ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

ブラック労働経験から得る、破綻するシステム開発プロジェクトにおける予兆検知のポイント

私はソフトウェアエンジニアとして「ブラック労働」から「ホワイト労働」まで経験してきた。

その中の一つのシステム開発プロジェクトで、大手半導体メーカー企業の孫請け企業に派遣され「ブラック労働」を経験したときの話と、それを見抜くための予兆、当該開発現場における改善ポイントについてまとめた。

同様の環境に身を置いている方には、この記事の内容をインプットしていただき、場合によっては転職を検討するなど、自分の身を守っていただきたいと考えている。


1.ブラック労働となったプロジェクト状況

顧客W社は大規模システムを大手半導体メーカーX社に発注し、X社はグループ会社のY社に、Y社は同じくグループ会社のZ社に開発を依頼した。Z社がY社より受注したプロジェクトを、以降「プロジェクトP」と記載する。プロジェクトP進行のため、Z社には私を含む数名が派遣エンジニアとして投入された。Z社の体制は、プロジェクトリーダー(Z社社員)をはじめ、メンバーはZ社社員と、派遣エンジニアで構成される。また、Z社はY社窓口とやりとりをする形であった。

【概要】
W社:顧客
X社:元請け、大手半導体メーカー
Y社:下請け、グループ会社、「プロジェクトP」発注
Z社:孫受け、グループ会社、「プロジェクトP」受注

私は3か月の派遣契約で、Z社に投入された。私と同じくZ社に派遣契約で投入されたメンバA氏はさらに契約期間が長かった。

私の契約期間が3か月である理由は2つある。一つは派遣元企業におけるプロジェクト要員アサイン計画上の都合、もう一つは開発開始3か月経過後には設計・実装工程が完了しテスト工程が中心となるため体制を縮小するというZ社側の意向であった。

この3か月間の私の残業時間の推移としては、一月目、二月目と増加傾向にあり、三月目には過労死基準寸前という程度であった。他のメンバーも同様かそれを少し上回る程度だった。そして3か月が経過し、私が派遣契約を終了してからは、Z社のリーダーは徹夜・休日出勤するようになり、このプロジェクトは破綻したそうだ。(詳細は不明)

2.プロジェクト期間中に感じたブラック労働の予兆

ブラック労働に至る予兆は細かい部分に現れる。

自身がソフトウェア開発作業において不快感ややりにくさを感じたならそれは危険信号である。

ここでは、Z社のプロジェクトPの開発期間中に感じたブラック労働の予兆で、代表的なものを挙げる。ここに挙げているものが全てではない。また、Z社へ発注しているY社に原因があるものもある。

2-1.設計ドキュメントが機能していない

設計ドキュメントが細かすぎて分かりにくい。慣れない用語や曖昧さがある。

その製品開発における過去のプロジェクトに携わり、システム全体の知識を持った人がさらに詳細を理解することを目的とするならば、不便の無いドキュメントであると思われる。

しかし、いきなりプロジェクトPに投入され、全体を知らない人が読むドキュメントとしては情報量が多すぎて、知りたいことをすぐに引き出せないのである。これでは、ドキュメントとして十分機能していない。

ここまでなら、他社でも普通に起こりうる話であるが、プロジェクトPが違うのはここから先である。

優良企業であれば、不慣れな人が慣れるのに時間がかかることを想定して十分な工数を取り、設計ドキュメントのみでは理解できないところを丁寧に補っていく。そしてドキュメント自体の改善に繋げる。一方、プロジェクトPでは、あたかも設計ドキュメントを理解する側のスキル不足とみなしてマウントを取ることが当たり前に行われる。

  • 「◯◯に書いてありますよね。」
  • 「当たり前ですよね。」
  • 「○○の意味と捉えるのが普通ですよね。」

「当たり前」「普通」・・・。誰にとっての「当たり前」「普通」なのか?

Z社では「当たり前」「普通」なのかも知れない。でも、他の考え方もある。Z社にとっての「当たり前」に当てはまらない経験をした人もいる。Z社の「当たり前」は世間にとっての「当たり前」とは限らない。

また、

「設計ドキュメントがあるから、早くできる。」

などと称し、短いスケジュールを設定することがある。

しかし、情報量が多すぎて理解に時間がかかったり、過去製品の開発当時は必要な情報でも、次製品の開発時に過去製品の情報を調査する場合には不要な情報もあり、これらが入り混じっている。

まず、自分自身がスキル不足でもないのに、過去製品の設計ドキュメントをスムーズに理解できない状況で、それを読み手のせいにしてマウントを取る開発現場はヤバいと考えた方が良い。

  • 設計ドキュメントの情報量が不足している
  • 設計ドキュメントの情報量が多すぎる
  • 知りたい情報がすぐに見つからない
  • ソースコードとドキュメントのアンマッチ

このような前段と向き合わず、そのまま放置していると、以降も同じことを繰り返す。読み手のスキルではない。

また残念なのは、派遣契約の場合、派遣要員は派遣先の指示に従わないといけない。派遣先企業Z社のプロジェクトPにおける開発プロセスがどんなに粗悪なものであってもである。派遣要員がプロセスを変える権限等ないため、優秀な派遣エンジニアにとっては非常にもったいない状況となる。

2-2.一部の人間が上から目線でマウントを取ろうとする

先程の内容と一部重複する。

設計の内容や当該開発現場でのプロセスについてこちらが質問したところ、普通はその内容について必要な回答のみをすれば良いわけである。

しかし、それに「当たり前です」「当然です」といった余計な言葉が付き、不快感を感じることがある。質問者は必要な回答のみが得られれば良く、それが「当たり前」かどうかはどうでも良いのである。

「当たり前」「当然」とは、「誰にとって当たり前」なのか、回答する側の人や組織の主観にすぎない。

ある人にとっては「当たり前」でも、別の人にとっては「当たり前」ではないかもしれない。各個人の、経験、価値観によって変わるところであるが、自分たちの価値観に従え、マウントを取ろうとしていることの現れであると見抜く必要がある。

また、質問者の「欲しい情報」「必要な回答」よりも、「回答者の言いたいこと」が前面に出てしまっているケースが見受けられる。このような回答者はコミュニケーションに問題がある可能性があるため、慎重に見極めておきたい。

コミュニケーションの面で何となく自分が不快感を感じたときは、何か問題がある予兆であると同時に、素直にどこに不快感を感じたのか具体的にしておくと良い。

このような無駄にマウントを取ろうとする行為が、相手側を不快にさせ、余計な消耗を生み、生産性が下がる。ブラック労働になっていく予兆だ。

2-3.進捗遅れが少しずつ顕在化し、「見積の適切性」に疑問を感じる

進捗遅れの要因が、これといった明確なケースがある場合と、そうでないケースがある。明確なケースはその点を対処すれば良い。しかし、この現場は後者の方である。この開発現場では冒頭でも示したように、月ごとに徐々に残業時間が増え、プロジェクト開始3カ月目で早くも月残業時間が過労死基準の手前まで跳ね上がるといった状況である。

また、特定のエンジニアのスキル不足ということも考えられるが、この現場のプロジェクトではメンバ全員の進捗が一律に予定より遅れていることから、この可能性は極めて低いと判断される。

そもそも「進捗遅れ」と称する時点で、見積が適切である前提で話が進められている。見積が不適切であっても、そのことは議論もされず、気付きが遅れる。現時点で見積が不適切であるということは、この先予定している作業の見積もりも同じように不適切である可能性が高い。プロジェクトPがかなり進んだ時点で、元々の計画自体が破綻していることに気付いても、もう手遅れである。

2-4.使用するパソコンのトラブルが多い

この開発現場も然りだが、長時間労働になりやすい開発現場は、パソコンのトラブルが多発する傾向にある。具体的には、使用するツールの動作が遅く、パソコンがフリーズする等、業務効率に致命的な影響を与える。

それにも関わらず、その開発現場で作業する社員や派遣要員に、経費をケチって粗悪なスペックのパソコンで作業させることがある。

これによる作業の遅延や低効率の状況でも

  • 「言い訳をするな」
  • 「環境のせいにするな」

のような根性論を吹き込む未熟者を時々見かけたことがある。

IT・システム開発企業として恥ずかしいことと認識すべきである。

2-5.パワハラが行われる

下記の3記事はプロジェクトPにおける、発注元のY社窓口の要員を加害者とするパワハラ事例である。
o08usyu7231.hatenablog.com
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受注側Z社リーダー要員もこれを受け入れており、発注元Y社を是正しようとする気が無く、同調している。

一方、Y社窓口の要員は、私と一緒にプロジェクトPを進めてきたA氏からも評判が悪かった。受け手が不快感を感じるような嫌味、揚げ足取りは、パワハラとなりうる。

パワハラが発生すれば、組織の生産性が下がることは周知の事実であり、ブラック労働に直結するリスクは大きい。

2-6.ソフトウェア開発を簡単そうに語る

「ソフトウェア開発を簡単そうに語る」

姿を見ると、素人なら

「この人はそんなにすごい技術を持っているのか」

というイメージを持ち、圧倒されてしまいそうである。

しかし、現実はそうではない。冷静に考えると全く逆だ。

本当にソフトウェア開発に関する技術や経験のある人は、ソフトウェア開発の難しさを知っている。

「ソフトウェア開発を簡単そうに語る」人は、

  • ソフトウェア開発を下請けに丸投げして、自身はソフトウェアをわかっていないことに気づかないまま、発注者側が偉いと勘違いしている
  • 本当に技術があったとしても、他の人が行き詰まる点を掴めず、ソフトウェア開発を組織として円滑に進めることができないマネジメントの未熟者

のいずれかである。

私が様々な企業を見てきて掴んだ傾向は、

「トラブルを想定していない企業ほどトラブルが多い」

ことである。プロジェクトPもこれに当てはまる。
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2-7.多重下請け構造である

多重下請け構造の下位層にいる企業は、構造上の問題からブラック労働になりやすい。

詳細は別記事で紹介しているのでそちらを参照いただきたいが、予兆検知のポイントとして捉えておきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com
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エンジニア個人で解決できる問題ではないので、多重下請け構造のプロジェクトは受注しないのが賢いと言える。

3.長時間のブラック労働がエンジニア個人のスキル不足ではないと確定

これまでの予兆を捉えつつプロジェクトPを進めていった結果、ブラック労働が顕在化し、プロジェクト開始三月目には過労死基準寸前の残業時間となった。

情弱なエンジニアであれば

「自分のスキル不足で、ソフトウェア開発の進捗が遅れ、周囲に迷惑をかけている」

と思い込むかもしれない。

自身で改善できることは改善しなければならない。

しかし、無理が祟り精神を壊さないためにも、ブラック労働に至る「前段」に着目し、

  • 無理な要求により長時間労働が常態化
  • プロジェクト規模・内容とスケジュールがミスマッチで異常
  • パワハラ体質
  • 根性でやり遂げようとする
  • ソフトウェアエンジニアの犠牲でもってプロジェクトが成立している
  • 困難な内容を簡単そうに語られる

といった、エンジニア個人で解決不可能な「前段の粗悪さ」を正しく見抜く必要がある。

「粗悪さ」≠「厳しさ」であるため、これらの見極めが必要である。
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ここでは、「前段の粗悪さ」を正しく見抜いた決定的な根拠があるので、それを紹介したい。

3-1.発注元社員同士の立ち話によりそもそも無理なプロジェクトであることが判明

Z社内で私と一緒にプロジェクトPを進めてきたA氏が、開発したシステムのテストの都合上、Y社へ出向く時期があった。このときにY社内でY社社員同士の立ち話を耳にし、その情報をA氏が私へ教えてくれたのである。

  • 「プロジェクトPは終わっている」
  • 「どう考えてもあのスケジュールは無理だろう」
  • 「あのような無茶な依頼をよくZ社に発注するよな」
  • 「Z社も気の毒だ」

本来Y社としては社外に聞かれたくない情報だったかも知れない。

プロジェクトPのY社窓口社員は立場上このような意向を表向きには出さないが、Y社の中にもこのように考える人がいることが判明した。

3-2.他社での実績と他社現場との徹底比較の結果明らかに違和感

私はZ社でのプロジェクトP以前にも、「ブラック労働」「ホワイト労働」両方を経験しており、過去のソフトウェア開発において多大な実績を挙げ、各々の開発現場さらにその先に貢献してきたと自負している。

一方で、過去のブラック労働によって健康面に影響した経験もある。

このような様々な経験を積んできたからこそ、他社との比較ができる。

  • 「自分のせいでプロジェクトPの進捗が遅れている」
  • 「自分が周囲に迷惑をかけている」
  • 「自分がいくら努力しても追いつかない」
  • 「自分は能力不足かもしれない」

プロジェクトPではこのように自分を責めることがなかったため、体力的な疲労はあるものの、鬱病などのように精神を壊すことはなかった。
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何かおかしなことがあれば、判断基準を(他社や世間等)当該組織の外に置くことが重要である。そのようにすることで、当該組織を一歩引いた目線から俯瞰して見ることができ、問題点の発見に至ることがある。
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4.ブラック労働が顕在化したプロジェクトの結末とその後、および補足

最後にプロジェクトPがどうなったか、プロジェクトPに関わっていたメンバーはどうなったか、その後の私のキャリアはどうなったか、その他諸々を述べてこのお話を締めたい。

まず、私は予定通りZ社との派遣契約を終了し、プロジェクトPから離脱した。これまで一緒に開発をしてきたメンバA氏は引き続きZ社内でプロジェクトPに携わることとなる。冒頭にも述べたように、私が派遣契約を終了してからは、Z社のリーダーは徹夜・休日出勤するようになり、このプロジェクトは破綻したそうだ。(詳細は不明)

更に、プロジェクトPに関わった人たちがY社、Z社を問わず退職者が相次いだ。中にはZ社のマネージャクラスの人も含まれている。Z社のプロジェクトPのリーダー、およびY社プロジェクトP窓口社員が退職したという情報は無い。憶測が入る形ではあるが、プロジェクトPにおけるブラック労働の加害者は各企業に残り続け、被害者が退職する形になったようだ。

私自身は、Z社での派遣契約を終了後、別業務を経験後、転職活動の末、大手企業へ転職。転職後もソフトウェアエンジニアである。プロジェクトPにおける反面教師がその後のプロジェクトに活かされ、転職にも活かされた。

ブラック企業ではなくても、ブラック労働の予兆を掴むことは、本記事で紹介した通り可能である。ブラック企業でないからといって、全ての部門、全ての業務、全てのプロジェクトがブラックでないとは限らない。経験と勘によるところもあるが、情報収集と転職などの準備は大切である。自分の生活、自分の健康、自分のキャリアを守るためにも、まずは転職サイトに登録することをお勧めする。

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最後に、Z社の良かった点を挙げておく。

Z社のマネージャは、プロジェクトPのリーダーとは違い、プロジェクトP初期の頃に

「ウチの会社は他と比べてどうですか?」

と私に聞いてきたのである。

私は派遣だったので、悪い回答はできなかった。実際、プロジェクトPの開発初期の頃の残業時間は普通程度だったし、そこから段々と増えてきたのが事実である。

しかし、私が良いと感じたのは

「派遣要員から見た他社との比較結果を気にしている」

点である。このような視座が持てない管理職が少なくない中、大切にしたい姿勢であると感じている。

もう一つは私と一緒に仕事をしてきたA氏だ。

A氏はプロジェクトPの長時間労働に関する愚痴が多くみられるのだが、私は全く不快感を感じることなく共感できた。

それどころか、IT業界にいて人間らしい感覚を持った人材であると魅力を感じたほどであった。ブラック労働に同調する社畜とは全く違う。IT業界・エンジニア・ビジネスパーソンとして・・・のみではなく、人間としてどうあるべきかを改めて考えさせられる機会だった。

ソフトウェア開発発注側が心得ておくべきこと

我々の暮らしを支えているシステムを制御するソフトウェアは、我々の目に見えないものだが、非常に重要な役割を担っている。

同様にシステム開発におけるソフトウェアエンジニアも、高いスキルを必要とし、システムの構築に多大に貢献している。

システム開発の受注側企業におけるソフトウェアエンジニアとしての心得は、企業内の教育等において、上司から部下へ、先輩から後輩へ、よく叩き込まれる。お客様の要望に応え、「良い品質」のソフトウェアを「早く」「安く」、といった具合にである。

しかし、システム開発の発注側企業の心得をあまり聞いたことが無い。私が専ら受注側の立場で業務を行ってきたため、そのように感じるだけかもしれない。

世間一般を見ると、日本においてはIT・システム開発に関してまだまだ闇が多く、ソフトウェア開発はソフトウェア企業に丸投げになり、業務の負担が多い割には賃金があまり高くないという悩みに直面しているソフトウェアエンジニアは少なくない。

つまり、業界としてまだまだ健全とは言えない。この点は海外と比べても遅れをとっており、先進国としては恥ずかしい限りである。

この記事では、システム開発の中でも、ソフトウェア開発の発注側企業が心得ておくべきことの中でも代表的な内容について書こうと思う。


1.ソフトウェア開発の費用・納期と発注範囲・内容を適切なバランスとする

まず、ソフトウェア開発の費用と発注範囲について、発注側が心得ておかなければならないのは次の二点である。

  • ソフトウェア開発をベンダーに丸投げし、ベンダーによる手厚いサポートを要求するならば、高額な開発費を支払うこと。
  • ソフトウェア開発に関してベンダーに支払う費用を安く済ませたいなら、要求や仕様をしっかり確定し、ベンダーが作業しやすい前段を整え、ベンダーをしっかりコントロールすること。

一般社会では当たり前である。

鉄道なら早く目的地へ行きたい場合、通常の運賃に加えて特急料金を払う、良い設備で良いサービスを受けたいならグリーン料金を払う。郵便物なら速達にしたい場合、速達料金を払う。

しかし、ソフトウェア開発となれば、要求が増えても納期が変わらない、しかも安い費用なんてことはよくある。

  • 「業務内容の割には賃金が安い」
  • 「想定以上の手厚い対応を求められる」

納期に関しても同じことが言える。

  • 「開発内容の割にはスケジュールが短すぎる」
  • 「そもそもプロジェクト計画自体が破綻している」
  • 「開発途中に機能追加があるが、納期が変わらずベンダー側で吸収している」

このような背景から、受注側企業のソフトウェアエンジニアが低賃金や過重労働を理由に退職するケースが発生している。受注側企業の労働環境が劣悪になることは、発注側企業にとってもリスクであり、他人事と捉えてはいけない。当たり前なのだが、できていない企業が少なくない。

2.ソフトウェア開発の大変さを理解する

ソフトウェア開発の発注側企業の社員は、ソフトウェア開発の大変さを理解するべきである。

この件に関しての取り組み事例を紹介する。

あるメーカーでは「交流会」と称して、ソフトウェア開発の発注先企業を訪問し、ソフトウェア開発現場、ソフトウェア開発工程、ソフトウェアデバッグ環境を視察し、発注側と受注側の交流の場が設けられた。

二度に渡って行われ、一回は両社の若手社員同士をメインとしたもの、もう一回は両社の中堅・管理職をメインとしたものであった。

お互いの社員同士が、相手方の企業の内部を知り、以降の業務のありかたを考え直す良い機会でもあるし、お互い刺激しあえるものであった。

ソフトウェア開発における設計資料や有識者によるレビュー資料は、普段は社外秘であるものの、この「交流会」の場では、その一部が公開された。その資料にはソフトウェア開発担当者が設計・検証した内容、ソフトウェア開発部門の上位者が照査した結果、担当者に対する指摘事項一覧とその対応内容・確認結果の詳細が示されており、ソフトウェア変更が地道な作業で成り立っていることがわかるものだった。

これを受けてソフトウェア開発発注側企業のマネージャが、発注側企業の担当者全員に向けて発した言葉が、以下のものだった。

  • 「『ソフトウェアを変更する』作業は、変更に対して、(受注側企業の担当者による)多くの検証、資料作成、その他様々な作業で成り立っている。」
  • 「『ソフトウェアを変更する』ことは、我々が想定しているのと比べると大変な作業であることを認識すべきである。」
  • 「できるだけ無駄な『ソフトウェア変更』を避けるように、(受注側企業に対して)配慮しなければならない。」
  • 「それでも『ソフトウェア変更』を依頼する必要がある場合、できるだけ早めに依頼し、(受注側企業の担当者が)余裕を持って取り組めるようにしなければならない。」

私も同感である。

このソフトウェア開発発注側企業のマネージャーは、システム開発を円滑に進めるために、ソフトウェア開発の発注側として念頭に置いておかなければいけないことを、発注側メンバに周知し、教育している。

ソフトウェア開発者の負担をできるだけ減らし、ソフトウェア開発者がシステム・ソフトウェアの品質担保に最大限注力できるようにするための配慮は、ソフトウェア発注側企業に必要なマインドだ。

ソフトウェア開発は簡単なことではない。ソフトウェア開発を簡単と捉え、軽視することの問題点については、下記リンクの記事を参照していただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

3.ソフトウェア開発行程へのしわ寄せを軽減する

  • システム開発は想定外のことが起きる。
  • プロジェクト途中での機能追加、機能変更が発生する。
  • 事前に十分な想定ができておらず、作業を進めていく中でトラブルが発生する

これらのことは発生するよりはしない方が良い。できる限り最善を尽くし、未然防止に努めなければいけない。

しかし現実のところ、開発である以上発生する可能性が高いため、発生することを想定しておくべきである。想定外の事態が発生することで、工数が増大すること自体は致し方ない。

一方、このような原因により、ソフトウェア設計・実装・検証等、後工程にしわ寄せが行き、それを後工程の長時間労働等力技で回復することがあればグレーゾーンである。

労務管理に厳しい企業なら、工数増加要因の発生に対して残業で賄うことは、何も知恵を絞らない「サルでもできる愚策」であると考えている。

しかし、大半の企業では一時的に残業で賄うことは致し方ないと考えているようだ。それが管理職が育たない理由でもある。

本当に問題なのは、ソフトウェア設計・実装・検証等の工程を長時間労働力技で回復することが当たり前になっているケースである。これは、ソフトウェア部門の管理者によるマネジメントが行き届いていない他、発注側の甘えであると言ってよい。

ソフトウェア開発部門が力技で回復するということは、その部門の人に多大な負担をかけることにより、十分な設計・検証ができず、ソフトウェア品質に影響する。つまり、発注側もリスクを負うことになるのである。ソフトウェア開発部門に責任を押し付けたところでこのリスクは無くならないし、発注側の立場を利用した圧力は社会的に冷ややかな視線を浴び、発注側にとって不利益になるだけである。このような状況にならないよう配慮しなければならない。
o08usyu7231.hatenablog.com

更に問題なのは、世間一般の感覚や社会的にはあり得ないことだが、ソフトウェア設計・実装・検証等の工程を長時間労働等力技で回復することが当たり前になっている状況を、

  • 「業界の常識」
  • 「会社の厳しさ」
  • 「それでも対応してこそ本当のプロ」

などと正当化して、美徳であるかのようなマインドコントロールにより、洗脳するケースである。これは完全にブラックであると言って良い。
o08usyu7231.hatenablog.com

4.ソフトウェア開発発注側が心得ておくべきこと、まとめ

ソフトウエア開発の発注側企業は、ソフトウェア開発は大変なことであると心得、ソフトウェアエンジニアに負担を強いて完成するソフトウェアは品質面のリスクを負うと考えるべきだ。

  • 「自分たちは発注側だから関係ない」
  • 「受注側企業さえしっかりしていれば良い」
  • 「受注側に責任を押し付ければ良い」

このような考え方は危険である。

ソフトウエア開発の発注側企業は、前工程の遅れをソフトウェア開発で賄うことが当たり前と考えてはいけない。発注先に納期短縮を理由に過重な労働を強いることの他、力関係を利用した過剰な要求により発注先を脅かすことは、人権侵害を助長する行為であると心得るべきである。自社・他社問わず、発注元先問わず、働く人すべての人権を守ることは、人間として、社会としての基本である。
o08usyu7231.hatenablog.com
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また受注側企業は、発注側企業がソフトウェア開発に関してどれほど理解があるか、発注側企業の社会的モラルがどのようなものであるかを見抜く必要がある。顧客の要請に応えることばかりに注力しすぎて、ソフトウェアエンジニアの負担を軽視することがあってはならないのだが、残念ながらこれが非常に多いのである。そのような企業は長期的に総崩れになるどころか、既に世界標準から取り残されている。ソフトウェアの重要性はますます増してきている。
o08usyu7231.hatenablog.com

パワハラ事例解説(20) - 納期逼迫による残業時間増加への圧力

このシリーズの記事では、パワハラの定義と類型、私の身近に起きたグレーゾーンを含む事例について、定義と類型をもとに解説している。内容によっては考え方や改善策についても述べているので参考にしてほしい。

自分が加害者にならないように注意することをはじめ、被害に遭いそうな場合はいち早く予兆に気付くことが求められる。


【最初に】パワハラの定義と6つの類型

パワハラはご存知の通り「パワーハラスメント」の略であり、権力や地位を利用した嫌がらせという意味である。2001年に株式会社クオレ・シー・キューブによる造語である。ただ、その定義は曖昧で指導との区別が困難である現実を抱えていた。2020年6月にパワハラ防止法が適用され(中小企業は2022年4月より適用)、同時に厚生労働省による定義が明確になった。

パワハラの定義

パワハラパワーハラスメント)とは、職場において行われる

  • ①優越的な関係を背景とした言動であって、
  • ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • ③労働者の就業環境が害されるものであり、

①から③までの3つの要素を全て満たすものをいう。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

パワハラの6類型

パワハラは次の6つのパターンに分類され、6類型と呼ばれている。

  • (1)身体的な攻撃
  • (2)精神的な攻撃
  • (3)人間関係からの切り離し
  • (4)過大な要求
  • (5)過小な要求
  • (6)個の侵害

「(1)身体的な攻撃」は暴力の他、モノを叩くことによる威嚇がこれに該当する。「(2)精神的な攻撃」は暴言の他にも、他人を心理的に苦しめる発言が該当し、パワハラ事例の中でも最も多い。特定の人だけ仲間外れにしたり、情報を与えない、無視をするのは「(3)人間関係からの切り離し」に該当する。到底達成できないノルマを与える「(4)過大な要求」、能力に見合わない仕事を与える、もしくは仕事を与えないことで心理的に苦しめる「(5)過小な要求」、プライベートに踏み込みすぎる「(6)個の侵害」、これらを総称してパワハラと呼ばれる。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

このシリーズの記事で紹介するパワハラの事例

ニュースで取り上げられているものや、裁判になったものは組織内で解決できなかった手遅れ案件である。また、世間の目も段々厳しくなってきており、損害賠償の相場も数百万単位(被害者が死亡の場合は数千万単位)に上がってきているという情報もある。いくら正論であっても、相手が嫌がるやり方であれば、法律に触れることになる。

ただでさえニュースで見ることが多くなってきているのだが、これらは氷山の一角であり、水面下には程度の大小を問わずさらに多くの案件が潜んでいる。上述の定義や類型を基に、私が実際に見たことがある事例を紹介し、定義や類型を元に解説する。程度や被害の大小は様々である。

  • グレーゾーンであるもの、パワハラと断言できないもの
  • 「こんなのがパワハラになるのか?」というもの
  • 出来事が起きた当時はあまり意識しなかったものの今考えると「あのときのあの出来事はもしかするとパワハラにあたるのでは?自分も加害者にならないように気を付けよう。」と思ったもの

いずれにしても、加害者側に問題があり是正が必要であることは間違いなく言えるので、立場関係なく参考にしていただきたい。その上でパワハラの予兆を見極め、未然防止に繋げることが重要てある。

このシリーズの記事で紹介するパワハラの事例一覧については、こちらを参考にしていただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

【事例20】納期逼迫による残業時間増加への圧力

システム開発の大物プロジェクトが終盤に差し掛かり、忙しさがピークを迎えた頃、本プロジェクトのリーダー(加害者)から担当者(被害者)に対して、言った内容が問題となった事例である。

担当者(被害者)は周囲のメンバーと同様多忙であり、残業が多い状況であった。

一方、担当者(被害者)は以前から予定し、かなり前から申請しており、かつどうしても外せない有給休暇取得日が近づいている。

とはいえ、忙しい状況を担当者(被害者)もわかっているため、プロジェクト全体に配慮し、週末に休日出勤をするためリーダー(加害者)に申請した。

そのタイミングで、リーダー(加害者)が担当者(被害者)に言った内容が次のようなものである。

(a)「プロジェクト全体が遅れている状況で、もう少し頑張ってほしい。」
(b)「○○(他の人)はいろいろ調整している。」
(c)「△△(他の人)は休日出勤して、頑張っている。」
(d)「□□(被害者)は、意識を高めてほしい。」
(e)「□□(被害者)は、来週予定の有給を取らずに出社すべきだ。」
(f)「定時退社日ももう少し遅くまで残ることはできないのか?」
(g)「公共交通機関の最終便が無くなったなら、車通勤している誰かに同乗させてもらうとかできないのか?」

リーダーも担当者も焦りがある状況である。このリーダーの発言は、担当者への罵倒や侮辱は見られなかったが、それにしても労務管理の観点からいかがなものだろうかと思う。

これは、長時間労働の体質を作りあげているパワハラの典型である。リーダーとしての立場を利用し(①)、プロジェクト全体の進捗遅れに対する合理的な方法ではなく、担当者に深夜までの残業を要求するという、業務に必要相当な範囲を超えた言動により(②)、就労環境を悪化させている(③)ことから、パワハラの定義を満たしている。6類型では、根性論によるアプローチであることによる、相手に不快感やダメージを与える(2)「精神的な攻撃」、ただでさえ担当者も残業が多い中、更に多くの残業を強いる(4)「過大な要求」が該当する。


以下、リーダー(加害者)の発言内容を一つ一つ検証していく。

(a)「プロジェクト全体が遅れている状況で、もう少し頑張ってほしい。」

被害者である担当者も、このことはわかっている話である。「頑張ってほしい」とはどういうことなのか?、もっと長時間労働してほしいという意味なのか?、現状でも十分頑張っている。

担当者に圧力をかけるのではなく、状況改善に向けた具体的な話が必要である。そのための調整や対話こそ、リーダーの業務なのだが。。。

(b)「○○(他の人)はいろいろ調整している。」

被害者である担当者も、このことはわかっている話である。被害者である担当者も業務を調整し、効率的に行っており、かつ業務におけるアウトプットの質が高い。

「○○(他の人)・・・」の話を挙げて、リーダーは担当者に何を伝えようとしているのか不明であり、具体性のない根性論でしかないと判断される。

(c)「△△(他の人)は休日出勤して、頑張っている。」

リーダーは、被害者である担当者にも「△△(他の人)を見習って休日出勤せよ。」ということなのだろうか?

リーダーからは「休日出勤」をする人の方が優位性が高いと考えているのだろうか?

本来「休日出勤」を行うのは例外的な場合のみである。「残業」も同じである。また、「休日出勤」というのは業務遂行にあたっての一つの手段であり、会社への忠誠心を試すためのものではない。

例えば、サーバのメンテナンス等休日にした方が望ましい業務であれば「例外的な場合」に当てはまると考えられ、代わりに平日を代休とする運用は一般的だろう。あるいは、開発工程(作業工程)の都合上、特定の作業を特定の期日(マイルストーン)までに終わらせる必要があるために、一時的に「休日出勤」で乗り切り、代わりに平日を代休とする運用も稀に発生する程度であれば許容範囲だろう。

本件のような、多すぎる業務量を力技で乗り切るために「休日出勤」を強要するのは、長時間労働の土壌を作ってしまうこととなり、管理者の怠慢であると考えて良い。「休日出勤」以外の手段の検討を、管理者が率先して行うべきである。

(d)「□□(被害者)は、意識を高めてほしい。」

意識が高いから、前述したように□□(被害者)も「休日出勤」を申請したのではないだろうか?

そもそもこのタイミングでリーダーがこのような発言をすること自体意味不明である。

それとももっと早い時期から、「残業」・「休日出勤」せよというのが本音なのか?

いずれにせよ、「頑張り」「調整」「意識」等、抽象的な言葉が多く、被害者は具体的にどうすれば良いか困るだけである。

(e)「□□(被害者)は、来週予定の有給を取らずに出社すべきだ。」

有給休暇を取らせないのは、労働基準法違反である。有給休暇日を変更することの交渉は問題ない。

被害者は、前述の通りかなり前から有給休暇を申請しており、かつどうしても外せないという状況である。プロジェクトのメンバーに配慮しているからこそ、かなり前から申請しているのであって、リーダーはここの部分のを汲み取れなかったものと考えられる。

(f)「定時退社日ももう少し遅くまで残ることはできないのか?」

被害者である担当者もただでさえ残業時間が増え、負担が大きくなっているにも関わらず、更に長時間労働を強いるのは、リーダーの怠慢である。

元々の業務量が多い、業務内容とスケジュールのミスマッチ、プロジェクト中に追加作業が発生した等のリカバリー方法として、残業でカバーさせようとするリーダーや管理職がいる。

しかし残業でカバーという手法は、上述したような「前段の粗悪さ」によるしわ寄せを末端メンバーに押し付けているだけであり、マネジメントではなく単なる愚策である。

そのようなリーダーはマネジメント能力がない証拠であるため、慢性的な長時間労働状態となってプロジェクトが炎上しやすい状況となる。

(g)「公共交通機関の最終便が無くなったなら、車通勤している誰かに同乗させてもらうとかできないのか?」

これも先程と同様、労務管理の杜撰さの表れである。はっきり言ってここまでしてやらせるかという呆れの一言である。力関係で押しきるにも程があるだろう。

この発言は、公共交通機関の最終便以降まで残業している車通勤のメンバーがいることが前提であるため、そもそもその時点で異常としかいいようがない。


全体を通して、リーダー自身も心理的に余裕のない状況であることは理解できるが、リーダーの発言は担当者に不信感を与えるものでしかなかった。

周囲のメンバーが長時間労働、休日出勤しているから、していないメンバーはこれにあわせるべきだという考え方は、「協調性」ではなく「同調圧力」である。「協調性」と「同調圧力」の違いを理解していただきたい。
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幸い、本件は後にリーダー(加害者)から担当者(被害者)へ謝罪があった。担当者は、申請した日の休日出勤を予定通り行い、有給休暇を予定通り取得し、以降もプロジェクト完了に向けて尽力した。更に、この時期を含めた担当者(被害者)の仕事ぶりがリーダー(加害者)から理解され、高めに評価され、この期間に対する賞与が増額された。

【最後に】パワハラにおける考え方・まとめ

パワハラは加害者および組織の問題、被害者に責任はない

パワハラは加害者が未熟であることによって発生する。パワハラに関して被害者には非はない。被害者に改めるべき部分があると思えば、改めることは素晴らしいことである。しかし、パワハラを受けたことに対する責任まで取る必要はない

一方、パワハラ加害者は重い軽いいずれにしてもそれなりの処分と教育を受け、更正してほしい。パワハラの加害者を絶対に昇格させてはいけない。降格するくらいを当たり前にしてほしい。

パワハラ加害者となる可能性が高いリーダー、管理職には、パワハラの重大さを知ったうえで、チーム・組織で成果を最大化するために必要なことを学んでほしい。私は様々なリーダー、管理職を見てきた。技術や能力が高いベテラン社員はある程度いる。しかし、いくら能力が高くてもパワハラ気質なベテラン社員は、管理職にふさわしくないと判断している。組織のメンバーのパフォーマンスの最大化の妨げとなっているからである。チーム・組織で成果を最大化するためにパワハラはいらない。一方、被害者はパワハラを受けた状況にもかかわらず業務において一定のアウトプットを出しているなら、優秀な人材であると考えて良さそうだ。

パワハラがいけないことであるということは皆知っている。しかし、何がパワハラに当たるか、パワハラが発生したときにどのような影響が出るかを理解していないのではないだろうか。パワハラに関する研修や教育は行われているが、最悪命に関わるということを教えていないのではないだろうか。

パワハラ対策の第一歩は証拠集め

パワハラは加害者および組織の問題としながらも、被害者が対策しなければならない。実に理不尽だ。放置や無策、我慢することはお勧めできない。エスカレートするからだ。その対策の第一歩としては証拠を集めることだ。電子メールやチャットのやりとりでパワハラに繋がりそうなものがあれば残しておく、会話についてはスマホでも良いがICレコーダーで録音しておくことをお勧めする。裁判等で確実な証拠となる。

防犯カメラはこれまでは文字通り、犯罪調査に使用されることがメインでした。最近では、これに加えて職場などにおけるパワハラの証拠収集等、ハラスメント対策においてより重要性が高まっております。小型であり持ち運びしやすいこともあり、いつハラスメントに巻き込まれるか予測できない状況において、自分の身を守るためにも、是非携帯しておくことをお勧めします。


自分を守るための準備も並行して進める必要がある

パワハラは加害者を直接コントロールすることは難しい。被害者の方々には、まず自分を守ることを優先していただきたい。できればパワハラが発生するような環境から離れ、他の環境に移ることができるようにしておくことが望ましい。本来、被害者側に要求しなければならないことは社会的に非常に残念ではあり、理不尽ではあるが、パワハラ被害に遭う前から、転職、起業、フリーランス、副業など準備を進めておくことが、被害者個人でできる対策である。あらゆる手段で自分の人生を守るよう、準備を進めておくことをお勧めする。それくらい日本のハラスメント対策は国際的に見ても遅れている。
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組織の活性化や社員の成長に必要なことは「やりがい搾取」ではなく「阻害要因の除去」であると断言する

リーダー・管理職・経営者は、

「自社の社員に成長してほしい」

と思っていること自体は、どの企業でも共通であり、当たり前のことである。

問題は、成長してほしい社員に対してどのようなアプローチを取るかである。

リーダー・管理職・経営者以外にも、指導・教育に当たる人、更に「やりがい搾取」に遭っているかもしれない人を含めた全てのビジネスパーソンにこの記事を読んでいただき、社員の成長や目標の達成、組織の活性化に何が必要かを理解していただきたい。


「やりがい搾取」は害悪!上位者は「阻害要因の除去」によって「前段」を整えるべきだ!

「やりがい」とは「物事に対する充足感や手応え」と言われている。「達成感」「能力の発揮」「成長」「評価・報酬」など、何を「やりがい」とするかは人それぞれであるが、

一方、「やりがい搾取」は、「労働者の『やりがい』『意欲』を利用して不当に働かせること」と説明されている。労働・成果に応じた評価・報酬が不十分、または労働環境が劣悪なまま放置するも、労働者に対して「やりがい」のみを強く意識させ、労働者にとって都合の悪いことを間接的に黙らせるためのマインドコントロールであると言える。

本来「やりがい」とは、働く人個人個人が、自らの内面から自然に湧き出てくるものである。

他人や外部から

  • 「この業務はやりがいがあるぞ!(だから給料が少々安くても我慢しろ!)」
  • 「どうだ、この仕事!やりがいあるだろ!」
  • 「もっとやりがいをもってやれ!」

などと、強要されるものではない。

成長や目標達成を通して「やりがい」を感じるために必要なことは何か。

結論から言うとそれを達成するための「前段」を整えること、つまり「阻害要因の除去」である。「阻害要因の除去」が不可能なら「阻害要因の低減」でも良い。

多くの人間は、成長や目標達成のために一生懸命業務に取り組む。でもうまくいかないことがある。

未熟な管理職ほど成長させたい社員に

  • 「期待している」
  • 「頑張ってほしい」
  • 「成長してほしい」

などと、成長させたい社員の尻を叩き、アクセルを踏ませようとする。

更に、「厳しい指導」と称したパワハラ等により、成長させたい社員を奮い立たせ、

  • 「パワー」
  • 「圧力」
  • 「やりがい詐欺」

でもってコントロールしようとする。これは指導のプロではない。

有能な管理職は、成長してほしい社員にとっての「阻害要因」を共有し、その除去(もしくはそのサポート)に尽力し、パフォーマンスを発揮させ成長させるための「前段」を整える。ここが大きな違いである。

管理職でない一般社員としても、管理職の良し悪しを見抜くポイントとして覚えておいてほしい。

以下、ほんの一例であるが、「やりがい搾取」を含めた要求・期待に対して、その「阻害要因」、「阻害要因」の克服を含めた「解説」を紹介するので参考にしていただきたい。

1.教員

【「やりがい搾取」の可能性があるアピール・要求・期待】

近年、「教員」の重要性が増してきている。少子化の時代において、一人ひとりの子供の存在は貴重であり、質の高い教育が求められる。「教員」は、子供達と共に自分自身も成長でき、大変「やりがい」を感じる仕事である。

【要求・期待を実現する上での「阻害要因」】

授業およびその準備だけでも大変な上それ以外に、保護者対応、部活動指導等、休日返上で勤務する割には賃金が安く、極めて労働環境が劣悪である。長時間労働が大いに問題視されており、学校によっては教員同士のパワハラもある。鬱病になる教員もいる。

【解説】

職業の一種として分かりやすい「教員」を例に挙げた。「子供達と共に成長」や「教員」としての「やりがい」は、「教員」を募集する謳い文句としてよく見られる。いくら「教員」の「やりがい」をはじめとする良いところをアピールされても、長時間労働など裏側の問題が悪影響を及ぼしているため、「教員」を辞めていくのである。こうした現実に目を向けない良いところだけのアピールは、「やりがい搾取」である。

また「質の高い教育が求められる」といった、「教員」に対してのハードルを上げるような謳い文句の割には、低賃金といった「前段の粗悪さ」が丸見えであり、このような状況では「教員」は集まりにくい。

本当に「教員」を募集したいなら、「阻害要因」に目を向けるべきであり、長時間労働パワハラ、いじめの問題など、教育委員会と一丸となって是正・改善していく取り組みを強化しなければ、将来はない。

2.異動

【「やりがい搾取」の可能性があるアピール・要求・期待】

会社都合ではあるが○○には△△部門へ異動してもらい、今後も頑張ってもらいたい。○○にとっては、異動先でこれまでとは異なる業務を経験でき、新しい人間関係を構築でき、キャリアを積んで、「やりがい」を感じることで、将来への可能性を大いに広げることができる。会社としても、色々な人に色々な業務を経験してもらい、属人化を防止させたい意向がある。

【要求・期待を実現する上での「阻害要因」】

現在の業務に満足しており、なぜ○○が異動の対象となるのか妥当性について疑問である。不慣れな業務、不向きな業務へのアサインにより、異動対象者○○への負担が大きく、効率やモチベーションが下がり、組織全体のパフォーマンスが下がる可能性がある。また、異動対象者○○の気持ちへの配慮、○○自身の意向、向き不向き等、様々な点を考慮すべきにもかかわらず、一方的な決定であり大変遺憾である。

【解説】

これは私が実際に受けたことがあるマネジメント研修での、面談演習の内容である。異動を嫌がる部下に異動を説得する上司の役割を担うというものである。この研修で私がやってしまった失敗は、異動することのメリットをしっかり伝えることであった。これとは別の研修で、このような状況に遭遇した時「上司は部下に、異動することのメリットをしっかり伝え、共有し、部下を納得へ導いていく」と教わった覚えがあり、その通りに実践したのだが、この研修の解説によると、どうやらそれが間違っていたようだ。自分でもできていないことがよくわかり納得した。

この場面で上司側に必要なのは、「異動するにあたって何がネックになるか」という「阻害要因」をしっかりと聞き出すことである。聞き出すだけではダメだが、聞き出した時点で部下には「しっかりと自分の話を聞いてくれた」と認識を持ってもらう。そして「阻害要因」を一つ一つ除去していくことである。

部下が不安に思っていることがあればその点をヒアリングしておき、業務のサポート体制など、異動先の部署に根回ししておく。必要な研修や教育を受けさせる。現部署に戻る可能性があるならそれも考慮しておく。異動先の部署がいくら「やりがい」があるとはいえ、異動する本人にとって遭わなければ、本人にとっても、組織にとっても、不幸なミスマッチを招いてしまう。「異動するのは部下だから、上司にとっては他人事」と思われるような軽い扱いは絶対にしてはならない。

3.転勤

【「やりがい搾取」の可能性があるアピール・要求・期待】

会社都合ではあるが○○には△△へ転勤してもらい、今後も頑張ってもらいたい。○○にとっては、異動先でこれまでとは異なる業務を経験でき、新しい人間関係を構築でき、キャリアを積んで、「やりがい」を感じることで、将来への可能性を大いに広げることができる。会社としても、人員が不足している地域へのアサインが必要であり、「全体最適」の観点から理解してほしい。

【要求・期待を実現する上での「阻害要因」】

転勤は本人だけでなく、その家族にも大きな負担を与える。特に、育児、介護を抱えている社員にとっては、キャリア云々以前に、生活に大きな支障をきたす。そもそも会社都合で住む地域を決められるのは人権侵害でしかない。

【解説】

「転勤」は日本では当たり前とされてきたが、近年では時代に合わないと問題視されている。そもそも、海外ではありえない話である。「転勤」を受け入れることができる人はまだ良いにしても、前述したような家庭の事情で「転勤」が受け入れられない人は、どれほどすばらしいキャリアプランを提示されたところで、大きな「阻害要因」どころか、不可能なことである。

これの解決策としては、キャリア構築や人材育成、業務のローテーションが目的なら、「転勤」以外の方法を検討することである。「転勤」を伴わない業務割り振りや、現地採用、更には近年「テレワーク」の普及により、遠方の地域に存在する組織に所属しているが普段の業務はリモート(自宅近くのオフィスもしくは自宅)で行うといったケースもある。リモートワークは環境構築の面の「阻害要因」はあるものの、これまで問題となっていた物理的な距離があるという「阻害要因」が一気に解消される形となる。ぜひ、積極的に活用されたい。

また、「転勤」をテーマとした別記事も参考にしていただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com
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また、人員が不足している地域へのアサインを(企業にとっての)「全体最適」と表現されている。「転勤」が本当に「全体最適」なのかは疑問だ。企業の上層部や管理職にとっての部分最適である可能性が高く、前述したように社員やその家族を犠牲にしているとも言える。「全体最適」とは特定の社員を犠牲にすることではない。
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4.長時間労働

【「やりがい搾取」の可能性があるアピール・要求・期待】

若いうちから様々な業務を任せられ、幅広く経験を積むことができ、裁量が大きく、「やりがい」があり、圧倒的成長を実現できる。

【要求・期待を実現する上での「阻害要因」】

長時間労働になりやすく、健康面、生活面で被害を受けるリスクが大きい。若い独身の間なら問題点として表面化しなくとも、将来的にライフステージの変化に対応できないリスクがある。

【解説】

「様々な業務」「幅広い経験」「裁量が大きい」「圧倒的成長」は、「ブラック企業」を中心とした求人広告にてよく見かける「やりがい搾取」の典型である。
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「ハードワークでも良いから成長したい。経験を積みたい。」と考えている人にとっては魅力的な内容であるが、ここでの「阻害要因」はやはり「長時間労働」だろう。「長時間労働」を避けたい人、家庭の事情によって実現不可能な人にとっては、どれほどすばらしいキャリアプランを提示されたところで、全く魅力がないものとなる。

ここで「阻害要因」を解消するとすれば、「ハードワークでも良いから成長したい・経験を積みたい」人、「ワーク・ライフ・バランスを実現したい」人ともに共存でき、働き方の多様性を認めるような組織風土づくりに注力することだろう。「長時間労働」を可とする場合であっても、健康面の悪化や、法律への抵触が無い範囲内とすることを徹底する。そして、「どのように活躍し、どのように成長したいか」を上司と部下が共有し、それに沿った業務アサインを実現することで、そもそも「長時間労働」でなくても成長できる「前段」を整えることが必要である。

「社員の頑張りが足りない」と称し、成長させたい社員の尻を叩き、アクセルを踏まそうとする等、圧力をもってコントロールすることは、マネジメントが未熟であることの裏付けであり、「長時間労働」や「業務範囲が曖昧なカオス状態」のことをポジティブに言い換えている企業は高確率で怪しいと考えた方が良いだろう。

5.システム開発プロジェクトを通しての若手エンジニアの更なる成長を期待

【「やりがい搾取」の可能性があるアピール・要求・期待】

一生懸命業務に取り組んでいる若手エンジニアだが、思ったほど成長していない。本人の成長のために任せられる仕事をもっと任せ、もっと負荷をかけ、一つの開発プロジェクトを一人でこなせるくらいになるべき。多くの人間は少々のことでは破綻しないし、「やりがい」を感じるだろう。

【要求・期待を実現する上での「阻害要因」】

システム開発において、若手エンジニアの成長はその通りなのだが、他にも「品質」「コスト」「納期」「労務管理」と、守るべきものは多々ある。若手に負荷をかけるだけなら、たとえ成長できたとしても、その他のことがおろそかになり、破綻を招く。

【解説】

これは非常に難しいテーマである。システム開発プロジェクトにおいては、「品質」「コスト」「納期」(QCD)を守るだけでも色々と工夫が必要であるうえ、「労務管理」や「エンジニアの成長」となると更にハードルが上がる。未熟なマネージャは、目の前の「納期」を重視し、労務管理」が杜撰になりデスマーチとなる。IT業界によくある典型である。

ここではこれらの多岐にわたる内容のどれかを優先すればどれかが疎かになることが「阻害要因」だろう。「エンジニアの成長」に目を向けてみると、一つの開発プロジェクトを一人でこなせるくらいになるには、作業内容を増やし、色々なことを任せるといったことが考えられるのだが、これが行き過ぎると「労務管理」が杜撰になる。

例えば、上位者は成長させたい若手エンジニアに対して、一方的な「教育」「指導」「育成」というスタンスではなく、「対話」を重ねることによって、若手エンジニアの意見も取り入れ、どのような業務をアサインすれば成長に繋がるかを考える。逆に若手エンジニアにとって成長に繋がらない作業を上位者が引き取る等して、若手エンジニアが成長できる業務に専念できる「前段」を整えるといった姿勢が求められるのではないだろうか。このようにすることで、若手エンジニアにも「意思決定に参画した」という認識を持ってもらうのである。実際に、私が実践した方法だ。

6.パワハラ被害者に成長を期待

【「やりがい搾取」の可能性があるアピール・要求・期待】

業務上のやりとりで、加害者から被害者へのパワハラが発生し、被害者が体調を崩した。パワハラが発生したこと自体は加害者の問題であり、加害者は被害者に謝罪した。しかし、加害者とは別の第三者が「被害者が加害者の意向を汲み取れなかった事に関しては、被害者の問題でもある」として、被害者に対する責任追及を行った。被害者は加害者の意向を汲み取ることができるだけの「視座」を持ってほしい、成長してほしい、というのが第三者の建前上の思いである。

【要求・期待を実現する上での「阻害要因」】

業務上のやりとりで、加害者の意向を被害者に汲み取ってもらえるよう、加害者が十分な説明をできていなかったことが問題である。更に、加害者の言い分を被害者に受け入れさせようと、力関係を背景としたパワハラに至ってしまった。このようなパワハラを受けている状況で、被害者が加害者の意向を汲み取れというのは無理難題であるし、この出来事を背景に第三者が「視座」を持ち出すのは、被害者への配慮を欠き、あまりにも話が飛躍している。

【解説】

パワハラ加害者に問題があることは当然として、第三者コンプライアンス上、重大な過ちを犯している。この第三者のように、パワハラ被害者に対して責任追及を行い、二次被害に遇わせることを「セカンドハラスメント」という。「セカンドハラスメント」は違法行為である。その他、被害者に対する安全配慮義務違反」(労働契約法第5条違反)パワハラに対する対応を適切に行わなかったパワハラ防止法違反」に該当する。
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もう少し補足しておく。第三者は被害者の成長を促すことを建前として(加害者の言い分を汲み取るための)「視座」というキーワードを出している。しかし、裏側では「組織内でパワハラの発生を揉み消したい。」「パワハラが発生したことのインパクトを弱めたい」意図から、被害者によるパワハラに関する訴えに対して、第三者はこれを軽視し、被害者の「視座」に関する話題に論点をすり替えることで、パワハラから話題を反らしている。第三者にとって都合の良い、被害者に対するマインドコントロールである。被害者はその証拠となる文面を保有している。

結果として、第三者の行為は被害者によって企業内のパワハラ相談窓口に(証拠の提出とともに)報告され、第三者は被害者からの社会的信頼の失墜を招いてしまった。

ここでの第三者の失敗は、(建前上)被害者の成長という面のみに着目し、パワハラが発生している状況を加味しなかったため、パワハラ対応における不誠実さが目立ってしまったことである。更に、このケースでは「やりがい搾取」に代わり、「パワハラの隠蔽」や「パワハラが発生したことに対するインパクトを低減する」という意図が見えてしまったことだろう。

ここで本来第三者が必要な対応は、被害者に対して成長を直接促すのではなく、被害者に対する心のケア、被害者からの信頼回復、そして被害者が成長するための「前段」を整えることである。つまり、パワハラという「阻害要因」を除去することに全力を注ぐべきなのである。その方が被害者にとっても、組織にとってもプラスになる。
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「阻害要因の除去」は最優先!これができれば組織のパフォーマンスがアップする!

これまでいくつかの例を見てきたが、いずれも「阻害要因の除去」の必要性、重要性をお分かりいただけるだろう。「阻害要因の除去」を行わず、都合の良い点のアピールばかりでは、「やりがい搾取」「不正隠し」をはじめとするマインドコントロールは、早かれ遅かれ発覚に至り、信頼を失うことすらあるということを知っておくべきである。

この記事のタイトルの通り、組織の活性化や社員の成長に必要なことは、まず「阻害要因の除去」である。パワーでコントロールするのではなく。良いコーチングが必要だ。個人のためにも、組織のためにも必要だ。「阻害要因の除去」ができるだけでも、組織のメンバは動きやすくなり、パフォーマンスも飛躍的にアップする。実際、私自身も現場や組織によって、業務の進めやすさ、進めにくさはあった。楽に高く評価された現場もあった。そのような人材が、別の現場で理不尽な目に遭うのは実に勿体ないと感じる。管理職の腕の見せ所だ!

逆に、「やりがい搾取」に遭っているかもしれない人、「不正隠し」をされているかもしれない人は、上司が理不尽だと感じる人は、「阻害要因の除去」に対する姿勢を見ることで、その相手の良し悪し、管理職への向き不向きを見極める手立てとなるだろう。

この記事が皆さんの役に立つことができれば幸いである。

「ブラック企業」での業務に高い能力が求められるというのは本当か?

ブラック企業」もしくは「ブラック労働」に耐えなければやっていけない企業というのは、まだまだ存在する。

私はこれまでソフトウェアエンジニアとして「ブラック労働」から「ホワイト労働」まで経験してきた。

「ブラック労働」に巻き込まれているときは

「業務のハードルが高くて、自分はスキル不足かもしれない」

と思っていたことがある。

しかし、今は違う。

何が「ハードルが高い」と感じさせたのだろか?

過重労働により、心身が削られ、判断力が低下したことが一因だと考えている。

「ブラック労働」に巻き込まれている人は、どのような能力が必要なのかイメージしながら読んでいただきたい。


1.私がイメージする「優良企業」「ブラック企業」で求められる能力

「優良企業」というと聞こえは良い。友人や知り合いが勤めていると「すごいねぇ」等と言ったりすることがよくある。

「優良企業」は、就職や転職市場において人気である一方で、入社するには高い能力や実績が必要になる。そして、そこで就業し続けていくにはハードルが高く、高い成果が求められる。

私が見てきた限りのイメージだが、具体的には、

  • 提案・改善する能力
  • 判断力
  • 応用力
  • 協調性

といった、能動的な人材革新的な姿勢、およびアウトプットする能力が求められるイメージだ。

周囲に優秀な人材が多く居り、チームワークも良く、協力や理解が得られやすく、コミュニケーションの質も高いので、自分の能力を発揮しやすく、高い成果が出しやすい。楽ではないが、やりがいがあり、成長でき、健康面や生活面に無理が祟ることがない点が、私が考える特徴である。

一方「ブラック企業」で求められる能力について考えてみる。ここでは「ブラック企業」に限らず、そこまでは至らなくとも、労働環境が悪い「ブラック寄り」の企業も含めて述べることにする。

こちらは入社のハードルは高くないが、就業していくには「優良企業」と別の意味でハードルが高い。いくら優秀な人材でも、その企業にとって都合が悪い人材にとっては、大変居心地の悪い思いをすることがある。

私が見てきた限りのイメージだが、具体的には、

  • 忠誠心
  • 従順さ
  • 謙虚さ
  • 体力
  • ストレス耐性

といった、一般的に優位性のある市場価値よりも、組織の意向ややり方に従う姿勢の方が重要視される。「社畜」と呼ばれる人がいるのも頷ける。

何か提案をしても、理不尽な理由で聞き入れられないことが多い。

「前からこのやり方だから・・・」

と、プロセスを見直す姿勢が全く見受けられなかったり、

「顧客がこういってるから・・・」

と、明らかにおかしなことや非効率なことでも、内容よりも力関係を背景とした結論付けを行うことがよくある。中には、普通に考えればおかしなことでも「業界の常識」と称して洗脳してくるケースさえある。

例えば、「無理な納期」でシステム開発を成し遂げようとする場合、「優良企業」では

  • 「納期を延期する」
  • 「断る」
  • 「不良顧客を切る」

ブラック企業」では

  • 「残業で賄う」
  • 「徹夜・休日出勤で賄う」
  • 「客の要求であることを大義名分にして従う」

と、対応方針が全くことなるのである。よって、これに応じて社員に求める能力も変わってくる。

2.自分自身の能力と体験を振り返る

昔は、「ブラック労働」の中でやっていくにあたり

  • 「極めて高い能力が必要だ」
  • 「自分はまだまだスキル不足だ」

と感じたことがある。

しかし、当たり前であるが多くの人にとって満足度が高いのは「ホワイト労働」のほうである。

ブラック企業に限らず、労働環境の悪い企業では、やっていくのが大変だ。

業務に対して、何らかのアウトプット(成果)が求められていることは、どの企業も同じである。

私が新卒で入社した下請け・派遣を中心としたIT企業に在職中、大手企業への「客先常駐」となった。新人・若手で経験が浅く、スキルが低い頃は、業務上いろいろ苦労することがあった。これは普通である。長時間労働にも巻き込まれたが、これは上位者によるマネジメントの問題である。そして、段々と業務に慣れ、技術が身に付き、時間をかけて地道に成長していく。周囲の協力や配慮、共感もある。常駐先社員の指導・教育、常駐先企業の顧客企業に対する窓口担当、リーダー・サブリーダーの経験もある。能動的に業務に取り組むことが多かった。良いことばかりではないが、最終的に自分が成長でき、良い思い出が出来た企業である。

また、別の「客先常駐」先の企業では、労働環境がホワイトであり、業務への丁寧さが常駐先企業に好印象を持たれ、楽に高く評価され、その後のキャリアに影響を与えたケースもある。
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私が新卒で入社した下請け・派遣を中心としたIT企業に在職中、「自社開発」も経験した。この「自社開発」が私には馴染まなかった。「成長のため」という大義名分により、不慣れな業務を丸投げされる。技術力はあっても管理職のマネジメントが未熟であることにより、末端社員がそのしわ寄せを受ける。長時間労働にも巻き込まれた。その先に起きることは「成長」ではなく、「疲労」の末の「健康被害」だった。

「自分は『優良企業』で実績を出したのだから、この状況を打開できる」

と考えていたが、そうはいかなかった。

ブラック企業」で「優良企業」にいるときと同じように、もしくはそれ以上に頑張ることがいかに間違いであるか、後になって気づいた

ブラック企業」は何が大変かというと、求められる成果がそれほど高くなくても、労働環境が悪い、協力が得られず丸投げ、モチベーションが保ちにくい、リーダー・管理職によるマネジメントが未熟であることから、末端社員がしわ寄せを受ける。そのような劣悪で破綻した「前段」にありながら一般企業並みにやっていくには、末端社員が極めて高いパフォーマンスが必要となる。

この劣悪な「前段」のことを「厳しさ」と称している企業は、高確率でブラックである。
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末端社員による極めて高いパフォーマンスの発揮を妨げる要因を大きく分類すると、以下の2つのパターンだ。

  1. 「成果」を出すための「前段」が破綻している。
  2. 「成果」を出しても「軽視」される。

1つ目は、「前段」が破綻していること。例えば異常に短い納期であるようなケースである。顧客の理解、経営陣の理解、管理職の理解、調整能力、不適切なリソース配分を棚に上げ、通常数か月かかるようなシステム開発案件でも、数週間、数日での完成を求めるといった、通常では考えられないことがIT業界・ソフトウェア開発ではよくある。これを効率よく行い、納期を守ることがエンジニアとしての「能力が高い」とされる風潮がある。確かに達成すれば「能力が高い」かもしれない。しかし、達成される確率は極めて低く、長時間労働等により心身ともに疲弊し、健康面他リスクの方が大きい。未熟な管理職やリーダーが末端社員をパワーでコントロールし、末端社員の犠牲に頼っているだけでしかない。そしてその多くはその自覚すらない。例えこのような開発においてスケジュール通り進まなくとも、それは末端社員の能力が低く依頼元に迷惑をかけているのではなく、破綻した「前段」のしわ寄せにより末端社員が迷惑を受けていると認識したほうが正しいだろう。

2つ目は、「軽視」。上述のような状況で例え納期を守ることができたとしても、管理職にその状況や大変さを正しく理解し、適切に評価するだけの能力が伴っていないことによって「できて当たり前」と「軽視」され、結果として「過小評価」に繋がる。それどころか、更に高い「成果」が求められ、実質「搾取」状態となる。これも普通では考えられない。

この2つの要素により、「ブラック企業」、「ブラック寄り」の企業、「ブラック労働」現場と認識されるようになり、真面目で優秀な人材ほど嫌気が差し、その職場にいてあげる価値がないと感じて流出する。しかし、「自分の能力が低い」(=自己肯定感が低い)人は、搾取されていることすら気付かないケースがある。

ブラック企業」に限らず、個人個人が能力を発揮できるか否かは、管理職の能力や姿勢に大きく依存することがわかっている。未熟な管理職は成長させたい社員に

  • 「期待している」
  • 「頑張ってほしい」
  • 「成長してほしい」

などと、成長させたい社員の尻を叩き、アクセルを踏ませようとする。これは指導のプロではない。有能な管理職は、成長してほしい社員にとっての阻害要因を除去し、パフォーマンスを発揮させ成長させるための「前段」を整える。ここが大きな違いである。

管理職の能力や姿勢によって、末端社員がどれほど苦労するか、どのように苦労するのかが変わってくる。末端社員から見ると、このような環境でやっていくための必要な要素は、「能力」ではなく「忍耐」という表現がふさわしい。

3.企業により求められる能力は様々だが、「ブラック企業」で求められる能力は相対的に高い

どの業界もそうだが、企業にはいろいろあり、上位企業、下位企業などと言われている。

(1)「優秀な人材が集まる大手企業」「健全なホワイト企業
(2)「中堅の人材が集まる大手企業の下請け企業(グループ企業)」
(3)「底辺の人材が集まる下請け・孫請け・派遣を中心とした企業」

偏見はいけないとわかっていながら、私はどうしても(1)>(2)>(3)の順に優劣を付けてしまう。実際今までの私のキャリアの上ではこれとマッチしている。私は(3)に所属しながら(1)(2)へ客先常駐として業務をし、「優良企業」ほど私を高く評価するという傾向を掴んでいる。また、(3)→(1)に転職している。そもそも、私はなぜ(3)にいるのか、(3)にいるのは違うのではないか、そう思ったり、周囲からそう言われることもある。しかし、当時は目の前の業務のことばかり考えており、そのことに気にかけることもしなかった。今考えると恐ろしい。

もっと広い世界を見ると、フリーランスにも、スタートアップにも、優秀な人材はいる。それぞれに求められる能力は違う。企業それぞれ、人それぞれである。

しかし、これまでの私の経験から見えている範囲についてまとめると以下のとおりである。

●「優良企業」
周囲に優秀な人材が多く高い成果が求められる。能力アップに励まないと周囲についていけなくなり辛くなるし、ハードルが高そうに見える。更に、現状に甘んずることなく改善提案、更なる効率化等、指示待ちではなく能動的に業務に取り組む人材でなければ評価されない。しかし、周囲の理解や協力が得られやすく、コミュニケーションも活発で質が高く、チームワークが良いため、自身の能力が発揮され、高い成果を達成し、周囲から認められる。求められる成果は高いが、能力の高い人にとっては居心地は良い。

●「ブラック企業
それなりの成果が求められる。しかし、長時間労働、(場合によっては)パワハラをはじめ、リーダー・管理職によるマネジメントが未熟であることのしわ寄せが末端社員にまで押し寄せる。末端社員の中には、これを「しわ寄せ」ではなく「自身の能力不足・努力不足」であるかのように、マウントを取られ、マインドコントロールされる。求められる絶対的な成果自体はそれほど高くなくても、それを達成するための「前段」が破綻しているため、相対的なハードルは極めて高くなり、末端社員がスーパーマンのようなパフォーマンスを発揮しないと、企業がまともにやっていけない。

「優良企業」は高い能力やアウトプットが求められるが、周囲に優秀な人材がおり、協力が得られやすく、互いの強みを発揮し合い、成果が出やすい。「ブラック企業」は求められアウトプットは絶対的に高くないが、未熟者が力関係上強い立場にあり、このしわ寄せによって長時間労働パワハラが起きやすく労働環境が悪い等、成果を出すための「前段」が破綻しているため、「優良企業」と比べてゴールまでのハードルが相対的に高いように感じるだけである。

よって、「ブラック企業」における業務に高い能力が求められるというのは、そのように見えるだけである。「ブラック企業」でやっていくために必要なの「能力」ではなく「忍耐」である。だから、そもそもそのような所は、管理職が成長せず、優秀な人材は集まらないのである。

4.「『粗悪さ』を正しく見抜く」ことは必須の能力

私自身もそうだが、同じ能力・スキルの人間でも、働く場所によって周囲からの評価や見え方は大きく変わってくる。

「優良企業」からは高く評価される人材が、業界の底辺のような企業ではもっと高く評価されるかというとそうではなく、あまり評価されないこともある。

どこへ行っても通用する普遍的なスキルを身に付けておくことは必要なのだが、自分がやりたいこと、重視するポイントを明確にし、自分の能力を発揮でき、自分の理想とマッチする企業かどうかを見抜くスキルも必要であると言える。

決して、「ブラック企業」でも通用するスーパーマンのような体力・気力・頭脳が必ずしも必要ではない。このような能力を身に付けようとしても不可能に近いし、仮にできたとしてもブラック企業を生き永らえさせてしまうことになりかねないため、世の中にとって良くない。

ブラック労働に巻き込まれ、思うようなキャリアが描けない状態は、労働者にとって大変不本意である。転職ノウハウ等では、このようなケースにおいても「他責思考」や「言い訳」はあまり良くないと言われるが、これは「個人」と「企業」が対立した時に「企業」側が正しいことを前提としていることが多い。しかし、「ブラック企業」の場合はそもそもその前提が崩れており、「他責思考はいけない」、「言い訳はいけない」と、「謙虚さ」だけが行き過ぎて『粗悪さ』を見落とし、結局自分自身が受ける被害が大きくなる一方である。その状態から抜け出すには、

「『粗悪さ』を正しく見抜く」

能力が必要になる。

他にも、

  • 世間の動向のインプット
  • 労務に関する知識
  • コンプライアンスに関する知識
  • ハラスメントに関する知識
  • 企業、経営者、管理職を見抜く力
  • これらのことから類似ケースに応用できる能力

と多岐に渡る。これらがあってはじめて「『粗悪さ』を正しく見抜く」ことができる。

ブラック企業」は、無理な要求をする顧客、これを受け入れ従業員を酷使しようとする上司、このような『粗悪さ』によるしわ寄せを受けて従業員が消耗している状態に対して、『高い能力が求められる』『今の力では通用しない』などと称して正当化しているだけなので、本当に『高い能力が求められる』わけではない。

理不尽なことにひたすら耐え続けようとするのではなく普段から、転職、フリーランス、副業等他のキャリアの検討と準備をしておき、会社に依存しないキャリアを本気で考えなければならない。
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「客先常駐」における「偽装請負」諸々の問題、および改善と脱出

IT業界におけるシステム開発プロジェクトで、エンジニアがお客様先の企業に常駐して開発を行うスタイルを「客先常駐」と呼んでいる。

そして、以前から「『客先常駐』はブラック」と業界では言われている。なぜなら「偽装請負」が発生しやすいからである。

「客先常駐」において「偽装請負」が問題であることは多くの記事で述べられている。「客先常駐」自体は、ソフトウェアエンジニアにとって経験が積める良い企業もあるが、常駐先の客先企業における「コンプライアンス意識」や「マネジメント能力」に依存するところが大きい。

偽装請負」は違法行為である。「派遣契約」なら問題無くても、「請負」でこれをやるのは問題という点はいくつかある。この記事では、私が過去に遭遇したことのある「偽装請負」の実態について触れる。


1.「客先常駐」における「偽装請負」について前置き

偽装請負」についての説明は下記を参照いただきたい。
jsite.mhlw.go.jp

また、客先常駐でも「請負」と「派遣」の違いがある。概要のみ簡単に説明する。

派遣とは発注主(企業)が派遣会社と労働者派遣契約を結び、派遣会社が発注主(企業)に人材を派遣する契約形態である。「労働力」に対して報酬が発生し、契約期間には定めがある。派遣労働者への指揮命令権は発注主(企業)にある。発注主(企業)は派遣会社と労働者派遣契約を交わしているため、勤務先となる発注主(企業)に労働法などが適用される。

請負とは発注主(企業)が請負会社と請負契約を結び、請負会社が特定の成果物を発注主(企業)に納品する契約形態である。「成果物」「完成した仕事」に対して報酬が発生し、契約期間に定めがない。請負労働者への指揮命令権は請負会社にある。請負労働者は依頼された仕事をするだけで、請負労働者は勤務先企業と対等な関係である。労働法は適用されない。

これらを踏まえて「偽装請負」について説明する。

偽装請負とは、書類上の契約形態は「請負」としながらも、実態は「派遣」である状態。違法である。発注主(企業)にとっては、請負労働者に対して直接指揮命令はするが、労働法などを適用せず、労務管理を行わないという都合の良い部分のみをつまみ食いするイメージであり、請負労働者がブラック労働になりやすい点が懸念されている。

私は、新卒で入社したIT企業に在職中、ある大手メーカーへ客先常駐として勤務し、ソフトウェア開発に携わっていた。私の会社から私と同じように10名程度の社員が常駐していたが、それぞれ常駐先企業の複数の組織(グループ)に分散され、フロアは同じであるものの、座席は離ればなれになり、常駐先の顧客と一緒に仕事をするスタイルであった。

当時は「偽装請負」に関する知識もなく、常駐先社員と一体になって業務を進めてきた。更に、この現場には長年お世話になり、色々成長もできたし、私に限って言えば、常駐先の社員の指導・教育にも携わったくらいであり、常駐先の社員と区別がつかないこともやってきた。

この常駐先企業、特に私が常駐先企業内で所属していたグループは、

  • 正社員
  • グループ企業の社員
  • 請負常駐社員
  • 派遣社員

と、皆分け隔て無く扱われ、和気あいあいとしており、この点は大変良いと感じた。

しかし、上述にて説明した通り、「客先常駐」における「偽装請負」は違法行為である。当時は何の違和感もなく当たり前にやってきた。今考えればおかしい点について次章で書き並べる。

もし、類似の状況に遭遇している人は、詳細を調べた上で、ブラックの可能性があることを頭の片隅においておき、転職等自社開発が可能な環境へ身を移すことを考えることをお薦めする。

2.「客先常駐」における「偽装請負」他問題事例

私が過去に長年お世話になった常駐先ではこのようなことが行われていた。一般的な「偽装請負」とは異なる部分、「請負」に限った話ではない部分もあることをご了承いただきたい。

(1) 業務命令をする(労務管理もする)

一般的に言われている悪質な「偽装請負」は「労務管理」はしないが「業務命令」はする。前者に「請負」という部分を都合良く使う、最悪なパターンである。私が昔常駐していた顧客企業は、「業務命令」も「勤怠管理」もする。本来ならば「請負契約」の企業同士が行うことではない。

正社員も、グループ企業の社員も、請負常駐社員も、派遣社員も分け隔て無く扱われるため、現場の座席配置も、常駐先企業での業務におけるチームごとに固められ、正社員、常駐社員関係なく、混在している状態である。

常駐先の正社員から直接指導される。客先企業の社員から、自社の部下のように「○○君」と呼ばれる。「業務命令」を常駐先社員から常駐元の責任者を通さずに、常駐担当者に直接行われる。

(2) 常駐先社員の下に請負社員を置く

私の会社から新たに請負社員を投入したとき、当該請負社員を常駐先社員が直接管理しやすいように配置する。請負なのに体制を決める権限がこちらに無い。(この時点で違法)

投入された請負社員と同じ、請負元の上位者が同じ組織にいるにも関わらず

「同じ会社の人同士を同じチームに配置すると指導が甘くなる」

などと、最もらしい理由を付け、切り離そうとする。常駐先社員が請負社員を直接管理できないので、完全に違法となる。(「派遣契約」なら問題なし。)

また、常駐先企業の社員が直接管理している請負社員について「スキルが不足している」と、請負元に連絡が入ったが、同じ請負元のリーダークラスの社員(=私)が管理することでスキル不足による業務への問題を解消した。常駐先社員よりも請負元社員によるマネジメントが優れていることが証明された形だ。

(3) 研修と成果発表をさせる

新規に投入された請負社員に、「研修期間」と称して最初の1ヶ月間作業させ、その1ヶ月経過後に「研修の成果発表」と称して、その内容を請負社員に発表させる。そして、1ヶ月間の業務内容と発表内容見てを、常駐先のマネージャが合否を判断し、継続して常駐させるか否かを決める。

あり得ない。作業場所が顧客企業だからという理由で、請負社員を自分の会社の部下と同じ扱いをしている時点で、違和感を感じる。一般の人達であれば、なぜ顧客にこのようなことをされなければいけないのだろうかと違和感を持つ。

(4) 帰社が多くなると文句をつける

これは「請負」「派遣」限らず、他社の社員を何でもかんでも自分達の都合の良いように使えるわけがないことくらい、あらかじめ知っておくべきである。そもそもこれが嫌なら、「他社から要員を確保せず、全部自社の社員で賄えや!」と言われてもおかしくない。
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(5) 長時間労働&社外要員だけで徹夜作業

これこそブラックの極みである。これも同じく「請負」「派遣」関係ないが、長時間労働や徹夜というだけでも十分問題である上に、常駐先企業敷地内にある建物に、常駐社員(派遣含む)のみで徹夜作業をしており、常駐先社員が一人もいないというのである。

常駐先社員による管理不行き届き、およびセキュリティ上の問題がある。

(6) 休暇の了承が必要

自社の上司に休暇の了承を得るのは普通である。自社開発において、従業員が休暇を取る場合、いちいち顧客から了承を得ることは普通はしない。

しかし、「客先常駐」における「偽装請負」の場合、常駐先の社員に了承を得ることが求められる。請負は常駐社員の勤怠管理などしないのが一般的だが、「ここ(常駐先)で一緒に仕事をしているから」という最もらしい理由で正当化される。違法。(「派遣契約」なら問題なし。)

(7) 常駐先の作業服着用を義務付けられる

請負元である他社の従業員に服装を指定するのは本来おかしな話である。請負元の企業の作業服があれば、それを着用することは問題ない。スーツでも問題ない。

常駐先企業で着用する作業服について、派遣社員は貸与という扱いであり、これは普通である。しかし、請負社員は購入させられる。開発に必要な道具・ツール一式は請負元が準備するという建前だ。請負社員を散々常駐先の正社員や派遣社員と同じ扱いをしておきながら、「常駐先企業にとって都合の良い部分だけ請負」という建前を適用する

常駐先における作業服に関するトラブルも発生している。下記の記事を参照いただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

3.「客先常駐」における「偽装請負」の実態と改善

偽装請負」を行う企業は、それぞれの要員に対して直接自由に指揮・命令しながら、「請負」の方が都合の良い部分だけ「請負」を適用するずるい企業である。

例えば、冒頭に挙げた、労務管理」はしないが「業務命令」はするといったようなものである。先程事例に挙げたの現場における、「作業服を着用することを義務付ける」が「作業服自体は請負企業が購入する」という話もその一例であるかもしれない。

一方事例に挙げた常駐先現場では、私がリーダー職に昇格したころから、請負適正化の動きがかかった。ある時期の現場事務所の席替えを機に、座席配置が「チームごと」から「所属会社ごと(派遣除く)」に固められ、座席の島に会社名を表示するようになった。

それまでは所属会社関係なく同じチーム(プロジェクト)のメンバが近くにいたため業務を進めやすかったが、チーム(プロジェクト)のメンバーが離れた席にいることから多少業務をやりにくくなった点は正直なところだ。しかし、ようやく請負適正化への改善に向けて第一歩が動き出した感じだ。

それでも、座席配置の変更はまだまだ形だけのものだった。指揮命令系統の改善には、まだまだハードルがある。

  • 「ここ(顧客企業内現場)で一緒に仕事をしているから」
  • 「これまでの業務の進め方の流れから、まだまだ完全請負にするのは難しい」

常駐先企業の社員は、最もらしいことを言うのだが、そもそも「これまでの業務の進め方の流れ」が「違法」だ。。。意識が低い。。。

4.「客先常駐」における「偽装請負」からの脱出

一般的には「客先常駐」よりも「自社開発」の方が良いと言われている。自社のやり方で、自社の開発プロセスで、自社の権限でプロジェクトを動かせる。そして、経験を積み重ね、主にマネジメントのスキルがアップする。

私はこの例に挙げた、大手メーカーで長年「客先常駐」としてお世話になったが、「偽装請負」と「次へのステップアップ」を理由に、この大手メーカーでの常駐作業を終了し、「自社開発」プロジェクトへ異動することとなった。幸い、私が在職していたIT企業は、「自社開発」も「客先常駐」も行っており、部署にもよるが大体半々くらいである。長年の「客先常駐」を終え、これまでとは異なる「自社開発」の経験を積み、スキルアップをしようと考えていた。

いざ蓋を開けてみると、「偽装請負」は脱出できたが、「自社開発」はこれまでと勝手が違う。労働環境が「ブラック」であり、生活面や健康面に限界が来た。当初「『自社開発』は、私には合わないのかもしれない」と考えた(が、後に違うことに気づく)。そして、再び別の「客先常駐」へ、その後、「自社開発」、「派遣」と様々な開発現場を経験した。

ここまででわかったことは、私が新卒で入社したIT企業が下請け・孫請けが中心であり、「自社開発」におけるリーダー・管理職のマネジメントが未熟であるということである。業務は丸投げで、中身を知らないが口は達者な人が管理職になっているため、大手メーカーで実績を残した優秀な人材でさえ嫌気が差す程である。当初私は「自社開発」ができるほど自分のスキルが伴っていないと思い込んでいたが、様々なプロジェクトや世間・業界一般における知見をインプットすることで、その思い込みが間違いであることがわかっている。

前述したように、一般的には「客先常駐」よりも「自社開発」の方が自社のプロセスや権限で進めていくため、スキルアップがしやすいと言われている。しかし、私が在籍していたIT企業ではこの逆である。(良い顧客であれば)「客先常駐」のほうが顧客企業のリーダー・管理職のマネジメントの方が優れていて、労働環境も良く、じっくり腰を据えて開発業務に取り組めるため、成長に繋がるのである。

そして大手メーカーへの「客先常駐」が長かったことを強みとして、下請け・孫請けが中心のIT企業から大手メーカーへ転職した。職種は転職前と同じソフトウェアエンジニアである。転職後は、大手メーカーの社員として「自社開発」を経験している。もう「偽装請負」の心配はない。下請け・孫請けが中心のIT企業のような「ブラック」ではない。転職をもって、本当の意味で偽装請負」からの脱出に成功したと言える。

転職後の企業の開発現場でも、常駐している請負企業(協力企業)が存在するが、私が昔経験したような「偽装請負」ではなく、「正規の請負」である。協力企業への業務依頼は窓口を通しているし、協力企業の社員の方の服装について指定することもしていない。これが普通だ。

私の場合は、上述の通り「客先常駐」における「偽装請負」の開発現場から脱出し、転職もした。しかし、「偽装請負」が当たり前、「偽装請負」が違法とは知らない人が多いというケースもまだまだあるのではないだろうか? 更には「偽装請負」を放置しているような企業は、他にも違法行為をしている可能性があり、誰かが声を挙げなければ、企業が自ら改善するとは考えにくい。近年は、「ブラック企業」「違法行為」「ハラスメント」等、労働者側も知識を付け、声を挙げるようになった。それでもまだまだ違法や理不尽は横行している。さらに多くの方々に、労働に関する知識を付けていただき、違法行為をする企業が滅びる世の中にしたいと願っている。

労働トラブルにフォーカスを当てた資格は、私自身これまでにあまり見たことがありません。「労働トラブル相談士」資格は、経営者、管理職、人事担当者、コンプライアンス研修担当者に限らず、全労働者が知っておいた方が良い知識であり、また現在ブラック労働環境に在職している方には必須の内容と言えます。

この資格を取得するためには、認定講座を受講していただく必要があります。受講後の試験に合格した方が資格を取得できます。講座は全てオンラインで受講できます。資格の内容は、人事や労働に関する知識です。就職、労働条件、退職、残業、休職、解雇などの法律や決まり、トラブルに関する知識を得ることができます。

ブラック企業対策のノウハウを知りたい」

このような方は是非、「労働トラブル相談士」資格取得をご検討されてみてはいかがでしょうか?

資格取得の取り組みと、労働との関連性

システム開発の企業では、情報処理技術者をはじめとするIT資格を取得するよう推奨され、取得すれば報償金が得られたり、社内表彰されたり、受験料を会社が負担してくれたりすることは少なくない。

システム開発に限らず、どの会社でも業務に結び付く資格を保有していると歓迎されるし、資格取得を通してスキルアップに繋がると考えられているようだ。

私も、情報処理技術者をはじめとするIT資格を取得してきた。この記事では資格取得に関する私の思いと、労働との関連性について書きたいと思う。


1.資格取得のきっかけ

私が新卒で入社したIT企業でも、他のIT企業と同じように情報処理技術者をはじめとするIT資格の取得を推奨されてきた。資格を取得すれば、報償金をもらえるし、難度の高い資格は報償金が高いし、資格取得が昇格要件にもなっていた。

私も学生のときに、このIT企業から内定をいただいてから情報処理技術者の資格取得に励んだ。社会人になっても、資格取得に励み、社内で多く表彰された。

ここからは、資格取得の取り組みの理由について述べていく。

学生・社会人になりたてのころのは、単純に資格を持っている方が有利だと考えていたからである。(なんとなくである。) 更に、業務と資格が結び付くと、より一層質の高いアウトプットになると考えていた。また、時間が確保しやすく、体力のある若いうちに出来るだけ多く取得しておこうと考えていた。

そして年月が経ち中堅くらいになった頃の理由は、若い頃と異なる。

新卒で入社したIT企業では、長年の間特定の客先常駐として、特定の技術分野において業務経験を積んできた。そのため、技術に偏りがあり、新分野の業務に慣れるまでに時間がかかるという課題を抱えていた。この課題解決に至らなくとも、緩和することを目的に、

  • 技術分野に依存しない視野を拡大する
  • 対象の分野に早く慣れ状況把握能力を向上させる
  • 思考する訓練を重ねる必要がある

と考え、その手段が資格取得への取り組みであった。まさに、バーチャル体験だ。

あと、「資格取得の勉強をする暇があれば、その時間はゆっくり体を休めて業務に専念し、より早く業務で実績を残し、昇進できるようにしたほうが良いのではないか」という考え方もある。「資格取得を通して実力をつけ、実績を残し、昇進できるようにする」という考え方もある。

会社内では公言出来ないものの、私が最も重要視しているのは、

「会社が潰れたり、会社を辞めたりすれば、役職は消える。しかし、資格は残る。」

であると考えている。

2.資格取得の取り組み

時間があった独身の頃は、休日を使って自宅で勉強していた。

子供が産まれてからは、自宅では勉強できない。(正確に言えば、自宅で勉強する気になれない。)

この頃からは通勤途中の電車で勉強するようにした。電車の乗車時間、座席に座れるかどうかも重要な要素である。時間を確保するために、座席に座るために、わざと各駅停車に乗車したりすることもあった。この頃の勉強のスタイルは、

  • 家庭とのバランスを崩さない
  • 試験勉強のために休日を潰さない
  • 試験直前短期集中よりも細く長く
  • 少ない負担
  • 一発合格よりも継続

という感じであった。

学習方法は参考書、過去問中心で、読んで考えることがメインであった。特に情報処理技術者試験の記述式や論述式の試験は、実際に机に向かって用紙に回答を書くというアウトプットの練習をすべきなのだが、通勤中にしか勉強できないとなるともうそんなことは言ってられない。回答をひたすら頭で考えるしか術がなかった。これでも何もしないよりはマシだろうと考えた。

勉強する時間が十分に取れずに試験本番が近づいてきたときは、勉強せずに受験する。特に情報処理技術者試験の同一試験区分2度目以降の受験において、事前にほとんど対策せずして臨んだ結果、不合格でも合格目前、あるいは合格したエピソードもある。時間が取れず十分な準備ができない状態での受験のため、不合格で当たり前との思いから、かえってプレッシャーが軽減されたものと思われる。

試験の対策が十分でなくても、全力で受験することで、

  • 本番に慣れる
  • 現状の自分の力量を把握する
  • 何か見えてくるものがある

といった次に繋がるというメリットはある。まさに、「継続は力なり」である。

3.資格と実業務との関連性

私は、新卒で入社したIT企業から大手メーカーに転職し、ソフトウェアエンジニアの職業は継続している。

資格は転職には有利に働いたと考えている。資格を取得すれば、合格証書が送付され形に残るところが大きい。そして、社内・社外へのアピールに繋がる。持っておいて損はない。

技術を身に付けるならば、実務経験が一番である。実際に、あらゆる場面に直面し、頭で考え、手を動かし、これを繰り返すことが必要だ。資格を取得しても、実務で使わなければ段々と忘れていく。プライベートでプログラミングをやってみるのも良い。

直接、技術的な課題解決に資格が役に立ったかというと、そのようには感じない。

しかし、新しい分野に慣れるためのハードルを下げるという当初の目的に、少しづつ近づいているようだった。ある分野の技術がいざ必要となったときに、全く勉強していない状態と比べると、一回勉強して忘れた場合でも、どのような部分に目をつければ良いか、参考書のどのあたりに詳しく記載されているかをすぐ引き出せる等、資格の勉強はインデックスのような位置付けになる。

その他、下記のことも言える。

  • 資格を取得したからといって、仕事が出来るとは限らない。
  • 資格を取得したからといって、その領域のスペシャリストというわけではない。
  • 資格を取得したからといって、長時間労働がなくなるわけではない。
  • 何もしないよりかは資格を取得するのは良い。意識せずとも何かのスキルが身についていることもある。

必要に応じて、自身の業務の円滑化や視野の拡大につながるに繋がる資格を取得することをお勧めする。しかし、資格取得はスキルアップの手段の1つにすぎないため、資格を取得することが目的にならないように注意する必要がある。
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4.資格と労働との関連性

資格を取得しても、長時間労働に巻き込まれることはある。実際に私がそうだった。

私は昔「長時間労働の原因は自分のスキル不足にあるため、スキルを高めることで解決する。(その手段の1つが資格取得だ。)」と思い込んでいた。しかし、労働一般IT業界ソフトウェア開発の観点から、現在ではその思い込みが全く違うことがわかっている。

資格と労働との関連性はあまりなさそうだ。最近は、資格取得よりもスキルを高めること。資格取得は一つの手段に過ぎない。スキル(知見)と言っても色々ある。IT業界やソフトウェア開発に必要なテクニカルスキルもその1つだが、それだけではない。

これらは役に立っている。一時は、技術をそっちのけにして、パワハラ対策に関する情報収集に取り組んだこともあった。上記に挙げた内容は技術的な分野に関わらず、労働者としての共通認識だ。これらを知らなければ、長時間労働に巻き込まれても「業界では当たり前!」、パワハラを受けても「自分が悪い!」と思い込み、もしくは周囲から洗脳され続け、組織の問題を組織の問題として認識できず、対策も打てず、自分自身が被害を受けるという状況に陥る。

労務関連の資格取得を考えてみても良いのではないかと、私に薦めていただいた上司もいる。確かに、有効な手段かもしれない。労務関連の資格取得は、ビジネスパーソン共通の知識が身に付くこととなり、一部の技術的資格よりも様々な場面で役に立つことが多いのではないだろうか。労務関連の資格をビジネスパーソン皆が持っているわけではないことを考えると、例えば

労務関連に精通したコンプライアンス意識の高いソフトウェアエンジニア」

を目指し、これを実現し、保有資格によってこれを証明できると、市場価値が高く、優良企業への転職に有利になり、ブラック企業からは嫌がれるのではないかと思う。

労働トラブルにフォーカスを当てた資格は、私自身これまでにあまり見たことがありません。「労働トラブル相談士」資格は、経営者、管理職、人事担当者、コンプライアンス研修担当者に限らず、全労働者が知っておいた方が良い知識であり、また現在ブラック労働環境に在職している方には必須の内容と言えます。

この資格を取得するためには、認定講座を受講していただく必要があります。受講後の試験に合格した方が資格を取得できます。講座は全てオンラインで受講できます。資格の内容は、人事や労働に関する知識です。就職、労働条件、退職、残業、休職、解雇などの法律や決まり、トラブルに関する知識を得ることができます。

ブラック企業対策のノウハウを知りたい」

このような方は是非、「労働トラブル相談士」資格取得をご検討されてみてはいかがでしょうか?

最後に、資格を多数保有していることで「逆テクハラ」を受けたことがあるということも記載しておく。

パソコンの細かい設定やWindowsMicrosoftの細かい内容など、全く関係ない分野のことを聞かれて、即答できなかったり、調査に時間を要したりすると、「情報処理技術者の資格をいっぱい持っているんだから、これくらい何でわからないんだ!」などと、立場を利用し、心無い言葉を発する管理職がいた。「逆テクハラ」の具体的内容、事例、解説については、別記事で記載しているのでそちらを参照いただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com
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夕方に行う朝礼「夕礼」をプロジェクトの進捗管理に導入してみた

「夕礼」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

「朝礼」「昼礼」という言葉は多くの人が聞いたことがあるだろう。

「夕礼」とは、文字通り夕方に行う「朝礼」のようなものだ。

あるシステム開発プロジェクトにて、進捗管理の具体的な取り組みとして「夕礼」を行うことにした。

「夕礼」とはどのようなものか、どのような意図があって始めたのか、取り組んでみてどうだったのかをまとめたので、参考にしていただき、業務の改善に繋げていただけることを期待している。


1.「働き方改革」の一環として「夕礼」を導入

システム開発プロジェクトにおける進捗報告その他諸々の連絡等で「朝礼」を行う企業やチームは多い。

内容はそのままで、時間帯を夕方にすることで、「何が変わるのだろうか?」と疑問に持つ人も多いはずだ。

私の記憶ではあるが、過去「働き方改革」の一環として「夕礼」の効果がメディアで紹介されたことがあった。

また、ある理由から「夕礼」を始めた企業が、得られた副産物として「残業する社員が少なくなった」という結果が出ている事例がある。素晴らしいことだ。
president.jp

我々でも「働き方改革」の一環としてやってみようと思い、開始した。具体的には次のような感じである。

  • 「朝礼」は始業後すぐに行うのに対して、「夕方」は終業(定時)前に行う。
  • 17時台に開始し、1日30分以内を目安にする。
  • その日の進捗・出来事、次の日以降の予定を共有する。

2.「夕礼」の実施に期待したこと

きっかけはメディアからのインプットであるのだが、この「夕礼」を試そうと思ったこと、期待したことを書く。

「朝礼」をよくやる企業やチームでは、「朝礼」にて庶務連絡の他、

  • 「昨日は○○まで進みました!」
  • 「今日は○○の作業をやります!」
  • 「今日は○○の予定です!」
  • 「今日の目標は○○の作業を□□まで進めます!」

といったメンバー各自の進捗や目標をチーム内で共有する。

この後よくあるのが、作業する上でトラブルが発生したり、急な割り込み作業が入り込み、そちらの対応に一生懸命取り組む。

そして最悪の場合、そのトラブルや急な割り込み作業のことがチーム内で共有されずに、その日の夜まで作業が続く。

次の日の「朝礼」にて、

  • 「昨日、〇〇の作業を予定してたのですが、トラブルが起きて元々予定していた作業が全然できませんでした。」
  • 「昨日の朝礼の後、急な割り込み作業が入り込み、そちらを優先せざるを得ませんでした。」

となるのである。このようなことがよくあると、元々予定していた作業の進捗が遅れ、結果的に残業まみれになる。

これを「夕礼」にすればどうか?

「夕礼」にて、その日にどのようなことがあり、どのような進捗だったかを共有する。

  • 「今日は〇〇の作業をやりました!」
  • 「今日はこのような出来事がありました!」
  • 「残りの作業は△△です。」

ここからが「朝礼」との違いである。

「残りの作業はその日にする必要あるか?」

状況を共有したうえで、この判断をリーダーをはじめ、残りのメンバーを交えて行っていく。

  • 「今、必要な作業か?」
  • 「優先度を下げることはできないか?」
  • 「複数人で対応すれば早く完了するのか?」
  • 「別の方法はないか?」

このようにして残業を削減しようというのが期待する結果だ。

  • 「そんなに都合よく、うまくいくのか?」
  • 「時間帯が変わるだけで、中身は同じだろ!」

そのような声が挙がりそうだが、まずはやってみる!

3.「夕礼」を実施してみると周囲から良い反応があった

実際に試してみるとメンバーからは「良い」という意見がある。その理由は次の通りである。

「夕礼」ならその日の出来事を記憶に新しい状態で共有できる。「朝礼」や「昼礼」は前日(休日、休暇を挟むと数日前)のことを思い出す必要があるので、それだけで時間と労力が上乗せされる。また、「昼礼」では「その日」全てをカバーできない。午前中の業務は時間が経過するのが、あっという間である。

次に、その結果を受けて、翌日以降の日程を改めて考えるため、時間的余裕がある。一度会社から離れてリフレッシュしたり、環境を変えたりすると、良い案が出てきたり、重要なことを思い出したりすることがよくある。私自身もそうだし、同様の人を見たことがある。業務時間中はどうしても目の前のことに集中してしまう。対して、成果に繋がる構想や案は、会社から離れたときにふと浮かぶことがある。労働時間や会社での在場時間は関係ない。

更には、「夕礼」は夕方なのであまり長々としない傾向がある。内容によっては長くなることもある。必ずしもというわけではないが、「朝礼」「昼礼」はやや長くなりやすい。特に「朝礼」が長くなると、元気な午前中の時間か裂かれてしまい、すぐお昼を迎えてしまう。

最後に、朝は元気なので、作業に専念したい。前述したように「朝礼」で時間が裂かれると勿体ない気分になる。

よって、「朝礼」「昼礼」「夕礼」の内「夕礼」がベストという結論になった。

これは私、私のチームメンバーの感想なので、各々の組織に合ったやり方を選んでいただけると良いと思う。

4.「夕礼」が全てではない

前章に記述した通り、私が「夕礼」を試みたプロジェクトでは、直接的に残業が激減するにまでは至らなかった。しかし、コミュニケーションの手段やタイミングとしては良かったと考えている。

「夕礼」を実施しても改善しない場合は、「夕礼」以外に原因があると思われるので、その視点で分析してほしい。長時間労働やブラック労働などに陥っている場合は、他の記事を参考にしていただきたい。

「夕礼」を行う時間も惜しいほど、篦棒に忙しい状況が常態化しているなら、それは「夕礼」の問題ではなく、

  • そもそも業務量が多すぎる
  • 業務量・内容とリソースとのミスマッチ
  • 人手不足をマンパワーのみで補っている
  • ブラック労働がまかり通っている
  • 杜撰な労務管理
  • 劣悪な労働環境

という「前段」の問題だろう。「朝礼」「昼礼」でも同じだ。
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「夕礼」は余裕をもって適切にスケジュールされたプロジェクトを、更に円滑に進めるための手段の一つに過ぎない。

破綻したスケジュールでブラック労働に陥ったプロジェクトが、「夕礼」によって一気にホワイト労働になることは、ほぼ皆無と言って良いだろう。

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「テクハラ」「逆テクハラ」とその類似ハラスメントを理解していない組織は本当にヤバい

職場などにおいて、自分の得意分野における専門用語を多用したり、わざと難しく説明したり、自慢したり、やたらとマウントを取ってくる人に戸惑ってしまうと言った経験をされた方も少なからずおられるのではないだろうか?

逆に、あなたがある分野のことは何でも知っている前提で、「あなたなら、これくらい簡単にできるでしょう! なぜそんなに時間がかかるのだ!」などと、あなたに頼るかのように、実は圧力をかけられて迷惑を受けているといった方もおられるのではないだろうか?

「テクハラ」「逆テクハラ」という言葉がある。

聞き覚えのある人も、聞き慣れない人も、類似事例も含めてこの記事を読んでいただければ、

  • 「そういえば、あるあるだな!」
  • 「自分自身も被害を受けていた!」
  • 「迷惑だけど、どう対処したら良いかわからなくて困った!」
  • 「無意識のうちに自分がやってしまっていたのではないか?」

ということに気付くのではないだろうか?

このようなハラスメントがあるということを意識しなければならない。最悪の場合、「セクハラ」「パワハラ」と同様に、裁判に発展することもある。あなたが不当に潰される前にインプットしていただき、企業・組織・人の見極め、職場環境の改善に役立てていただければと思う。


1.「テクハラ」の定義:ITリテラシーの高い人が低い人に対して不快な思いをさせる嫌がらせ

「テクハラ」という言葉がある。「テクハラ」とは、「テクノロジーハラスメント」もしくは「テクニカルハラスメント」の略である。

IT関連に疎く、PC(パソコン)やスマートフォンなどにあまり馴染みがなく、扱いが苦手な人への嫌がらせのことを指す。ITに関する知識が豊富でスキルの高い人が、そうではない人に対し、わざと難解な専門用語で指示を出して相手を戸惑わせたり、相手が対応できないと侮辱的な言葉で叱責したりする行為が該当する。

上司から部下へというケースもあるが、同僚間でも起こりうる。IT機器の扱いに詳しい若手から、馴染みの無い年配の人に対しても起こりうる。IT機器の扱いに詳しい新入社員でも加害者になることがあるので注意が必要である。

最後に、PCスキルは無いよりはある方が良い。しかし、職場に在籍する全員がWindowsの細かい設定を知っているとは限らない。一部の領域で、自分の方が優位性があるからといってマウントを取り、相手や周囲を不快にさせるような人罪のほうが害悪である。その部分だけを見て人の価値を決める(低く見る)ことで、別の場面では能力を発揮する人でもパフォーマンスを下げ、組織のパフォーマンスも下がる。人手不足で優秀な人の確保が難しい状況にありながら、まともな人から会社を辞め、残った人にしわ寄せが来て、それでも業務を回そうとするから、組織がブラック化する。裁判への発展もありうる。「テクハラ」加害者が及ぼす影響は、想像以上に大きい。

2.「逆テクハラ」の定義:ITリテラシーが低い人がITを軽視する姿勢から不快感を与える嫌がらせ

「逆テクハラ」とは文字通り「テクハラ」の逆で、ITに詳しくない人からITに詳しい人への嫌がらせである。

何か特定の分野における技術(例えば、ネットワーク関連、データベース関連、組み込み系)に詳しいからと言って、IT系全てに詳しいとは限らない。むしろ、そうでないことの方が多い。プログラミングの経験があるからといって、Windowsの様々な設定とかマイクロソフトOfficeの様々な設定とかに詳しいとは限らない。

しかし、そもそもそのようなことをそわからない人は、技術分野の細分化した内容や、それらの違いもわからない。一言で技術といっても、実に奥深いのである。それゆえ、それなりにソフトウェア開発をしたり、プログラムコードを書いたり等の経験がある人なら、

「技術があり、IT系はなんでも知ってる」

と思ってる人がいる。

そこで、ITに関する何かを聞かれて

「この分野・領域については、私ではわかりかねます。」

と答えると、

「お前、何でも詳しそうに見えるのに、何で教えてくれないんだよ。」

と心ない一言を放ってしまうのである。聞かれた側の人が調べて回答しようとしても、

「お前、いつまでかかってんだよ。」

とかいってしまうケースである。

逆テクハラの加害者は、「お前がそれ言える立場か?」という印象を持たれてしまう。

聞く側(逆テクハラ加害者)は無知で優越的な立場に、聞かれる側(逆テクハラ被害者)は有識者で立場が弱いといったケースが多く、スキルの有無よりも特定の組織内における立場上の力関係が背景となるため、「パワハラ」を兼ねていると言える。

3.「テクハラ」の類似ハラスメント:得意分野を持つ人が同分野を苦手とする人に対してマウントを取り、不快感を与える行為

「テクハラ」はITに詳しい人からITに馴染みが薄い人に対するものと説明した。ここでは、「テクハラ」から「テクハラと同等・類似のハラスメント」ともう少し範囲を広げて考えてみる。

ITに限らず何かしらの分野において詳しい知識・高い能力を持ち、得意としている人から、その分野にあまり詳しくない人、苦手としている人に対して、同様のハラスメントが行われれば、組織への影響は「テクハラ」と同じであることを理解しておくべきだろう。コンプライアンスが徹底されていない企業・組織と見なされることになる。

例えば、

  • 開発する製品の仕様や納品先の顧客状況に精通している人から、そうでない人へ
  • システム開発に使用する技術や開発環境に精通している人から、そうでない人へ
  • システム開発に使用するマイコン、OS、デバイスに精通している人から、そうでない人へ
  • 特定の組織に長年所属し、その組織の内部事情や文化を奥深く知る人から、そうでない人へ

行われるものがある。

優越的な立場を背景としたものであるなど、厚生労働省が公開している「パワハラの定義」に当てはまれば「パワハラ」である。

慣れない分野の技術に対する理解が、なかなか進まない中、「お前、SEやろ!」の一言を放ち、あたかも特定の分野に詳しくない人に対して、「しっかりせえよ!」という論調を込め、問題を抱えた社員扱いにする未熟な管理職が実際に存在する。「テクハラ」の類似事例だ。
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「テクハラ」と同等・類似のハラスメントが発生しやすい体質の人や企業は、その場の環境に慣れていない人や、必要とされる特定の分野の知識が薄い人を「スキル不足」と判断し、マウントを取り、上から目線で接する。

ハラスメントを受けた側は、過去の実績においては実に優秀でも、まじめな人であればあるほど謙虚さが行き過ぎて

  • 「自分には努力が足りない」
  • 「自分には能力が足りない」

と思い込み、その人の本来の能力が発揮されることなく、被害者が去っていく。そして、加害者および周囲はそれでも被害者を

  • 「能力があまり高くない人」
  • 「重要な業務を任せられない人」
  • 「組織に馴染めない人」
  • 「ここではやっていくのは難しい人」

と叩く。

このような事例は、優秀な人材が最大限のパフォーマンスを発揮しないまま、優秀な人材を潰し、潰されてしまった被害者に責任をなすりつける企業側の愚行である。

しかし、このような状況でも被害者が、より上位の企業へ転職することで、このような劣悪な環境から解放され、問題が解決することがある。

それぞれの人に強み、弱みがある。ある分野では劣勢でも、また違う分野では優位性がある。強みが発揮できる環境で強みを発揮し、弱みをカバーしあい、それぞれの強み・弱み・経験分野・未経験分野を知り、トータルで最大のアウトプットを出すのが「組織」である。これができてこそ管理職である。

「テクハラ」のように一部の分野だけ突出していることでマウントを取るような人間は未熟であることを、加害者側も被害者側も理解すべきである。それを許容する「組織」も未熟なのである。

ハラスメントによってパフォーマンスをダウンさせられている被害者が健全な「組織」に入れば、それぞれの人の強みを発揮できる可能性は高い。

4.「逆テクハラ」の類似ハラスメント:本来スキルが必要な業務を簡単と軽視し、相手に過重な労働を強要する行為

こちらは、ある特定の分野に関して詳しくない人から、詳しい人へのハラスメントが類似事例と考えられる。ITに、限らなくても当てはまる。

例えば、

・「○○さんは□□に詳しいから、簡単だよね?」
 ⇒ 依頼者が思うほど簡単ではない。

・「あなたなら、△△でできるでしょ。」
 ⇒ △△は短すぎる期間。

・「□□は、若いやつがやれ!」
 ⇒ 依頼する人が□□をできないだけ。

といった感じである。

このようになる原因は次に示す2つ(もしくはその両方)が起因すると考えられる。

  1. 「力関係」を背景としている。
  2. 対象の作業を「軽視」している。

一つは「逆テクハラ」の加害者が、力関係を背景としていることである。相手に依頼している業務、作業の難度がどうであるかは、加害者には関係ないか、興味がないか、難度がわからないかのいずれかと思われる。力関係のみで業務、作業を押し付けている。力関係を背景としているのは、「パワハラ」と共通する要素がある。被害者にとって業務に必要な範囲を超えており、就労環境を悪化するのであれば、「パワハラ」だろう。また、「パワハラ」6類型の「過大な要求」にも当てはまる可能性がある。

もう一つは「逆テクハラ」の加害者が、対象の作業を軽視していることである。力関係とも関係あるが、依頼している作業の難度には関心がなく、依頼を受けた人なら出来て当たり前という感覚なのである。もし、依頼している作業が滞ったときにどのような影響が出るかを考えることもなく、有り難みを感じない人によく見られるパターンである。なくてはならない作業をしてもらった時、「ありがとう」の一言が出ないのはいかがなものか、「立場」重視で「能力・実績」軽視なのかと思ってしまう。

その事例は、こちらの記事である。
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ソフトウェアエンジニアは、この「力関係」「軽視」に遭遇することが少なからずある。システム開発の依頼者は、ソフトウェアがどういうものか目に見えずわからないどころか、ハードウェアの変更を伴わなければ、単なるプログラムコードの変更程度、即ちソフトウェア開発を簡単と思い込む。しかし、現実にはソフトウェア変更は影響範囲の検証も含めると、常にリスクと隣り合わせといっても過言ではない。ソフトウェアエンジニア以外の人が想像できるほど簡単ではないのだ。
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ソフトウェアの移植(他の製品のソフトウェア設計を流用すること)により製品開発が行われる場合でも、ソフトウェアの内容に熟知していない人からの依頼であれば、

「移植だけ!持ってくるだけ!」

などと、いかにも簡単にできる作業であるかのように謳い、短納期で完成させる約束を迫るという詐欺商法と同じ手口の行為が行われることがある。実際には、移植特有の注意点があったり、単純に移植するだけでは不十分だったりすることがある。そして、計画より工数が増え、過重労働となる。
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ソフトウェア変更の難しさは、熟練した人ほどわかっており、未熟な人ほどわかっていないといっても過言ではない。「力関係」と「軽視」により、ありがたみがわからないのは問題だ。

「下請けを使っている」と胸を張って言っている人の中には、「下請けに頼っている」のが実情であるケースが少なくない。「下請けのおかげでやっていけている」と言うべきだ。

自分の未知の領域の作業を、他人に依頼するときは、是非このようなことを意識することを心がけてほしい。何事にも相手の立場に立つことだ。一例として、IT・ソフトウェアを知らない人でも、その難しさくらいは知っておくべきだろう。ソフトウェアエンジニアの犠牲的労働を「軽視」するなどもってのほかである。
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ソフトウェア開発に限らず、業務の遂行においては誠実に行い、最大限のアウトプットを出すことが義務付けられているところまではごもっともだ。問題は、そのアウトプットが正しく評価されなければいけない。これを「軽視」すると「過小評価」に繋がり、

  • 「成果に見合った評価がされない」
  • 「都合よく使い潰されている」
  • 「ブラックだ!」

という印象を持たれ、優秀な人材が流出していく。

5.結局どれも「パワハラ」と同じだ!

「テクハラ」およびその類似ハラスメントは、特定の領域における能力の優位性を利用した嫌がらせ、「逆テクハラ」およびその類似ハラスメントは、立場を利用し相手の能力や技術を軽視することで起きる嫌がらせと言えるだろう。いずれにしても「立場や優位性を利用」しているのである。これに加え、「業務に必要・相当な範囲を超える言動」「就労環境の悪化」を伴うと、厚生労働省が提示する「パワハラ」の定義に当てはまる。

「テクハラ」「逆テクハラ」、およびその類似ハラスメントで、苦しめられている人はまだまだ多くおられると考えている。我々の業務、我々の生活は実に多くの人のおかげで成り立っている。当たり前のことに有り難みを感じることが改めて重要であると考えている。このことを企業のコンプライアンス研修等に取り入れ、従業員に周知し、良好な職場環境を作り上げていただきたい。

人の能力や強み・弱みはそれぞれで、一部の分野の優位性を背景にマウントを取ろうとする人は、未熟者であると疑った方が良い。「偉そう」にしている人で「偉い」人は見たことがない。優良企業は、個人個人の強みを引き出し、組織の貢献にどう繋げるかを模索している。

これらの情報をもとに、「テクハラ」「逆テクハラ」、およびその類似ハラスメントが発生している企業や組織で苦しめられている方は、自分の能力アップ以外に、正常な環境を見極め、自分が貢献できる、自分を高く評価される環境へ移ることを検討するなど、視野を広げると心理的にも楽になるのではないかと考えている。

私も下請けを中心とするIT企業から、大手メーカーへ転職し、ソフトウェアエンジニアとしてキャリアアップした人間だ。

「テクハラ」「逆テクハラ」でうんざりしている方、そのような組織への依存度を下げ、エンジニアの仕事で副業を検討している方、フリーランスで独立したいと考えている方には、スキルアップの他、転職、案件獲得をサポートしてくれる、プログラミングスクールを活用するのも一手である。

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そして「テクハラ」「逆テクハラ」が原因で退職する場合は、弁護士法人が運営する退職代行を活用すれば、面倒な退職手続きを代行してもらえるため、ストレスなく退職が可能となる。更に、ハラスメントで受けた被害に対して、損害賠償を請求できる可能性があるため、合わせて相談されると良い。

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「全体最適」とは特定の人や組織を犠牲にすることではない

全体最適」という言葉をよく聞く。

言葉の通り「全体を最適にする」ことなのだが、そのために

  • 「何かを犠牲にする」
  • 「個人を犠牲にする」
  • 「全体のために尽くすことを何よりも優先する」

など、ネガティブなことをイメージしてしまうのではないだろうか?

「滅私奉公」という言葉が示すように、個人よりも組織を優先するというマインドは、従来多くの日本人によく見られるものだった。個人が我慢を強いられ、その我慢の上に物事が成り立つことに疑問を持つことはなかった。

しかし、今は違う。

全体最適」を「個人」が我慢し続けなければならない環境は異常である。この記事では、「全体最適」が「個人の我慢」ではないことについて解説していく。


1.「全体最適」と勘違いしやすい点

全体最適とは、チームやシステムなどの組織全体が最適である状態のことを指す、経営用語のひとつである。全体最適を達成することで、業務の効率アップやコスト削減、労働生産性の向上などさまざまなメリットが期待できる。全体最適を目指すには、組織にとって最適な落としどころを見つけ、そこに向かっていくことが必要である。一部の人や部門にとっては最適ではないこともある。また、異なる複数の立場においてWin-Winの関係であることも必要である。

一方、旧態依然の組織や、滅私奉公が当たり前の組織、古い考え方の上層部・管理職・ベテラン社員が幅を利かせている組織においては、全体最適のために我慢を強いるような精神論を持っているケースがある。勘違いしてはいけないのは、「全体最適」を大義名分に、「個人や一部の部門を犠牲にしてでも全体のために尽くす」ことである。このようなことになると・・・、

  • 無理を強いられた一部の個人、一部の組織に無理が祟り、業務が回らなくなり、そこから全体が破綻する。
  • 従業員におけるモチベーションの低下。
  • 組織におけるパフォーマンスの低下。
  • 業績の低下。
  • 無理を強いられたことで被害を受けた個人や組織からの訴訟のリスクの保有
  • 長時間労働をはじめとする安全配慮義務違反等による法的リスクの保有
  • 企業イメージの悪化。
  • 優秀な人材の流出。
  • 新たな人材確保困難。
  • 労働行政からの指導、是正勧告。

これを「全体最適」というだろうか?

ここまでで言えることは、

「『労務問題』を出せば、それは『全体最適』ではない。」

である。ただの「ブラック体質」である。

2.ソフトウェア開発における「全体最適」を考える

「顧客目線」
顧客満足
「お客様の要望に、早く、安く、・・・」

新入社員の頃にこのようなことを教わった人は多くいるはずである。

しかし、

「『顧客目線』は大切だが、それが何よりも勝る正義となってしまい、社員の生活や健康を脅かすことは『全体最適』ではない」

ということを教わる機会があっただろうか?

教わる企業にいた人もいるだろう。形だけ教わっても、具体的な行動に結びついておらず、目先の「納期」「スケジュール」ばかり気にして、気づいたら『ブラック』になっていたという人もいるだろう。

ソフトウェアエンジニアで言うと、顧客からの要求を受け続け、ソフトウェア要求仕様が複雑になり、ソフトウェア開発に負荷がかかり、ソフトウェアエンジニアに力技で乗り切らせ、品質面でリスクを負う、もしくはコストが膨らみ、その割にはリターンが伴わず、次回からそれが当たり前になるというような感じだ。

また、短納期で無理なシステム開発や調査を要求してくる顧客、これを誠意をもって受け入れようとしている管理職は、本当の意味で「全体最適」をわかっていない。顧客にとっての「全体最適」のことを「全体最適」と言っているのなら、その企業との将来の取引を見直した方が良い可能性がある。

理想を追及しすぎるとキリがないので、ソフトウェアエンジニアの負担を軽減するなど、最適な落としどころを見つけ、そこに着地するよう仕向ける、そして関連するステークホルダを誰一人犠牲にすることなくシステム開発を成功させることが、本当の意味で「全体最適」だ。

ソフトウェア開発では、良いものを安く作りたいという欲望のもと、発注元からシステム開発の依頼を請けると、下請けやオフショアを安く使い、下請けのソフトウェアエンジニアに犠牲を強いてシステム開発を達成させようとする傾向がある。これが多段階になると多重下請け構造となる。多重下請け構造は、発注元から開発依頼を受けた「元請け」が、

「元請け」→「一次下請け」→「二次下請け」→「三次下請け」→「四次下請け」→「五次下請け」・・・・

のように、下位の下請けに開発のほとんどを丸投げし、自らはマージンのみ搾取してほとんど価値を提供しないスタイルが、多段階にわたって行われるものであり、下位の下請け企業になるほどブラック労働になりやすい。これは、「全体最適」からは遠くかけ離れたものである。中間の各下請け企業が、各企業ごとの「最適」を「全体最適」と言っているようでは、本当の「全体最適」ではない。「部分最適」だ。

全体最適」ソフトウェア開発は、多重下請け構造を廃止し、内製化できる部分はできるだけ内製化し、関わる企業を少なくし、自動化や汎用設計を行い、余計な機能を開発せず対象の絞り込みによってコスト(ソフトウェア開発のコストのほとんどは人件費である)を達成する、もしくはソフトウェアにて製品の価値を出すことに注力するかのどちらかである。

3.「全体最適」と称して特定の人や組織を犠牲にすることは全体の破綻に繋がる

ソフトウェアだけではない。製品の製造や開発における「コストの安さ」を追及するあまり、「強制労働」や「無償要求」という手段を取ると、その弊害の方が大きくなるリスクがある。

  • 賃金の面における経済的犠牲を強いることでコストを抑えていることが、内部告発やメディアによって世間に広まる。
  • 世間からは「人権侵害」と認識される。
  • 「人権」を「侵害」して製造された製品は、「不買運動」等により消費者から購入を控える動きが出てくる。
  • 同様に「人権」を「侵害」してビジネスを成り立たせる企業との取引は、(まともな企業であれば)見合わせる動きが出てくる。
  • 「人権侵害」をしている企業は、世間、消費者、取引先、社会から応援されなくなる。
  • 「人権侵害」をしている企業は、これらの要因により、業績が下がり、以降の存亡に影響する。

「コスト削減」で「全体最適」を実現しようとした結果、方法を間違えると「全体の破綻」に繋がることになる。全ての人の人権を守り、誰を犠牲にすることもなく、ビジネスを成功させるのが「全体最適」である。

このような内容は、コンプライアンス教育などで啓蒙されておくべきだし、私の会社でも以下のようなコンプライアンス教育が行われている。「全体最適」を達成するにはコンプライアンスが徹底できていることは最低限の条件だろう。
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労働者に対する賃金を安くすることでコスト削減を実現することが問題であるように、長時間労働により短納期での完成を実現することも問題だ。前行程の問題や遅れによるしわ寄せを、後行程の過重労働により吸収する事業構造も問題だ。これらは「全体最適」に見えても、一部の人や組織の犠牲の上に成り立つ構造であり、いつ限界に達して破綻してもおかしくない。
o08usyu7231.hatenablog.com
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4.「全体最適」を大義名分とした我慢の時代は終わった!目指すはWin-Winだ!

昔は単純な時代だった。
モノを作れば作るほど売れる時代だった。
理不尽なこともあった。
我慢することも必要だった。
偉い人に従っていればいい時代だった。
企業に尽くせば雇用は保証してくれる時代だった。
年功序列で長く勤めれば報われた。
頑張れば更に報われる時代だった。

今はどうだろうか?
モノを作れば作るほど売れるだろうか?
理不尽なことを許せる時代だろうか?
我慢して報われるだろうか?
地位のある人に従っていればいいと言えるだろうか?
終身雇用は破綻していないか?
年功序列ほ破綻していないか?
頑張っても報われるだろうか?

全体最適」は「全体」のために自分が「我慢」することではない。犠牲になるなどもってのほかである。「我慢」して報われる時代は終わった。

必要なのはWin-Winである。Win-Win以外は破綻なのである。個別のチーム、組織でそれぞれ事情は異なるが、個人を犠牲にすることなく、全体にとってベストな状態を模索してほしい。

更に、働き方に話を広げる。「全体最適」と「働き方改革」の本質は似ている。労働人口が減ってきているなかで、いかに企業が個人個人のパフォーマンスを最大限活用し、組織として最大のアウトプットを出し、尚且つ個人個人がいきいきと働くことができ、世間・社会から応援され、企業・個人共にWin-Winの状態を目指すかが鍵である。

働き方の多様性を認め、長時間労働の強要を廃止し、(可能な業務については)テレワークを推奨し、副業を容認し、制約を抱える多様な人材が集まれる環境にすることだ。現在ではそのような企業の方が優位性が高いとされ、優秀な人材が集まりやすい。

滅私奉公、企業への忠誠心、パワハラ的マインド、我慢の強要、間違った意味の「全体最適」、・・・、こんなことがまかり通る企業は、市場から退場させられる時代である。

今後は人材の流動性はますます高まる。Win-Winの時代となるためにも、犠牲や不利益を受けている労働者、そうでない労働者とも、まずは転職サイトに登録し、いざというときに備え、「全体最適」を正しく理解できる企業へシフトしてほしいと願っている。

複業/副業/転職/独立のキャリアコーチング【RYOMEI】は、30~40代に特化した、キャリア版ライザップのようなパーソナルトレーニングサービスです。今後のキャリアの展望が描けなくなっている30代・40代に向けて、自分が最も価値を発揮できる仕事(天職)に出会い、生きがい・働きがいのあるキャリアを一緒に描いていくサポートを行います。

30代後半〜40代前半は、キャリアチェンジも容易ではなく、かつ家庭がある方が多く、自由度が低い、リスクが取りにくい、といったキャリアを築く上では、あまりに大きな課題を抱えています。RYOMEIのトレーナーも同じ世代であり、自身も子育てと仕事の両立に試行錯誤していたり、順風満帆にキャリアを築いているわけではないからこそ、受講者の痛みに共感しながら、一緒に考えていくことができます。

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