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パワハラ事例解説(21) - 「お前SEやろ!」余計な一言

このシリーズの記事では、パワハラの定義と類型、私の身近に起きたグレーゾーンを含む事例について、定義と類型をもとに解説している。内容によっては考え方や改善策についても述べているので参考にしてほしい。

自分が加害者にならないように注意することをはじめ、被害に遭いそうな場合はいち早く予兆に気付くことが求められる。

目次


【最初に】パワハラの定義と6つの類型

パワハラはご存知の通り「パワーハラスメント」の略であり、権力や地位を利用した嫌がらせという意味である。2001年に株式会社クオレ・シー・キューブによる造語である。ただ、その定義は曖昧で指導との区別が困難である現実を抱えていた。2020年6月にパワハラ防止法が適用され(中小企業は2022年4月より適用)、同時に厚生労働省による定義が明確になった。

パワハラの定義とは、

職場において行われる

  • ①優越的な関係を背景とした言動であって、
  • ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • ③労働者の就業環境が害されるものであり、

①から③までの3つの要素を全て満たすものをいう。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。

詳しくはこちらを見てほしい。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

続いて、パワハラの6類型(パターン)を項目だけ紹介しておく。

  • (1)身体的な攻撃
  • (2)精神的な攻撃
  • (3)人間関係からの切り離し
  • (4)過大な要求
  • (5)過小な要求
  • (6)個の侵害

詳しくはこちらを見てほしい。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

ニュースで取り上げられているものや、裁判になったものは組織内で解決できなかった手遅れ案件である。また、世間の目も段々厳しくなってきており、損害賠償の相場も数百万単位(被害者が死亡の場合は数千万単位)に上がってきているという情報もある。いくら正論であっても、相手が嫌がるやり方であれば、法律に触れることになる。

ただでさえニュースで見ることが多くなってきているのだが、これらは氷山の一角であり、水面下には程度の大小を問わずさらに多くの案件が潜んでいる。上述の定義や類型を基に、私が実際に見たことがある事例を紹介し、定義や類型を元に解説する。程度や被害の大小は様々である。

  • グレーゾーンであるもの、パワハラと断言できないもの
  • 「こんなのがパワハラになるのか?」というもの
  • 出来事が起きた当時はあまり意識しなかったものの今考えると「あのときのあの出来事はもしかするとパワハラにあたるのでは?自分も加害者にならないように気を付けよう。」と思ったもの

いずれにしても、加害者側に問題があり是正が必要であることは間違いなく言えるので、立場関係なく参考にしていただきたい。その上でパワハラの予兆を見極め、未然防止に繋げることが重要てある。

★関連リンク
o08usyu7231.hatenablog.com
o08usyu7231.hatenablog.com
★事例一覧はこちら↓
o08usyu7231.hatenablog.com

【事例21】「お前SEやろ!」余計な一言

ある技術者(被害者)は、これまで特定の客先常駐現場で長年プロジェクトに携わり、優秀な実績を収め、客先から高い評価を受けてきた。ある時、この技術者は作業場所と担当業務が変わり、技術者の懸命な努力にも関わらず、新たなプロジェクトに慣れるのに苦労していた。

更に、そのような状況にも関わらず、この技術者(被害者)が属する組織の管理職(加害者)は、この技術者が苦労している新たなプロジェクトとは別に、もう一つプロジェクトを掛け持ちさせようと試みた。管理職(加害者)は、その掛け持ちプロジェクトに必要な技術に関するセミナーを技術者(被害者)に受けさせた。

このセミナーの内容についても、この技術者(被害者)にとっては、これまでとは異なる慣れない分野の技術であり、懸命な努力にも関わらず理解に苦労している様子であった。

ここで管理職(加害者)が、この技術者(被害者)を見て、あたかもあまりスキルが足りていないように捉え、管理職(加害者)が技術者(被害者)に言った内容が次のようなものである。しかも、職場内の周囲に聞こえるようにである。

(a)○○(専門用語)を多用した、いかにも簡単そうな説明。
(b)「お前SEやろ!」
(c)「俺やったら簡単に分かるぞ。」
(d)「内容自体あまり大したことない。」
(e)「このセミナーは、○○万円かかってるんやぞ!」

一見、どこにでもありそうな光景であるが、技術者(被害者)に圧力をかけ、マウントすることで動かそうとするパワハラ体質であり、管理職(加害者)の未熟さが見受けられるケースである。

管理職としての立場を利用し(①)、技術者(被害者)が慣れない技術領域の理解に苦労するところに、技術的な理解には何も貢献しない抽象的な言葉で圧力をかけ、技術者(被害者)を貶める、業務に必要相当な範囲を超えた言動により(②)、技術者(被害者)のモチベーションを下げる等就労環境を悪化させている(③)ことから、パワハラの定義を満たしている。6類型では、根性論によるアプローチであること、管理職(加害者)自身にとってはあまり大した内容ではないとマウントをとることで、相手に不快感やダメージを与える(2)「精神的な攻撃」、ただでさえ不慣れなプロジェクトを抱える技術者(被害者)に対して、更に不慣れなプロジェクトを抱えさせ、円滑に理解が進んで当然といったマインドを押し付ける(4)「過大な要求」が該当する。

以下、管理職(加害者)の発言内容をもう少し深く検証する。

(a)○○(専門用語)を多用した、いかにも簡単そうな説明。
(b)「お前SEやろ!」

SE(システムエンジニア)といっても分野は色々ある。素人から見れば、ITやコンピュータに詳しい人、ITシステムを作り上げる技術者といったイメージがあるのだが、「技術」といっても奥深い。開発で扱う製品も様々であり、製品仕様の複雑さ、過去の背景やしがらみ、技術的な負の遺産など同じエンジニアでも人によって分野ごとの経験に濃淡があるのは当然である。

専門用語を多用したいかにも簡単そうな説明も、説明する側にとっては簡単かもしれないが、聞き手にとってはそうでない場合が少なくないし、相手目線で適切に伝えることができることも説明する人にとっての「スキル」である。難しい専門用語ばかりを並べることが「スキル」ではない。これは「テクハラ(テクニカルハラスメント)」とも関連が深く、それぞれの人が習熟している技術領域や経験に濃淡があるにも関わらず、相手の弱みに付け込みマウントを取るなど、もってのほかであることを忘れてはならない。
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また、この技術者(被害者)は、元々他の開発現場で優秀な実績を収めており、当該開発現場の関係者から信頼され高く評価されている。SE(システムエンジニア)としての姿勢に問題があるわけではない。しかし、この技術者にとって不慣れな技術領域に対して「お前SEやろ!」と言い放ったところで、そんなことは既にわかっており、技術者(被害者)にとっては何の困りごとの解決にもならないどころか、管理職(加害者)のマネジメント能力を疑われることになる。

管理職(加害者)と技術者(被害者)で、経験が全く同じであるはずはないので、技術者(被害者)の不慣れな部分をサポートし、カバーできれば、この技術者(被害者)は大いに貢献してくれる可能性があるのである。パワハラ加害者はこうした可能性をも潰し、職場の生産性を下げるだけである。

(c)「俺やったら簡単に分かるぞ。」
(d)「内容自体あまり大したことない。」
(e)「このセミナーは、○○万円かかってるんやぞ!」

次に、これらの管理職(加害者)の発言も、結局技術者(被害者)に圧力をかけているだけであり、技術者(被害者)にとっては何の困りごとの解決にもならないどころか、管理職(加害者)のマネジメント能力を疑われることになる。管理職(加害者)にとって「簡単」か、「大したことない」かは、技術者(被害者)にとってはどうでも良い内容である。「このセミナーは、○○万円かかっている」ことを伝えて技術者(被害者)を奮い立たせようとしていることもナンセンスである。

重要なのは、技術者(被害者)に十分に向き合い、技術者(被害者)目線で困りごとを解決するといった、「阻害要因の除去」が必要なのである。
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「お前SEやろ!」といった余計な一言を発言することは、技術者(被害者)にとって、業務上の問題を解決するにあたって全く意味が無いものであり、管理職(加害者)が技術者(被害者)を追いつめているだけの愚行であるといえる。

【最後に】パワハラにおける考え方・まとめ

パワハラは加害者が未熟であることによって発生する。パワハラに関して被害者には非はない。被害者に改めるべき部分があると思えば、改めることは素晴らしいことである。しかし、パワハラを受けたことに対する責任まで取る必要はない

一方、パワハラ加害者は重い軽いいずれにしてもそれなりの処分と教育を受け、更正してほしい。パワハラの加害者を絶対に昇格させてはいけない。降格するくらいを当たり前にしてほしい。

パワハラ加害者となる可能性が高いリーダー、管理職には、パワハラの重大さを知ったうえで、チーム・組織で成果を最大化するために必要なことを学んでほしい。私は様々なリーダー、管理職を見てきた。技術や能力が高いベテラン社員はある程度いる。しかし、いくら能力が高くてもパワハラ気質なベテラン社員は、管理職にふさわしくないと判断している。組織のメンバーのパフォーマンスの最大化の妨げとなっているからである。チーム・組織で成果を最大化するためにパワハラはいらない。

そして被害者はパワハラを受けた状況にもかかわらず業務において一定のアウトプットを出しているなら、優秀な人材であると考えて良さそうだ。

パワハラがいけないことであるということは皆知っている。しかし、何がパワハラに当たるか、パワハラが発生したときにどのような影響が出るかを理解していないのではないだろうか。パワハラに関する研修や教育は行われているが、最悪命に関わるということを教えていないのではないだろうか。

本来被害者側に要求しなければならないことは社会的に非常に残念ではあり、理不尽ではあるが、パワハラ被害に遭う前から、転職、起業、フリーランス、副業など準備を進めておくことが、被害者個人でできる対策だろう。それくらい日本のハラスメント対策は国際的に見ても遅れている。