ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

法律やルールが無いまたは適用外であっても問題発生は許されない

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

「違法でなければ何をやっても良い!」
「違法でないから何をやられても抵抗できない。」
「ルールにないから(問題が起きても知らない・・・)」

このように考えている人はいないだろうか? 

どれも間違いである。

「法律やルールは最低限守るもの」であり、更に周囲への気遣い等、+αのことが求められると考えるのが普通だ。

本記事は、法律やルールが未整備であったり、一部の対象に対して適用外であったりすることで問題が発生する可能性のあることについて書いている。加害者にも、被害者にもなりうるため、是非この記事を読んで知見を増やしていただきたいと思う。

法律や社内で定められているルールに従って運用している場面が多いが、一部でルールの適用を除外する場面がある。この「適用外」にすることで問題が起きた時に、「適用外だから」などと言い逃れのような理由はあってはならない。「適用されているから守る」ことが目的ではなく、「問題が起きてはいけない」からである。


1.ソフトウェアのコーディングルール

ソフトウェア開発において、プログラミング言語のコーディングルールを定め、ガイドラインとして提供しているものがある。
https://www.ipa.go.jp/sec/reports/20180215.htmlwww.ipa.go.jp
www.ipa.go.jp

これはガイドライン程度のものである。このガイドラインの各項目を適用するかしないかは、各組織やプロジェクトに任されている。

このガイドラインを適用していない開発案件で、あるいはガイドラインの中の一部の項目の適用を除外した場合に、ガイドラインから逸脱した結果問題が起きてしまったとしよう。

でも、ガイドライン適用外だから、そもそも守られていなくても問題なかったのでは・・・と考えてしまうだろう。これはおかしな話である。

問題が発生してしまったならその問題が再発しないように、ガイドラインを適用対象とするか、ガイドラインから逸脱するならば他の方法で担保すべきである。

2.裁量労働制

裁量労働制」を適用した。労働時間関係なく、業務の進め方も自由になり、労働者の裁量に任されるようになった。賃金も成果によるものとなった。労働基準法に沿ったものではなくなった。

しかし、「裁量労働制」を適用したことで過労死や過労自殺に拍車をかけている。でも、労働基準法に沿わず労働時間に上限もないから、そもそも致し方なし・・・と考えてしまうだろう。これはおかしな話である。

労働基準法・労働時間云々以前に、過労死や過労自殺があってはならないのは当然のことだろう。労働基準法により労働時間を制限することは、労働者の健康を確保するという目的を達成するための手段であり、労働時間を制限することが目的ではない。

裁量労働制」を適用することで問題が出るなら、適用を止めるか、「裁量労働制」そのものを見直すかのどちらかである。

実際、労災が相次いだ三菱電機が、一度「裁量労働制」を導入したものの後に廃止したニュースは有名だ。
www.asahi.com

3.フリーランス

近年「フリーランス」という働き方が注目されている。会社や組織に所属することなく、個人で仕事を請け負う働き方のことを指す。企業に雇用される労働者ではなく、個人事業主のようなものだ。フリーランスは労働者ではないので「労働基準法」が適用されない。そのために自分の身を自分で守る必要があると言われている。

労働基準法が適用されないことで、発注側に都合よく使い潰され、長時間労働の問題が表面化する懸念点がある。このようなことがあっては問題だ。

フリーランスの場合は「下請法」で守られるが、法律やルールに杓子定規に頼るのみならず、人間対人間である以上、片側が極端な不利益を被ることが無いよう配慮が必要である。そもそも、一部の人や組織の犠牲を持って、全体を成り立たせている構造が根本的な問題である。

4.あおり運転

これは元々取り締まるための法律が無かったことによるものだが、「あおり運転」がその代表である。2019年8月に起きた常磐道のあおり運転殴打事件など、ここ数年であおり運転による悲痛な事故が激増している。

ドライブレコーダーに鮮明に映された恐ろしい映像が拡散し、今では社会問題になっている。このような事件・事故を背景に、誰もが安全かつ快適に車で移動できる社会へとの意向から、道路交通法の改正により、あおり運転が厳罰化された。

そもそも法制化や厳罰化などされる以前に、「あおり運転」が危険なことぐらいわかるだろ。法律が無いからといって何をしても良い訳ではないし、法制化や厳罰化しないと秩序が保たれず、一部の非常識な人間のためにわざわざ法制化しなけれはならない世の中が情けない。

5.パワハラ防止法

セクハラは男女雇用機会均等法、マタハラは育児介護休業法によって守られるのだが、パワハラについては永らく被害者を守る、加害者を取り締まる法律は無かった。

しかし、パワハラは至るところで発生し、世間の目は厳しさを増していったことで、パワハラ対策が法制化されることになった。パワハラ防止法は大企業は2020年6月から、中小企業では2022年4月から適用される。パワハラ行為そのものを取り締まる訳ではないが、企業がパワハラに対する対策を取ることを必須とするものである。これにより、パワハラ対策については法制化前の「努力義務」から「義務」に変更された。

そもそもこのような法律が無くてもパワハラが無くなってくれれば良いわけだし、法律があってもパワハラが無くならなければ意味がない。パワハラ防止法が無いもしくは適用外(例:2022年4月より前までの中小企業)だからといって、パワハラが発生して良いものではない。

パワハラ加害者は、何がパワハラにあたり、パワハラが発生すればどれほど大きな影響が出るかよく認識しておくことが必要だ。

6.まとめ

ルールの適用外は、そのルールの目的を理解し、別の方法で担保すべきという意味で理解しておくと、ルールを適用外にすることによる問題の発生を未然に防ぐことができるだろう。ルールを逸脱した結果問題が起きた時に、ルール適用外だからというのは理由にならない。結局、ルールや法律の背景や目的を考え・知ることで、それを適用外とする場面でも、何を守らなければいけないか、どのような弊害を発生させてはならないか、このような観点で考えることが必要である。法律未整備についても同じである。

最近は、この法律未整備やルール適用外だけでなく、企業の不祥事やその対応に対して法律上問題なかったとしても、社会的な要請に応えられていなかったり、世間の感覚とのずれが大きい場合に炎上しやすい。法律やルールさえ守っていれば良いというわけではなく、その背景や目的を考え、問題が発生する場合には個別に対処すべきである。これができないとブラックと言われる可能性がある。場合によっては法制化や見直しが必要であることを忘れてはいけない。

法律やルールよりももっと広く、「コンプライアンス」と言えば良いだろう。「コンプライアンス」とは狭義の意味は「法令遵守」である。しかし、現実はもっと厳しい。

コンプライアンスとは、「法令遵守」のみならず「時代とともに変化する社会的要請を正確に把握し、それに応じた行動を取ること」と理解しておくべきだろう。「法令」のみで片付けるのではなく、「人」「社会」をカバーするだけの視座が求められる。