪さ』を見抜く」スキルは、とても重要であることに気付いた。「『粗悪さ』を見抜く」などというと言葉は悪いが、これによる心身の健康被害の大きさを考えると、言葉が悪いなどとは言ってられない。行き過ぎた我慢は結局自分自身が破綻して失敗する。視野を広げることこそ成功への道だ。

「『粗悪さ』を見抜く」スキルが不足していたことが本当の問題点、即ち「自責思考」ではないかという意見も考えられる。その通りだ。よって、「メンタルトラブル」等の被害に遭う前に、『粗悪さ』による被害の予兆を見抜くスキルや感度を高める、そのためには世間一般、業界動向、他社事例を多くインプットし、自分の所属している会社が何かおかしいと感じれば、いつでも環境を変えることができるよう準備しておく必要がある。所属している会社から退職者が続出している状況であれば、危険信号だ。
o08usyu7231.hatenablog.com
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このことからも、サラリーマンは転職活動をするべきであると考えている。実際に転職するかどうかはその先の話である。自分でコントロールできない理不尽なことから、被害に遭わないよう自分を守るために、更には今のキャリアが本当に自分にとって適切か否かを見極めるためにも、是非とも転職エージェントを活用していただきたいと考えている。

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