ソフトウェアエンジニアが労働について情報発信するブログ

ブラック労働からホワイト労働まで経験したソフトウェアエンジニアが世の中にとって役立つことを情報発信していく。

取引先に無償対応を要求することのコンプライアンス面でのリスク

システム開発に限った話ではないが、少量の作業を取引先に

「これくらいの作業はタダでお願い」

というニュアンスで依頼することがある。取引先の判断で、無償での対応が許容される場合もある。

しかし、慎重に考えてほしい。

無償対応を依頼された組織は断りたい場合でも、取引上の力関係を考慮し、今後も良好な取引を継続したいとの考えから、不本意に無償対応を飲み込んでしまうかもしれない。

取引先に作業を無償で対応するよう要求することについて、事例を元に、整理・分析し、コンプライアンス面のリスクを中心に考えてみた。

コンプライアンス教育に活用してほしい。


1.無償対応の要求が発生してしまった背景

ある製品を製造している『メーカー』は、その製品を構成するシステムの開発に必要な一部の技術分野において『取引先』の協力を得ている。

『メーカー』は業績が良くないため、上層部から徹底的なコスト削減を求められており、当該新製品開発においてもコストを抑えての開発が行われていた。

『メーカー』は開発中の製品へ『新仕様』の追加を検討していた。

『新仕様』を実現するには、技術面の都合上、『取引先』の協力を得る必要がある『作業』が存在する。この『作業』には少額ではあるものの、『取引先』への費用発生が考えられる。

一方、『メーカー』は『新仕様』を別手段で実現する『代替仕様』を検討している。

『代替仕様』は、『取引先』へ『作業』を依頼する必要がない。『メーカー』にとって、『代替仕様』の方がコスト削減につながる。

『メーカー』は『新仕様』か『代替仕様』のどちらを採用するか、検討を重ねた。

『新仕様』の方が理想的ではあるが『取引先』による『作業』に対する費用発生がネックである。コスト削減の観点から『代替仕様』で進めようとしていたが、詳細検討に時間を要していた。

『新仕様』を採用する場合、『取引先』に対して『作業』に関する費用見積もりを行う予定であった。

仕様決定に時間を要している状況、開発コスト削減の方針から、『メーカー』の担当者が『取引先』に対して、

「無償で対応していただけると、ありがたいのですが、・・・」

といったやわらかい感じで、メールにて打診した。

担当者に悪意はなく、強制的なものでもなく、柔らかい感じのものであった。

2.無償対応のコンプライアンス面におけるリスクへの気付きと報告

『取引先』へ発信したメール文面を、『メーカー』の担当者とは別の第三者が読んだ。

三者は、この無償要求について疑問を感じた。

  • コンプライアンス上問題ないのだろうか?」
  • 「費用見積もりを行うはずなのだが・・・」
  • 「先方との関係性はどうなのか?」
  • 「無償要求しても良い背景があるのか? 力関係なのか?」
  • 「誰からの指示なのか? 自己判断なのか?」
  • 「『取引先』はどのように感じているだろうか?」

三者は上司へ報告した。

上司は状況を理解し、担当者へヒアリングを行った。その回答は以下のものであった。

  • 「『取引先』とは以前から互いを良く知る関係である。」
  • 「『取引先』への無償対応要求は、今回初めてである。」
  • 「『作業』は無償でも差し支えない程度と考えている。」
  • 「無償での『作業』希望は自分の判断。」
  • 「『取引先』へ定期的に支払っているライセンス料が高く、引き下げをお願いし続けている。」

「言いたいことはわかるが、ちょっとこの方法では・・・。」

と思ってしまう。


3.無償対応のコンプライアンス面におけるリスクに関する分析

担当者の意向は理解するが、やはりコンプライアンス上の問題やリスクが無いとは言い切れない。

特に仕様決定がなかなか進まない中、スケジュール上の制約を加味し、可能な限りでのリカバリ策を打っておくことは、プロジェクト管理上必須であり、その点は私も非常に共感できる。

では、次の5つの観点から見てみよう。

①『取引先』との関係と『作業』の量

担当者は「良く知る関係」で「無償で差し支えない『作業』量」と判断していても、『取引先』がどのように考えるかは別である。

最初から無償対応を依頼されると、印象はあまり良くないかもしれない。『取引先』の手順・プロセス・取り決めによっては、時間がかかる作業かもしれない。

また、『取引先』の作業で品質などの問題が発生した場合の責任の所在はどうなるのか疑問である。

ここは「無償対応可能か?」ではなく「見積を依頼する。」としてほしいところである。

②『新仕様』搭載における投資抑制

なかなか仕様決定にたどり着けない中、『代替仕様』にも決めきれない中、より良い方法を模索しようとした、担当者の熱意だったかもしれない。

しかし、『新仕様』の無償搭載ではなく他の方法が望ましかった。もしくは『代替仕様』への決定に漕ぎ着ける動きが望ましかった。

③プロジェクトマネジメント上のリスクを考慮

なかなか仕様決定にたどり着けない中、スケジュール上の余裕が無くなってくるため焦るのは痛い程分かるし、プロジェクトマネジメント上のリスク回避として手を打つことは素晴らしい。

しかし、コンプライアンス上のリスクを抱えない別手段を検討するよう薦めたい。

④ライセンス料との相殺

これはこのような背景を知っている人なら、もしくは『取引先』の合意があればこれで良いかもしれない。

しかし、背景を知らない人からすると、無償要求の部分のみが目に留まり、「コンプライアンス上大丈夫か?」と心配するのも無理はないだろう。

このような場合、本来は「普段から支払っている高めのライセンス料」に対しての是正が妥当であろう。なかなか簡単に実現できないところが辛いところではある。

また、今回依頼しようとしている『作業』が「高めのライセンス料」に含まれているサポート対象かもしれないので、その点を確認するといった行為も有効である。

⑤相手の意思表示や反応に期待

「無償対応が不可能ならその旨の回答があるだろう。」と考えパターンである。これが一番危険である。

現実のところ『取引先』がの取引や力関係を気にするあまり、無償対応は不本意だが、圧力を受け対応せざるを得ない心理状態にさせてしまう可能性がある。

実際、世間一般の企業でよくあるのが、上司からのセクハラに対して被害者が

「抵抗しなかった」=「受け入れられた」

と勘違いしてしまうパターンである。実際は、

「抵抗しなかった」=「断らなかった」≠「(圧力を感じて)断れなかった」≠「受け入れられた」

である。

この類似パターンを見落としてはいけない。

4.コンプライアンスとともに「全体を見る」ことの重要性

今回は無償対応要求の例を挙げたが、重要なのは

「自分達が良かれと思えど、相手がどう思うか?」

である。見落としやすい基本事項である。

プロジェクトマネジメントの面だけではなく、コンプライアンスの面も含めて、自社の面のみならず、他社や社会全体への影響も考慮したい。

「社会目線」と「会社目線」の違い、「社会目線」が必要である旨について、下記記事を参照いただきたい。
o08usyu7231.hatenablog.com

コスト削減達成と引き換えに人権侵害となりうるテーマを用いた、コンプライアンス教育の事例について、下記記事を参照いただきたい。本記事で紹介した内容は、程度は違えど、下記記事とよく似ているのではないかと思う。
o08usyu7231.hatenablog.com

「自分はよかれ」、「よい間柄」と思っていたが、相手や世間の感覚は全く違っていたということもある。より広い視点で、より高い視座で、物事を見るよう、本件含めて事例や観点をインプットされたい。

オーディオブックとはプロのナレーターや声優が書籍を読み上げてくれる「耳で聴く本」です。オフライン再生もできるので、移動中や作業中など「いつでもどこでも」「効率的に」
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また、無償対応の要求を受けた企業は、安易に無償対応してはならない。詳細は、株式会社アクシア・米村社長のブログである下記記事を参照いただきたい。
axia.co.jp

ソフトウェアエンジニアに労働の知見が必要である理由10選

テクニカルスキルを磨き、開発プロセスを学び、真面目に職務に専念し、多くの経験を積む。ソフトウェアエンジニアとしては必要なことだ。

しかし、テクニカルスキルを高めれば絶対に

という保証はない。

私を含め、多くのソフトウェアエンジニアが本当に困っているのは、自身では防ぎようのないとも思える「労働問題」であると考えている。「労働問題」はエンジニアとしてのパフォーマンスを発揮するための、妨げとなっていることが少なくない。

長時間労働パワハラ等、「労働問題」に悩まされている労働者は、エンジニアに限らず多いことは承知のうえだが、この記事では、ソフトウェアエンジニアが巻き込まれるであろう労働問題を中心に、ソフトウェアエンジニアに労働の知見が必要である理由について、発信したいと思う。

労働問題に悩まされているエンジニアにとって、救いになれば幸いだ。また、自分自身が労働問題の発端とならないように、前もってインプットしていただきたい。


前置き

ソフトウェアエンジニアというと、私の周囲もそうであるが、「技術」に興味があり、着目する人が大半だ。「労務」に興味を示す人はそう多くないだろう。というのが私のイメージである。

「技術」を一生懸命習得しようとするエンジニアは多いが、それ以外のことが手薄になりがちであると感じている。

私はこれまでソフトウェアエンジニアとして、一般的なキャリアを歩んできた。各々の開発プロジェクトにおいて、職務に専念し、多くのプロジェクトで成功し、評価をいただけた。若い頃は資格取得にも取り組んできた。情報処理技術者をはじめ10以上の技術系資格を保有している。

キャリアのほとんどは、大手メーカーでソフトウェアを開発している。新卒で入社したIT企業に在籍していた頃は、客先常駐として長年大手メーカーにお世話になり、メーカーの社員と混じって開発業務に携わってきた。そして、また別の大手メーカーへ転職したが、ここでもそれまでのキャリアが活かされている。自分でソフトウェアを設計し、ソースコードを書いて、テストしている。部下や後輩の指導・教育にも多く携わっている。

技術分野ごとの濃淡や得意・不得意はあるが、これまでの実績を見る限り、ある程度技術はあるはずだ。しかし、私はこれまでの業務で「ブラック労働」も、「ホワイト労働」も経験している。ほとんどのプロジェクトがまともで、人間関係も良好である中、稀にあり得ないほど当たりが悪いプロジェクトが存在する。ガチャを引くようなものだ。

その「稀にあり得ないほど当たりが悪いプロジェクト」や「上司のコンプライアンス不祥事による迷惑・被害」に遭遇したときに受ける悪影響が大きすぎる。キャリアを破壊してしまうといっても過言ではない。

製品固有の技術、テクニカルスキルを高めることはもちろん重要だ。もう少し視野を広げてみると、「開発プロセス」が重要だという考え方がある。ソフトウェアの派生開発の考え方と手法を提唱・実践してきたことで知られる清水吉男氏(派生開発推進協議会:AFFORDD元代表)によると

「開発現場が混乱する原因のほとんどは、開発プロセスのミスマッチである。」

と講演でお話されている。また、アジャイル開発を日本に普及させる活動をされている平鍋健児氏(株式会社永和システムマネジメント代表)は、顧客の要求が変化するなかで、小単位の開発を繰り返し、素早くリリースし、振り返りや改善を進めながら開発を進めるスクラムという開発手法を提唱している。以下の書籍を参考にしてほしい。

確かにこれらの内容を知っておくに越したことはない。開発スキルを高め、開発プロセスを改善することは、間違いなく必要なことである。

しかし、業界の悪しき慣習もある。

顧客からの要求が半端なく困難なもので、開発スキルや開発プロセスの改善程度では到底賄えないものであったり、経営上の問題からリソースが十分でない等、労働環境に何らかの問題があれば、そのしわ寄せは明らかに我々に降りかかるだろう。

稀に発生する「長時間労働」「パワハラ」であっても「健康被害」「キャリアへの被害」等、悪影響が大きい。最悪の場合、再起不能になる。できれば事前に兆候を見極め、被害を予防するために、「労働のスキル」という言葉があるのかどうかわからないが、これを高めておくことが有効だと感じる。「コンプライアンス」への感度を高めると言っても良い。これをしないことによる弊害が少なからずいくつかある。

前置きがかなり長くなってしまったが、具体的な内容を列挙してみよう。

1.「ブラック労働」を「ブラック労働」だと気付かないことを防止する

よく言われることだが、「ブラック企業」にしかいない人、「ブラック企業」に居続けている人は、自分が置かれている環境を「ブラック」だと気づかないことが多い。私も若いころ、自分の所属している組織が、「ブラック」なのか「ホワイト」なのかわからず、「まあ、こんなものなのかな。。。」くらいにしか思わないのである。

これは感覚がマヒしている証拠である。悪質な企業、上司、先輩、同僚は、

  • 「これが普通だ」もしくは「まだまだ甘い」
  • 「業界では当たり前」
  • 「昔はもっと酷かった」「お前らはまだマシだと思え!」

等と、洗脳してくる。洗脳された人は、もう社畜状態である。さらに酷いのは、「社畜自慢」である。

  • 「俺は、昨日深夜0時過ぎまで作業した。」
  • 「俺は、20連勤だ!」
  • 「終電で帰れるだけ、まだ甘いわ!」

劣悪な労働環境にいながら、そのこと自体を礼賛し、またその状態に耐えている状況を自慢することを「社畜自慢」という。「肉屋を応援する豚」という言葉もある。「社畜自慢」と同じ意味だ。

そして、知らず知らずのうちに、何が「ブラック」なのかわからなくなり、劣悪な労働環境に巻き込まれても、

  • 「辞めることは『逃げ』である」
  • 「途中で諦めることはいけない」
  • 「責任をもって最後までやり遂げる」

というマインドに支配されたり、これが「厳しさ」であると誤認した結果、抜け出せなくなるのである。日本における幼少期からの教育による悪影響だ。

このようなことが無いように、「ブラック」の定義事例要因ソフトウェア開発現場職場一般における「ホワイト」との違いをインプットし、心身を壊す前に「ブラック」の状況にいち早く気付き、その環境から抜け出すなどの対策をとってほしい。

2.「残業が当たり前」という空気による生産性の低下を防止する

「ブラック労働」というと、どこまでが「ブラック労働」なのか、基準は人それぞれである。この項目では「残業」という切り口で捉える。

今では段々と減りつつあるが、

といったマインドが、まだ一部ある。ハードワークでも良いから稼ぎたい、経験を積みたいと考えている人は良いのだが、これを他人に強要することは問題がある。

しかし、このことをわかっていない人は、平気でこのようなことを行い、他のメンバを不快にさせてしまう。特に管理職がこのようなマインドだと、多くのメンバは疲弊し、生産性や効率が落ちてしまう。

そもそも「残業」しないと業務が回らないという状況は、「前段」が破綻していると理解すべきである。それを「残業」で乗り越えることしかソリューションがないと言っているようなものである。「前段」が破綻している状況を「残業」でカバーすることが当たり前になっている状況は、「厳しさ」ではなく「粗悪さ」である。

エンジニアに限らず「残業が当たり前」という空気感は周囲に迷惑や悪影響であることをわかっておくべきである。そして、「残業」に頼らずともやっていける「前段」であってほしい。

3.テクニカルスキルを向上することで長時間労働の抑止を試み、無理が祟ることを防止する

冒頭で述べた通り、エンジニアである以上、テクニカルスキルを高めることは必要である。スキルを高めることで、システム開発業務を円滑に行うことで、品質や効率・生産性が向上し、結果的に長時間労働が減少することは良いことである。

しかし、スキルを高めるだけで長時間労働の是正を行うことは限界があることがわかっている。

私は若い頃

長時間労働の原因は自分のスキル不足である」

と思い込んでいた。しかも、この思い込みは私の新卒から10年強の間、私のキャリアにピッタリ当てはまっていた。

その後、色々なプロジェクトを経験した。過重労働で無理が祟り体調に影響した出来事もあった。私という同じスキルの人間が、長時間労働に巻き込まれることもあれば、健全な生活をしてプロジェクトに成功し楽に高い評価を得ることもあった。「長時間労働の原因は自分のスキル不足ではない」ようだ

長時間労働の原因は、一般IT業界ソフトウェア開発等、切り口にもよるが調べれば色々出てくる。

そして様々な分析により、

長時間労働の原因は自分のスキル不足である」

という思い込みは根底から覆った。

4.自責思考が行き過ぎることによる事態の悪化を防止する

人とのやりとりが多いので、コミュニケーションが必要な場面は多々ある。その中で行き詰まる可能性がある。行き詰まった時によほどの他責思考でなければ、

「自分に原因があるのではないか」

と考えるのではないだろうか。これ自体は問題ない。

ただ自責思考が行き過ぎて、「自分に原因がない」のに「自分に原因がある」と思い込み続けたことで、事態が全く解決に向かわないどころか、都合よく相手の言い分に漬け込まれ、自分が不利益を受けたりするリスクがある。

最悪の場合、根本的に問題が解決しないまま、自分の精神を壊しかねない。

他責思考ばかりは良くないが、自責思考が行き過ぎることは更に良くない。また、「自責思考」を他人に押し付ける人ほど「他責思考」であると言っても過言ではない。冷静に人や企業を見極める力は重要だ。

また、他人の問題、企業の問題、業界の問題、社会の問題等、個人の力ではどうしようもないことがある。このような場合でも、自分/自分以外関わらず、問題点を的確に捉えて根本を正しく見抜くことは必要である。多重下請け構造の問題はその典型だ。

自責思考が行き過ぎて、自分を犠牲にして開発全体を成り立たせるなどというのは組織として健全でないし、このような状態で良い開発はできない。そのために事例を通して、社内外から広く情報を収集し、自組織にテーラリングする必要がある。

5.「パワハラ」を「パワハラ」だと気付かないことを防止する

これはエンジニアに限らず、労働者として知っておいてほしいことである。これも前項と関連するが、自責思考が行き過ぎるまじめな人は、

「『パワハラ』を受けた原因が自分にある」

と思い込む、または第三者が被害者に責任を追及する(セカンドハラスメント)割には、加害者は何の是正もしないといった最悪な事態になる。

パワハラの定義や事例をインプットし、これらの特徴や兆候を掴んで、防止に役立ててほしい。また、ソフトウェアエンジニアへのパワハラが起きやすい企業体質や兆候を知っておくと、早期に発見し、被害の拡大を防止しやすい。

6.劣悪な労働環境による、製品・サービスの品質・デリバリーの悪化を防止する

経営上の理由、組織の体質・文化、顧客からの過大要求を背景に、短納期でのシステム開発となる。そして、無理な納期に対しても納期厳守のため長時間労働で賄う。このため劣悪な労働環境になることがある。本来おかしなことである。

人間は朝起きて13時間以上経過すると、作業効率が著しく落ちることが医学的に証明されている。判断力は鈍り、ミスと多発する可能性がある。ソフトウェアの品質やデリバリーにも影響するのは当たり前だ。

誰でもわかることなのだが、なぜか現場ではこれを防ごうとしない。人事・総務部門は労務管理の大切さを訴えるが、開発現場の担当者が労務管理の話に触れると「甘えるな」とか、「頑張りが足りない」とか言う人がいる。ここまであからさまでなくとも、「自分達でできることをやるべきだ!」程度で終わる。全面否定はしないが、それほど単純な話ではない。

逆に、労働環境を良くすれば、ある程度製品・サービス・ソフトウェアの品質・デリバリーは確保できることも経験上分かっている。それでも品質・デリバリーの面で問題を抱えるならば、そこは別途対策ということになるが、労働環境以外の内容に絞られるだろう。

是非、労働環境を意識して取り組み、根性論や力技でカバーすることを止めてほしい。

7.自分のスキルより低い処遇とされていることの見落としを防止する

日本のソフトウェアエンジニアは賃金が安い。原因の一つに多重下請け構造の問題があるだろう。自分の所属する企業が、元請けなのか、下請けなのか、孫請けなのか、プロジェクトのステークホルダを見極め、自分がどの位置にいるのか意識してほしい。

自分の価値と今の待遇がミスマッチでないか、「評価が高い」のか「都合良く使われているのか」、自分でよく考えて見極めてほしい。そのためには、やはり情報を集める必要がある。業界標準、過去に経験したプロジェクトや所属組織との比較、企業の口コミサイトも参考になるだろう。

例えば、「給料が安い」という理由で離職者が多く発生している企業は要注意だ。「給料が安い」職業は世の中少なからずあるが、それよりも「スキル」や「業務内容」に見合わないという問題が大きいと捉えるべきだろう。

スキルを高めることは必要だが、これ一筋となると自分の価値と今の待遇がミスマッチであっても気付かない可能性がある。自分の市場価値を意識し、「業務」と「報酬」がミスマッチであれば、転職等の準備をはじめ、少しずつその所属組織から距離を取る必要があるだろう。社内の人事評価に納得いかなければ納得しなくて良いのだが、そこから行動を起こさないことが問題であり、是非次に向けて行動を起こしてほしいものだ。実際、社内の人事評価に納得いかず、ハイクラス転職サイトに登録したら、「この実績で、この忙しさで、この現年収は安いですね!」とエージェントから指摘を受けた事例もある。特定の会社に洗脳されていては、おそらく気付かないことだ。

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8.コンプライアンス意識を高め、社会的視点の欠落を防止する

業界をはじめ、労務面もしくはコンプライアンスに関して社会的に問題となっていることを知っておくことは重要だ。ソフトウェアエンジニアに限った話ではない。労働環境の改善等、何かを説得したいときに、世間の動向と共に伝えると、まともな企業や上司からは共感を得られやすいだろう。

上意下達が当たり前で、会社にとって都合の悪いことの隠蔽、力関係を背景とした人権の侵害等、おかしなことをおかしいと気付かない体質、言えない体質の企業では、いつ不祥事が起きてもおかしくない。

労務トラブル発生時におて、法律上は問題なくとも、正しい危機管理でなければ炎上する「ハラスメント」がダメなことはわかっていても、その定義、対象範囲、影響の大きさがわかってなければ取り返しがつかなくなる。歴史的な背景に依存するより「ソフトウェア・ファースト」のような時代の変化にも適応しなければならない。「会社目線」ではなく「社会目線」で

9.自分のパフォーマンスが発揮されず勿体ない結果となることを防止する

パフォーマンスが十分に発揮されないことは、実に勿体ない話である。私も経験があるからよくわかる。このような時は、なぜパフォーマンスが十分に発揮されなかったのか、自責他責問わず分析することだ。自責他責問わずというところが重要だ。自責のみに絞り込むと「自責思考でアプローチせよ!」などと豪語して他人に責任を押し付ける側にとって都合が良いだけだ。

自分がパフォーマンスを発揮して解決する問題であれば良いが、それ以前のところに問題があり、それが自身ではどうにもできない領域となるとお手上げ状態である。

実際私が過去に携わったシステム開発プロジェクト現場においても、私という同じスキルの人間において、下記の双方が見受けられた。

  • 優良組織では、元々私が参画することで改善できる組織上の問題(リソース面・スキル面)を抱えており、私がプロジェクトに参画することで改善され、プロジェクトが円滑に進み、周囲に感謝され、信頼され、高く評価された。
  • 粗悪な組織では、元々私が参画することで改善できる組織上の問題以前の問題(無理な納期、顧客との力関係、ブラック体質)を抱えており、私がプロジェクトに参画しても改善されず、スキル不足と勘違いされ、マウント取り、揚げ足取り、パワハラ、過重労働等の被害や迷惑を受けた。

「問題点だと思っている部分、もしくは議論されている部分の更に『前段』が本来の問題点である」というケースが少なからずある。これを、正しく見極めないと解決が遠ざかるだけでなく、無駄な努力や消耗をすることになってしまう。

パフォーマンスを発揮できずに終わってしまうのは、優秀な人材にとって勿体ない。また、パフォーマンスを発揮してもそれが理解されず、リターンが見合わず、気力・体力の消耗だけに終わってしまうのは勿体ない。繰り返すが、自責他責問わず分析し、正しく見極めることだ。

10.マネジメントが未熟なままで管理職になり、メンバーに迷惑をかけることを防止する

これはリーダー・管理職になる人にとっては必須の内容であるにも関わらず、出来ていない人が多い。プレーヤーとしての実績があっても、管理職になると求められる能力は全く別だ。テクニカルスキルが高くても、労務トラブルを発生させてしまうような管理職、コンプライアンス意識が低い管理職、「正論だけではやっていけない」としながら「正論」と向き合わない管理職、「正しいこと」よりも「自分にとって都合のいこと」を高く評価する管理職は、そもそも管理職に向いていない。

特に、過重労働・パワハラ等で部下の体調不良を発生させてしまうような管理職は、「マネジメントに問題があり恥ずかしいこと」と心得なければならない。しかし、「部下のメンタルが弱い」と甚だしくあり得ない勘違いをすることがある。

そうでなくても、進捗が悪いとプロジェクトメンバー全員の前で特定のメンバーを問い詰めるリーダーソフトウェア不具合報告を元に過剰な検証や嫌がらせのような追加作業を求める依頼者ソフトウェア不具合のような悪い報告を受ける際の振る舞いに問題がある管理職プロジェクトメンバーに残業増加を迫るリーダー余計な一言で圧力をかけて奮い立たせようとする管理職・・・。

このような人たちと一緒に仕事をしているメンバは悲惨であるし、そのような中で人間関係にも気を使い、むしろ彼らの方が迷惑を受けているのではないだろうかと感じる。

組織が不祥事を起こしたり、地位の高い人に対して周囲が指摘できないまま問題が大きくなったり、地位の高い人・影響力の大きい人が不適切な発言をして炎上したり、ソフトウェア開発業務に限らず、このような事例をインプットし、リーダー・管理職としてどうあるべきかを考えてもらいたい。

最後に

ソフトウェアは近年色々な製品(自動車、FA、家電、金融系、物流、インフラ、その他)に搭載され、サービスを実現し、様々な技術分野(ネットワーク、セキュリティ、データベース、エンベデッド)にて密接に関係がある。テクニカルスキルを突き詰めるソフトウェアエンジニアは少なくないし、ある意味それはエンジニアとして必要なことである。

そして、いずれの分野のソフトウェアエンジニアもテクニカルスキル以外に、業界における労働事情、世の中における労働事情を知り、知見をストックしておくことは必要だ。ニュースでも、ネット記事でも、動画でも良い。その理由を本記事で紹介したのでおわかりいただけただろう。知らぬうちに自分が都合よく使われ被害を受けることもあれば、テクニカルスキル以外が未熟であることにより周囲のメンバに迷惑をかけることもある。

逆に専門家レベルではなくても、ある程度知見があれば、必要以上に自分を責めることなく、ブラック労働を見抜き、転職の準備をし、実際に転職をして、キャリアや生活面が改善されたというケースもあるだろう。指導が行き過ぎてパワハラを受けることがあれば、それをはっきり「パワハラ」と言えるようになり、被害が大きくなる前に解決に向けて動き出すことができるだろう。また、逆に自分が加害者にもなりうる可能性を認識し、普段から十分注意した行動を取るだろう。ソフトウェア業界特有の問題を知ることで、「自分の価値」と「現在置かれている環境」を冷静に見極めることができるだろう。私自身も、労働の知見を多少なりとも保有していて良かったと思うことがあった。ソフトウェアエンジニアとして、労働者として、より良い働き方を実現してほしい。

労働トラブルにフォーカスを当てた資格は、私自身これまでにあまり見たことがありません。「労働トラブル相談士」資格は、経営者、管理職、人事担当者、コンプライアンス研修担当者に限らず、全労働者が知っておいた方が良い知識であり、また現在ブラック労働環境に在職している方には必須の内容と言えます。

この資格を取得するためには、認定講座を受講していただく必要があります。受講後の試験に合格した方が資格を取得できます。講座は全てオンラインで受講できます。資格の内容は、人事や労働に関する知識です。就職、労働条件、退職、残業、休職、解雇などの法律や決まり、トラブルに関する知識を得ることができます。

ブラック企業対策のノウハウを知りたい」

このような方は是非、「労働トラブル相談士」資格取得をご検討されてみてはいかがでしょうか?

下請け・客先常駐を中心としたIT企業を退職した多すぎる理由

退職エントリをブログに書くことはよくあることである。私も転職経験があるので、転職に伴い、退職した企業における退職理由について書く。

退職理由にあたる悩みを持っている方にとって、勤務先に同様の傾向がないかの見極め等、参考になれば幸いである。

私は、新卒でIT企業に入社し、システム開発に従事してきた。その企業は、大手メーカー、メーカーのグループ企業等を多数の顧客を有しており、プロジェクト数がそこそこ多い。しかし、そのほとんどは下請け、孫請け、多重下請け構造の末端、派遣を含めた客先常駐(SES)であった。

私は、当該企業に在職中、社内での請負、客先常駐での請負、派遣とあらゆる業務形態を経験した。ブラック労働からホワイト労働まで経験した。良いことも悪いこともあった。成長にもつながることもあれば、苦労も被害もあった。

同社在職中は多く方々にお世話になった一方で、退職を回避することのできない理由があり、現在に至っている。

IT企業を退職した後は、大手メーカーに転職し、前職のキャリアを活かして、システム・製品開発に携わっている。

私がIT企業の退職に至った理由をひとつづつ紹介する。タイトルの通り多すぎる理由がある。


1.家庭の事情、ワーク・ライフ・バランス

まず、決定的な理由はこれである。個人や会社がいくら努力しても、こればかりは自分でコントロールできない理由である。当時、退職する企業の上司に家庭の事情を丁寧に説明し、「会社としては残念だが」としたうえで、引き留めに合う遭うこともなく退職を了承された。会社にとっても「退職もやむなし」という判断であった。

引き止めの隙を与えないことも、退職時のノウハウとして必要だ。

私は、若い頃は残業を多くしていた。一方で、昔からの自身の価値観やライフステージの変化により、生活面のバランスを確保しながらキャリアアップしていく必要があった。しかし、このIT企業では実現できなかった。

2.勤務地、通勤の負担

客先常駐、自社開発ともに経験したが、勤務地がこれに左右される。場合によっては通勤に長時間を要することもあった。

通勤時間を利用して、資格の勉強に励んだ時期もあった。

時には「長時間通勤」+「長時間労働」という大変なこともあり、継続していると健康面に影響が出るリスクがある。実際無理が祟ったこともあった。

「長時間通勤」よりも更に問題なのは、「長時間通勤」というデメリットを上回るだけの(スキル向上、やりがい等)メリットがないということである。

また、期間は短かったのだが、転勤(厳密には長期出張)を経験したことがある。これが私の重要なライフイベントの時期に近く、不本意ながらも仕方なく応じたものであった。今後はこのような転勤や長期出張の要請に対応できないというのが退職理由の一つである。前述の「家庭の事情、ワーク・ライフ・バランス」と関連する部分でもあり、このことも退職時に上司に説明している。

転職先企業では、勤務地や通勤に関する条件が良く、転職前と比べて大幅に負担が軽減されている。更に、新型コロナウィルス感染拡大により、テレワークが一気に加速した。テレワークは働き方改革の一環として、今後はコロナ関係なく浸透し、多様な働き方が選択できる企業に優位性が出るものと予想される。テレワークが普及し、転勤は時代遅れのものとなった

3.大手メーカー(常駐)での実績から他社で通用することを確認

私がこのIT企業に在職中、キャリアのほとんどは客先常駐であった。客先常駐期間の中には、常駐先社員の指示通りの業務だけでなく、常駐先社員と対等に、常駐先社員の指導・教育、作成されたソフトウェア設計・実装・テストの照査・レビュー、常駐先企業の顧客企業への対外窓口、開発プロジェクトリーダーを担当するなど、常駐先社員と区別ないキャリアを積むことができた。当該常駐先企業での業務期間中はあまり特別な感じを受けなかったが、長く広い目で見るとかなり珍しいことである。

また、ほかにも複数の客先常駐と自社開発を経験するなかで見えてきた傾向がある。

「優良企業ほど、私を高く評価している。」

ということである。ここで一つ、当たり前レベルで是正しなければならない、当たり前のことに気付いた。

✕「下請けIT企業の給料で、大手メーカーの業務に携わる」
○「大手メーカーの給料で、大手メーカーの業務に携わる」

それならば、「大手メーカーでキャリアを積んでいくほうが良い」と、視野を広めることができた点が、良い転職へ繋がったと考えている。

また、一時期は客先常駐でホワイト企業にお世話になったことが、以降のキャリアに影響を与えたという事実もある。

4.ブラック労働による健康被害経験

これはIT企業自社開発プロジェクトでの長時間労働や、人員リソース不足で高負荷状態になり、心理的圧迫からうつ病のような症状を発した時期があった。メランコリー型と呼ばれる、真面目で、仕事熱心で、他人や組織のために尽くすタイプの人が陥りやすいとされている。回復までに数ヶ月を要した、社会人史上最悪の出来事である。

この出来事の直後に退職したわけではなく、原因を分析し、このような被害を発生させる企業と、させない企業の違いを明確にし、自身が過重労働に巻き込まれる要因が、自分のスキル不足によるものではないことを証明したうえで、転職に至った。

『優秀な人材』がブラック労働に巻き込まれ、パフォーマンスを落とすことが、いかに勿体ないことであるかを身に染みて分かることとなった

5.自社開発における過重労働の遭遇率が高い

冒頭に「ブラック労働からホワイト労働まで経験」と書いた。最も過重労働で大変な思いをしたのは、自社開発プロジェクトであった。

一般的には客先常駐(SES)のほうが自社開発と比べて問題視されることが多い。その理由は自社で労務管理が出来ず、派遣または(違法である)偽装請負によって顧客企業が常駐エンジニアを都合良く酷使するケースが多いためである。確かにこのような客先常駐現場もあった。

しかし、私が遭遇したケースは逆だった。自社開発での管理職やキーマンは、人使いが雑であり、不慣れな担当者に対しても業務の丸投げが当たり前で、マネジメントが未熟である点が見受けられた。(当初は自分自身のスキル不足と考えていたが、そうではないことに気付いた。)

優良な大手メーカーに常駐していたときのほうが、常駐先の管理職によるマネジメントが優れていて、自社開発と比べて無理が祟ることが少なく、こちらのほうが普通という感覚であった。

優良企業は優良顧客との取引が多いため、過重労働に至るような、無理な要求をしてくる顧客に遭遇することは少ない。一方で、優良でない企業は少々の不良顧客であろうが、無理してでも業務を受注しないと、目標の売上が達成できなかったり、会社が回らないといったことになる。そもそも本来この時点で破綻しているのだが、過重労働にて賄うことで業務が回ってしまう。自社開発が後者のパターンであるため、従業員にそのしわ寄せが来るのである。このような劣悪な前段に対して、スケジュールを守るために長時間労働で賄うのは本末転倒である。

よって、技術者個人のテクニカルスキルに関係なく、(乱暴な言い方をすれば)運次第ということになる。したがって、過重労働に耐えることが美徳でもなんでもなく、過重労働の発生率が少ない優良企業を選び、環境を変える方が得策であることに気付いた。

6.リーダー、管理職のマネジメントが未熟

これも過重労働他、前述してきたことと重複する。自社開発における業務は、不慣れな担当者にシステムの解析を丸投げすることが当たり前といった感じである。丸投げする割には、進捗や出来が意図通りでなければ、偉そうに叱責か、冷遇か、いずれにしても受けた側が不快感を感じるようなものであった。

作業している人の苦労を分からず、業務内容や困りごとを詳しく把握しないまま口だけは達者で、いかにも簡単に達成できて当たり前といった感じで、マウントを取ろうとする。また、背景状況や外的要因による従業員へのしわ寄せ、これに伴う従業員の苦労を理解せず、進捗遅れや品質低下等、最終的に表面化した部分だけを吊るし上げて叩くといった愚行が行われる。「言うは易し、するは難し」である。

マネジメントを行うマネージャは、「メンバーが目の前の作業に全力で取り組めるよう環境を整える」ことが仕事であるとされている。自分が偉いと勘違いしているのか、メンバーに対してマウントを取るようなマネージャは、マネージャに向いていないのである。

私も指導やマネジメント経験があるが、よく「優しく、丁寧で分かりやすい」と言われることが多い。「自分が苦労してきたため、他の人も苦労するであろうという予想される中で、円滑に進めることができるようサポートしたい」という点がここに反映されている。逆に、ある程度優秀で、若いころから業務をサラッとこなしてしまう人は、他の人が同じ作業を行ったときに、どのような点が躓きやすいかといったポイントがわからず、作業する人の能力不足としてマウントするという、マネジメントが未熟なままとなりやすいケースもある。プレーヤーとマネージャに求められる能力は全く異なるが、プレーヤーとして実績を挙げた人材が、マネージャに昇進していくことが多い。

テクニカルスキルが優れているリーダーや管理職でも、マネジメントが未熟であれば、いくら優秀な人材がいても、そのような人達を有効に活用できず、優秀な人材が勿体ない思いをする。当然、優秀な人材の流出に繋がる。

7.プロジェクト・顧客の当たり外れという不安定要素

これも前述してきたことと重複する。管理職のマネジメントが優れていればこのようなことにはならないはずだが、プロジェクト・顧客の当たり外れによる影響は大きかった。

全てが悪いわけではない。冒頭に述べた通り「ブラック労働からホワイト労働まで経験」しており、良いプロジェクト、悪いプロジェクト両方ある。もちろん、良いプロジェクトは自分の成長へ繋げることができたと感じている。しかし、悪いプロジェクトが自分の健康やキャリアに大きく悪影響を与えてきたことを考慮すると、このIT企業に所属し続けるのはリスクでしかないという判断である。

8.多重下請け構造からの脱却

これは日本特有の業界の問題、更には社会問題と言っても過言ではない。下請け企業への丸投げが当たり前になっていることや、多重下請構造があるから、ブラック労働問題が依然としてなくならないのである。これを回避するために、個人単位でできることが、キャリア・実績を活かして、大手メーカーへ転職することだった。

製品・サービスに価値を生み出すのは「ソフトウェア」である。「ソフトウェア」が主流になりつつある。海外はそのようになっており、既に日本は遅れを取っている。ソフトウェア開発を下請けや外注に丸投げではなく、大手メーカー自身で行うべきであるし、優秀な人材がそのような企業に集まるべきである。

9.公的資格を保有していること

IT系の資格は、持っていてすぐに使えるものではなく、スキルを高めるには実務経験を積むほうが断然良いと思っている。しかし、公的資格を保有していると、「形に残る」「証明できる」というメリットがある。組織内の立場や役職は、退職すれば消えてなくなってしまう。公的資格は退職しても残る。転職の際にも優位性があると言われている。このことも転職を後押しした要因である。

10.昇進する人の偏り

部門にもよるが私が所属していた部門では、自社開発の社員と客先常駐の社員がおり、およそ半々だった。ただ、昇進しやすいのは自社開発の社員である印象を受けていた。客先常駐の社員でも、ある程度のところまでは昇進する。しかし、限界がある。

更に、声が大きい社員、部下には偉そうな社員、上司に従順な社員、・・・。優秀な社員、倫理観の高い社員が必ずしも昇進するとは限らない。実際、辞めていく人もいる。要は、「市場価値の高い人」ではなく「会社にとって都合が良い人」となる。

私は若い頃、頑張って昇進することばかりを考えていた。しかし、上記のことに気付いてからは、この会社で昇進することに魅力を感じなくなり「立場」よりも「価値」を高めることを重視するようになった。

11.市場価値に見合わない安い給料

このIT企業の口コミサイトを見ると、退職理由として「給料が安い」ことによるものが多い。

私は若い頃は「給料が安い」ことはあまり意識せず、実感もなく、業務に真摯に取り組み経験を積むことに尽力した。私の周りでは「給料が安い」ことを理由に、大手メーカーのグループ会社等へ転職していった。「私ですら、そのようなことを言わないのに、何を言っているのだ!」というのが当時の私の感覚だった。しかし、段々と世間の情報等吸収していく過程で、転職するという判断が妥当であることがわかってきた。

また、給料とは別に「業務を安すぎる価格で請けているのではないか」という疑問もあった。既出の項目に「不慣れな担当者に顧客のシステム解析を丸投げ」と記載した。本来、大手メーカーが扱う製品・システムの中身は大手メーカーが理解しておくべきことであり、大手メーカーの社員が行うべき業務である。少なくとも、下請けIT企業は協力・協業とするのが普通だが、大手メーカーの社員が行うべき難度の高い業務を、下請けの社員が安く請け負っている点が不自然であり、これを円滑に行えるほどのスキルを持つ人材は、本来大手メーカー社員より高い給料を貰うべきである。

私の場合は、これらの要因により、より上位の企業へ転職すべきことに気付いた。

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12.退職者が多いことによる退職ハードルの低さ

元々私は、「転職することはリスクが高い」と思い込んでいた。おそらく終身雇用が長らく続いてきたことから「安定が一番」とするマインドの影響だろう。しかし、これまで述べてきた様々な要因より「転職しないことのリスク」が上回った。

更に、周りに退職する人が多いことも、自分が退職するハードルを下げる要因になる。今更ではあるが終身雇用は終わり、転職が当たり前の時代になっていることを再認識させられる。私が退職した年は退職者が多かったように思う。

13.開発対象製品・技術分野、プロジェクトのサイクルと身に付くスキル

最後は技術的な内容である。IT・ソフトウェアといっても色々分野がある。技術分野ならネットワーク・セキュリティ・データベース・組み込みソフトウェア、業種で言えば金融・物流・インフラ・製造、プロジェクトの特徴で言えば納期重視のもの・品質重視のもの、短期のもの、長期のもの。

人それぞれに得意・不得意分野がある。すべての技術に精通した人など、探すほうが難しいだろう。今いる会社で困難に耐え、すべての技術を身に着けようとするよりも、より活躍できる場所を探すのが良い。完璧を目指すのではなく転換も視野に入れると良いだろう。

最後に

いかがだっただろうか?

同様の環境に置かれ、悩みを抱えている人、今の会社がブラックなのではないかと心配している人、将来のキャリアを見据えている人、さまざまな人にとって参考になれば幸いである。

私自身在職中は多くの方々にお世話になり、社内外の様々な方からの良い刺激や影響を受けた。一方で、ライフステージの変化をはじめとする家庭の事情のように、自分個人や企業の努力では解決できないこともある。

また、労務トラブルをはじめとする、倫理観の欠如を疑わざるを得ない一部の人間や出来事により、迷惑を受け、被害を受け、当方からの信頼を失い、健康面、生活面を脅かし、キャリア、人生に影響したと思われた。それでも、広い視野を持ち、「場所」を変えれば活躍の場があることに気付き転職した。

「優秀な人材」だからといって、絶対に被害を受けないという保証はない。世間でも、労務トラブルや企業の不祥事がよくニュースになるのを見る。しかし、これは氷山の一角に過ぎない。我々が思っているよりおかしなことはたくさんある。ここに気付かず被害を受けていることの認識ができないことが致命的である。様々なところにリスクが潜んでいる。

労働トラブルにフォーカスを当てた資格は、私自身これまでにあまり見たことがありません。「労働トラブル相談士」資格は、経営者、管理職、人事担当者、コンプライアンス研修担当者に限らず、全労働者が知っておいた方が良い知識であり、また現在ブラック労働環境に在職している方には必須の内容と言えます。

この資格を取得するためには、認定講座を受講していただく必要があります。受講後の試験に合格した方が資格を取得できます。講座は全てオンラインで受講できます。資格の内容は、人事や労働に関する知識です。就職、労働条件、退職、残業、休職、解雇などの法律や決まり、トラブルに関する知識を得ることができます。

ブラック企業対策のノウハウを知りたい」

このような方は是非、「労働トラブル相談士」資格取得をご検討されてみてはいかがでしょうか?

ライフステージの変化による制約、ブラック労働による被害、市場価値が高くても昇進できない等、自分の力でどうにもならないこともある。いつでも転職できるよう、スキルをつけ、そしてエージェントに登録しておこう。そして、良い人生を送ってほしいと思う。
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デスマーチの前兆に至るシステム開発要員の心理

デスマーチ」はソフトウェアエンジニアにとって、避けたいがなかなか避けられないものであり、多くの人が悩まされているのではないだろうか?

この記事によって、そのような悩みを少しでも解決に近づけることができれば幸いである。

国家資格である情報処理技術者試験「プロジェクトマネージャ」の過去問題のある問題文内に、「デスマーチ」に至る開発要員の心理について記述されていた部分がある。この内容は現実にも起こりうる内容であり、その前兆からどのように「デスマーチ」に至ってしまうのか、「デスマーチ」を未然に防ぐにはどのようにすれば良いのか考えてみたい。


1.「デスマーチ」とは過酷な労働環境に加えてプロジェクトが破綻に向かっていく状況

まず、前置きとして「デスマーチ」の用語説明から入る。

デスマーチとは、プロジェクトにおいて過酷な労働状況をいう。ソフトウェア産業に限らず、コンピュータが関係する一般的なプロジェクト全般で使われるようになってきており、特に納期直前等の状態が破綻寸前で、関係者の負荷が膨大になったプロジェクトの状況を表現するのに使われる。プロジェクトが死に向かう過酷な状況でプロジェクト要員が行進するという意味から、「デスマーチ」は「死の行進」とも呼ばれる。

具体的には、長時間の残業や徹夜・休日出勤の常態化といった、プロジェクトメンバーに極端な負荷・過重労働を強い、通常の勤務状態では成功する可能性がとても低いプロジェクト、およびこれに参加させられている状況を指す。

プロジェクト要員は、心身ともに極めて重い負担を強いられるため、急激な体調不良、離職、開発の破棄ともとれる中途半端な状態での強引な納品、場合によっては過労死や過労自殺に至る。その発生要因は、

  • 顧客からの無理な要求
  • 開発側による無理な計画
  • 前行程の遅延を後行程で長時間労働といった力業によって穴埋めする企業体質
  • プロジェクトマネジメントが不適切である

こととされている。

長時間労働」「過重労働」「デスマーチ」「ブラック労働」、言葉はどれも良く似ており、過酷な労働環境を表している。その使い分けについては、こちらの記事を参照していただきたい。
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2.「デスマーチ」に至る心理はエンジニアとしての使命感が大半

国家資格である情報処理技術者試験「プロジェクトマネージャ」の過去問題のある問題文内に記述された部分を引用し、システム開発プロジェクトにおいて、進捗が遅延しているチームのメンバから4つの意見を紹介する。いずれも現実の世界でよくあることだと改めて思う。

●意見①

遅延を解消するために、他チームから応援メンバを入れて対応することがあった。しかし、応援メンバは開発する機能についての経験や知識がないので、応援メンバを受け入れても、チームの生産性はすぐには向上せず、むしろ、一時的には低下することがある。そこで、工程の後半では、応援メンバを受け入れるよりも、現在の要員1人当たりの作業量を増やして対応したいと申し出ることが多かった。しかし、1人当たりの作業量を増やすと作業品質が下がり、結果として生産性が低下した。

●意見②

改修すべき障害が蓄積してくると、行程完了期日までに全ての障害を改修しなければならないというプレッシャーから、余裕のない改修予定日を設定してしまう。その結果、要員が焦って、改修ミス、デグレードを発生させ、当初設定していた改修完了予定日に間に合わなくなることが多かった。

●意見③

当初設定した改修予定日に間に合わなくなったケースでは、遅れる可能性についてかなり前から察知していることが多かった。しかし、”改修完了予定日に間に合わせたい”、”他チームに迷惑をかけたくない”という思いから改修予定日の直前まで頑張って、それでも間に合わない場合に見直しを連絡していた。

●意見④

他チームに依頼したい作業はいろいろあった。しかし、既に障害が多発して迷惑をかけている他チームに、更に作業を依頼するのは気が引けて、ためらうことが多かった。

どの意見も、進捗が遅延しているチームが他チームやプロジェクト全体に迷惑をかけているという自覚が鮮明であり、エンジニアとしての使命感に溢れている印象だ。そして、遅延しているチームで可能な限り進捗遅延の挽回の努めている様子が伺える。ソフトウェアエンジニアとしての責任感、こだわり、謙虚な姿勢には、素晴らしいと感じる。

しかし、どの意見もその方法に問題があり、遅延しているチームで頑張ることで片づける、もしくは他チームを安心させようとギリギリまで頑張る行為が、かえって全体にとって悪影響となることがある。上記の各意見に対して、どのように捉え、どのように進めるべきなのか、次章で検討してみよう。

3.「デスマーチ」に至る心理を分析し改善すべき点について考える

遅延しているチームにおける4つの意見を精査してみよう。

●意見①

遅延を解消するために、他チームから応援メンバを入れて対応することがあった。しかし、応援メンバは開発する機能についての経験や知識がないので、応援メンバを受け入れても、チームの生産性はすぐには向上せず、むしろ、一時的には低下することがある。そこで、工程の後半では、応援メンバを受け入れるよりも、現在の要員1人当たりの作業量を増やして対応したいと申し出ることが多かった。しかし、1人当たりの作業量を増やすと作業品質が下がり、結果として生産性が低下した。

この意見のようなケースに遭遇した場合、もしくはリスクとして考えられる場合、そもそも「遅延」の原因が何で、「単なる要員の追加投入だけで解決する問題なのか」という点の見極めが必要である。

ここでは単に「遅延」と表現しているが、根本的な人員配置ミスや見積りの失敗、顧客や上層部からの無理な要求など、「遅延」では済まされない程度の要因により、開発要員がそのしわ寄せを受けてブラック労働に陥っているということも数多くあることを理解しておく必要がある。

まず、意見の前半の内容である、他チームから要員を増やす方法についてである。開発対象システムを熟知した要員であれば良いのだが、そうでない場合の方が多いだろう。そのような場合は慣れるまで時間がかかることを想定しておかなければならない。慣れるまでの時間を見越しても、それでも長い目で見て遅延を挽回することができる場合にのみ、この方法を適用すべきである。

よくやる失敗は、何も考えずにただ空いている要員をアサインするケースである。この意見のように既存要員のリソースをますます奪われ、デスマーチになりかねない。

次に、この意見の後半に記載されている「要員1人当たりの作業量を増やす」方法では、やはり要員への負荷が高くなり、要員が疲弊して作業品質が下がり、結果として生産性が低下してしまうのはその通りだろう。残念であるが、一番やってはいけない力技である。しかし、現実にはよくやってしまっている。

労務面の観点からいうと、人間は朝起きて13時間以上経過すると、酒酔い運転と同じくらい作業効率が低下するということが、医学的に証明されている。普通の企業であれば、この生産性が低下した状態の開発要員に対し、割り増しした残業代を支払っているのである。よくあることだが、このような観点で考えるととても恐ろしいことである。

開発要員の追加が困難であれば、納期の延長が現実的だろう。納期の延長も許されないなら、開発スコープの縮小が最も良いだろう。

こちらの書籍を参考にしていただきたい。

●意見②

改修すべき障害が蓄積してくると、行程完了期日までに全ての障害を改修しなければならないというプレッシャーから、余裕のない改修予定日を設定してしまう。その結果、要員が焦って、改修ミス、デグレードを発生させ、当初設定していた改修完了予定日に間に合わなくなることが多かった。

この意見のようなケースに遭遇した場合、まずすぐに改修しなければならないのか、優先度を落とすことができるのかといった見極めから入るのが良いだろう。

重大な障害に対する改修であれば、余裕のない改修予定日に設定することで、かえって状況が悪化することだけはあってはならない。かといって、あまりにも時間をかけた対応は、状況からして現実的ではない。

重大な障害に対する改修を行う場合は、対応要員がその作業に専念できるような環境作りが必要ではないだろうか。また、プレッシャーによって要員が焦って作業することのないような声かけや配慮も必要ではないだろうか。ブラック企業のような、パワハラでもって人を動かすのはもってのほかである。

●意見③

当初設定した改修予定日に間に合わなくなったケースでは、遅れる可能性についてかなり前から察知していることが多かった。しかし、”改修完了予定日に間に合わせたい”、”他チームに迷惑をかけたくない”という思いから改修予定日の直前まで頑張って、それでも間に合わない場合に見直しを連絡していた。

この意見のようなケースに遭遇した場合、「改修予定日に間に合わなくなること」が、「早い段階から分かる」ケースと、「直前に分かる」ケースでどちらが全体にとって良いかを考える必要がある。おのずと前者であることが分かるだろう。前者のほうがスケジュール面での対策や打ち手を考える時間的余裕があるからである。

特に、現場の開発要員にギリギリまで頑張って挽回しようとする傾向があり、マネージャは「悪い知らせは早く報告してほしい」と考えていることが多い。

マネージャが「間に合わなくなるなど、甘いこと言わずにギリギリまで頑張れや!」等とパワハラ的なことを言ってしまうと、ギリギリまで頑張る開発要員が増え、報告がしにくい、風通しが悪い職場環境となってしまう。

ギリギリまで頑張ることが更なる迷惑につながることを、マネージャは開発要員に対して常に発信し、開発要員もできるだけ早く「悪い知らせ」を報告する職場環境にする必要がある。


●意見④

他チームに依頼したい作業はいろいろあった。しかし、既に障害が多発して迷惑をかけている他チームに、更に作業を依頼するのは気が引けて、ためらうことが多かった。

この意見のようなケースに遭遇した場合、そもそも「元々のリソース配分や計画が適切だったのか」についての考えるが良いだろう。リソース配分に偏りがあったり、不十分なところがあれば、そこを是正することが必要なのに、遅延しているチームが業務を抱えてしまい、サポートを求めることをためらってしまうため、周囲へもなかなか大変な状況が伝わりにくいのである。

これも「意見③」の解決策と同じく、遅延チームがサポートを求めるよりも、遅延チームが業務を抱え破綻することによる全体への悪影響のほうがよほど迷惑であることを共有し、声を挙げやすい職場環境にすることが必要である。

4.このような時こそ「報連相」を!労務トラブルに発展すれば全て水の泡だ!

長時間労働のような力技は、一時的には切り抜けることができたとしても、次に示す通り様々なリスクを抱えることになる。

  • 疲弊による作業効率低下
  • ミス発生による品質低下
  • 健康面の悪化による休職のリスク
  • 品質低下によるリカバリ作業の追加
  • 人間関係の悪化
  • 優秀な人材の離脱
  • 労働環境の悪化
  • 人材獲得可能性の低下
  • 健康被害者からの訴訟のリスク
  • 行政指導・是正勧告

いずれも、将来に渡ってデメリットが大きいことを留意いただきたい。労務トラブルに発展すれば、全てが水の泡だ。

まず、上記の内容をプロジェクト内で共有し、予定に間に合いそうにないなど、不都合なことがあれば、声を挙げやすい体質にすることである。都合の悪い話でも、早く知らせることができれば、状況把握や対策検討に時間的余裕がある。要員の頑張りには限度があるのだ。普段からのコミュニケーションの改善が必要である。

こんなときこそ、思い出してほしい言葉が、「報連相」である。実はこの「報連相」、間違った意味で使われることが多く、本来の意味を知っている人は少ないのではないだろうか? 本当の意味での「報連相」(報告・連絡・相談しやすい環境)ができる状態になってほしい。
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最後に、デスマーチの前兆をよく目の当たりにする人は、デスマーチに巻き込まれないようにすべきと言いたいところだが、残念ながら顧客・経営陣・管理職からの圧力やマネジメントの未熟さにより避けられない場合もあるだろう。デスマーチに巻き込まれても、抜けることができるように準備をしておこう。

今、在籍している会社が全てではない。デスマーチを乗り切りことが、絶対的な正義ではない。見切りも必要だ。デスマーチを乗り切りことができるくらい、フィジカルやメンタルがタフな人間は、会社にとって都合が良いだろう。しかし、私はこのタイプは必ずしも優秀な人材だとは思わない。会社にとって都合が良いだけだ。
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本当に優秀な人間は、自身で可能な対策を行い、自身で取り組んだことを明確にすることに加え、劣悪な環境から逃れるよう行動を起こすことだ。会社のために自分が犠牲になってはいけない。私も、デスマーチに巻き込まれたプロジェクトのあるIT企業から、大手メーカーへ転職した人間だ。

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ワクチン接種と「ワクチンハラスメント」

新型コロナウィルスに対するワクチン接種が進んでいる。一方で、ワクチンによる副反応を懸念する声がある。

この記事ではワクチン接種における私の状況を書いておく。一個人の結果なので参考になるかわからないが、不安を抱える人にとって、何らかの参考になればよいと考えている。

また、新たなハラスメントである「ワクチンハラスメント」について少し触れておこうと思う。


1.接種に先立ち

新型コロナウィルスに感染してしまうことを懸念する声もあれば、ワクチン接種による副反応を懸念する声もある。ニュースでは集団接種におけるトラブル(薬品の配合ミス、ワクチン保存方法における不備)も報道され、不安を感じる人もいる。一時期ワクチン不足により接種予約をストップすることがあり、ワクチンを少しでも早く接種したい人にとっては、供給の面で不安を感じる人もいる。

未知のウィルスに対して開発されたワクチンなので、接種後の発熱、疲労アナフィラキシー症状、接種部位の痛みなど副作用もあり、接種をためらっている人もいる。ニュースでも聞くように、副反応が多くの人に発生している状況、また2回接種完了(一部では3回目の接種を行うところもある)しても感染・発症してしまうケースもある。特に若い人への副反応が多く見られたり、中には悲惨なことに亡くなる方もおられるようだ。そのため、接種に対して慎重になるのも当然である。

現時点日本においては接種は必須ではない。接種するかしないかは、各人の判断に任されている。私の職場においてもそのように通達があった。だから、職域接種において、「誰が受けた」「誰が受けていない」という話はしづらいし、そのような話が出ても「接種しないという選択肢もある」と私は理解している。

ワクチン接種は強制ではなく、受けるか受けないかは個人の判断に任されているとはいえ、私の場合は家族からはワクチン接種を受けるよう強く勧められている。また、高齢者枠で接種を2回とも終えた私の親からは
「ワクチン接種は集団で受け、集団で免疫力を高めることに意義がある。だから建前上は任意であるが、絶対受けるべき。」
と迫られる。これも一理ある。一方、
「自分でよく考えて・・・」
との声もある。

私は職域接種を受けることにした。モデルナ製である。地域接種よりも早く、地域接種だといつ受けられるかわからないからである。職場がこのような機会を用意してくれたのはありがたい。医療関係者への感謝は当然すべきだが、職場内でもこのような機会を設け、準備や進行に尽力してくれている方々に対しても敬意を表する。

私の職場における職域接種では、接種を希望する人が多かったようである。それだけ皆、感染予防に意欲的であると受け取れる。一方、若い人は接種をしないという選択をする人もいる。前述の通り、副反応は若い男性ほど発生しやすい傾向があると言われており、様子を見たいと思うのも理解できる。私自身も接種を受けようか否か迷ったくらいだから。私の職場でも
「接種を受けるか否かは各個人の判断に任されており強制ではない。『ワクチンハラスメント』があってはならない」
と案内があった。

2.一回目の接種

テレビにて国の関係者や芸能人が接種するところを何回か見たことがある。接種は筋肉注射であり、注射針を腕に垂直に刺しているため、見るからに痛そうである。そして、接種後は接種した方の腕が上がらない状態が数日続く人もいるという情報も得ている。副反応は人それぞれだ。

このようなインプットがあるためか、私は接種前から緊張と興奮で、体感の体温は少し高めであった。しかし、接種直前の検温の結果は、正常範囲内であった。

左腕に接種。テレビで見ていた限りでは注射針を腕に垂直に刺しており、かなり痛そうに見えたが、実際にはそれほど痛みを感じない。あっという間に終わった。接種後は15分程度接種会場で急な体調変化に備えて休憩した。特に異常は無し。

段々と左腕接種部位が軽い筋肉痛のような感じだが、私からすれば想定範囲内の程度であった。事前にインプットした情報では、左腕が上がらないという人もいたようだが、そのようなことはなかった。しかし、できるだけ左腕に負荷をかけたくないので、余計な動きをしないよう注意している。

接種日帰宅後の夜、身体が熱く、普段より汗をかいていた。発熱があり最高でも37.5℃だが、特にしんどいとは思わない。

翌日朝には熱は36℃台に下がった。左腕接種部位が軽い筋肉痛のような感じは、まだ変わらない。発熱の程度によっては、テレワークへの切り替えや休暇取得も検討したが、当初の予定通り出社した。リスクを考慮して、最初からテレワークの予定にしても良かったのではないかと思う。

二日後、左腕接種部位の痛みが段々とやわらぎ、三日後にはほぼ痛みがなくなった。一回目の接種は乗り越えたようで一安心した。

3.二回目の接種

モデルナ製ワクチンの二回目の接種は、一回目の接種から4週間後である。そして、二回目の接種後の方が、高い確率で発熱しやすいという傾向が出ている。38℃、39℃を超え、辛い思いをされた方もおられるようである。そのため、二回目の接種日以降は様々なリスクを考慮していた。その一つとして二回目の接種翌日は、最初からテレワークまたは有給休暇を予定していた。

一回目と同様、左腕に接種。接種後は一回目より多く30分程度接種会場で急な体調変化に備えて休憩した。特に異常は無し。

段々と左腕接種部位が軽い筋肉痛のような感じだが、ここは一回目の接種後と同じ。

接種日帰宅後の夜、身体が熱く、普段より汗をかいていた。発熱があり最高でも37.5℃だが、特にしんどいとは思わない。これも一回目の接種後と同じ。

翌日朝には熱は36℃台に下がった。左腕接種部位が軽い筋肉痛のような感じは、まだ変わらない。熱が下がったので、元々予定していたテレワークを実施。しかし、昼過ぎから微熱がぶり返して、最高37.6℃。高熱にはならないものの、一回目の接種後と比べて微熱が長期化している。なんとかテレワークでやりきった。職場では、同じく前日に二回目の接種を受けた人が数人副作用のため休暇していた。

二日後、左腕接種部位の痛みが段々とやわらぎ、三日後にはほぼ痛みがなくなった。私の周囲では、二回目の接種後、38℃、39℃台まで発熱したという人もおり、大変だったようだ。副作用は個人差があると改めて感じた次第である。

新型コロナウィルス感染に対して、ワクチンの効果が本格的に表れるのは二回目の接種が完了して二週間経過以降と言われている。二回目の接種が終わったからといって、まだ安心はできない。万が一感染しても重症化リスクが低くなるだけで、ワクチン接種した人でも感染してしまうと、他の人に感染させてしまうリスクがあると言われている。引き続き、新型コロナウィルス関係なく、普段の生活面、衛生面で改善できるところは改善し、テレワークの更なる活用も視野に入れるのが良いだろう。
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この先、三回目の接種が検討されている。二回の接種による副作用を経験した人にとっては、三回目の接種をどうするか、検討には慎重にならざるを得ないだろう。

4.「ワクチンハラスメント」の問題

ここへ来てまた新たなハラスメントが登場している。「ワクチンハラスメント」というハラスメントである。「ワクチンハラスメント」とは、新型コロナウィルスのワクチン接種を強要することである。また、接種しない人に対して差別的な発言や行為もハラスメントに該当する。

「ワクチンハラスメント」に限らず、最近「〇〇ハラ」といった感じで色々なハラスメントの名称が出現している。「ハラスメント」とは「嫌がらせ」の意味であるが、加害者側に悪意が無くとも、受け手にとっては不快に感じることが様々な場面で発生しており、その総称を一言で表している印象を受ける。いままでモヤモヤしていたことに対して、モヤモヤしている理由が明確になり、「過去のあのときの自分が受けた言動は、一部の側面から見れば、もしくは言動の一部を切り取れば正しいものの、何かいまいち納得できず不快感が残る。」といったことも「〇〇ハラスメント」の一言で説明できるケースが現れるようになるなど、随分便利になり、受けた被害を訴えやすい世の中になったと思う。
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「ワクチンハラスメント」が起きる企業では、最初は接種をためらっていた人でも周囲に合わせて接種を受けるようになり(「同調圧力」)、接種を受けない人に対しての風当たりが強くなったり、「みんなが受けているのになぜ受けないのか?」といった「協調性欠けた人」として扱われ、次第に業務に影響が出るなど、普通では考えられないことが起きているそうだ。まさに、「同調圧力」と「協調性」をはき違えている事例であり、接種を受けない人へのハラスメントになる。
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「ワクチンハラスメント」は、接種することによる副作用を懸念する人にとって、接種しないことで職場の仲間から阻害されるという新たな悩みの種を増やしてしまうようなものである。決してそのようなことがあってはいけない。ワクチン接種をしない人はワクチン接種以外の方法で、何かしらの感染対策が求められるであろう。

ワクチン接種は、新型コロナウィルス感染対策の手段の一つにすぎず、ワクチン接種が目的化し、ワクチン接種が独り歩きしてしまい、ワクチン接種を実施したか否かによって力関係が決まってしまうようでは本末転倒である。個人の意思が尊重され、ワクチンを受けた人も受けない人も快適に過ごせる職場や世の中であってほしい。

「ハラスメント」は「人間関係」の問題ではない!「コンプライアンス」の問題である!

「ハラスメント」は「人間関係」の問題ではない!「コンプライアンス」の問題である!

まさに、タイトルの通りである。

しかし、現実には「ハラスメント」に悩まさせると、あたかも「人間関係」がうまくいってないかのような気分になる。

組織という中に自分の身を置くにあたって、自分が組織内の他の人たちとうまくやっていけなかったり、孤立してしまったりすると、自分に問題があるのではないかという心理になってしまう。

「ハラスメント」は、別名「組織の病気」である。

この記事では、このような悩みを持つ被害者にとって、事例も踏まえて必要以上に落ち込むことはないことをお伝えすると同時に、企業などの組織側が「ハラスメント」を正しく認識し、対策する義務があることをお伝えしたい。


1.「人間関係」とは

「人間関係」とは、Wikipediaによると

「人間と人間の関係のこと。社会(世間)や集団や組織の場あるいは個人的な場における、感情的な面も含めた、人と人の関係のこと。文脈によっては対人関係とも言う。」

と説明されている。よく、職場でも使われているが、曖昧な言葉ではないかと思う。

「人間関係」は退職理由のなかでも上位に入り込んでいる。能力が高く優秀な人材でも「人間関係」に悩まさせると、退職するケースもあれば、心身不調を訴えるケースもある。職場におけるパフォーマンスを下げる、最大の要因かもしれない。

「人間関係」という言葉は、漠然と使われることがある。良い関係でも、悪い関係でもそうであるが、悪い関係で使われるときは、なんとなくうまくいっていない状況であることはわかるのだが、どちらが加害者でどちらが被害者なのかというはっきりしたことが、いまいち分かりにくい。『「人間関係」の問題』と言われても意味が広く、詳細があまりはっきりしないため、何を是正すれば良いのかわからないことがある。価値観・考え方・経験の違いから発生することもあるだろう。本来は、歩み寄ってお互いが理解していくはずだ。

しかし、これを悪用して『「ハラスメント」の問題』を『「人間関係」の問題』と称して、本来加害者・被害者がはっきりしているはずの「ハラスメント」に対して、「ハラスメント」そのものから話を反らし、被害者側の改善点を中心とした話題にするよう論点をずらし、加害者や第三者に都合よく被害者側をマインドコントロールするケースがある。

2.「ハラスメント」被害を「人間関係」の問題とする過ち

「ハラスメント」を「人間関係」の問題として扱う過ちを犯した事例がある。

他社の管理職(パワハラ加害者)からパワハラを受けた被害者が苦痛により、体調を壊した。この件に関し、後日被害者からパワハラ加害者に対してクレームした。その結果、しばらく当人同士でトラブルになったものの、被害者が屈することなく労働問題に対する正論を発信し、パワハラ加害者が最終的に謝罪した。これは組織内どころか、企業間の垣根を超えた社会的優良事例である。
しかし、後に被害者の上司(被害者側組織の管理職)は被害者に対して、

  • 「他社の管理職(パワハラ加害者)の意図を理解していたか?」
  • 「被害者の体調不良は他社には関係なく、当社内部で解決すべき。」
  • 「会社対会社の関係を考えているか?」

などと被害者を責めた挙げ句の果てに、被害者の人事評価を低評価とした。
被害者の上司の行為は、明らかにパワハラ被害者を黙らせることを目的としていることが見えており、セカンドハラスメントにあたる。

被害者の上司による、被害者への人事評価を低評価とした内容をもう少し詳しく見てみる。

数ある評価項目の中、「人間関係」「対人影響」の項目が低く評価されている。「他社の人間に対して自己中心的な発言」といった旨のコメントがある。被害者がパワハラを受けた背景を知らない人からすれば、被害者に問題があるように見えてしまい、第三者を誤認させてしまう表現である。

しかし、他社の管理職からパワハラを受けたときの証拠、上司がこれについての見解を述べているときの証拠を、被害者が保有しており、人事評価のコメントと上司の見解の内容が合致したことにより、パワハラ被害に対する正当防衛を「自己中心的な発言」とされていることは確かだ。被害者を傷つけてしまう不適切な表現である。

加害者・被害者が明確な「ハラスメント」に対して「人間関係」という曖昧な言葉を使い、わざと内情を見えにくくすることで、「ハラスメントが起きた」というインパクトを弱めている。管理職の責任逃れと隠蔽の常套手段である。

被害者はしかるべき行動を取ったが、それでも被害者の上司からのセカンドハラスメントに対する謝罪は全く無い。「加害者は自分が加害者であることの自覚がない」と、ハラスメント関連の様々なサイトに記載されているが、これはまさにその通りだ。

この事例からもわかるように「ハラスメント」は被害者の「人間関係」の問題ではない。加害者の「コンプライアンス」の問題である。被害者がいくら意識を変えたところで、加害者が変わらなければ意味がないのである。

コンプライアンスは重要だ!」と普段から言っていても、こういうことがある以上、「加害者のコンプライアンス意識が足りない」と言われてしまう。低評価と是正指導をすべき対象は、管理職の「コンプライアンスである。

3.「ハラスメント」被害が原因で退職したことを「印象が悪い」とすることの違和感

転職関連の話題としてよく語られるが、退職理由で職場の「人間関係」は常に上位にある。パワハラに遭ったら被害者が辞めたくなるのが当然である。

「ハラスメント」被害が原因で退職するならば、退職理由を「人間関係」に分類するのではなく、『社内における「コンプライアンス」に問題があり看過できない』とすべきである。世間では、ハラスメントの他、数々の不正、偽装等の不祥事が後を絶たず、これまで以上に「コンプライアンス」への注目が高まりつつある。「人間関係」と言ってしまうと、退職者にも何かトラブルに巻き込まれる要因があるという印象を持たれ、マイナスイメージになりかねないのだが、純粋に被害のみ受けた退職者にとっては迷惑な話である。

転職する際に、自分の持っているスキルや経験、実績をアピールし、転職先の企業でどのように活かして貢献していきたいのかという、ポジティブなアピールポイントを言えるようにしておくことは、全くその通りである。

一方、転職の際に退職理由として『「ハラスメント」を受けた』ことを挙げるのは控えた方が良いというアドバイスを見たことがある。ネガティブな理由であることはわからなくもないが、違和感がある。何故ならこの場合、退職者は被害者であり、退職者自身に問題がなくともネガティブな目で見られることになるためである。

転職先企業の面接官側から見た場合、仮に転職応募者が「人間関係」を理由に転職前の企業を退職しようとすれば、

「転職後当社でも同じ理由で長続きせず退職されてしまうリスク」

を抱えるとよく言われる。応募者自身に問題がある場合は、その通りである。

しかし、「ハラスメント」を理由に退職しようとしている応募者の場合、「ハラスメント」が無い同業他社なら十分活躍できる余地がある。つまり、応募者が退職しようとしている企業及び「ハラスメント」加害者の「コンプライアンス」の問題である。ここで先程と同じような感覚で

「転職後当社でも同じ理由で長続きせず退職されてしまうリスク」

などと言い出すと、転職先企業でも同じような「ハラスメント」が起こりうるほど「コンプライアンス」が欠落しており、退職しようとしている企業と転職先企業が同レベルなのかと捉えられるリスクがある。

また、「ハラスメント」を理由に退職しようとしている応募者に対して、転職先企業の面接官が「あなた自身にも問題があったのではないか?」と問い詰めたり、「ハラスメント」被害者であることを理由に転職先企業が応募者を落とすということをすると、「セカンドハラスメント」として転職先企業の「コンプライアンス」が疑われることとなる。

かといって、転職先企業の面接官が応募者が受けた「ハラスメント」が事実かどうかわからない。

採用面接官をはじめとする企業側は、「ハラスメント」被害で退職しようとしている応募者を、「人間関係」に問題があるとするのは、短絡的であると認識すべきである。

このような場合どうするか?

採用面接官は、応募者が「ハラスメント」被害を受けてどのような行動を取ったかをヒアリングし、行動パターンを読み取るのが筋だろう。(業務における実績やプロセス、エピソードをヒアリングするのと同じようにである。)

例えば、

  • 上司に相談した
  • 周囲に相談した
  • 社内のハラスメント相談窓口を利用した
  • 加害者に直接抗議した
  • 社外の専門家に相談した
  • 地域の総合労働相談コーナーに連絡した

のような感じで、解決・改善に向けて何らかの行動を起こしていたなら、被害者の行動として素晴らしいことである。ただでさえ、被害者は「転職準備」という解決に向けた行動を起こしている時点で素晴らしい。被害者にも改善する点があるなら、改善すれば良い。改善に向けた努力や行動を評価すれば良い。「ハラスメント」に耐えたり、放置するなど、行動を起こさないのは問題だと言えなくもないのだが、現実は被害者側に問題があるかのように洗脳されてしまい、正常な判断力を失い、動けないといったところではないかと考えている。

逆に上記のような被害者(応募者)の行動に対して、

  • 「ウチで採用すると面倒くさいことになりそうだ」
  • 「応募者自身の問題では」
  • 「もしかしたらモンスター社員では」

と疑うような企業は、そもそも何かしらの労務問題を抱えていたり、労働環境が悪い企業であることが多い。

ハラスメント被害者からの訴えを含めて、ハラスメント被害者が改善に向けた行動を起こすのを嫌がる企業は、ハラスメントが蔓延している企業と疑って良い。そのような企業ほど、「〇〇(被害者)は、人間関係の点でちょっと・・・」的なマインドを持つものである。

まず自社内の「コンプライアンス」を確固たるものにし、被害者から訴えられる隙間を作らないことを心掛けたほうが良いのではないだろうか。「コンプライアンス」意識が高い応募者が来ただけでビビッてしまうような企業は、世間の変化にもついていけず今後市場から取り残されていく一方である。

「ハラスメント」被害者に限らず、転職を考えている人は、転職先企業の「コンプライアンス」はしっかりと見ておいたほうが良い。

話は逸れるが、転職サイト等ではポジティブなアピールを行い、ネガティブなアピールは避けた方が良いというアドバイスがある。しかし、うわべだけの面接やコミュニケーションの末、入社後に「想定と違っていた」となると、企業、応募者双方にとって不幸である。採用面接官としても本音、真実を知りたいという声もあるし、応募者・採用面接官ともお互いの本音、真実を知ったうえで、中・長期的にマッチするかどうかを見極めたいものだ。

4.「ハラスメント」は加害者側の「コンプライアンス」の問題

まず「ハラスメント」と聞いて、直接の原因はまさにこれである。被害者側の「人間関係」と丸められてしまいそうだが明らかに違う。それから、「ハラスメント」が起きてしまう企業体質の問題、「ハラスメント」を容認してしまう企業風土の問題がある。いずれも「コンプライアンス」の問題である。

よく企業のホームページ等で、「ハラスメント」対策へ向けた取り組みについて記載されている。このようなページはだいたい「コンプライアンス」のページの内部にあることが多い。また、「ハラスメント」教育が「コンプライアンス」教育の中に組み込まれている企業が多い。「ハラスメント」対策への取り組みが、「コンプライアンス」活動の一環として捉えられている証拠である。

これまでの例にも示してきたように、「ハラスメント」と「人間関係」を区別なく扱う企業、管理職が見受けられたなら「コンプライアンス」の観点で疑ってみるのが良いかもしれない。

また、企業側は「ハラスメント」被害者を「人間関係」に難ありとせず、何よりも「コンプライアンス」を最優先し、「ハラスメント」が無い風土を醸成し、「ハラスメント」被害者が存分に活躍できる土壌を作り上げることが急務である。そのためにも、色々な考え方や、色々な人の知見を吸収し、常にアップデートしていく姿勢が必要である。

最後にひとこと。
コンプライアンス」とは、
× 「法令遵守」(「法律さえ守っていれば、あとは何でも良い」)
〇 「法令遵守」のみならず「時代とともに変化する社会的要請を正確に把握し、それに応じた行動を取ること」

もうすでに「パワハラ防止法」は、大企業、中小企業に関わらず、全ての企業で適用となっており、「ハラスメント」対策を実施していないどころか、「ハラスメント」問題を(被害者の)「人間関係」の問題などとすり替えて、問題の本質をもみ消しているような企業にとって、未来は無いといっても過言ではない。

労働トラブルにフォーカスを当てた資格は、私自身これまでにあまり見たことがありません。「労働トラブル相談士」資格は、経営者、管理職、人事担当者、コンプライアンス研修担当者に限らず、全労働者が知っておいた方が良い知識であり、また現在ブラック労働環境に在職している方には必須の内容と言えます。

この資格を取得するためには、認定講座を受講していただく必要があります。受講後の試験に合格した方が資格を取得できます。講座は全てオンラインで受講できます。資格の内容は、人事や労働に関する知識です。就職、労働条件、退職、残業、休職、解雇などの法律や決まり、トラブルに関する知識を得ることができます。

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「転勤・単身赴任が当たり前」の企業が受けるデメリット7選

転勤、単身赴任は、これまで日本では当たり前のように行われてきた。柔軟な人員配置による従業員の雇用維持、人材育成(キャリアアップ)、組織活性化を理由に、会社の強い権限でもって行われてきたが、もう今では時代に合わなくなってきている。そもそも海外では一般従業員に対して転勤など行われない。

この記事では、転勤・単身赴任が当たり前の企業が受けるデメリットについて紹介する。

企業に就職・転職する人は、企業の転勤制度等、転勤を命ぜられた時はどのような意図か、生活面への影響、トータルとしてプラスになるかよく確認し、必要に応じて普段から転職等の選択肢も用意しておく必要がある。

一方企業側は、従業員が望まない転勤は従業員に対してどれだけ負担になるか以外に、企業として受けるデメリットを理解しておく必要がある。

実際、転勤を廃止する企業も出てきており、新卒の応募が増えたというケースもある。そして、転勤以外の手段で人材育成、組織活性化し、価値観の多様性に対応できなければ企業としての存続が困難であることを理解しておく必要がある。

1.不要な退職を招く


昔は終身雇用が前提で、転勤を命ぜられれば従うのは当たり前だった。今は終身雇用が崩れ、転職が当たり前である。これにより、「転勤」よりも「転職」を選ぶ人が現れはじめ、「転勤離職」が新たな問題になっている。

例えば、転勤先の職場に投入予定の社員が、介護等家庭の事情を理由に転勤拒否し、退職した。そのため、転勤先の職場に転勤可能な別の社員を「転勤」させて投入した。この場合、退職した社員は、本来退職せずに済んだはずである。ただでさえ人手不足の中、不要な退職を招いてしまったことになる。

退職してしまった社員に、そもそも転勤を命ずる必要があったのだろうか?

転勤以外の方法を考えるべきではないだろうか?

転勤によって組織の配置替えを実現させ、かつ雇用を守ることを「全体最適」という人がいそうだが、社員個人や家族を犠牲にすることは「人権侵害」であって「全体最適」ではない

2.ハラスメントの疑いがかけられる


先程の例のように、不要な退職を招くと企業にとって従業員を一人失うこととなり、企業にとってデメリットでしかない。そう考えるのが普通である。そうなるなら、最初から強制転勤などしないはずである。

しかし、それでも強制転勤をさせるのはどのようなときか?

気に入らない従業員を遠くへ飛ばす等、退職勧奨や嫌がらせ目的で転勤を命じる可能性が考えられる。

転勤は業務上の必要性があって行われるものであるが、今の時代に合わないことを考えると、出来るだけ転勤以外の方法で適切な人員配置を実現することが求められる。更に、転勤がそもそも本当に業務上の必要性があるのかを検証する必要がある。

業務上の必要性が薄いなら、パワハラである可能性が極めて高い。①企業が辞令により従業員を配置転換できるという優越的な背景をもとに、②業務に必要相当な範囲を超えたものであって、③就労環境を悪化させるものの3点を全て満たせばパワハラである。

パワハラだということが明らかになれば、金銭面、企業イメージ、パワハラ対応コスト、事業機会、社会的イメージ低下等、企業にとってデメリットでしかない。

人材育成やキャリア形成が目的なら、転勤以外の方法を考えるべきである。

3.社会的要請に対応できないことによる市場からの退場


昔は終身雇用前提で、男性が働き、女性は家事・育児に専念し、転勤の際には男性についていき、子供は転校を余儀なくされた。当時はそれが当たり前とされてきたが、非常に理不尽な話である。

最近は、共働きや育児・介護との両立が重視される。そのような中で、昔のように企業が転勤を当たり前とするならば、社会的要請の変化に対応できないとして市場から取り残されてしまうこととなる。

2019年6月に化学メーカーであるカネカが、育休明け男性社員を即転勤させたことで、男性社員は退職。家族の方のSNSで拡散され、その後の企業側の対応を含めて、世間やメディアから叩かれ、株価にまで影響した不祥事が報じられた。転勤そのものは、「法律上問題ない」にしても、転勤させる時期からして誰が見ても嫌がらせでしかなく、「育児休暇を取りにくくする行為」「少子化を加速する行為」と社会からバッシングされたことは記憶に新しい。

「法律上問題ないか」の観点ではなく、「時代とともに変化する社会的要請を正確に把握し、それに応じた対応ができているか」の観点が必要であるのだが、カネカはこの点がまるごと抜け落ちていると、専門家からの指摘もある。法律上問題ないとはいえ、社会的要請に対応できないと、今後は市場から退場させられる羽目になる。

4.そもそも人が来なくなる


最近の若者は、仕事と生活面のバランスを確保しながらキャリアを積みたいと考える人が多いようである。若者に限らず、私もそうである。働くにあたって何を重視するかは人それぞれであり、働き方の多様性が認められる企業のほうがアドバンテージがあるようである。

また、独身のうちは転勤を許容できても、結婚や出産、住宅の購入といったライフステージの変化によって、転勤を許容できなくなることも十分あり得る。ライフステージの変化をきっかけに優秀な社員が退職するリスクもある。
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そもそも転勤がある時点で、生活面とのバランスを確保しながらキャリアを積みたい優秀な人材を確保することができず、企業にとっては大きなマイナス要素となる。

AIG損保は強制転勤を廃止してから、新卒応募者数が10倍に増えたという話は有名だ。

5.他社に迷惑をかける企業とみなされる


最近は共働きが主流になってきており、夫婦のどちらかが転勤となると、単身赴任で家族が別々になるか、配偶者が退職しなければならなくなる。これは、人権侵害である。

もし後者の場合、配偶者が所属する会社が、退職により貴重な戦力を失い、大変な迷惑を被ることになる。転勤はこのように社員・社員の家族のみならず、他社に対して迷惑をかけることとなる。

他社に迷惑をかける企業は、当然のことながら企業イメージが低下する。

6.人材育成や人材活用の手段に乏しいとみなされる


上述したように、社員を転勤させるときは本当に転勤させる必要があるのか、十分に吟味する必要がある。そして、転勤以外の方法での人材育成や人材活用の方法を探る必要がある。

現地で人を採用するとか、テレワークを活用するとか、出張で済ませられるようにするといった対応が良いだろう。

例えば、大阪勤務の社員が東京本社に転勤となる際に、組織としての所属上は東京本社であるが、普段の勤務は大阪のオフィスにて、又は自宅からテレワークにて行い、月一回程度東京本社に出張で対応するなどである。

「転勤」とはいえ、住まいが遠方へ移る従来型のスタイルとは全く異なり、社員や家族の負担が比較にならないほど軽減される。

それができないということであれば、そこまでの企業でしかないという印象を受ける。人材育成や人材活用を謳いながら、企業にとって従業員を都合良く使っているだけという可能性が高く、従業員やその家族から見抜かれる。企業としても、上記のようなスタイルの転勤が実現できる企業にアドバンテージを渡すことになる。

7.依然として、引っ越し代、赴任先の家賃、交通費等の負担がある


転勤といえばこのような経費を企業が負担しており、これ自体は普通である。そして、このような経費を負担であると認識せず「必要経費」程度と認識している企業は少なくないだろう。

しかし、ただでさえ転勤を廃止している企業が増え、テレワークが普及してきている中、まだこんなところに経費を使っているのかというネガティブイメージを払拭できない。

転勤を廃止、もしくは元々無い企業からすると、このような転勤関連の経費が他に回せるため、この点においても遅れを取ることとなる。
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最後に・「転勤・単身赴任が当たり前」の企業はデメリットしかないと認識すべきだ!

ここまで、転勤・単身赴任が当たり前の企業が受けるデメリットについて紹介してきた。冒頭に述べたように、現在は働く人の価値観が多様化し、これに対応できない企業は存続が困難な状況が、すぐ目の前にきている。その一つが転勤である。転勤は日本特有のものだ。転勤だけではない。コロナ禍でテレワークが急速に進んだ。

転勤という企業にとって特権のようなもので、社員と社員の家族の運命を変えてしまうやり方は、今後は企業のイメージダウンにしかなりかねない。

過去の常識に囚われず、視野を広げ、チャンスを掴む。企業側も、労働者側も必要な姿勢だ。

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転職市場においても、これからは転勤のない企業のほうがアドバンテージがありそうだ。転職希望者の見るポイントになるだろう。

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問題社員の正しい辞めさせ方

問題社員を「クビ」にしたい、「解雇」したいと思ったときにおすすめの書籍がある。

その書籍は、企業の経営者、管理職、人事担当をはじめ、あらゆるビジネスパーソンに向けた書籍であり、2021年4月に発売された。

「問題社員の正しい辞めさせ方」という厳ついタイトルではあるが、人気が高い著書である。


1.書籍「問題社員の正しい辞めさせ方」についての前置き

この書籍のタイトルのような悩みを持つビジネスパーソンは少なくないのではないだろうか?

例えば、以下のような社員である。

  • 「ハラスメント加害者」
  • 「職務怠慢」
  • 「協調性なし」
  • 「成果を出さない割には、労働者として権利のみ主張」

この書籍は、上記のような「問題社員」の扱いについて、悩みを解決するためのノウハウが詰まっている。

「問題社員」の「解雇」をテーマにしたものではあるが、他書では「解雇」に関する法律上の解釈について記載されたものが多い。しかし、本書では詳しく扱っていない。なぜなら、問題社員の「解雇」が最終目的ではなく、本来は問題点を是正し、職場でパフォーマンスを発揮して活躍してほしいという考え方があるからである。

また、「問題社員」に限らず、指導やコミュニケーションの在り方について述べられているので、参考にできれば良いと考えている。

2.書籍「問題社員の正しい辞めさせ方」の概要(1)、筆者お薦めの「太陽方式」

今すぐにでも辞めさせたい「問題社員」を抱えておくのは企業にとって多大なリスクである。しかし、日本の法律や判例では、このような社員であっても「クビ」にすることが極めて難しい。

拙速な対応により、「問題社員」に対して「クビ」「解雇」などと言ってしまうと、後から「パワハラ」「退職強要」「不当解雇」「不当労働行為」などとして、訴訟のリスクがあり、企業にとって不利な結果となるばかりでない。それどころか、労働行政からの指導・是正勧告、企業のネガティブイメージの拡散、解決金等金銭面での損失、事業機会の損失等、壊滅状態に陥ることがある。

それならばとうするか?

「退職勧奨」という方法がある。この方法にて「問題社員」を辞めさせるには、周到な準備(例:就業規則の整備)と粘り強いコミュニケーション(例:口頭・書面での指導、人事評価、段階的な懲戒)が必要である。

しかし、それでもうまくいかないときに筆者がお薦めしているとっておきの方法がある。それは「太陽方式」(徹底的改善指導)である。

能力の低い社員や問題社員であっても、「クビ」「解雇」という言葉を一切使わず、積極的にコミュニケーションを取り、暖かくポジティブに指導することで、当該社員の改善に向けた手厚いフォローに応じざるをえない面倒さ故に「問題社員」自ら辞めるように仕向ける方法である。時間や手前がかかり粘り強さが必要だが、企業が抱えるリスクが極めて低いと説明されている。

尚、「太陽方式」とは、イソップ寓話の「北風と太陽」の例えから来ているので、イメージが湧かない方はそちらを参考にしていただきたい。

「太陽方式」によって問題社員を辞めさせることに成功した事例、侮辱を含めた「北風方式」によって問題社員に圧力をかけて失敗した事例も参考になる。

3.書籍「問題社員の正しい辞めさせ方」の概要(2)、「問題社員」混入の予防

「問題社員」を正しく辞めさせることと並列して重要なのは、問題社員混入の予防である。

普段から労働環境を良好にし、充分な報酬を与え、コンプライアンス意識を高め、現代のニーズに対応できる多様な働き方を可能にすることで、それが実現可能になる。

その理由は、これにより「全国の優秀な人材からの応募が殺到し、その中から更に上澄みを採用する」ことで、「問題社員」が混入する隙間がなくなるからである。

逆に、これができていないと、優秀な人材は労働環境の良い他社に獲得されてしまい、自社に必要な人員補充を急ぐあまり「応募してきた人の中から相対的にマシな人材を採用する」という形を余儀なく強いられる。それ故、「問題社員」混入の隙間を作ってしまい、企業にとってリスクを抱え続けることとなる。

また、普段からのコミュニケーション等、風通しの良い職場作りはもちろんのこと、「問題社員」の有無に関わらず、やるべきことをやっておくことは言うまでもない。

4.書籍「問題社員の正しい辞めさせ方」を読んだ感想

まず、前半の「太陽方式」について。この本を読む前の私のイメージは「純粋に能力の低い社員」には「太陽方式」(暖かく)、「問題社員」には「北風方式」(厳しく)だった。「問題社員」に「太陽方式」を実践できる自信が持てず、また実践する機会があるかわからないが、まずは「太陽方式」である必要性をインプットした。粘り強く向き合うことが必要だ。

次に、後半の「予防」について。労働環境やコンプライアンスが極めて重要であることを再認識させられる内容である。多くのビジネスパーソンは、目の前の業務に気を取られ、目の前の課題解決に精一杯で、コンプライアンスについて深く考えることが少ないのではないかと感じる。

また、管理職ぼど組織内におけるウェイトが高く、本来必要な「社会目線」に至らず、「会社目線」でしかないという事態も珍しくない話だ。
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ここでコンプライアンスとは、「法令遵守」のみならず「時代とともに変化する社会的要請を正確に把握し、それに応じた行動を取ること」としている点について、私は共感している。「法令」のみで片付けるのではなく、「人」「社会」をカバーするだけの視座が求められる。

労務トラブルにおける具体的な事例も多く載せられており、冒頭に示したように「解雇」に関するトラブル以外にも、指導やコミュニケーションに関する様々な知見が得られる。是非とも、多くのビジネスパーソンにお薦めしたい一冊である。

顧客・取引先からのパワハラは「パワハラ」と表現すべきか考えてみた

パワハラ防止法が、大企業では2020年6月から、2022年4月以降は中小企業を含む全ての企業で適用される。パワハラ対策をしない企業、パワハラを助長する行為は、パワハラ防止法違反となる。

パワハラが社内で行われているなら社内で解決すべきなのだが、悩ましいのは顧客・取引先から受けるパワハラである。

パワハラの定義の冒頭に
「職場において行われる・・・」
「同じ職場において・・・」
などという表現が使われる。

顧客・取引先からのパワハラは「パワハラ」と表現すべきか、そうでないのか、という疑問がある。結論は、「表現がどうであろうと中身は同じだ」である。しかし、今の日本人にとっては「パワハラ」と表現したほうが、インパクトがあって分かりやすい


1.厚生労働省が提示しているパワハラの定義をおさらい

厚生労働省が提示しているパワハラの定義とは、

職場において行われる

  • ①優越的な関係を背景とした言動であって、
  • ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • ③労働者の就業環境が害されるものであり、

①から③までの3つの要素を全て満たすものをいう。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

続いて、パワハラの6類型(パターン)について紹介する。パワハラは次の6つのパターンに分類され、6類型と呼ばれている。

  • (1)身体的な攻撃
  • (2)精神的な攻撃
  • (3)人間関係からの切り離し
  • (4)過大な要求
  • (5)過小な要求
  • (6)個の侵害

「(1)身体的な攻撃」は暴力の他、モノを叩くことによる威嚇がこれに該当する。「(2)精神的な攻撃」は暴言の他にも、他人を心理的に苦しめる発言が該当し、パワハラ事例の中でも最も多い。特定の人だけ仲間外れにしたり、情報を与えない、無視をするのは「(3)人間関係からの切り離し」に該当する。到底達成できないノルマを与える「(4)過大な要求」、能力に見合わない仕事を与える、もしくは仕事を与えないことで心理的に苦しめる「(5)過小な要求」、プライベートに踏み込みすぎる「(6)個の侵害」、これらを総称してパワハラと呼ばれる。
www.no-harassment.mhlw.go.jp

2.パワハラ定義の冒頭を見て「顧客・取引先が加害者なら対象外」とか言う人がいれば、「迷惑行為には変わりはない!」とはっきり論破せよ!

よく、パワハラの定義の冒頭に

  • 「職場において行われる・・・」
  • 「同じ職場において・・・」

などという表現が使われる。では、

  • 「異なる職場」
  • 「異なる会社間」
  • 「顧客や取引先」
  • 「ロケーションが離れている」

だと、
 ①優越的な関係を背景とした言動であって、
 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
 ③労働者の就業環境が害されるものであり、

①から③までの3つの要素を全て満たしても、パワハラには当たらないのではないかという疑問が生まれる。

  • 「お客様だから・・・」
  • 「発注元だから・・・」
  • 「親会社だから・・・」

という理由で、

  • 「暴言を吐こうが」
  • 「無理難題を要求しようが」
  • 「短納期での要求が原因で、取引先がブラック労働に至る長時間労働になろうが」
  • 「取引先の従業員が、メンタルトラブルに見舞われ体調を崩そうが」

パワハラに該当しない』という理論を振りかざし、このような行為をする企業が出現してくるのではないだろうか?

このような懸念があるが、『パワハラ』と言って良い。後述するが、はっきり言って迷惑行為だ。

人間としての常識さえあれば、このようなことはあり得ない。そう思いたいが、実際には許容できない事例が少なからずある。顧客・取引先からのパワハラの事例を示した別記事のリンクを貼っておくので、こちらを参照いただきたい。
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社内で発生するパワハラなら社内で防止することは可能だが、顧客・取引先からのパワハラを訴えれば、取引・ビジネス・売上・利益に影響が出るのではないかと心配する人もいるだろう。

逆に、顧客・取引先はこの心理に漬け込んで、理不尽な要求をするのではないだろうか?

だとすれば、それはとても悪質であるため、そのような顧客・取引先と仕事を続けていくことは、早かれ遅かれ自分自身もしくは自社が被害に遭うリスクを抱えるので、改善を求めるか取引停止にするかなどして被害者側を守るべきだし、そもそもこの点も含めて企業には安全配慮義務」(労働契約法第5条)が課せられている。労働者の人権を守ることは、社内の人間でも、顧客・取引先でも関係なく共通だ。
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3.「顧客・取引先からの著しい迷惑行為」という表現があるが、中身は「パワハラ」と同じだ!

2020/01/10に「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」のイベント「労働政策フォーラム」「職場のパワーハラスメントを考える」が開催されている。

この講演で使用された資料「職場のパワーハラスメントに関するヒアリング調査結果」の目次を見ると、前半では「職場におけるパワーハラスメント」について述べられている。後半は「顧客・取引先からの著しい迷惑行為」について述べられている。

どちらも被害者にとっては迷惑極まりないことには変わらないのだが、加害者が異なる点から、同一資料の前半・後半に分けて現状や対策が述べられている。

この資料においては、加害者が顧客・取引先の場合、「パワーハラスメント」という用語を用いていない。言葉の定義だけでいうと、パワハラにあたらないように見えるが、「迷惑行為」という共通の括りで述べられているため、パワハラという言葉を使っていなくても中身はパワハラと同様だ。

パワハラ」と表現するか、「著しい迷惑行為」と表現するかの違いだけである。

そもそも、普通の人間はこのような内容がいけないことくらいわかっている。しかし、わざわざこのような資料が作られ、Webページに載せられ、公の場で発表されている現実に目を向ければ、こういう悪質な顧客・取引先が少なからず居り、加害側企業、被害側企業共にほとんど対策がなされていないということだろう。

暴言などは言うまでもないが、無理な要求も迷惑行為である。発注元、発注先ともに認識しておかなければならない内容だ。また、日本は全体的にハラスメント対策が遅れているとのことだ。

ソフトウェア開発においても、顧客・取引先との力関係を背景に、無理な要求でも応じなければならないという雰囲気がある。でも、要求する側は迷惑行為という自覚がないどころか、ソフトウェア開発都合で要求が実現できないなどありえないという認識さえある。だから、ソフトウェアエンジニアにしわ寄せが行き、無理が祟り、納期が守れないか、製品の品質に影響するか、心身不調・健康被害といった労務問題が起きる。

4.「パワハラ」「カスハラ」「モラハラ」・・・・・顧客・取引先からの迷惑行為はどのような表現だろうと迷惑行為だ!

顧客・取引先からの迷惑行為は、「パワハラ」と言っても何も差し支えない。「顧客からのパワハラ」「取引先からのパワハラという表現を見ることがある。結局、力関係や立場の優位性を利用した迷惑行為(無理な納期の設定、サービスに見合わない低賃金を含む)という意味では、今の日本人にとっては「パワハラ」と表現したほうが、インパクトがあって分かりやすい。

「カスハラ」(カスタマーハラスメント)という言葉がある。顧客・取引先から従業員への理不尽なクレーム、過剰な要求などを指し、社会問題となっている。メディアで報道される機会も多く、被害に遭っている従業員が多数存在することが伺える。

そもそも、日本では、

  • 「顧客が偉い」
  • 「発注元の方が立場が上」

といった考え方がまだまだ根強く残っているようだが、実は大きな勘違いである。私が新入社員の頃は、

  • 「お客様を大切に」
  • 顧客満足
  • 「顧客視点」

といった内容は多く教わり、ある意味正しい。

しかし、これが行き過ぎるあまり

  • パワハラを受けても声を挙げることができない」
  • 「無理難題な要求でも、従わざるを得ない」

等、犠牲になる部分の方が目立ってきている。世界的に見ればあり得ない。このようなことを防止するためにも、次の記事をインプットしておく必要がある。
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最近では、「お客様とは対等な関係にあるべきだ。」と言われる。

力関係や、立場の優位性がなければ、顧客・取引先からの迷惑行為を受けても「パワハラ」と表現しづらくなる。一方、「モラハラ」と表現することはできる。

モラルハラスメント(「モラハラ」)とは、モラル(良識とされる道徳や倫理)に反するハラスメント(嫌がらせ)である。「モラハラ」は、「パワハラ」とは異なり、職務上の人間関係に限定せず、優越的な立場を背景としていないのが特徴である。

結局、顧客・取引先からの迷惑行為を「パワハラ」と表現しようが、「カスハラ」と表現しようが、「モラハラ」と表現しようが、どれをとっても迷惑行為である。個人的には「パワハラ」の定義に、顧客・取引先が加害者となる場合も含めてくれれば、わかりやすいのではないかと感じる。

いずれにしても、ブラック労働やハラスメント被害に繋がる悪質顧客を神様扱いせず、毅然とした対応が当たり前になり、

  • 「顧客が偉い」
  • 「発注元の方が立場が上」

といった勘違いが無くなり、「人間対人間」として人権を尊重しながらビジネスを進めることができる企業が、就職先・転職先として選ばれる企業になることは間違いない。

あなたが所属している企業はどうだろうか?

立場や力関係を背景に人権を犠牲にして、ビジネスを成立させている企業や顧客・取引先が廃れていく時代は、すぐ目の前まで来ている。倫理観の低い顧客や取引先は見切りをつけるべきだ。更に、これができない企業は生き残れないし、そのような上司について行っても被害を受けるのは自分だから、こちらも見切りをつけるべきだ。

「粗悪さ」を「厳しさ」と称する人や組織はブラックの底辺と断言する!

ブラック労働が常態化している現場、ブラック労働の予兆がある現場、またそうでなくても、ネガティブな状況をポジティブな言葉に変えて表現することがある。ブラック企業の求人広告にも見受けられる。
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実際、職場では理不尽なことがよく起きる。ブラック労働問題が世間に認識され、ハラスメントをはじめとしたコンプライアンスに対しても世間からの目は厳格さを増し、民間企業のみならず、公務員、国会・官僚、学校、部活動、アスリートでもたびたび不祥事がニュースに取り上げれる時代となった。ただ、旧態依然の価値観を持つ人たちは、未だにこれを「厳しさ」と勘違いし、「耐える」「乗り越える」ことを美徳とするようだ。

ここではその一つである「厳しさ」と「粗悪さ」の違いに深掘りした上で、「粗悪さ」を「厳しさ」と称することがブラックの底辺であることについて語りたいと思う。


1.「厳しさ」とは、困難が多く四苦八苦する分、成功すると達成感が得られる状態

「厳しさ」の形容詞「厳しい」の主な意味を改めて調べてみると、次のような結果であった。

  • 厳格で少しのゆるみも許さないさま。厳重である。
  • いいかげんな対処が許されないさま。困難が多くて、大変なさま。
  • 自然現象などの程度が著しいさま。
  • 物事の状態が緊張・緊迫しているさま。

ビジネスや学校生活における「厳しさ」は、

  • 目標に向かって頑張っているがなかなか達成できない様子
  • いくつもの困難にぶつかり四苦八苦する様子
  • 失敗続きで何回も試行錯誤する様子
  • 逆に、目標を達成したり、成功したりすると、達成観が大いにあり誇らしい様子

をイメージする。

2.「粗悪さ」とは、物事の様子が酷く悪い状態であること

「粗悪」は、文字通り解釈すると粗くて悪い様子であり、「粗悪品」とも言われるように、物事の様子が酷く悪い状態を指す。

「劣悪」も同様に、性質・状態などがひどく劣っていて悪いこと。「劣悪な環境」「劣悪な労働条件」という感じで使われる。「優良」の逆の意味である。この記事では「劣悪さ」も「粗悪さ」と同等に扱う。

「粗悪さ」について調べたところ、類似する言葉として以下のような言葉がある。

  • 低品質
  • 劣等さ
  • 不良
  • 三流
  • 悪質
  • 粗末さ
  • 下等さ
  • 低級
  • 低劣さ
  • 下位であること
  • 下級

ビジネスや学校生活における「粗悪さ」「劣悪さ」は、

  • 目標が個人の努力で達成できるものからかけ離れており、見直しが必要な状況
  • 長時間労働パワハラ等、労働環境に問題がある様子
  • 取引先からの納品物、過去に作成された設計書の品質が悪く、以降の業務に支障をきたしている様子
  • 高い目標を達成しても、それがどれほど困難なものかを理解されず、都合良く扱われているだけで、何の恩恵も受けない様子
  • 部活動等における「指導」と称した暴力問題

をイメージする。

3.「厳しさ」と「粗悪さ」は全く違う!勘違いするな!

この両者の違いは明らかだ。「厳しさ」は目的・目標を達成する、もしくは困難を乗り越えるために苦労している様子、少しの誤りも許されない様子、「粗悪さ」(以降、「劣悪さ」も同様)は目的・目標を達成するにあたり、それ以前の部分に内在する問題のしわ寄せを受けている様子である。

「厳しさ」には、「迷惑」「被害」といった概念がないが、「粗悪さ」にはある。「劣悪な労働環境」というが、「厳しい労働環境」とは聞かないし、何か都合の悪い状態に対して言葉を濁しているようだ。目標・目的を達成するのに苦労している状況と、「迷惑」「被害」がリンクするか否かであるところが大きい。また、「成長に繋がる」かどうかも見極めの大きなポイントだ。

一方、システム開発等において


「厳しいスケジュール」
「タイトなスケジュール」
「厳しい納期」

と言うことはある。確かにこれらは存在する。少々進め方を工夫しないと予定していた業務が期日までに達成できないことがあるが、これが明らかにスケジュールを守れない業務を押し付けられるとか、そもそも長時間労働が常態化している、前段のしわ寄せを受け現場が疲弊している状態等は、「厳しさ」とは言わないだろう。そもそも「厳しいスケジュール」という時点で余裕がないことは明確であり、何かイレギュラーなことが発生した途端に破綻する様子を表しているため、あまり良い印象を与えない。

ブラックと感じるシステム開発現場で、労働環境の悪化など悪影響を与えるような無理な計画や、顧客・取引先・他部門からの無理な要求を受けることで、対応する現場に圧力がかかり、しわ寄せを受け、理不尽を強いられ、メンバーが疲弊し、悲鳴を挙げている。これをブラックな長時間労働で挽回する様子を「厳しさ」と表現するのはいかがなものだろうかと思う。
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このようなケースは、明らかに前段のしわ寄せが末端の被害・迷惑に直結する「粗悪さ」である。役職・地位に関係なくブラック思考の人は、これでも被害者のせいにする。ここは正しく見抜く必要がある。
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多重下請け構造」の問題も然りである。価値をほとんど出さない中間の企業が、マージンを搾取する。コミュニケーションも複雑化する。このような前段の「粗悪さ」が、末端企業を追い詰める。「厳しさ」ではない。
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4.「粗悪さ」を正しく見抜くことは必須のスキルだ!「厳しさ」などと丸め込むな!

「粗悪さ」を「厳しさ」と表現することがある。ネガティブな状況を隠蔽する悪質さが伺える。ブラックの底辺である人や組織の考え方だ。そう断言できる。

「粗悪さ」を正しく見抜くことと、言い訳をすることは全く異なる。
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「粗悪さ」を正しく見抜くことは、自身のキャリアのためにも重要である。

私は「粗悪さ」を正しく見抜いて、より良い企業への転職に繋げた経験がある。
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「粗悪さ」を

  • 「厳しさ」
  • 「成長に繋がる」
  • 「自分のため」

と信じて頑張り続けることは、頑張り損でしかない。「骨折り損のくたびれ儲け」とも言う。

「セルフマネジメント」を悪用するのと同じレベルだ。
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「粗悪さ」を「厳しさ」と思い込み続けていると無理が祟り、生活面、キャリア面、健康面に被害が出る。真面目で、仕事熱心で、優秀な人ほど被害が大きい。成長には「厳しさ」は必要だし、「謙虚さ」も必要だ。しかし、私が過去に抱えていた問題は、「謙虚さ」が行き過ぎて「粗悪さ」を見抜けなかったことである。「粗悪さ」を正しく見抜くことは必須のスキルだ!

「粗悪さ」に巻き込まれている人は、このような観点を持って転職準備をしておくことをお薦めする。フリーランスでも、副業でも構わない。そして、良いキャリアを! 良い人生を!

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