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管理職になって残業代が出ないのは高確率で違法!その理由を解説する!

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管理職になって給料が下がってしまうという事例を聞くことがある。普通ならば、責任が上がるに伴い、それに見合った給料が上がるのだが、結果的に下がってしまうというおかしなことが起きている。

その要因は

「管理職には残業代がつかない」

ことがあるからである。

多くの企業でこれが、常識としてまかり通っている。

しかし、管理職に残業代がつかないというのは、極めて違法性が高い

従業員◯◯を「管理職」にさせて、残業代を抑え、「定額働かせ放題!」といった考え方は通用しない。

会社も労働者も勘違いしやすく、知らないうちに搾取されていることがあるので、その内容について解説する。


1.「管理職」は会社が定める言葉!法的な定義はない!

まず、「管理職」の定義の話から入る。

「管理職」というと、

  • リーダー、係長
  • マネージャー
  • 課長
  • 部長

といった人達を想像する。

「管理職」とは、企業内の一定の範囲内で業務についての権限を持つ者を指す。企業によって呼称は異なる。部門であれば「部長」、課では「課長」に当たる人物が「管理職」呼ばれることが多い。また、「等級◯◯以上の社員」と定められているところもある。

「管理職」は組織の目的を達成するために与えられたリソースを活用し、経営層との橋渡し、部下の人材育成をに担うことが期待されている重要な役割だ。それにより、一般社員の給与にはない「管理職手当」が給与に含まれており、この点が一般社員との違いとなる。

しかし、この「管理職」は会社で定めるものであって、法的な定義ではない。法的には、「管理職」とは別に、後述する「管理監督者」が定められている。

2.「管理監督者労働基準法で規定する言葉!「管理職」=「管理監督者」ではない!

管理監督者とは、労働基準法41条で規定されており、「監督若しくは管理の地位にある者」のことを指す。

労働基準法41条(引用)

(労働時間等に関する規定の適用除外)

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

具体的には、企業の中で相応の地位と権限が与えられる。「管理監督者」に該当するためには、以下を満たすことが必要とされている。会社内で「管理職」と呼ばれている人でも、「管理監督者」に該当しないという人も実際に存在するどころか、そちらのケースの方が大半である。

【1】経営に関わっていること

管理監督者」は経営の一環を担っているどころか、経営者との一体性があることが条件である。例えば、経営会議に参加し、経営に関する発言権を有することである。

ある部門の部門長であっても、経営会議に参加していない、経営に関する発言権が乏しい、従業員の採用や配置に関する決定権がない等、上記を満たしていなければ「管理監督者」には該当しない。それ以下の、マネージャ(課長)、リーダー(係長)の様に、企業内の一部門、一組織の運営を任された程度の人であれば、尚更「管理監督者」には該当しない。

【2】出社・退社時間、休日を自由に決めることができること

管理監督者」は「労働者」とは異なり、労働時間という概念がない。事業活動の成果、結果が全てとなる。事業活動の成果、結果を出すことを前提に、労働時間、出社時間、退社時間、休日を自由に決めることができる。

ほとんどの会社では、部長とは言えども、他の従業員と同じく出社時間が決まっており、その決まった時間に出社しているだろう。出社日は会社のカレンダーに従っており、他の従業員と変わらないどころか、時間外や休日が他の社員以上に潰されるケースが多い。このような実態であれば、「管理監督者」とは言えない。

【3】他の労働者と比べ、給与面で優遇されていること

管理監督者」は他の労働者と比べ、給与面で優遇されている必要がある。イメージとしては残業が多い一般従業員と比べても給与が多く、残業代など貰わなくても大して支障がないくらいの人が該当する。

基本給が同じで、残業が多い一般従業員と、この一般従業員と同じ労働時間である「管理職」の二人において、

「一般従業員に対する残業代」>「管理職に対する手当て(残業代なし)」

となれば、「管理職」の方が一般従業員よりも給与が少ないといった結果になる。このような「管理職」は「管理監督者」に該当しない。

管理監督者」は「労働時間」という概念がないと述べた。これは、残業代を気にする必要のないくらいの十分な給与があってこその話である。

また、少し話は逸れるが、「管理監督者」であっても、

  • 深夜時間帯の労働に対する割増賃金の支払い
  • 有給休暇の付与

については、一般従業員と同様に行わなければならない。

管理監督者」であっても人間である以上、健康に配慮する必要はある。当たり前である。

【4】重要な職務内容、責任と権限を有していること

これは「【1】経営に関わっていること」と重複する部分もあるが、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない「重要な職務内容」「重要な責任と権限」を有していることが前提となる。

単にマネージャ(課長)、リーダー(係長)といった肩書があっても、自らの裁量が少なく、多くの事項について上司の判断を仰ぐ必要がある、上司の命令を部下に伝達するだけの人は、「管理監督者」とは言えない。

重要なのは、肩書きではなく職務実態であるということ。ここを忘れてはいけない。

3.残業代を支払う必要が無いのは「管理監督者」のほうである!「名ばかり管理職」には残業代を支払うべきだ!

前述の労働基準法41条にある(労働時間等に関する規定の適用除外)が該当するのは、労働基準法で決められた「管理監督者」のほうである。

ここを多くの企業が勘違いし、企業によって定めた「管理職」にこれを適用しているのが実態である。

会社において「管理職」として扱われている人であっても、前章で述べた「管理監督者」の条件を満たさない場合は、いわゆる名ばかり管理職と呼ばれ、労働基準法で定められた「管理監督者」には該当しないことが非常に多い。「管理職」=「管理監督者」ではない。「管理職」のほとんどは「名ばかり管理職」だ。

しかも、「名ばかり管理職」は、残業代と休日出勤手当が全く支払われていないことが多い一方で、基礎となる賃金が一般従業員と比べて高いため、未払い残業代も高額となる傾向にある。

私がこれまで見てきた企業であっても「管理職」は多く見てきたが、「管理監督者」と呼べる人はほとんどいない。

よって、責任が重く、それに伴い残業時間が一般従業員よりも増える傾向になり、残業代の支払い免除を「管理監督者」ではなく「管理職」に適用することで、

  • 職務や責任とリターン(給与)が全く見合わない
  • 「管理職」になる前の残業代の方が、管理職手当よりも高かった
  • 「管理職」になりたがらない、「管理職」になると会社を辞める人が出現する

という事態が発生するのである。本末転倒である。

本来会社側はどのようにすべきなのか?

管理監督者」に該当しない「管理職」の社員に対しては、

  • 「管理職」手当として、月残業◯◯時間分の賃金を支払う
  • 「管理職」手当分の残業時間を超える残業が発生した場合は、超過分の残業代を支払う

とすれば、合法である。特に、後者が行われないことによる違法状態を放置すると、残業代未払いとなり、請求されれば過去2年分に遡って支払わなければならない。

このようなことがあると、企業のコンプライアンス意識も問われるため、普段から「名ばかり管理職」には(手当相応の残業時間からの超過分に対しては)残業代を支払うべきだ。

4.「名ばかり管理職」の残業代未払い問題は、労働者が行動を起こさないと状況は改善されない!

私が知るエピソードでは、私の先輩社員複数名が一般社員から「主任」に昇格し、残業代が支払われなくなり、昇格前よりも、給与が下がったことで退職したというものである。

その会社では当時、「主任」に昇格した時点で「管理職」と見なされ、(労働基準法で定められる「管理監督者」でないにも関わらず)残業代が払われなくなった。その退職した人達は、元々「主任」に昇格する前の残業時間が多く、残業代が支払われていたた。「主任」に昇格する前の残業代が、昇格後の主任手当が上回っていたため、結果的に「主任」に昇格することで、給与が下がったのである。「名ばかり管理職」問題の典型であり、「主任」に昇格した社員が辞めるのは当たり前である。そして、翌年から改善され「主任」にも残業代が支払われるようになった。

当時の私もそうだが、社会人経験が少なく、会社が行うことに疑問を持たなければ、気付かないうちに搾取されることがある。会社が行うことが社会の全てだと思ってしまう。会社に相談しようとも、(相手にもよるが)たいていの場合、会社側にとって無難な回答をすることが多く、相談者に対して

  • 「こういうものだ!」
  • 「問題ではない!」

と受け入れさせようと、洗脳してくることもある。

また、上述のエピソードと同じ会社でも、元々残業の少ない人が「主任」に昇格すると、給与は増えるから、このような「名ばかり管理職」問題に気付く機会がなく、そのままその会社に居続けることになる。

名ばかり管理職」問題に限らず、判断基準を会社(組織)の外に置くことは非常に重要であり、何かおかしいと感じたら、世間一般がどうなのか調べる習慣をつけておきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

残念なことに、「名ばかり管理職」のように、違法状態にある企業は多い。放置していても、よほどコンプライアンス意識が高い企業でない限り、企業自ら改善するとは考えにくい。違法状態にありながらも、企業側も、労働者側も知らないというケースも多く、損をするのは労働者側である。それを知らない間に受け入れ、違法状態がまかり通る前列を作り、企業を不当に存続させることに、労働者自信が加担していると言っても過言ではない。労働者も労働法関連の知識をつけ、正当な権利を主張するのは必要なことだ。

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ブラック企業対策のノウハウを知りたい」

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正当な権利を主張しても、折り合いが付かないときは、まともな企業に転職することも視野に入れる必要がある。まともな人材は優良企業に流れ、違法状態を改善しない企業は滅びる世の中にしたいものだ。

最後に、前述の事例のように、企業の違法状態を理由に退職をする場合、退職代行サービスを活用する方法がある。弁護士事務所が運営する退職代行サービスでは、退職のサポート、会社との交渉だけでなく、未払い賃金の請求(過去2年分まで遡っての請求が可能)や、損害賠償の請求にも応じていただけるケースがある。是非、検討していただき、得られるべき賃金は正当に得ていただきたい。

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